『ワンパンマン』+『PROTOTYPE』で、クロスネタ 作:蜜柑ブタ
『PROTOTYPE』の主人公アレックス・マーサーに殺され、その時にウィルスに感染してたまたま適合しちゃった元ブラックウォッチの女兵士が、なぜか『ワンパンマン』の世界にトリップしてから始まるダークヒーロー・デビュー話です。
ネタキャラさんは、一人称が「オレ」ですが、もとは“女性”です。
感染後、雌雄同体化してます。(パッと見の外見は女性。声はハスキー)
薬の匂いがする。
「やあ、お目覚めかね?」
誰だ? 白衣を着てるから医者か博士か?
「ふむ、意識ははっきりしているようだな。私の言葉が分かるかね?」
話しかけられているらしいが、何語を喋っているか分からない。まてよ、日本語か? まいったな…、オレは日本を習ったことがない。
「言語を理解しようとはしているね。つまり高い知能を持っているということだ。脳も骨も筋肉の区別がつかない、おまけに未知のウィルスに侵されて変異したと見られる細胞の集合体だというのに、一体どうやって思考しているのか。実に興味深い素材だ。」
何を言っているのか分からないが、どうやらオレは、この博士らしき男の実験室にいて、これから色んな実験に利用されるらしい。
どうしてオレはここにいるのか、まったく覚えていない。
気がついたらここにいた。
マンハッタンでコードーネーム:Zeusこと、アレックス・マーサーにオレがいた部隊が全滅させられて、オレも奴に殺された。
確かに殺されたんだ。
あの鋭い爪(クロー)で串刺しにされて死んだはずだった。
次に目が覚めたら、オレはもう人間ではなくなっていた。
オレは、仲間の死体が周りに転がっている中でたった一人立ち上がったんだ。
アレックス・マーサー、そしてハンターやウォーカー、そんなゲテモノのお仲間入りしたのさ。
当然と言ったら当然だろう、なにせアレックス・マーサーは、オレがいた部隊のいる組織ブラックウォッチが総力をあげて駆除しようとしている極悪なウィルスが生み出した怪物だ。オレは殺された時に感染したらしい。
神様は残酷だ。オレの意識なんか残さなくたっていいのに。ウォーカー(ゾンビ)共のように知恵もない、自分がもう自分じゃないってことを自覚せずにいられるようにしてくれなかった。
だからオレは、死に場所を探してマンハッタンをさ迷った。
軍に戻っても駆除か実験体にされるだけだろうが、アレックスとエリザベスが暴れ回っているせいでオレがいた組織ブラックウォッチはそれどころではない。
他の部隊にいる仲間に会うこともできない。マンハッタンから出るわけにはいかない。アレックスのように捕食もしたくない。死にたいのに自殺できない。誰かが殺してくれないといけないのだろうか。そんなことができるのはマンハッタンに…。
そう、ここで意識がなくなった。
そして目が覚めたら、ここにいた。日本語らしき言葉を喋る白衣の男の実験室で、オレは、実験体として捕まっていた。
白衣の男がオレをどうしようと、どうでもいい。オレは、もうどうでもよくなっていた。
それが約2年くらい前にあったことだ。
「ジーナス博士、お茶です。」
「ありがとう、シリン。」
オレは、今じゃこの白衣の男、ジーナス博士の研究所『進化の家』の住人になっている。
あと、シリンとは、オレの名前だ。
こんな口調だが一応もとは女だ。
なぜ一応かって?
