なんと文字を間違えていたとは、不覚だったわ!
そしてなんという声援だ……これだけの太陽の信仰者が集まれば、きっとおれの太陽も……!
「今日もお疲れ様でした〜、こちらが報酬になります〜」
ギルドの受付嬢はいつも通り冒険者のクエスト完了と報酬の受け渡しを行う。マニュアルに書いてある通りの対応だった。
最初は嬉しかった。クレームも何もないし、受けたクエストはちゃんとこなす。モンスターの身体も傷もなく綺麗だから、食材の品質に困ることもないし、余った分を研究に回すこともできる。
ただ、量が異常だった。なぜ初見殺しのクエストが半日も経たず終わってるのか。グリフォンとマンティコアの喧嘩を止めるクエストでは、目撃者の話ではモンスターが二匹とも我先にと逃げ出してしまう始末。あろうことか機動要塞デストロイヤーの視察から帰って来た彼に感想を聞けば、「壊せそう」と言って退けた。
緊急対策会議が開かれ、ギルドとしてクエストの分配を平等にする為に、彼には高難易度のクエストだけしか受けられないようにした。しかしそれらも難なく達成してきた。途中から受付嬢のルナは、マニュアル通りに接すればいいとだけ考えた。私はただマニュアルに従っているだけ。私が悩むことではない。
こうして表向きは普段通りのギルドに戻ったのだが、彼への報酬の支払いがあまりにも多く積み重なっているので、本部の財政面に多少の打撃があった。
不死人は来る日も来る日もクエストをこなしていった。時にはクリスの神器集めについていくこともあった。
「いいですか? 神器の本来の力は所有者にしか引き出せないものなんです、だから見つけたとしても、ちょっと便利な道具に過ぎない。だから貴方が持ってても意味がないゴミクズ同然のものなんです」
散策へ入る前にいつもの注意事項を聞かされた不死人は、わかったと短く答えて洞窟に入っていった。
暗い洞窟内を進む内、巨人墓場の嫌な思い出が蘇った。即座に兜の装備を太陽虫にした。醜悪な見た目にクリスは顔を引きつらせていたので、「そのうち慣れる」とだけ言った。
灯りに引き寄せられてモンスターが向かってきた。灯りに寄ってくるのは、クリス曰く“特性”らしい。数の多さから、速い方がいいだろうと思いロングソードから“黄金の残光”に持ち替えた。
蹴散らしながら進むと、行き止まりになった。
「敵感知、そこです」
クリスの言う通り壁に近づけば、そこに潜んでいたモンスターが飛びかかってきた。一匹だけなのを確認して、少し後ろへ下がってウーラシールの白杖を持った。
「スティール…」
モンスターの首を掴む。すぐに杖を剣に持ち替えて致命の一撃を入れる。これもずいぶん慣れたものだ。
「ちょっと待ってくださいよ!」
後ろからクリスの声がするも、不死人はこれを無視して魔法の壁の先へ向かった。
懐かしいな。盾を装備して黄金の残光を光らせながら、不死人は城下町で迫り来る亡者をなぎ倒しながら進んだ時の記憶を思い出していた。
向かってくる敵がいなくなったところで、少し開けた場所に出た。そこにあったのは、鋼鉄製の扉だった。錆びて赤黒く変色してるものの、しっかりと鍵は生きてるようで、役割を続けていた。
だが、不死人はそんなこと御構い無しだ。
「アンロック」
本来、スキルとは職人の技のようなものだ。何度も積み重ねることでレベルを上げていって、道具を使う器用さが上がったり解錠が早くなったりする。
しかし不死人が使えば鍵は吹っ飛んだ。錠を失った扉は虚しく泣いていた。
奥にはベッドに横たわった骸骨と遺書らしきもの、そして宝箱があった。宝箱を見つけた不死人はまず剣を振り下ろした。
「………違ったか」
トラップではない。ひとまず安心した不死人は宝箱を開けて中のものを取り出すと、じっくり見ることもなく所持品として保管してしまった。どんなものかは後で調べればいい。
クリスが走ってきた。ひどい剣幕だった。なぜ置いてけぼりにしたのか、進むのが早すぎるなどなど。
「もういいです、言っても無駄だろうし……。ところで神器はありましたか?」
「いいや、無かった。代わりにこれがあった」
ゴミクズを差し出して嘘をついた。
当たり前だった。彼の目的はあくまで元の世界に帰って火継ぎを完全に終わらせること。それをなす為には、「ちょっと便利な道具」でもそう簡単に手放すわけにはいかない。
「それじゃ、今日はありがとうございました!」
クリスは90度の見事な礼をして去っていった。
冒険者カードを取り出す。始めは白紙が目立ったカードも、今では取得スキル覧が賑やかになっていた。未取得一覧には爆裂魔法を始めとして多数のポイントが必要になるスキルがまだかまだかとごったがえしていた。
神器をちょろまかした不死人は、クリスと解散したあとでそれを調べた。
直死の魔レンズ。
モノの死を見て、断ち切ることができるようになる。
しかし現在は所有者が死亡しているため、よく見えるレンズとなっている。
「………」
クリスの言う通りだった。たしかにこれはゴミクズと同じランクのものだ。騙してまで手に入れたのにとんだ無駄骨だった。
これが最近の彼の生活だった。不死人に食事、就寝などの娯楽はない。趣味もない。あるとすれば新しいスキルを覚えることやソウルを集めることだ。
「緊急! 緊急っ! 冒険者の方々は急いで正門前に集まってください!」
だからこのとき。
「敵か?」
冒険者としてではなく。
「なんかヤバそうだな?」
『不死人』として動いた。
集まった冒険者は恐怖した。
平野に佇む一頭の馬とそれに乗る騎士に恐怖した。頭だけがないそれらがなんなのか、始まりの街の住民でも理解できた。
「デュラハン……まさか、魔王軍幹部のっ!?」
誰かが言った。不死人の地獄耳はそれを聞き逃さない。魔王軍幹部?……つまり敵か。殺していいんだな。
「ま、毎日毎日! おれの城に爆裂魔法を撃ってくる頭のおかしいヤツは誰だァァー!」
誤字報告ありがとうございます。
そして皆様、感想や評価などありがとうございます。これからも頑張って、頭マッサラタウンで作品を書き続けたいと思います。
苦情などはタケシに向けてどうぞ
更新しました。2020/05/17