この素晴らしくあざとい後輩との冒険者生活はまちがっている。 作:水刀 言心
初めまして水刀 言心と申します。
数年ぶりに筆を取りましたので、こちらで投稿させて頂きました。
ハーメルンは初めての利用なので、お見苦しい点がありましたら申し訳ございません。
気になる点、ご助言、ご感想等ございましたら、よろしくお願いします。
サイトの使い方に関するご助言も大歓迎です。
なお、序盤は駆け足気味ですので、俺ガイル及びこのすば!原作既読orアニメ視聴済みでご覧頂くことをお勧め致します。
「ようこそ死後の世界へ。 ヒキガヤ ハチマンさん。 イッシキ イロハさん。」
全ては自称女神様の、そんな一言から始まった。
「残念ながら、あなた方の人生は、終わってしまったのです。」
そうして、アクアと名乗る女神様(自称)は、俺たちの現状を語り始める。
彼女によると、俺たちは生徒会の書類整理を終え(なお一色に強制連行された)、駅までの道のりを連れ立って歩いていた所、2人揃って運転を誤ったトラックに跳ねられ即死したらしい。
耳に残るブレーキ音や悲鳴から、それが事実であることは間違いないだろう。
横に目をやると、どうやら同じ心境らしい一色が、何とも言えない表情を浮かべていた。
まぁ、いきなり死んだと言われれば、そうもなる。
俺自身、意識がはっきりとし過ぎている為か、アクアの話が事実だとは分かっているものの、自らの死については、どうにも実感が湧かなかった。
「さて、あなた方には、いくつかの選択肢が用意されています。」
呆然とする俺たちをよそに、アクア様は今後についての説明を始める。
ざっくりまとめると、天国か生まれ変わりか、異世界に行ってワンチャン魔王を倒して願いを叶えるか。
それが、俺たちに提示される選択肢らしい。
なお、異世界に行く場合、一つだけチート能力を授けて貰えるとの事。
アクア様の勧めるままに、カタログとにらめっこを始める俺たち。
流石はチートと言うだけあって、カタログに列記された武器や能力は、俺が中学時代に一度は憧れを抱いたものが、いくつも並んでいた。
とはいえ、転生先の異世界の情報を、何も知らずに選ぶのはリスクが高過ぎるだろう。
「あの、少し聞いても良いですか?」
仮にも女神様が相手ということで、俺はなるべく失礼がないよう注意を払いながら、異世界について尋ねる事にした。
そして判明した事実。
それは、場合によっては、カタログの転生特典はまるで役に立たないという事だった。
例えば伝説の魔剣を選んだとしても、剣士…………ソードマンやソードマスターの適性が無ければ、まともに振るうことは出来ない。
例えば無限の魔力を選んだとしても、魔法使い…………ウィザードやアークウィザードの適性が無ければ、まともに魔法が運用出来ない。
一歩間違えば、即座に詰む、という恐ろしい現実である。
やはりリアルだと、異世界転生ですらクソゲー化するらしい。
そもそもとして、カタログを見る限り、チートと言っても、本当に無制限に強力というわけではないのだろう。
著しく世界のバランスを崩壊させることがないよう、絶妙な制限が設けられており、それが悉くネックになっていた。
さて、それを理解した上で何を選ぶのが正解なのか。
ここはある程度のデメリットを受け入れ、その上での運用が容易なもの、というのが理想だろう。
手っ取り早いのは、ここで俺に一体どんな職業の適性があるのか、それを明らかにする事だが、あいにくと不可能らしい。
ではどうすべきか。
ここで忘れてはいけないのが、冒険者の能力は、職業とステータス、そしてレベルに依存する、ということ。
剣と魔法のファンタジーという観点からすると、優先すべきは低レベル帯での安全より、高レベル帯での最終的な到達点の高さ。
そして俺の性格という観点から、ソロでも活動可能な火力と汎用性。
それらを兼ね備え、俺の資質に左右されない力となると…………。
「…………史上最高のルーンナイトとして、早期に大成し得る資質、ってのは可能ですか?」
俺の言葉に、きょとんとするアクア様。
おそらく、これまでの転生者は、割と素直にカタログから特典を選んでいたのだろう。
しかしながら、俺はそこまで素直ではないし、命がかかっている以上、生半可な物は選べない。
そして思いつくリスクを、徹底的に排除した結果、この選択がベストだと判断した。
武器や特殊能力では、汎用性に欠ける上、それを効果的に運用出来る職業の適性が無ければ即座に投了する。
特定の職業における高い適性であれば、持ち腐れることはない。
さらに『早期に大成し得る』という文言を加えた事で、レベルアップに払う労力も最小になる、という我ながら文句の付けようがないアイデアだと思う。
ちなみに、あえて全ての職業への適性とせず、特定の職業に限定したのは、先程述べた何らかの制限への対策である。
こちらからある程度制限を設けておけば、新たに厳しい制限を受けることは無いだろう、という打算だ。
「資質って、変わったもの要求するのね? それだとレベルアップしないと、別にチートでも何でもなくなっちゃうけど、本当に良いわけ?」
「はい。ただ、今言った文言、一字一句その通りのものが良いんですが。」
「『史上最高のルーンナイトとして、早期に大成し得る資質』だったわね。分かったわ。上に確認とるから、ちょっと待ってなさい。」
そう言うと、アクア様はどこかに電話をかけ始める。
どうやら神様の世界でも、お役所仕事的な事情は存在するらしい。世知辛い。
「あ、あの、先輩?」
電話中のアクア様を大人しく待っていると、これまで殆ど言葉を発していなかった一色が、こわごわと言った様子で声を掛けてきた。
「何? どうかしたか? さっきから嫌にビクビクしてるけど。」
「あ、良かった。やっぱり先輩だったんですね。」
すると一色は、強張った表情を緩ませ、安堵の溜息を零す。
何、俺の顔忘れたの?