今のオレは男と女の両方が体についているからだ。言っておくがオレの性別は最初は女だった。アレックス・マーサーに殺されて、感染して蘇ってからなぜか変わってしまったのだ。
ちなみに口調は昔からこうだ。女らしくしろと言われ続けてきたが治らなかった。あんまり周りがうるさいからさっさと一人立ちしようと思って軍隊入りし、ブラックウォッチに配属された、そしてマンハッタンでアレックス・マーサーに殺されて、感染者になり、そしてどういうわけかまったく違うこの世界にやってきた。
この世界に来た直後にジーナス博士に発見されたのは運がよかった。博士はオレの体内にあるあのウィルスの感染力を抑え込んでオレの体外じゃ死滅するようにした。おかげで外を出歩いても感染が広がる心配がなくなった。それだけでお釣りがくる。
アレックス・マーサーと同じ超人の力、爪やブレードやナックルなどが使えることも分かった。
生き物を捕食して擬態することもできた。
オレは、もう完全にアレックス・マーサーと同類になってしまったのだと思い知った。
ジーナス博士は、オレを生命の神秘と評して『進化の家』の一員になれと言った。行く場所もないし、ウィルスがもしも暴走してもなんとかしてもらえると思ったので、お言葉に甘えることにした。
そして今に至る。
『進化の家』にはたくさんの博士のクローンと、博士が作った新人類だという怪人達がいた。
実験のために怪人達と戦ったり、耐久力を計る試験と称した拷問もあったが、オレの体はバラバラになっても燃やされても凍らされても死ななかった。
色々とやってみて分かったことは、ウィルスの感染力を抑え込んだせいで本来の力の半分以上は封印されたことだ。
壁走りしたり、ビル3階ぐらいの高さなら余裕で跳べる脚力とかその他もろもろ含めてあきらかに超人なのだが、本当ならオレの力ももっと強いらしい。しかし強くなるにはウィルスを活性化させるしかないらしい。それは勘弁願いたいのでこのままでいいと思った。
ジーナス博士・作じゃないから怪人達との間に最初は溝があったものの、今じゃ仲良くさせてもらっている。見た目はアレでもみんなけっこう気の良い奴らで大好きだ。
オレは、アレックス・マーサーのせいで人間じゃなくなったが、新しい人生と居場所に満足している。
けど、そんな日々は長くは続かなかった。なぜなら『進化の家』は、いわゆる平和を脅かす悪の組織だったから、いつかヒーローに壊滅させられてしまうんだった。
あれは、たまたま博士に用事を頼まれて外出した時だった。
スキンヘッドのマントと、金髪のサイボーグという変な組み合わせの二人組に、進化の家が壊滅されてしまった。建物は隣の山の一部を削るほどの大火力で爆破され、仲良かった怪人達の大半がいなくなっていた。オレが戻って来た時には、もうその二人はいなかった。もう戦いが終わった後だった。
『進化の家』の地下で放心している博士と、生き残った怪人達を見つけてその時の話を聞いた。
博士は、蚊の怪人を一撃で倒したというスキンヘッドのマントの男の戦闘能力に目を付けて実験体にしようとして刺客を送り込んだけど、あっさり返り討ちにされ、その後すぐに逆襲されて壊滅したらしい。あっさりにも程がある。
『進化の家』の最終兵器だった阿修羅カブトも一撃で倒されたらしい。怪人同士で戦わせるためのルームに行ったら上半身が木端微塵になっていて下半身しか残ってない阿修羅カブトの死体があった。あの問題児がこんな有様になるほどそのスキンヘッドのマントの男は強かったらしい。
博士はもう危険な研究をするのはやめると言っていた。
