彼女たちの日常(短編集)   作:_Aster_

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愛ゆえです。
喜怒哀楽がしっかりしてるあやせちゃんは書いていて楽しいですし何より可愛いですよね。
ネタバレはタイトルでパッドが暴露された以外はございません。


パッドを落としました(あやせ)

「……うそでしょ」

 

 焦る。いつ、どこで? そもそもなぜ気づかなかったのか。疲れていたのは確かだが……

 

(これはまずい。まずいまずいまずいまずい非常に、まずい……このままだとここから出られない……)

 

 私は放課後の学生会室の中で一人、焦りに焦っていた。というのも、パッドがない。1組はある。これは背中の方までつけるタイプだから落ちようがない。だが、もう1組がない。

 

(落としたとしたら、更衣室……? いや、それしかないでしょ……朝からつけてなかったなんてことはないだろうし……)

 

 何度も何度も頭の中で今日一日の自分の行動を繰り返す。一日問題はなかった。とするとさっきのプールでの授業で間違いないだろう。

 

(……一つだけ、あてはある……けども……)

 

 そう、この学院でただ一人だけの私の秘密を知っている人。その人に頼んで探して貰えばいい。

 

(でもそれは……なんか、負けた気がするというか、それをしてしまったら女としておしまいというか……)

 

 私自身の変なプライドが邪魔をしていた。こうなっては、自力でなんとか更衣室までたどり着くしかない。私がそう決意をした時。

 

「あのー、あやせ先輩居ますか?」

「ッッ!?」

 

 扉のノック音と共に声が聞こえてくる。油断していたこともあって、声にならない悲鳴をあげてしまった。

 

「ち、千咲さん! どうかしましたか!?」

「あやせ先輩! 学生会室にいたんですね」

 

 声と共にガチャッと音を鳴らしてドアノブが回る。

 

「ま、まま待ってください! ストップ! 開けちゃダメです!」

「えっ? ご、ごめんなさい……」

 

 咄嗟に叫んだが、どうにか扉は開けられずに済んだようだ。

 

「ちょっと中でミスするとまずい書類を書いてまして……ごめんなさい」

「あっ、いえいえ。急に開けようとした私が悪いですから……あやせ先輩、少しだけ話しかけるのは大丈夫ですか?」

「はい、もちろんです」

 

(気を遣わせてしまってごめんなさい……千咲さん)

 

「七海ちゃんが寮のほうでお菓子を作るらしくって、もしよかったらあやせ先輩も一緒にどうかなぁと思いまして」

「あ、あー……」

 

 そうしたい気持ちは山々だったが、状況が状況だった。

 

「ごめんなさい。こっちに時間がかかりそうなので、残念ですが、私は行けそうにないです」

「そうですか……わかりました! 頑張ってくださいね、あやせ先輩!」

「うぐっ……はい、ありがとうございます……」

 

 純粋な応援の気持ちが胸に突き刺さる。騙したいわけじゃないのに……

 やがて、千咲さんが学生会室から離れ歩いていく音が聞こえた。

 

(でも、これで少なくとも千咲さんに七海さんは寮の方にいることになる。恐らくだけど、いつものみんなも……)

 

 校舎内に人はなるべくいない方がいい。なにせ、誰にも今の姿は見られてはいけないのだから。

 

「よしっ」

 

 私は小さく決意すると、更衣室へ向けてゆっくりと周りを確認しながら学生会室を出た。

 

 

 

「はぁ……よし、もうちょっと……」

 

 私は、なんだかんだでもう少し、というところまで来ていた。元々放課後でほとんど人がいなかったのと、制服自体は着ているわけで、髪で隠せばなんとかなった。

……まさか長い髪で良かったとこんな瞬間に思うとは。なんだか腑に落ちなかった。

 

(それもこれも全部変なこと言い出したやつのせいじゃない……! あぁー思い出したらムカムカしてきた! 最初に言いだしたやつは絶対ぶっ殺す……)

 

 そんな怒りと、だんだんと油断してきていたのが悪かったのか、角を曲がった瞬間、人影とぶつかってしまった。

 

「きゃっ!」

「っ!? い、てて……」

「ご、ごめんなさい……」

「いや、俺も前を見てなくて、悪かっ……た……三司、さん? その胸は……」

「ッッ!」

 

 すっかり油断していた。ぶつかって、怪我をしなかったのは良かったが、胸をガードしていなかった。

 

「ちちちちち違うんです! これはその! そう! サラシを巻いて撮る撮影がーー」

「落ち着け! 俺だ!在原暁だ!」

「だからほんとにちがくてーーって、在原、君……?」

 

 ぶつかったのは、在原君だった。

 

「あぁ、良く……はないけど、最悪の事態はセーフ……」

「何を言っているかわからないが……その、どうして胸が小さいんだ?」

「……イラッ」

「まさかあの三司さんが盛り忘れるなんてことはないと思うが……まさかパッドを落としたのか!?」

「……ブチン」

「俺でよければ、三司さんのパッドを探すのを手伝うぞ?」

「ッ! パッドを盛り忘れた! 胸が小さな私が! 歩いてて悪い!? 貧乳に人権はないとでも言いたいの!?」

「待て! 落ち着けって! そんなに大きな声を出したら他の人にバレるぞ!?」

「ぐっ……ぐぬ〜〜〜〜!」

 

 その後、無事かどうかは置いておいて、在原君に事情を説明し、回収はできた。

 

 

 

「暁君、今週末って何か予定あるー?」

「あぁ、悪い七海。ちょっと予定がな」

「……珍しい。何かするの?」

「俺の奢りでご飯に行くだけだ」

「……本当に珍しいね。頭でも打った?」

「……軽く頭を打ったくらいで許して貰えると嬉しいかな」

「えー……」

 

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