彼女たちの日常(短編集)   作:_Aster_

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タイトル通りです。相変わらずのセンスのなさ。そして一時間半くらいかかってます。ワンライとは。
地味にネタバレがありますので本編あやせ√アフター後想定です


あやせとラーメンを食べに行くお話

 枕元のスマートフォンが震える。

 俺は夕食を軽く取り風呂に入り定期連絡も終え、自室でゆっくりと休んでいた。

 

(誰からだ……? 七海か? )

 

 ゆっくりと落ち着いた動作で画面を見る。メールが来ていることを示すバイブだったようだ。

 

(未だに細かい使い方はわからないな……)

 

 七海に教わろうと思いつつも中々機会がなく使いこなせていないスマホだが、その中でも少ない使えるアプリであるメールを開く。

 

(……あやせからだ)

 

 少し心が弾む。相変わらず自分のことながら単純だな。

 

「…………なんだそれ」

 

 メール読み進め俺はそう呟くと、窓を開け、あやせの部屋の方へ向かうことにした。

 壁を伝って一気にあやせの部屋まで登る。

(あんまり寒くないな。もうそんな時期か……)

 

 そんなことを考えながら、あやせの部屋の窓をコンコンと叩く。待ってましたとばかりに窓はすぐに開かれた。

 

「どうしたんだ急に」

「だってテレビで見ちゃって……取材も遅くなりそうだからって夕食も早めに少ししか食べてないし……」

 

 あやせから受け取ったメールは、端的に言えば『今からラーメンを食べに行きたいので部屋まで来て』だった。

 

「それにしたって今日じゃなくたって……」

「いーや今日! この夜中に行くのが良いのよ! なんていうかこう食べちゃいけない時間に食べる背徳感というか……」

「……いやそもそも門限を過ぎてるんだが」

 

 どうやら変なスイッチが入ってしまっているようだ。テレビのせいだろうか。それとも何か動画でも見たのか。

 

「それでもどうしても今食べたいの! …………だめ?」

「うぐっ……」

 

 あやせがしょんぼりとして言ってくる。確かに俺の能力を使えば不可能ではないはずだが……やめた方がいいのは確かだ。

 

「たまには恋人としてそういうワクワクすることもしてみたかったんだけどな……」

「ぐっ!?」

 

 正直俺でもわかった。明らかに猫を被っている。俺が断れないと思ってやっているのだろうか。

(流石にリスクを考えたら……ルートをしっかりすればできないことも……いや、でも……断れ、在原暁……)

 

「ねぇ……さとる?」

「……わかった」

「やった!」

 

 途端にニコッとするあやせ。

(言ってしまった……)

 だがその笑顔を見てまぁ良いかと思ったのも事実だった。

 

 

 

「……じゃあ、行くからな? 」

「うん」

 

 少しワクワクとして返事をするあやせ。本当にどうしたのだろうか。

 

(一連の事件が解決して、琴里さんの件も解決したから安心してのこう、なの……か? )

 

 俺は楽しそうな彼女を両手で抱え、能力を解放。トンっ、トンっと寮を壁伝いに降りていく。

 地上に降りると、素早く建物の影へと行く。監視カメラの位置は何度も通ったのでわかっている。とはいえ警備員を合わせたら回避が難しいポイントもあるのだが……

 

(……? 警備が、手薄? )

 

 いつもより、警備員を見かけない。というかほとんどいない。しかも点検中で幕がかかっている監視カメラさえある。

 俺は頭に疑問を抱えながら、門を飛び越え学院の敷地の外へ出る。

 

「……ふぅ。とりあえず、これで外だな」

「ありがとう、暁」

 

 あやせを地面に降ろす。

 

「実はね? 今日だけはってお父さんに言ってあるの」

「っ!?」

 

 あやせが言った言葉は俺にとっては衝撃的な言葉だった。

 

「つまり……俺たちが外に出てることはもうバレてるのか!? 」

「そういうこと。ダメ元で言ってみたら『今まで散々頑張ってきたんだ、今日くらいはいいだろう』って」

「そうなのか……」

 

 だからあやせもあそこまで今日は強情だったのか……理事長のほうも理事長なりの恩返しなのだろうか。

 

(いやでも警備が手薄ってそれはそれでーー)

 

「ほら暁。それは一旦いいから行かないと遅くなりすぎちゃう」

「あ、あぁ……」

 

 なんだか今日は振り回される日だ。そう思いながら俺はあやせと一緒に夜の鷲巣研究都市へと繰り出した。

 

 

 

「ここだ! 」

 

 あやせが指を指したのは、いたって普通に見えるラーメン屋だった。

 

「じゃあ、入るか」

「うん」

 

 しっかりと事前に調べていたのか、あやせはスマホを弄りながら俺を案内してくれた。正直街の歩き方を知らない俺としては助かった。

 

「いらっしゃいませ! 2名様ですか? 」

「はい」

「かしこまりました。2名様ご案内でーす! こちらの席どうぞー」

 

 店員に促されるまま二人用の小さなテーブル席に腰をかける。並んでいるわけではないが少し広めの店内はそれなりに席が埋まっている。中々人気のお店のようだ。

 

「どれにしよっかな……」

 

 あやせはメニューを開いて食べるものを選んでいる。なんだか楽しそうだ。それだけでも連れてきた甲斐はあったと言えるだろう。

 

「……暁? 選ばないの? 」

「あぁ、うん。あんまりこういうところになれなくてな……」

 

 咄嗟に言ったが、これも事実だった。学院に来る前は七海にほとんど作ってもらっていたし、きてからは専ら寮の学食だ。

 

「私もそんなに慣れてるわけじゃないんだけど……はい、メニュー」

「すまん。えっと……メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ、だったか? 」

「ちょっと待って。それどこで聞いたの」

「え? 仕事先だが……」

「それは違うお店だから。というかそのお店に行ってもそれは言っちゃダメだから。」

「……? そうなのか?」

 

 昔ラーメン好きという人から聞いたラーメン屋での暗号、らしいのだが……あやせには止められてしまった。

 

 

 

 結局、あやせに言われて基本的、らしいラーメンを食べた。人がたくさんいるだけあって、味はとても美味しかった。

 

「暁、また来ようね」

「おう」

 

 帰り道で、俺の隣で手を繋いで歩いていたあやせがポツリとそう言った。

 

「これから、もっともっと二人の思い出も作ろうね」

「もちろんだ」

 

 そこまで言われて、やっと気づいた。今までは俺の仕事の件や、あやせの学生会長としてお姉さんのために頑張らないと、という思いが常に心の中にあったのだろう。

 全てひと段落したからこその、あやせなりの思い出作りだったのだ。

 

「……あやせ、これからも一緒にいような」

 

 言ってから少しだけ後悔する。流石にセリフらしかったか。隣の彼女の方を見る。

 彼女は、こっちに振り向いて俺の顔をジッと見ていた。

 

「はぁ……もう。そんなの、当たり前でしょ」

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