オレは博士が生きていてくれただけで十分だ。博士には恩があるからだ。オレが抱えていた危険なウィルスが飛散しないようにしてくれて、居場所をくれたから。
だから博士が死ぬ危険が高い危険な道を進むのを止めてくれた二人組のヒーローには、少しだけ感謝している。
けれど同時に恨んでもいる。なぜなら暮らしていた家を破壊されて、仲良くなった怪人達のほとんどを殺されたからだ。二人組がヒーローとしてやるべきことをやったのだから仕方ないのだが、オレは彼らのことが大事だった、だから弔い合戦をしないといけない。オレは、恩を大事にする。だから恩人の博士を傷つけ、仲間として受け入れてくれた怪人達を殺したあの二人のヒーローと戦わなければならない。
「長い。もっと簡潔に言えっ。」
スキンヘッドのマントの男こと、サイタマがそう言った。長々とどういう経緯でサイタマと、あと金髪のサイボーグことジェノスの前に現れた理由を話したら、それはもう嫌そうな顔をして言われた。どうやら長話が嫌いらしい。それは一向に構わない。話を聞かせに来たわけじゃないからだ。
「オレと戦えと言っているんだ。おまえは『進化の家』を壊滅させたから。」
「ふ~ん。なるほど。」
「先生。ここは俺が…。」
「おまえもだ。黒目野郎っ。家を破壊したのはおまえらしいな?」
考え込むように首をひねるサイタマとは裏腹に敵意を剥きだすジェノスにオレはそう言った。『進化の家』の本拠地で、オレの居場所を破壊したのは、ジェノスの仕業だった。こいつ真面目な顔して一番手っ取り早い殲滅方法としてアジトをそのまま破壊する方法を選びやがった。サイタマを師と仰ぐクソ真面目らしいがやることが合理的でえげつないガキだ。
「帰ったら家がなくなっててびっくりしたぞ。あと仲良かった連中がほとんど死んでて、おまえらと戦う理由としては十分だと思うが?」
「ああ、十分だな。」
サイタマは頷いた。
「戦えばそれで満足すんのか?」
「先生っ!」
「おまえと全力で戦うことで、オレは博士と『進化の家』そのものに対する恩に報いなければならない。恩人を置いて戦わずして逃げる真似だけはしない。」
「そうか…。分かった。戦ってやるから、場所を変えようぜ。ここじゃ周りに迷惑だからな。」
「さすがヒーローだ。」
死んだような目をしているくせに、ヒーローらしい言葉を吐くサイタマにオレは思わず感心した。
オレはサイタマ達と場所を変えて戦うことになった。
人気のない石ころだらけの荒地で、二人と対峙する。
「さあ、戦闘開始だ。」
オレは、両手をクローに変えて構えた。
「先生。この“女”の相手は俺がします。」
「さっきから自信満々にそう言うけど、おまえ、阿修羅カブトに手も足も出なかったって聞いてるぞ?」
ジェノスがオレのことを女だと言った件については今は突っ込まないでおくことにした。今言うことじゃないし、オレはそこまで重要だとは思っていない。胸があるから見た目の印象だけで性別を判断したのは悪くない。
「進化の家の怪人共も博士も、おまえのことは一言も言っていなかった。つまり貴様は阿修羅カブトはおろか、ナンバー2(獣王)の奴の足元にも及ばない雑魚だ。雑用しか勤まらない雑魚に先生の手を煩わせるわけにはいかない。」
「へえ…、そう思ってるんだ?」
「何が違う? 本当のことだろう。」
「その言葉、しっかり覚えておけ。」
オレを完全に雑魚扱いするこのガキをまずスクラップにしてやろう。サイタマは、何か言いたげにジェノスを見ているが、何も言わないところを見ると言っても無駄だと分かっているらしい。確かにこのジェノスというガキは言っても聞かなさそうだからな。
進み出てきたジェノスと向き合って、どちらかが動くのを待った。
慢心なんかじゃない。オレは、ジェノスを倒す。ジェノスは、オレに勝てない。
