彼女たちの日常(短編集)   作:_Aster_

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(久しぶりに)ワンライで三司あやせちゃんの小説を書きました。
キャラブレが激しいかもしれないので怖いです。
再履修してきます。

若干のネタバレがありますので注意です。


広報活動

「うー……」

「……」

「んー……」

「……」

 

 少し前から、ずっとこの調子だ。

 うんうん唸ってはスマホと向き合っている。

 

「あー……どうかしたのか?」

「うーん……どうかした、ってほどじゃないんだけど……」

 

 あやせのスマホを覗き込んでみる。

 画面には、いくつかのメールが映っていた。

 

「最近、取材の服装指定がおかしい感じがして」

「と、いうと?」

 

 このままでは二人きりでゆったり過ごす予定の休日が唸って終わりになってしまう。

 俺はあやせの話を聞いてみることにした。

 

「なんか、衣装を着て写真を撮る、っていうのは前からあったんだけど」

「広報服だったり、水着の写真も撮ってたよな」

「そうそう。最近はコスプレみたいなのもあるのよねぇ……」

「例えば?」

「……メイド服? みたいなの、とか」

 

 思わずあやせのメイド服姿を想像してみる。

 ……良いな。

 

「ーー良いな、とか思ってない?」

「あー……少し」

 

 否定するのも違う気がして、そう返事をした。

 

「こっちは大変なんだからね!?」

「……悪い。だが、そういう依頼は一回学院を通してからあやせに来るんじゃないのか?」

「……そう、なんだけど」

 

 なんとか話は逸らせたようで安心した。

 若干納得していないようではあったが。

 

「取材に慣れてきて感覚も鈍ってるのか、最近は特に気にしないで私も着ちゃってて」

「なるほど」

 

 言われてみれば、広報服も割と目立つデザインだ。

 あれを毎日着ていたら、そこらへんの感覚もやっぱり鈍るのだろうか。

 

「それは、何か気づくキッカケでもあったのか?」

「…………ねが」

「ねが?」

「……胸が、その……」

「……あー」

「あーってなによ!?」

 

 服を着替えるときには、当然パッドも気にすることになる。

 それがキッカケで気づいたのか……

 

「なんか、悲しいな」

「ッ! 悲しいなってなによ! 私の胸がそんなに悲しいか!乳が無けりゃ悲しいのか!! あぁ!?」

「いやっ! 待て、落ち着け! そういう意味じゃない!」

 

 あやせに火をつけてしまった。

 なんとか落ち着かせようと、肩を掴んで訴えてみる。

 

「っ、とにかく! 服によっては色んなタイプがあるの! だから、それで」

 

 ……色んなタイプがあるのか。

 そこらへんの事情は知らなかったが、相変わらず苦労してるんだな……

 そして、さすが詳しい。

 

「……なんか、凄く失礼なことを思われてる気がするんだけど」

「そんなことはない」

 

 口にしなくて本当に良かった。

 

「はぁ……今回のは、断ろ。最近取材自体も多かったし」

「それがいい」

 

 今日二人でいられるのも、あやせの取材が久しぶりに無かったからだ。

 先週も、その前の週も休日は取材の予定で二人きりでゆっくりとはいかなかった。

 

「ここのところは随分取材が多かったからな」

「今、学院の特集に力を入れてるらしくて。自然と私の方も多くなるのよねぇ……文章考えるのももう限界。お姉ちゃんに代わってもらおうかな?」

「それは……無理だろ」

 

 琴里さんのことを思い起こす。

 確かに美人ではあるが……あの人は、またあやせとも違ったタイプだろう。

 勝手なイメージだが、文章を考えるのが得意、というタイプでもなさそうだ。

 

「学院側にも伝えてみたらどうだ?」

「うーん……そうしてみよう、かな」

 

 正直広報活動もやめてしまえばいい、と思ったこともないわけではないが、あやせは『アストラル使いの為になるなら、もう少し続けてみたい』と言っていた。

 それなら、俺にできるのはせめてそれを応援することだろう。

 

「とりあえず、今日はゆっくりしよ。ありがとね」

「俺は何もしてない」

「……いつも、助けてくれてる」

 

 あやせが体を預けてくる。

 こういう親密な関係になれたのも、考えてみればあやせが広報活動をしてくれていたおかげかもしれない。

 そう考えると、二人きりになれなかった悔しい気持ちも少しは紛れるようだった。

 

「暁は、私と二人で嬉しい?」

「あぁ」

「……即答」


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