彼女たちの日常(短編集)   作:_Aster_

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ホワイトデーの時に書いた季節物です。

一応ゆるーくあやせ’sバレンタインと繋がってますので、
あやせ√になっております。

一日で書き上げたものなのでクオリティがどうでしょう…


暁’s ホワイトデー

「よし、これでいい」

 

 俺は、自分の部屋でいくつかの荷物と向き合っていた。

 今日は3月14日、ホワイトデー。幸い学校も仕事も特に予定なく休みだ。

 ありがたいことにバレンタインには色々とお菓子をもらった。この数週間、お返しはしないとと思いつつもこういうことに不慣れな俺は、恭平や親父にも相談しながら色々と品定めをしていたのだった。

(まずは二条院さんのところに行こう)

 俺は荷物を持つと、二条院さんの部屋へと向かった。

 

 

 

 ドアをノックする。

 

「二条院さん、俺だ。少し渡したいものがあるんだがいいか?」

「む、在原君?大丈夫だ、開いているぞ」

 

 許可も得られたのでドアを開ける。中にはDVDを見ている二条院さんがいた。

 

「またこれを見てたのか……」

「む、違うぞ!これは最近出たばかりのブルーレイ版でなーー」

「あー悪い、これ!」

 

 長くなりそうだった話を無理やり遮り、持ってきた荷物を二条院さんの前へ差し出す。

 

「これは……?」

「バレンタインのクッキーのお返しだ。とても美味しかった。ありがとうな、二条院さん」

「そういえば今日はーーホワイトデーか。すっかり忘れていた。こういうところが疎くて本当にダメだな……ありがとう、在原君」

 

 ニコニコとしながら受け取ってくれる二条院さん。こういう顔をしてくれると本当にお返しをしてよかったという気になる。

 

「重ね重ね失礼かもしれないが、今開けても?」

「あぁもちろん」

 

 そうは言いつつもドキドキする。相手のことを考えて選んだつもりだが、お気に召すだろうか。

 

「これは……ブローチ?」

 

 俺が渡したのは小さな箱に入ったブローチだった。もちろん、あやせと付き合っている俺が他の女の人にこんなものを渡すのはどうかと思いもした。だが、ちゃんと理由があった。

 

「しかもこれ、チヌ之介のじゃないか!?」

「あぁ。俺も探して見てびっくりした。こういうのもあるんだな」

 

 まさに二条院さんにピッタリ。値も張りすぎるということもないのでこれを選んだのだった。

 

「一応お礼には……なったか?」

「あぁ!もちろんだ!ありがとう在原君!」

 

 目がキラキラとしている二条院さん。どうやら初っ端は上手くいったようだった。

 

 

 

「さて、こっちにはいるかな……」

 

 俺が立っていたのは茉優先輩の研究室の前。部屋も訪ねたのだが、あいにく留守だった。

(休みの日までこっちにいるとしたら、ずいぶん忙しいんだな……)

 俺はそんなことを考えながらドアをノックした。

 

「茉優先輩、いるか?俺だ」

「あっ、暁君?今開けるねー」

 

 カチャッ、という音とともにロックが解除される。中の茉優先輩は、パソコンに向き合っていた。

 

「悪い、邪魔したか?」

「ううん!ちょっと気になることがあってさ。アタシの趣味のレベルだから気にしないで」

 

 茉優先輩はそういうと、俺の方に向き直った。

 

「それで、どうしたの?アタシの研究室まで来るなんて珍しいね?」

「これを渡したくてな」

 

 俺は、数本の花がまとまった小さな花束を渡した。

 

「花束……?」

「今日はホワイトデーだから、お返しだ」

「あ、あーそういえば……別に、良かったのに……」

 

 そうは言いつつもニコニコとしている茉優先輩。喜んではくれているようだ。

 

「それにしても、わざわざ花束だなんて昔から変わらず不器用で、可愛いねぇ」

「なっ!?昔の話は、無しと言っただろ……!」

「あはは、ごめんごめん」

「……俺はもう行くからな」

 

 俺は、変わらずニコニコする茉優先輩を背に研究室を後にした。

 

 

 

「ありがとね暁君♪でもこれ……花言葉とか、知ってるのかな?」

 

 アタシの目の前にある綺麗な花達。自分で選んだのか、選んでもらったのか……

 

「感謝を伝える、かぁ……ふふ」

 

 自然と微笑んでしまうのだった。

 

 

 

「壬生さん、よかった」

「在原先輩?よかったって、どうしたんですか?」

「いや、なんでもないんだ」

 

 正直なところ、一番行動が読めず会えるか不安だった壬生さんと、廊下で偶然会えた俺はそんなことを口にしていた。

 

「そうですか……ところで、何か用事ですか?……あっ、もしかして」

 

 そこはさすがに察しがいい壬生さん。どうやら勘付いたらしい。

 

「たぶん予想通りだとは思うんだが、これ。ホワイトデーだからお返しだ」

「わーっ!ありがとうございます、先輩!お菓子、ですか?」

「あぁ。悩んだんだが思いつかなくてな……結局普通にお菓子になってしまった」

「こういうのは気持ちが大事なんですよ!それに、気持ちだけじゃなくちゃんと悩んでくれて、こうしてお返しも頂いてるわけですしね」

 