ジェノスの姿が消えた。背後から強烈な一撃が入ったが、オレはよろめかなかった。びっくりはしたけど。
それだけでジェノスは顔色を変えていた。ホラ、だから言ったのに。
オレの体重は、見た目以上にある。車とぶつかれば車が吹っ飛び潰れるぐらいだ。アーマードゴリラをスクラップにできたその拳でも、オレの体は傷付かない。
振り向きざまにクローで斬り裂こうとしたら、素早くバックステップで逃げやがった。だが逃げることは分かっていた。
「ーーーっ!!」
バックステップで逃げたジェノスの足元に向って地面を伝って延ばしていたクローで攻撃する。まさかそこまで収縮性があるなんて思わなかったんだろうから、ジェノスはこの一撃で体の表面を削られて宙に投げ出された。
続けざまにクローを鞭に変えて追撃をしようとすると、ジェノスが宙で姿勢を変えて手から焼却砲を発射してきた。
それをシールドで防ぎ、煙で視界が悪くなった所を重力無視の跳び蹴りをくらわせる。ジェノスは防御したが衝撃は吸収できない。
地面に派手に転がったジェノスめがけて、跳んだついでに上からナックルに変えた腕で攻撃する。
ジェノスが転がったまま両手を構えて焼却砲を発射したが、オレを焼き殺すには不十分だ。
体が焼けるのを気にせずそのままナックルで叩き潰そうとしたが、間一髪でジェノスは横に転がって避けやがった。オレのナックルで地面にクレーターと地割れができた。
即座にナックルを鞭にして延ばし、ジェノスの喉を掴んでそのまま地面に叩きつけてやった。頭からもろに地面に叩きつけたから普通なら首が折れているのだが、そこはサイボーグ、これくらいではびくともしない。
なので掴んだまま何回も何回も地面に叩きつけた。赤ん坊がぬいぐるみを振り回して遊ぶように、けれど残像が残るぐらい早く鞭状になった腕を使ってジェノスを振り回した。
とりあえずこれでスクラップにしてやろうと思ったが、さすがに飽きたので、手元に引き寄せてナックルで一撃をくらわした。腹に思いっきり決まったからかジェノスの体の半分は壊れた。
「ぐっ…がっ。」
「タンク(戦車)よりは硬かったか。でももう一回やったら潰れそうだ。オレの勝ちだ。」
「ま、まだ…だ!」
ジェノスがまだ動く片腕をあげて、半壊したジェノスの体を踏みつけているオレの顔に焼却砲の発射口を向けた。残ったエネルギーを全て使おうとしてジェノスの体が煙とオイルが噴き出し、悲鳴をあげている、ジェノスはやめようとしない、死んでも負けを認めず最後まで戦おうとしている。
その根性は、好感が持てた。
オレは、ジェノスの今まさに焼却砲を発射しようとしていたその腕を、ブレードに変化させた腕で切り落とした。
「ゴホッ! ……っ!」
ついでにジェノスの体を抉って、自爆装置を取りだした。
「簡単に死のうとしないで。もっと君とは戦ってみたいから。」
オレの言葉を聞いて驚いた顔をするジェノスに見せつけるために、自爆装置を握りつぶしてその辺に放り捨てた。
戦闘不能になったジェノスに背を向けて、今度はサイタマの方に向かった。
「次は、おまえだ、サイタマ。」
「おう。」
「…悪かったな。俺のエゴのために無駄な時間を使わせて。」
「俺はおまえの家と仲間をブッ潰した仇なんだぜ? 自分が言ったくせに。」
「……そうだな。悪かった。サイタマ、『進化の家』を…、オレの居場所を奪ったおまえと戦う。戦って、おまえに倒された怪人達の弔いにする! 戦え、サイタマ!」
「おう!」
……負けるって分かってた。サイタマは尋常じゃない強さの持ち主だったから。絶対に勝てないって最初っから分かってた。だけど戦うことに意味がある。逃げずに戦って、一発だけでいい、せめて殴ることさえできれば、それで十分だ。