君、あんだけ人の事こき使ってるのに?
跳ねられた時に、頭の打ち所が悪かったの?
「何か変なこと考えてるみたいですけど、別に先輩の顔を忘れてた訳じゃないですから。とゆーか、あんな腐った目付きの人忘れませんよ。」
「おい、さり気なく人の目をディスんじゃねぇよ。つーか、だったら何で俺が本人かどうか疑ったんだよ?」
「いやだから、その先輩の目が腐ってないからですよ。」
「…………はい?」
「確認取れたわよー! 大丈夫だってー!」
一色の言葉に絶句した瞬間、アクア様の能天気そうな声が木霊した。
「目の腐り? ああ! あんたの目のことね! アンデッドみたいで不快だったから、こっちで肉体を再生するときにちょちょっと治したのよ。」
「ブフォ!?」 「ぷーっ!www」
あんまりなアクア様の言いように、俺は吹き出し、一色は爆笑。
アクア様としては、どうやら善意でやったことらしく、悪びれた様子は全く見られず、むしろ褒めて褒めて褒めそやして、と言わんばかりのドヤ顔である。
そんな顔をされると、こちらとしては何も言い返すことが出来ず、寧ろ自分でも致命的な欠点だと思っていた為…………。
「…………ありがとう、ございます。」
そう絞り出すことしか出来なかった。
話を戻そう。
先程俺が提案した特典についてだが、アクア様によると概ね問題ないとの事だった。
具体的には、一部ステータスの補正と、いくつかのスキルとして授けられるとの事。
説明を受け、特に問題を感じなかった俺は、特典をそれにする事に決めた。
「ハチマンの特典はこれで良しとして、イロハはどうする? 私的にはちゃっちゃと決めてくれるとありがたいんですけどー?」
「えぇー、そんなこと言われましてもぉ…………。ええと、先輩?」
「いや何で俺に振るの? 自分の特典なんだから、ちゃんと考えろよ。」
「それは分かってますよぉ。ただ、確認と言うか、先輩はいろいろと考えた上で、特典を『資質』にしたんですよね?」
「そりゃ、まぁ…………。」
「んー…………だったら、わたしもそう言うのにしとけば安心かな、と思いまして。」
ちろり、と舌をのぞかせて、悪戯っぽく笑みを浮かべる一色。あざとい事この上ない。
あと、結局選考基準が俺頼みなんだよなぁ…………。
とはいえ、『史上最高の◯◯として、早期に大成し得る資質』、と言う特典であれば、そうひどい事にはなるまい。
そう自己完結した俺は、黙って一色の決断を見守ることに…………。
「じゃあわたしの特典は『史上最高のアークプリーストとして…………』「待て待て待てっ。」ちょっ!? 何なんですか!?」
見守る事にしたんだが、聞き過ごす事が出来ず、結局思い切り口を挟む事にした。
「おい一色。さっきの俺とアクア様の会話ちゃんと聞いてたか? 何でアークプリーストだ? アンデッドや魔族以外には攻撃力皆無じゃねぇか。」
「ちゃんと聞いてましたよぉ。でも回復役って、普通にそういうものじゃないんですか?」
「これがゲームなら、それでも良いだろう。だが良く考えろ。これは現実だ。常にお前を守ってくれるディフェンダーや、代わりに攻撃してくれるアタッカーが、側にいるとは限らない。もし仲間や護衛と逸れて、一人でモンスターと戦わないといけない、なんて状況になったらどうするつもりだ?」
ぐっ、などと、悔しそうに呻く一色。
こいつのことだ。
恐らくは、回復支援役として、周囲からチヤホヤ甘やかして貰おう、という魂胆だったのだろう。
打算的な癖に、考えが甘いんだよ。
「回復役やりたいなら、クルセイダーの方が攻撃手段も確保出来るし、防御力も高そうだから、そっちのが安全だろうが。」
「むー…………。ま、まぁ先輩の心配も分かりますけど…………はっ!?」
言いかけて、一色ははっとした表情になると、俺と距離を取るように身をよじる。
「はっ! なんですか口説いてるんですか心配して貰えるのは正直嬉しいですし目がまともになってぶっちