彼女たちの日常(短編集)   作:_Aster_

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一日で思いついて一日で書いたノリと勢いの作品です。
タイトルのパワーがすごい。

どの√でもないので未プレイの方でもネタバレはないかと!


媚薬スプリンクラー羽月

「ん……よく寝た……」

 

 目を開け、時計を見る。大方いつも起きる通りの時間だ。

 俺は体を起こそうとする。

 

(……んん?いつもより体が重い……?)

 昨日は仕事もなかったし、夜更かししたということもない。

(それに、体も熱いな……)

 風邪気味なのだろうか。少し体調を整える意味も込めて、能力を使ってみた。

 なるべく、いつも通り、体が落ち着くようにーー

 すると、さっきまでの気怠さと熱さが嘘だったかのように体がスッとした。

 俺は、いつも通りランニングに行くことにした。

 

 

 

 ランニングを済ませ、寮へと向かう。ただ一つを除いて、不調や変わったことはなかった。だが、そのただ一つがとても気にかかっていた。

(二条院さんがランニングをしていないなんて……珍しいな)

 俺は、そんなこともたまにはあるか、と自分を納得させながら寮へと入った。

 

「七海。おはよう」

「あっ……お兄ちゃん。おは、よう」

 

 ロビーには、七海がいた。

 その様子はいつも通りーーではなさそうだ。

(息が、荒い?それに目もなんかトロンとしてるような……)

 

「おにぃ、ちゃん?」

 

 七海が消え入りそうな甘え声で近寄ってくる。これはまさかーー

 俺は、七海の両肩をガシッと掴む。

 

「ひあぁっ!?お兄ちゃん……?」

「七海。たぶん……風邪だ。部屋でゆっくり休め」

 

 俺は七海の肩を持ったままその体をくるりと回し、上に行くように言った。

 幸い今日は土曜日だ。一日ゆっくりしていれば少しは症状が軽くなるだろう。

 

「わ、かったからぁ……手、痛いよ……」

「す、すまん」

 

 俺はほんの少しだけ、七海のその言い方が扇情的だと感じてしまった。

(義理とはいえ妹だぞ!?一瞬でもそんなことを感じるなんて……)

 

「それじゃあ七海。俺も部屋に戻ってるからな」

「あっ……」

 

 勝手に気まずくなった俺は、七海から逃げるように自分の部屋へ向かうのだった。

 

 

 

「ふぅ……気が緩んでるのかもな」

 

 部屋へと向かう通路で、俺は息を吐きながら歩いていた。

 

「在原君!」

「ん……?」

 

 後ろの方で声が聞こえた。少し離れたところにいたのは、三司さんだった。

 

「ちょっと、手伝って欲しいことがあるんだけどいい……?」

「うん?あぁ、構わないがーーッ!?」

 

 構わないと言った直後、強く引っ張られる。三司さんはそのままどこかへずんずん歩き出した。

 

「あー……三司さん?」

「ふーっ……ふーっ……」

 

 荒い息のままフロアを上がり、向かっている先はーー

(三司さんの部屋だな、あれ!?)

 

「一体どうしたんだ三司さん!?落ち着け!」

「どうもこうもないわよ!朝からなんか身体が熱くって……なんかもうウズウズしちゃって……とにかく!解消するのを手伝って!」

「何言ってんだ!?」

 

 何かがおかしい。明らかにいつも通りの三司さんではない。

(七海といい、みんなどうした!?)

 俺が能力を使ってでも無理やり止めようかと思っていたその時。

 

「ストーップ!」

「「なっ!?」」

 

 突如廊下に響く叫び声。三司さんは驚いた拍子に俺の腕を離した。その隙を見逃さず引いた俺の腕はーーまた別の腕に掴まれた。

 

「ふっふっふっ……暁君は貰ったよ!三司さん!」

「式部先輩!?ちょっ……」

 

 咄嗟に動こうとした三司さんだが、その体は固まっている。

(茉優先輩の能力か……!)

 俺はそのまま、茉優先輩に引っ張られていった。

もちろん、何か言おうとしたのだが、能力でしっかり口元は塞がれていた。

 

 

 

「ぷはっ……はぁ、はぁ……」

 

 茉優先輩の部屋につき、能力が解除される。鼻で呼吸はできたが、なかなかに苦しかった。

 

「助けられたな、茉優先輩……でも、ここまで逃げなくてもよかったんじゃないか?」

「ふふふ……」

 

 不敵な笑みを浮かべながらドアに鍵をかける茉優先輩。

(まさか……)

 

「さーとーるーくん」

「ストップ、ストップ」

 

 ストップと声をかけるが、一歩ずつ確実に近寄ってくる茉優先輩。

 そして充分に距離が縮まったところでーー

 

「わっ!」

「っ!」

 

 飛びついてきた茉優先輩。俺は咄嗟に能力を使って体を捻らせ、茉優先輩の後ろ側まで抜けた。そしてそのままドアの鍵に手をかけーー

 