正々堂々と戦ったことに意味がある。勝敗はどうでもいい。負けると分かって挑んだ戦なんだから。
「うおおお!」
掛け声と共にジャンプしてサイタマの脳天をブレードで叩き斬ろうとしたが、寸前のところで指で止められてしまった。止められたからと言って動揺はしない。そのまま横蹴りをして、サイタマがもう片手でガードした隙にブレードを解除してクローに切り替えた。クローに変えた時にブレードは解け、サイタマの手から外れたためそのまま腕を振り下ろしてサイタマを引っかいた。
けれどサイタマの黄色いスーツを少しだけ裂いただけで終わった。普通の人間ならぶつ切りになっていたのだが、サイタマにはやはり通用しなかった。阿修羅カブトのフルパワー(阿修羅モード)でも傷一つ負わなかったと聞いてた。そんな奴にオレの攻撃が効くとは思ってなんかない。けれど引くわけにはいかない。
「おまえの体ってどうなんてんだ? それモズク? ヒジキ? ウネウネしてなんかキモイな。」
体を変形させるたびにウジュルウジュルと蠢くオレの細胞の動きについてサイタマが質問してきた。
これはあのウィルスで変異した細胞の特徴としか言いようがないが、サイタマはきっと小難しい話は嫌うだろうから。
「色々とあったんだ。説明すると長いぞ。それでも聞くか?」
「あ、いいや別に。」
ほらな。そう言うと思った。触れてほしくなかったことだしそれでいい。
こんな体にしたアレックス=マーサーのことを思い出したくないから、できれば自分の体のことを説明しなくなかった。
「なんか聞かないでくれって顔してっから。」
「……お気づかいありがとう。気が逸れたが、不意打ちっ!」
鞭にした腕を直線状に延ばしてサイタマの顔面を狙った。完全に不意を付いたはずだったが、鞭攻撃はサイタマが首を傾けて避けられてしまった。クソッ、動体視力がいかれてやがるぜ!
負ける戦いだって分かってても、こんなにワクワクするなんて思わなかった。相手がヒーローだからか? サイタマだからか?
オレは、楽しくて仕方がない。
「おまえ、楽しんでんだろ?」
オレの攻撃をヒョイヒョイ避けるサイタマが、微かに笑ってそう言った。
「ああ! 楽しくてて仕方ないなぁ! ヒーローと戦うなんて夢のようじゃないか、オレがもといた世界じゃ夢物語でしかなかったから、本物と戦えて光栄だぜ、サイタマ!」
「ジェノスもヒーローだぜ?」
「オレが言うヒーローは、あんたみたいなのだ! ヒーローは圧倒的な強さで見返りを求めずひたすら弱い者のために戦い続けるもの、あんたはまさに理想的なヒーローだ。そんな理想のヒーローと戦えるなんてこれ以上ないことだ。嬉しくて楽しくてたまらないぜ、サイタマーーー!!」
「そりゃよかったな。」
「くらえっ!」
オレは、サイタマがバックステップで離れた直後両腕を前に出して、触手状にほぐした腕を使った直線状の必殺技を放った。単に触手を伸ばすんじゃない、変異した細胞が放つ莫大なエネルギーをまとった破壊力抜群の、名前を付けるのだとしたら“ヒジキビーム”。…見たまんまだしギャグなネーム付けたかったわけじゃないが、あみ出した時に何か技名を付けようと思ったらそれ以外に思い付かなかったんだぜ! ちきしょう!
まあこの技は、相手をしてくれた阿修羅カブトに回避されて実戦に使えるかどうか分かんなくなったんだが(相手が悪かった)、進化の家の壁の装甲を全部貫通できたから威力はあると思う。
でも…。
「おまえの攻撃って色々あっておもしれぇな。」
避けられちゃ意味がないがな! 阿修羅カブトの倍以上…、いや尋常じゃないほど速いじゃねぇかこの男!
