この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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 ウワッハッハッハッハッハ!

 見に来てくれて感謝するぞ!また来てくれるとは、貴公はやはり太陽が好きなのだな?

 みなまで言わなくていい、俺と一緒にどうだ?毎朝の太陽賛美は心地がいいぞ! ウワッハッハッハッハッ!!


この素晴らしい世界に太陽を!

 それは急だった。

 

 所有者の無くなった神器を探しているとき、私の本体であるエリスが降臨してきた。かなり慌てて、緊急事態と言っていた。別の世界から人がやってきた。それのどこが緊急なのか最初はわからなかった。でも、話を聞くうちにエリスの顔の青は私にも移っていた。

 

「なんなの、それヤバいじゃん」

「ヤバいなんてものじゃありません!! もし敵対するようなら、勝ち目なんてありません。しかもよりによって、先輩のいるアクセルの街のそばに…」

 

 あ、ヤバい。あの人の事だからアンデッド臭がするとか言って、絶対に考えなしに攻撃する。その確信がある。

 

「ですから、すぐにアクセルの街に戻ってください! 手遅れになる前にっ!」

 

 聞き終えるより先に身体は動いていた。神器の回収なんてしてる場合じゃ無い。少しでも早く、早く行かなくては!

 

 そして案の定、アクアはアンデッドと勘違いして攻撃しそうになった。カズマ君が止めなければ、この世界は終わっていたかもしれない。それを言うならカズマ君は世界を救った英雄になるのかもしれないね。

 

 その英雄(カズマ君)は私から聞かされた話で顔を青ざめさせていた。もちろん私の本体が降臨した部分を省いて、あくまで天啓ということにしている。私さっきまでこんな顔をしていたんだ、と唐揚げを口に運びながら考えていた。

 

 誤解を解いた私は、ひとまず話そうとギルドへ向かった。ここまで来るのも大変だった。まずアクセルの街の人々は敵では無いことを説明しなくてはならなかった。そして、どんなに欲しい装備を付けた人がいても殺してはいけないと伝えたときは焦った。多少渋っていたからだ。

 

「ダメなんです! ぜ〜〜ったいに殺したりなんかしないでください!」

 

 多少本体の喋り方になるくらいの必死の説得で、ようやく納得してくれた。でも納得の仕方が、全員敵対したら大変そうだからというのは不安が残った。

 

「すまないが……」

「は、ハイ!! なんでございましょう!?」

 

 カズマは思わず上ずった声で返事をしてしまう。クリスからの話を聞いてその挙動の一つ一つに敏感になっていた。不死人はゆっくりと指先をギルドの受付へ向けた。そこではクエストを終えた冒険者たちが報酬を受け取っているところだった。

 

「彼らはなにをしている?」

「あぁ、はい。あいつらはクエストっていう依頼を達成した報酬をもらってるんですよ」

 

 誓約ということか。

 

「では、彼らが誓約しているのはなんなんだろうか」

 

 不死人の質問の意味がわからずフリーズにかかってしまうカズマ君を見て、その辺りも不死人に教えなくてはならないのかと、思わず頭を抱えた。今頃自分の本体は天界でホッとしているのだろう。そう思うと腹が立つ。

 

 完全に塞ぎ込んで自分の世界へ逃げているアクアの、全てを諦めているような風貌にまた懐かしい人のことを思い出していた。北の不死院からロードランへ来た時に最初に出会った心の折れた男のことだ。

 

 そういえば、あの男は結局亡者になって襲いかかってきたな。そこまで思い出して、もう一度アクアを見る。

 

「私は……知らなくて…ダメ……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 今にも亡者になりそうだ。今のうちに殺すべきだろうか。

 

 いいや、“まだ”ダメだ。まだ敵対してないのに攻撃しては、なにをされるかわからない。それに、別に今殺さなくてもいい。

 

 亡者になったら殺せばいい。

 

 ゾワッ、と背中の毛が逆立つ感覚でアクアは無理やり正気に戻された。ギギギ、と不死人を見るや否や。

 

「あ、あの………先程はすみませんでした。急にアンデッドよばわりして攻撃しようとしてしまって…申し訳ありませんでした」

 

