黒き英雄と呪われた神装機竜   作:蛙先輩

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第2話です! それでは!


2話

朝日も昇らない早朝。草原で二人の剣士が、木刀を交える。一人は顎髭を生やした壮年の男で、後者は幼い白髪の少年。  

 壮年の男が、少年が腕を振り上げた僅かな隙を突き、手から木刀を払い落とす。木刀が落ちた拍子に、足元で尻餅をつく。突きつけられた木刀の先端が少年の額を捉えた。

「どうした? ジェイク、早く立て!」

 壮年の男が厳粛な口調で少年を叱咤する。

「立て」

 そう急かされると、少年は男の剣幕に膝を震わせながら小さな両足で立つ。足元に横たわる木刀を掴み、両手で構える。

「うおおお!」

 少年はその小柄な体から戦意を振り絞り、吶喊したーー

 

 小鳥のさえずりが小耳に入り、ジェイク・ラーディスが眠気眼を擦り、開目する。ベットから上半身を起こして、顔を覆う白髪を搔き分ける。窓を開けて、閉め切った部屋に新鮮な朝の空気を流す。

「んー、いい天気だな」

 日光が全身に染み渡り、ジェイクの意識は覚醒する。そして、木製の棚、机や椅子、赤煉瓦の壁。部屋の様子を目視して、改めて自分の置かれた状況を思い出す。

昨晩、王立士官学園理事長 レリィ・アイングラムとの話し合いでジェイクは講師として勤める事が決定した。あの後すぐに、外に待機されていた馬車に乗り、学園に向かう。その道中で怒涛の質問攻めを受ける。装甲機竜の使えるかとか、職務経験、スリーサイズなど色々聞かれたが、装甲機竜を使用できる以外は否定した。そして、黒き英雄の正体と当人を取り巻く状況を説明された時、ジェイクは思わず目を見張る。

 

 ベットから身を出して、洗面台に足を運ぼうとした。部屋の真ん中の机にある黒で塗られた機攻殼剣が目に入り、睥睨する。

「清々しい朝もお前を見た瞬間、幻滅だよ」

それに向けて舌打ちをした後、顔を洗い、歯を磨き終えると、押し入れに用意された教官用の服に着替えて、学園長の下へ向かった。石造りの廊下を窓の外を眺めていると、向かい側から二人の女生徒が歩いてくる。右側が銀髪で華奢な少女と片方は黒髪の無表情の少女だ。すれ違いざまに二人の少女と目が合う。後ろを確認しなかったが先ほどよりそそくさと足音が遠ざかって行く。避けられている事が容易に理解できる。鋭利な目つき、肩まで伸びる白髪、長身痩躯の見知らぬ男。先ほどの反応は想像内の事なのであまり気にも留めていなかった。そんなことを考えているうちに学園長の部屋の前に着く。中指で部屋を軽く叩くと、昨晩、聞いた憎い声が返って来た。

「失礼するぞ」

 扉を開けると、豪勢な書斎や骨董品が並べられた部屋の中、机の上で指を組む学園長レリィ・アイングラムとその側に眼鏡を掛けた凛々しい雰囲気の女性が立っている。

「おはよう。ジェイク教官。よく眠れたかしら?」

「ああ、快眠だったよ。でそちらの嬢ちゃんは?」

「嬢ちゃんとは失礼な! 私の名はライグリィ・バルハートだ!」

レリィのそばにいたライグリィと名乗る女は鼻白み、眼鏡越しからジェイクを睨む。

「今日から貴方には、彼女が担当する教室へ同行してもらうわ」

「構わねえけど、約束忘れてねえよな?」

約束とは昨晩、監禁室で約束した『黒き英雄』と対面させる件だ。

 ジェイクが椅子に腰掛けるレリィを、鋭利な眼光で見下ろす。ライグリィは彼から漂う剣呑な雰囲気に身構える。

「ええ、今から行く教室にいるわ」

 ジェイクの険相に臆する様子もなく、レリィは微笑み返す。

「そうか、さっさと用件を済ませないとな」

「でも、そう簡単に行くかしら?」

 そう言うと、レリィは子供が悪戯を考えているような笑みを浮かべる。

「では案内する」

 ライグリィの背中を追い、学園長室を退出。彼女について行くままに足を運び、学園の敷地内にある練習場に向かう。道中で彼女は何度か、後ろを振り返りジェイクの顔を見るような動作を繰り返したが、本人は気に留めなかった。生徒達はそこで装甲機竜の基本動作や武器の扱い方などの練習を行う。一階に降りて校舎から出ると、芝生が敷き詰められた緑の絨毯が目に飛び込む。多くの若い女性の、活気溢れる話し声が耳に届く。近づくにつれて、喧騒はよりはっきりと鮮明なものとなった。

「はい! 静かに!」

  ライグリィが手を二回叩き、女生徒たちを厳粛な口調で叱咤する。

「数日前の襲撃で負傷されたエド教官に代わり、別の教官が補佐に来てくださった」

 ジェイクは整列する生徒達の前に重々しい足を置く。数分前の雰囲気とは違い、教室内が緊張感と殺伐とした空気に包みこまれる。多くの生徒達は彼の風貌をみて、表情が凍りつく。

「しばらく前任に変わり、対人格闘と装甲機竜の実技担当をすることになった。ジェイク・ラーディスだ。まあ、よろしくな」

 ジェイクが簡潔に自己紹介を終えると、流れるように左の席から生徒達を目視する。その流れはある一点で固まった。尋ね人である『彼』を瞳孔に捉えたまま。

「あいつが……『黒き英雄』……ルクス・アーカディアか」

 数百年に渡って、圧政を敷いてきた悪名高き軍事国家、アーカディア帝国の第七皇子。ルクス・アーカディア。皇族の特徴である銀髪が何より、ジェイクの目を止める要因だった。馬車の中で帝国の皇子が帝国を滅ぼした張本人と耳にした時は思わず、黙念した。