「キモいとか言って悪かったな。おまえ結構かっこいいじゃん。そのツメとか包丁(←ブレード)みたいなのとか。」
「いや別にいい。ウネウネして気色悪いのは自分がよく分かってるから。そろそろ決めないか? このままだと夜になるぞ。」
「えっ、もう日が暮れてんの!? やべっ、タイムセールがあんの忘れてた!」
「意外と節約家なんだな…。そんなに生活苦しいのか?」
「っるせーな、俺は趣味でヒーローやってんだから、ヒーロー活動で食ってるわけじゃねーんだよ。」
「ふ~ん。サイタマは面白い奴だな。話が逸れたな、タイムセールのためにさっさと決着をつけろ。」
「分かってるって。」
さあ、これで終わりだ。
博士や進化の家の仲間には悪いけど、これがオレの生き方なんだ。進化の家に拾われたことが、オレの人生で一番の幸運だったよ。
オレのブレードとサイタマの拳がぶつかった。
ブレードは粉々に砕けて、そのままサイタマの拳はオレの鳩尾の辺りにめり込み、その瞬間に襲って来た凄まじい破壊力でオレの体は四方八方に飛び散った。
ああ…、これは阿修羅カブトも一撃で死ぬはずだな。っと、バラバラになりながらオレはそう思った。
これが、オレとこの世界のヒーローとの最初の戦いだった。
オレはジェノスを倒せたが、サイタマには負けた。
あの後、散り散りになったオレの体は一か所に集まり、オレは復活した。もうその時にはサイタマ達の姿はどこにもなくて、丸い月が夜空に浮かんでいた。
阿修羅カブトを一撃で倒したサイタマの拳でも、オレは死ななかった。いや、急所と呼べるものがないオレの体のどこを破壊してもこうやってすぐに復元されてしまうんだ。別に殺してほしかったわけではないのだが、この現実を思い知らされて溜息をついてしまったものだ。
生き残ったものは仕方ない。それにサイタマ達と戦うという目的は達した。だからオレは進化の家の跡地に帰ることにした。
帰って博士達には、サイタマ達と戦ったこと、負けたことも包み隠さず伝えた。
無謀なことをやってくれたものだと、博士には呆れられてしまった。負けることは言われなくても分かってた。
「博士。オレは、サイタマと戦えてとても楽しかったです。こんなにワクワクドキドキしたのは、もう十年ぶりでしょうか。それぐらい気持ちがよかった。」
「おまえは他の生命体を捕食し、更なる進化の高みへと飛躍することができる。それもこれも、おまえの身体にあるウィルスのおかげだが、生命体を捕食するためには生命体を確実に捕え、殺す力が要求される、その結果、闘争心が高まり、己の身体を巨大なツメや刃物などの殺傷力の強いものに変形させる能力が身についたのだろう。彼との戦いで気持ちが高ぶったのは、シリン、おまえの中にあるウィルスの本能だ。ウィルスによって人間を超えた超生命体となったおまえの呪われし宿命だ。シリン、おまえはこれから先どうする? 戦うことに味をしめてしまってはもうじっとしていられないはずだ。進化の家はもうお終いだ。シリン、おまえは自由にするんだ。」
「……ええ、自由にさせてもらいますが、帰ってくることぐらい許してもらえますか?」
「…好きにしなさい。」
博士は苦笑してそう言った。
オレは戦うことに楽しみを見出した。博士の言うとおり、もう進化の家があった頃みたいにじっとしているなんてできない。身体が欲求しているのだ。もっと、もっと喰らいたいと、もっと戦いたいと。サイタマに感服無きまでに負けたのに往生際の悪いウィルスだ。
一回死んだオレは、こうして新しい人生を送ることになった。
ヒーロー達がいる、見知らぬこの世界で、オレはどう生きようか。
考えるだけでワクワクしていた。
オリ主・シリンさんは、元・女だけど、元から男口調。治らなかったためそのまま。
胸が大きいので、服の上からだと普通に女にしか見えない。
感染が広がったマンハッタンから、原因不明の転移。
そしてその先でたまたま進化の家に拾われたことでウィルスが蔓延することは防がれた。ご都合主義ですみません……。
シリンさんの、ステータスは、ウィルスを抑え込んでいるため、PROTOTYPEの主人公アレックスよりは、弱い。後半で手に入るアーマーなどがない。