この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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ウワッハッハッハッハッハッハ!

別の世界ではダメだったようだが、今度の世界はどうなることやら!

しかし、世界がどうなるとしても太陽は変わらず輝いているっ!

 みなも太陽を賛美しようではないか!ウワッハッハッハ

 太  陽  万  歳!!



この素晴らしい世界に大剣を!

 

 人々の耳に受付嬢の指示が届く。

 

 正門前に集まってください。感情が伝わってくる焦った声だった。その声に冒険者たちは動いて応えた。全員が正門前に駆け足で向かっていった。その勢いに呑み込まれて、カズマたちのパーティーも正門前に流れ着く。

 

「なんだあれ…デュラハンか?」

 

 黒い首なし馬と黒い首なしの騎士。異質な存在に息をのむ冒険者をよそに、デュラハンのベルディアは怒り心頭だった。

 

「毎日毎日、おれの城に爆裂魔法を撃ってくるは頭のおかしいやつは誰だああああ!」

 

 デュラハンが騒音に悩まされる住民のように叫ぶ光景はギャップを感じさせ、冒険者たちの張り詰めた空気が少し和らいだ。

 同時に、この騒動の犯人探しが始まる。

 

 お前か。 私じゃない。 誰だ。 お前じゃないのか。 君じゃないのか。 あいつじゃないか。 違う、あいつか。

 

 騒めく冒険者たちの中には、疑われて泣き出す者も現れだした。その中から一人、静かに群を抜けてまっすぐベルディアに向かっていく少女がいた。黒いとんがり帽子と黒い衣装、身の丈以上の杖を持った少女が、ベルディアの前に立ち名乗りを上げた。

 

「お前か……爆裂魔法をぶち込んでくる大バカ者はああ! このおれが魔王軍幹部と知ってのことなら、堂々と城へ攻め込んでくればいい! それが出来ぬ臆病者なら街で震えていればいいのに、どうしてこんな嫌がらせみたいなことするの? どうせ雑魚しかいない街だと思って放置していれば」

 

 ベルディアの怒りは留まることを知らない。次から次へと目の前の迷惑者に対する罵詈雑言を繰り出す。

 

 しかし、これは大いに間違いだった。

 

「うおっ!!」

 

 ベルディアの怒りにさらされた少女めぐみんが紅魔族として名乗りを披露しようとした瞬間、ベルディアが大きく仰け反って馬から転落した。

 

「ぷっ、あっハハハハ! ちょーウケるんですけど! さっきまで強がってた癖して、うおっ、って…うおっ!って!! プークスクス」

 

 馬鹿にされ笑われるベルディアだが、阿呆の戯れ言など気にしてる場合ではない。

 

 もし落ちなければ、殺されはしないにしろ大ダメージを受けていたことを感じていた。魔法で強化された鎧に傷跡がついている。引っかき傷など生ぬるい、金属がえぐり取られたような傷だ。

 

 そこかっ! 飛んできた方角をじっと見つめる。正門から離れた城壁の影。周りの景色と同化しているが、微妙に歪んだ場所を見つけた。

 

「コソコソとしてないで、出てきたらどうだ!」

 

 ベルディアが叫んだ。しかし冒険者たちはその存在にまだ気がつかない。魔法で隠れていた不死人はベルディアの言葉に対して魔法で応えた。

 

 弓矢では躱された。もしあの馬に乗ってこられたら接近戦になって面倒だ。

 

 太陽のような輝きが発生する。その光に、流石に冒険者たちも気がついた。身を隠していた魔法が解けてその姿が露わになる。

 

「いやああああああああああああ!!」

 

 駄女神が泣き出した。

 

「どうしたアクア!? もしや、あの人が例の騎士かっ!」

 

 ダクネスが食い入るように聞くがアクアに声は届いていない。鼻水と涙で顔を濡らして、一目散に逃走を図ろうとする。

 

 そのときズレが生じた。アクアの後ろの人混みが少しだけ少なかった。お陰で逃げ切る時間がかからず、アクアは正門前から完全に姿を消した。

 

 その小競り合いなど気にもとめず、不死人は太陽の光の槍を放った。ベルディアの乗ってきた馬へまっすぐ飛んだ槍は一撃で馬を屠る。

 

「へ?」

 

 馬が消えて残るはベルディアだけになる。これで急接近されることは無くなった。

 

 太陽の光の槍を構えてもう一度放つが、当たらない。ギリギリ避けられた。

 

「調子に乗るなぁ!」

 

 ベルディアは不死人との距離をひとっ飛びで縮めた。その手には大剣が握られている。

 

 すぐさま紋章の盾を装備して構える。ギリギリ間に合うが、それでもスタミナを一気に削られて体力も少し持っていかれた。

 

「まだまだ!」

 

 凄まじい連続斬りが襲いかかる。ジャンプ斬りほどではないにしろ、体力はどんどん消耗されていく。

 

 このままでは死ぬな。別に死んでもいいが………やっぱりここで死ぬのはもったいないな。

 

 後ろへ転がってほんの少し距離をとる。その距離を詰めてベルディアが再度斬りかかった。ここだ。

 

「は、弾いっ!?」

 

 何度もやってきたパリィだ。剣を弾かれて大きな隙を作ったベルディアに、不死人の攻撃をかわす術はない。

 

 不死人が右手に持った剣は、いつも使っている黄金の残光ではなかった。あちらが光とするならこちらは影。黒いというより暗い曲剣、暗銀の残滅。

 

「ふっ!」

 

 致命の一撃が入った。ベルディアの体力を大幅に削り、更に剣に仕込まれた凄まじい猛毒が、じわりじわりと体力を削っていく。

 

 突き飛ばされたベルディアは目の前の男のことを軽んじていたさっきまでの自分を恥じた。それは同時に、本気を出すべき相手と認識したということだった。

 

 しかし、本気など不死人に対しては最初から出してなければならなかった。

 

「ぬおおおおぉぉぉおぉぉぉ……」

 

 神々の怒りがベルディアの残り僅かな体力を削りきった。悲鳴を残してベルディアは完全に消滅する。

 

 あっという間の決着。死者どころか怪我人すら出ることのなかった状況にしばらく静かだった冒険者たちだったが、誰かが雄叫びを上げた。それに追従して叫ぶ冒険者たちは、ほぼヤケクソだった。

 

 冒険者たちの勝鬨は気にせず、不死人はベルディアのいた辺りを見ていた。浄化されたというのに、ベルディアが倒れた場所は淡く光っていた。

 

 なんだあの光は。違う、見たことがある。何度も何度も見た光だ。

 

「出たか!」

 

 思わず叫び、駆け寄って確認する。ソウルに変えて回収すると、その詳細が伝わってくる。

 

 

 首失騎士の大剣

 禍々しい魔力を帯びた両刃の大剣。魔王軍幹部デュラハンの得物。かなりの重量があり、人の身で十分に振るうのは難しいだろう。

 

 

 新しい装備を手に入れた事に喜びを感じずにはいられなかった。 




 とうとう不死人の手にアイテムが渡ってしまった。

 前の世界では手に入れられなかったものだが、この世界では……

 不死人の結末はどうなるのか、火継ぎは行われるのか

 そしてアクアは今度こそ自重するのか


 更新しました。2020/05/17
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