この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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ウワッハッハッハッハッハッ!

評価が赤くなってるとは驚いた。これも貴公たちのおかげだ!

赤といえば、太陽は夕方になると赤くなって更に美しくなるな。

太陽万歳!ウワッハッハッハ


この素晴らしい世界に改心を!

 

「それは……」

「貴方に信用してもらえるようにと、“あるお方”から授かったものです。もしまだ信用できないのなら、あのお方の御名前を…」

 

 大丈夫だ、その先の言葉を手で遮った。自分の持つ太陽のメダルとは比べ物にならない神聖さを纏ったそれを見て、私はエリスを信頼することにした。

 

「それは良かったです。早速ですが、本題に入らさせていただきます」

 

 エリスは、事細かに現在のこの世界の状況を説明した。

 

 魔王城へ行くには幹部を全て倒さなくてはいけないこと。

 

 幹部の一人はカズマたちのパーティーがすでに倒したこと。

 

 そして最後に。

 

「魔王を倒したとしても、貴方の願いは叶えられないのです」

「なぜだ?」

「本来であれば叶えなければいけないのですが、貴方の存在は異例中の異例。本来ならこの世界にいる筈はない存在だからです。天界規定で禁止されていて、これを破ったら怒られるどころか……」

 

 台詞がしりすぼみになっていくエリスを見て考える。何か方法はないのか。ダメだ、やはりこの世界の魔法などの知識を得ていくしかなさそうだ。一人で旅をしてもいいが、下手に敵対しては情報を得られる人間が減っていってしまう。どうしたものか。

 

 悩む不死人にエリスが声をかける。

 

「そういえばさっき言ってた貴方の望みは、やはり火継ぎでしょうか?」

「そうだ。だが少し違う。火継ぎを行い、無限に続く世界からも抜け出すことだ」

「無限…ですか?」

「そうだ、無限だ」

「そうですか…」

「ああ」

 

 

 短い問答の中で聞いた言葉にクリスは思考を巡らせる。無限ってどういうことなんでしょうか。質問は出来そうな雰囲気でもないし。

 エリスは話題を変えようかと思ったが、託された任務を思い出してやめた。少しでも彼の事を教えてもらわなければ、自分の面目は丸潰れだ。しかし下手なことを言って攻撃でもされたら…。エリスは不死人が腰に刺した剣を見る。一見するとただの剣だが所持者がこれだ。

 

「なあ」という短い呼びかけに意識を引き戻された。

「はい。なんでしょうか」

「さっき言っていた冒険者には、どうやってなるのだろうか」

「……冒険者? ああ、冒険者!はい、なれますよ。貴方でしたらきっと、転生者の方々より素晴らしい冒険者に!」

 

 失言を悟り口を閉ざした。兜に遮られて表情はわからなかった。しかしいつも通りのくぐもった声で彼ははっきりと問いかけた。

 

「転生者とは……なんだ?」

 

 手遅れだった。

 

 

 

 エリスから粗方の情報を得た不死人は元に戻ったクリスと共にギルドへ戻ってきた。カズマたちはもう居なかった。すれ違いでクエストに出発してしまったようだ。

 受付に来た不死人はクリスに手伝ってもらいながらギルドの登録を済ませると、最後に水晶玉でのステータス確認が行われた。

 

「はい、これで登録は完了しました。えーっと、あれ?」

 

 受付嬢は首を傾げた。目先にはたったいまステータスが刻まれた冒険者カードが置いてある。しかし、全ステータスの表記がおかしいのだ。どれも平均値を大きく下回っている。一番高いのは幸運だが、それも雀の涙ほどの差。クエストどころか土木工事ですら役に立つかわからないレベルだった。

 

「あ、あの……騎士さんのステータスなんですが、全てのステータスが大幅に低く、これでは冒険者にオススメはできません。土木工事もままなりません…考え直されてはどうでしょうか……」

「わかった。じゃあ冒険者で頼む」

「いえその、これではクエストに出てもすぐ死んでしまって」

「大丈夫だ、冒険者で頼む」

「すぐに死んじゃうんですよ!」

 

 思わず身を乗り出した。しかし

 

「承知した。冒険者で頼む」

 

 私は人間と話しているんだろうか。何かの魔道具と話していると言われた方が納得できるほど、彼は頑なに同じ事を繰り返した。助けを求めるように同伴者のクリスさんを見ると首を振って諦めろと伝えてくる。

 

「はぁ〜〜、わかりました。ではこちらをどうぞ」

 

 もうどうにでもなれ。少し投げやりになった説明を聞き終えて彼が立ち去ると、どっと疲れが背中にのしかかってきた。同僚に後を任せて少し休憩に入った彼女を、誰が責められようか。

 

「じゃあ、私はそろそろ用事があるので失礼します!」

 

 クエストの受け方など基本的なものをレクチャーしたクリスは、元々の用事であった神器探しへと戻っていった。不死人は掲示板に張り出されたクエストの中からジャイアントトードのクエストを選んだ。

 

 平原に出た不死人は手に持った剣と、少し先に鎮座するジャイアントトードを見比べていた。

 

 デカいな。近づくのは危険か。剣を収めてタリスマンを構えた。様子見に手にソウルの矢を構えて投げる。カエルに見事に命中した。しかし、少しぐらついただけで全くこちらを見ない。ならば次の攻撃をとソウルの大矢を構えた、そこで動きが止まった。何度も経験したあの感覚がした。

 

 もしやと思い冒険者カードを見れば、先ほどまで何もなかった場所に数字が現れていた。ジャイアントトードはすでに事切れていた。

 