 心からそう思ってくれているのだろう、そう伝わるような言い方だった。

 ファッション雑貨を渡しても元々センスがない俺だ、壬生さんに嫌な顔をされてしまうかもしれない、と不安になりながら選んだ無難なお菓子だったが、その不安もかき消えていた。

……相変わらずすごいな壬生さんは……

 

「そう喜んでくれるとお返しをした甲斐があった。」

「にひひ。改めて、ありがとうございまーす!そうだ、先輩!七海ちゃんならさっきまで話してたので、部屋にいると思いますよ?」

「……よくわかったな」

 

 俺が後ろ手にもっている荷物を見て察したのか、七海のいる場所まで教えてもらった。

……ここまでくると逆に恐ろしい。

 

「ありがとう。じゃあ俺は七海のところに行ってくる」

「はい!」

 

 元気ハツラツな壬生さんに教えてもらった通り、俺はそのまま七海の部屋に向かうことにした。

 

 

 

「七海、入って大丈夫か?」

「暁君?大丈夫だよ」

 

 七海の返答を待って部屋へ入る。七海は携帯端末を操作していた。

 

「なにか仕事か?」

「ううん、ちょっとした情報収集。心配することはないよ」

 

 自然と仕事の話になる俺たち。いかんいかん、今日はそういう話をしにきたんじゃない。

 

「七海。いつもありがとうな」

「……急に、何?気持ち悪いんだけど……」

 

 これも違う。七海に思いっきり不審がられてしまった。

 だが、感謝しているのに気持ち悪いは言い過ぎじゃないか?

 

「まぁいい。これを渡しに来たんだ」

「何がまぁいいのかわかんないけど……何これ、お菓子とーーハンカチ?しかもわたしが好きなキャラ」

 

 悪くはない選択だったと思うが……なぜか七海がこっちをジッと見る。

 

「お兄ちゃん……これ、お兄ちゃんが選んだんじゃないでしょ」

「うっ、どうしてそう思う!?」

「このお菓子、好きだけどお兄ちゃんに言ったことない。こっちのキャラの話だって」

「……その通りだ」

 

 実はこれ、親父から聞いて選んだものだ。今回真剣にお返しに悩んでどれだけ七海のことを知らないか思い知った。というか親父にも同じことを言われた。

 

「お兄ちゃんはそんなに気を使える人じゃないんだからいいのに……」

「……すまん」

 

 なんだかなにもかもお見通しにされて面目が立たなかった俺は思わず謝った。

 

「謝らなくていいよ。その、ありがとう。恥ずかしくてちょっと意地悪言ったけど、真剣に悩んだり、聞いたりしてくれてプレゼントしてくれたのは……嬉しいから」

 

 少し照れながらそういう七海。普段からこれくらい素直だったらいいんだが……

 

「なら良かった。これでとりあえず、安心だな」

「……?とりあえず安心、ってみんなにも渡したの?」

「あぁ、一通りはな」

「ふーん……これから本番、ってことね」

「いや、そんな気はないんだが……」

 

 ジーッとこっちを見る七海。この見通されてる視線は本当に苦手だ……

 

「まぁ、これから行くのは事実だ」

「そっか。でもいいの?もうすぐお昼だよ?」

「っ!まずい、昼前にはいかないとだ」

「早く行ってあげなよ。あやせ先輩、怒っちゃうよ?」

「悪いな七海。それじゃあ」

 

 俺は七海にそう言い残すと、少しかけ気味に廊下を歩いて行った。

 

 

 

「もう、ほんと慌ただしいんだから……」

 

 お兄ちゃんからもらったお返し。毎年ちゃんとくれるけど、ここまで悩んでたみたいなのは初めてかも。無難なお菓子とかも多かったし……

 

「えへへ……ありがとう、お兄ちゃん」

 

 

 

「まずい遅くなった……」

 

 本当はもう少し余裕を持って来るはずだった。だがこのくらいの時間ならまだこの後の予定に狂いはでないと思うが……

 

「あやせ、俺だ」

「はーい。入っていいわよ」

 

 ドアをノックし、あやせの返答で部屋に入る。

 

「お邪魔します」

「予定はもう終わったの?」

「あぁ」

 

 元々今日はデートをしようと俺があやせに言っていた。午前中は少し用事があるので遅れる、とも。

 今日のスケジュールは全部俺が立てることになっている。

 

「まずは、これ。バレンタインのお返しだ」

「ネックレス?……ッ!」

「今日はこれをつけて付き合ってほしい」

 

 俺が渡したのは、猫を形取ったチャームがついたネックレスだった。

 

「かわいい……ありがとう、暁」

 

 嬉しそうにネックレスを見るあやせ。まず最初は成功だ。

 

「とりあえず、行こうか」

「ちょっと待って。これ……暁がつけて?」

「あ……そうだな、悪い」

 

 部屋の外へ行こうとした俺をあやせが引き止める。

(焦るな……焦るな……今日はまだまだ長いぞ俺)

 自分が用意したサプライズを頭の中でもう一度思い出す。

(よし、大丈夫……)

 自分にそう言い聞かせながら、あやせの後ろに周りネックレスをつける。

 今度は、あやせと手を繋いで歩き出す。

 シミュレーションはバッチリだ。隣にいる彼女の笑顔のためなら、頑張れる。

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