 椅子から転げ落ちるように地面に座って頭を下げる、見事な土下座だった。

 

 プライド?そんなものジャイアントトードにでも食わせておけ。この時ばかりは流石のカズマでもいつものようにアクアを貶すなんてことは出来なかった。むしろ激しく同情した。

 

 

 

 

 再度、クリスからこの世界の知識を粗方教えてもらった不死人は考えていた。この世界にいては火継ぎをすることができない。

 

 それでも、興味を惹かれるものがある。

 

 なんだ、あの魔術は。

 

 なんだ、あのアイテムは。

 

 ギルドに来るまでに見た魔術やアイテムの数々は、全てが未知の存在だった。

 不死人は考える。永劫に終わりのない火継ぎを終わらせられることができるのではないのか。もう同じことを繰り返さなくても良いのではないか。

 

「冒険者とは、私でもなれるのか?」

 

 問われたクリスはそれは驚いた。そして考える。どうして冒険者になろうとするのか。なんの理由があるのか。

 

 

「そうですね、貴方でもでもなれると思いますが、どうしてわざわざ? 充分強そうに見えるけど」

「この世界の魔法や技術を知りたい。知ることで私の望みを叶えられるかもしれない」

 

 私の望み……それは変わらない。火継ぎを終えて、無限に続く火継ぎの旅に終止符を打つことだ。

 

「あっ! それなら私にいい考えがありますよ! 魔王をぶっ殺しちゃえばいいのよ。魔王を殺した人はなんでも一つ望みを叶えてもらえるのよ!」

「うわっ、バカ!!」

 

 カズマがアクアの口をふさぐが、もう遅かった。

 

「じゃあ向かおう。魔王はどこだ?」

 

 口を塞がれていたので、指で方向を指し示すアクア。その方向を覚えた不死人はギルドから飛び出していってしまった。

 

 魔王とやらがどんな相手かは知らないが、とりあえず挑んでみよう。少なくとも絶対に倒せないことはないはずだ。かつて私は転送を使えるようになるまでは、自分の足だけでロードランやアノールロンドなどの地を歩いてきた。多少遠くとも、問題は無い。

 だが、門が見えてきた辺りで呼び止められた。さっきのクリスという女だ。

 

「待って待って! まさか一人で向かう気じゃないよね!?」

 

 そうだ、と答えたらクリスはため息をつく。なぜだろうか。私にとって距離など関係ない。歩いていれば着く。ただ真っ直ぐ進めばいい。

 

「魔王城には結界があって、それを解かないとまず入れないんですよ!」

 

 結界か、ならば無理だ。結界は越えることが出来ない。王の器を得るまで王へと続く道の途中にあった結界のように、あれはどんな方法を使っても越えられなかった。

 

「どうやったら解ける?」

 

 問われたクリスは言おうとするも、少し躊躇って周りを見渡した。ここでは人目が多すぎる。もっと話しやすい場所に移動しようと持ちかけた。

 

 少し離れた場所の、入り組んだ脇道を超えた先の袋小路。そこでクリスは座り、不死人は立っていた。神妙な面持ちで俯いていたクリスは顔上げて不死人を真っ直ぐ見据える。

 

「いいですか? 今から言うことと見ることは絶対に誰にも言ったらいけませんからね」

 

 なにをする気か、それを聞く前にクリスの身体が少し光ったように見えた。後ろに下がって警戒心を強めた。クリスの雰囲気が少し変わった。

 

「どうか、警戒しないでください。私の名はエリス、この世界を管理する神です。安心してください、貴方に危害を加えることは決してしません」

「本当か?」

「勿論です。太陽にかけて、誓います」

 

 そう言ってエリスが取り出したものを見て、私は目を見張った。エリスの手には太陽のメダルが握られていた。

 




 魔王軍幹部の寿命が少し伸びました。

 太陽のメダルをあげたのは、ソラールさんじゃないです、もっと上の人ですよ。ダレダロナー

 不死人さんのスペックは、プレイヤー基準で見ればとっくに全部カンストしてます。そしてまだ成長するという……。

 更新しました。2020/05/17
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