 なんと脆い生き物か。きっとこの蛙は冒険者のストレス発散用の生き物なのだろう。残りのジャイアントトードをソウルの矢で倒し終えても達成感は無かった。

 

 とんぼ帰りするようにギルドへ戻ってクエスト完了の報告をした。あまりの早さに受付嬢が感嘆する。やはり嬉しさは無かった。亡者程度、ひょっとしたらそれ以下の者を倒して褒められても何も感じない。報酬の金を受け取った不死人はそういえばと思い出した。自分のやるべき事があるではないか。

 

 受付嬢に詰め寄って魔法について問うた。しかし彼女は狼狽えてしまって会話にならない。つい先ほどまで元気だったのに、亡者になりかけてるのかもしれない。倒すのは容易だったが、人目が多かった。どうやって倒そうかと考えていた不死人の肩を誰かが叩いた。

 

「お困りのようだな」

 

 振り向くとそこには、金髪赤目の男がいた。

 

「もし良かったら、俺が魔法を教えてやるぜ」

 

 なんだこいつは。顔は似てないがパッチ(クソカス野郎)と似た雰囲気を持っている。

 

 咄嗟に剣を構えようとして不死人は思いとどまった。彼はエリスに言われた事を思い出していた。ここにいる人は亡者にはならない、だから出来るだけ殺さないでくれと。

 

「本当か?」

「もちろん! 今日の飯を奢ってくれるなら大感激だぜ。もし気に入らなければ、飯代もいらねぇ」

 

 ますます胡散臭い。パッチと似た臭いが強まった気がした。エリスは出来るだけ殺さないでと言っていたが、もし奴のような事をしたなら、敵対するようなら、殺してもいいだろう。

 

「ああ、頼む」

 

 そう答えた不死人に、ダストは内心でガッツポーズをしていた。実は先ほどの冒険者登録の際にダストもその場に居合わせていた。そして不死人のステータスは壊滅的だということを聞いていた。

 

 ステータスはともかく結構いい身なりしてるよなぁ、貴族のお坊ちゃんか?あの盾とか結構金になりそうな装備だし。鴨がネギ背負ってきた。そう確信していたダストは、できる限り人に見られないようにと歩いていく。人通りの無い小道に来たところでダストは振り返った。

 

「そんじゃあ、早速レクチャーを開始するぜ! まず魔法は、一度見たら冒険者カードに取得可能魔法として登録される。そんで、レベルアップした時にもらえるポイントを使って覚える。たったこれだけだ」

 

 そんじゃ、まず俺がやるぜ。ダストが片手を前に出した。

 

「スティール!」

 

 男が魔法を発動させた。自分の身に何か起こったのか。しかし、身体に異常はない。

 当たらなかったのか。そう聞くと更に連続で同じ魔法を使ってきた。そして何度目かで、何かを奪われた感覚がした。スティールとは、物を奪う魔法だったのか。

 

 何を奪うことが出来たのか、ダストが手を広げる。

 

「……ゴミじゃねぇか!!」

 

 ゴミクズだった。懐かしいな。あれを手に入れた時の私も同じ反応だった。

 

 ゴミクズを見つめて無言のまま動かないダストから冒険者カードへ視線を移す。たしかに書いてある、何もなかった空欄に“スティール”の文字があった。

 たしか…、とポイントをスティールに振り分けた。少しむず痒い感覚の後、冒険者カードの使用可能魔法の欄にスティールの文字が刻まれていた。

 

 本当に使えるのか。発動方法はクリスから聞いている。そして目の前にはちょうどいい的がある。

 

 ゴミクズは別にいらないが、しょうがないか。

 

 

 不死人は迂闊だった。今まで魔法などを使う時は杖やタリスマン、そして呪術の火を装備して使っていた。それを何万回と繰り返してきたのだ。無意識の行動だった。ウーラシールの白杖を装備して唱えられたスティールはダストの装備品や金銭を奪うことはしなかった。その代わりに、“ダスト本人”を引き寄せてしまった。

 

 ダストは仰天した。一瞬視界が真っ白になったかと思えば、首を不死人の手で捕まえられて持ち上げられていた。

 

「あ……ぁぁ……あああ!」

 

 パニックになるなという方が無理がある。首を掴まれたダストは見てしまった。否が応でも、兜のスリットの中を覗いてしまった。

 ダークリングの瞳と亡者の顔を見てしまったダストは、半狂乱になりながらもわずかに保っていた理性を稼働させて口を開いた。

 

「ご、ごめんなさいぃいいいいい!」

 

 騙そうとしたことへか、これまでの行いか、とにかくダストは全力で誤った。不死人は謝罪の言葉など聞いていなかった。新しく手に入れた魔法の効果を見て愕然としていた。

 

 首を掴んだ瞬間、致命の一撃を入れる前の感覚がした。盾で攻撃を弾いたときの感覚がしたのだ。魔法を学ぶことを選んだのは間違いではない。まだこの世界には私の知らない魔法がいくつも存在する。

 

 完全な火継ぎを行うことの出来る希望が見えた気がした。

 

「あぁ……」

 

 同時にダストの意識が途切れた瞬間でもあった。緊張がとうとう限界を超えてしまっていた。不死人が手を離せば力の抜けた身体が地面へ横たわった。

 

 飯をおごれと言っていたが……まあいいか。

 

 人気のない場所に気絶したまま取り残されたダストは、夕焼けの眩しさで目を覚ました。そして自分の命が助かったことを知り、これからは自重しようと心に誓ったのだった。

 




 まさか評価が赤くなるとは思いもしませんでした。ありがとうございます。

 

 更新しました。2020/05/17
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