「今回は先週の訓練の続きを行う! 準備はいいな!」

 ライグリィが厳かな声音が張り詰めた空気を清浄する。彼女の呼びかけに生徒は一同に熱の篭った気炎で返す。

 

 

 

ーーーー

 ライグリィの的確な指導を拝見しながらジェイクは彼女の補佐に努める。上手く飛行できない少女に声をかけようとした時、表情が硬直していき、謝罪されて走り去ってしまった。

「ったく、俺の顔ってそんなに怖えのかよ……」

 少女から離れたところで一人で呟き、ライグリィから貸し出された《汎用機竜》ワイバーンの機攻殼剣に目を向ける。

「《汎用機竜》ワイバーンなんて久しぶりに触ったな……」

 生徒達が各地で、数名で固まって練習をおこなっている。ある所は歩行練習、別の場所では飛行練習など、その中でもジェイクの目を引いたのが、ルクスと数人の少女達。他のグループとは違い、戦闘訓練を実践しており、操作技術は軍の機竜使いと遜色ないほどの扱いぶりだ。ジェイクはライグリィから受け取った生徒の名前と特徴が記された一覧表に目を通す。空中で《汎用機竜》ワイバーンを操縦する二人の少女。

一人は蒼と端正な顔立ちの少女、クルルシファー・エインフォルク。その反対側で勝気な笑みを浮かべている金髪の少女はリーズシャルテ・アティスマータ。ルクスは隣にいる桜色の髪と黄金色の瞳が特徴の少女、フィルフィ・アイングラムと二人で陸戦型の《汎用機竜》ワイアームを駆使して、格闘していた。ルクスの使う機竜は飛翔型だが、この学校では

一応、飛翔型の《汎用機竜》ワイバーン・陸戦型の《汎用機竜》ワイアーム。そして、迷彩などの特殊能力を持つ特装型の《汎用機竜》ドレイク、どれも一定に扱えるようにカリキュラムが組まれている。するとルクスとフィルフィが装甲を解く。一時休憩のようだ。それを待っていたと言わんばかりにジェイクがすかさず、ルクスの元に駆け寄ろうとした時、突如、叫び声が聞こえる。数人の少女が狼狽えながら青空を見上げる。

 ワイバーンを操縦していた先ほどの少女が空から真っ逆さまに落下しているのだ。視界の横から異変察したであろうリーズシャルテとクルルシファーが少女の元に滑空して向かっているが、距離が遠く、間に合わない。徐々に悲鳴が大きく聞こえてくる。

「クソッ!」

 ジェイクは機攻殼剣を起動させて、一瞬にしてワイバーンをその身に纏い飛翔した。落下するワイバーンを引き止めて、操縦者の様子を伺う。少女は目に涙を浮かべてジェイクに感謝を述べる。ジェイクは軽く、頷くと今にも瓦解しそうな彼女の装甲を解く。その身を抱えてゆっくりと少女を地上に下ろす。自身の装甲を解いたと同時に他の生徒達とライグリィが縦に腕を降って、駆け寄る。

「なんとか無事だ」

 ジェイクの抑揚のない声から放たれた事実に、あたりから安堵の表情で溢れかえる。少女は目を腫らして、芝生に座り込む。

「私、みんなとは違って上手にできなくて……それが悔しくて」

 少女が一人、芝生に顔を向けて肩を震わせながら、吐露する。彼女の本音を聞いたジェイクが長い足を曲げて、彼女の目線と同じ高さに顔を持っていく。

「他の奴らに劣等感を抱くのはわかる。悔しいもんな。人にできる事がなんで自分にはできないんだって思っちまうんだよな。誰かと一緒にいたら自分の自信が埋没しちまいそうで怖えんだよな。でもな、お前にはこうして心配してくれるだけの人間がいるんだ。だから、その無理すんな」

 ジェイクは激励を送り、彼女の頭を優しく撫でる。ジェイクは立ち上がると辺りの様子に違和感を覚える。先ほどまで自分の顔を見た後、凍り付いていた生徒達の少女がどこか忙しないのだ。

「やっぱり、お兄ちゃんだ……」

どこからそんな声がジェイクの耳に届き、振り向くと頬を赤らめたライグリィがポツンと佇んでいる。隣の生徒に声をかけられて、ライグリィの意識が覚醒する。咳払いをして一限の終了を宣言する。

 ジェイクは早速、校舎に戻ろうと、緑の絨毯を一人歩くルクス・アーカディアの背中を追いかけようとしたら、遮られてしまった。無数の少女達によって。その目は先ほどまで自分に向けていた怯えの目ではなく、好意的な目を向ける。

「ジェイク教官! すごくかっこよかったです! 是非、私に装甲機竜の扱い方を教えてください! よろしけば二人で……」

「何言ってるのよ! 教官は最初から私が目つけてたのよ!」

「それなら私だって!」

「私、年上のおじさまって憧れていたんです!」

 黄色い声と口論する声が飛び交い、うまく動けずに尋ね人のルクスに目を向けると、ルクスも蒼髪と金髪の少女に両腕を引きちぎれんばかりに引っ張られていた。そのそばでフィルフィが菓子を頬に詰めながら、その光景を見ていた。彼に近寄ろうにも彼女達の存在がジェイクの計画の遂行を阻むことを本人は静かに悟る。

 

「どうなるんだよ。これから」

 ジェイクのため息混じりの重々しい一言は少女達の歓声によって打ち消された。




閲覧ありがとうございます!
原作キャラの台詞シーンなかったですね。 すみません!
感想・評価よければよろしくお願いします!!!! では!
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