「開か、ないっ!?能力か!」

「なぁんで逃げるの暁くぅん……」

「茉優先輩が明らかにおかしいからだ……!」

「えぇ?おかしくないよぉ」

 

 微睡みつつもこっちを鋭く見てくる視線、わきわきとしている手。どこをどう見ても普通ではない。

 

「逃げ場はないぞぉ……」

「すまん!茉優先輩!」

 

 俺はまたも能力を使用。茉優先輩に逆に近づいていく。

 

「暁君から来てくれるのーーきゃっ!?」

 

 茉優先輩を抱え上げ、そのままドアの方まで走る。

 流石にアストラル固定技術までは使っていないだろう。つまりは、少し動揺させて能力を解除させればいいのだ。

 俺は抱え上げた茉優先輩を素早く、それでいて怪我はしないよう床に置く。

 くだらない行動だが、動揺させる効果はあったらしい。鍵が回り、そのまま廊下へと勢いよく出る。

 

「あっ……!」

「……ッ!」

 

 俺が部屋から出たことに気づいた茉優先輩。また能力で逃げ場を塞がれないよう、俺は全力で廊下を駆け抜けていった。

 

 

 

「ここまで、逃げれば……」

 

 俺は寮から逃げ出し、中庭の方まで来ていた。

 

「うん?在原君?」

「ッ!?」

 

 異常事態続きで気を張っていた俺は、突然後ろからかけられたその声に飛び退いた。

 

「どうしたんだ、そんなにびっくりして」

「あぁ、二条院さん……」

 

 俺の様子にびっくりして質問してくる二条院さん。様子からして二条院さんは異常がないようだった。

 

「二条院さん、その……なんともないか?」

「なんとも……?どうしたんだ一体」

「良かった……」

 

 俺は思わず大きく息を吐いた。正常な人が自分以外に見つかった。それだけで俺は安堵していた。

 

「いや実はなーー」

「みんな媚薬で発情したみたいになっていた、か?」

「んなっ!?」

 

 二条院さんの言葉が聞こえると同時に、視界がいきなり歪む。

(これは……水!?)

 

「ふふ……在原君、ちゃんと能力に気をつけないと危ないぞ?今君の顔は媚薬入りの水で包まれている。飲んでしまったら……どうなるかわかるな?」

「がっ!?…………んん!?」

 

 そう言われ咄嗟に息を止めるが、いつまでもそんなことができるわけじゃない。俺は水を飲んだ。

 そしてそのタイミングで顔の周りの水は取り払われる。

 

「ぶはっ、はぁっ!げほっ、げほ……」

「その薬は特別でな、すぐに効果が出る……在原君にだけ効いていなかったのは誤算だったが、流石に直接これだけ濃い濃度を飲ませれば無駄だろう……?」

「二条院、さん。みんなにも、こんなことをしたのか……?」

「私が水を操れるのは当然知っているだろう?この媚薬入りの水を、ミスト状にして寮に撒いておいた」

「なんてことを……」

「さぁ、話は終わりだ。そろそろ薬も回ってきただろう……?」

 

 二条院さんの言う通り、身体が熱い。疼いているのが自分でもわかる。二条院さんは、容易に俺を組み伏せ、馬乗りの姿勢になる。

 

「さぁ、在原君。私に全て任せるんだーー」

 

 二条院さんの手が伸びてくる。こんなことはやめるんだ!そんな言葉も、飲み込んでしまう。俺は、目を閉じたーー

 

 

 

 目を開けるとそこはーー俺の部屋だった。

 

「部屋……みんなはっ!?」

 

 俺は、ベッドから飛び起きると廊下を駆け抜ける。だが、廊下にもロビーにも誰の姿もない。それもそのはず、まだ朝はかなり早い。いつもランニングに出る時間だったからだ。

 だが、焦っていた俺はそんなことにも気付かず、なんとなくで中庭の方まで歩いてきていた。

 そこには、二条院さんがいた。

 

「あぁ、在原君。おはよう。今日はいつもより遅かったな?それに……パジャマのままじゃないか。どうしたんだ?」

 

 キョトンとした顔でそんな質問をしてくる二条院さん。これはまさかーー

 

「二条院さん」

「どうした?」

「媚薬って知ってるか?」

「びびびびび媚薬!?そんな、朝から、破廉恥な!在原君!そういうことは夜になってからだな!いや、夜でもダメだ!」

 

 どうやら夢だったらしい。いつも通りの二条院さんをみて安心した。

 

「二条院さん。散布なんてしちゃダメだぞ。それじゃあ俺は着替えてくる」

 

 安心した俺は、自分の部屋へと戻り、着替えることにした。

 

 

 

 在原君が去っていく。媚薬?散布?言っていることがわからない。破廉恥なことでは……ないのか?いやでも媚薬ってーー

 

「一体、なんなんだーっ!?」

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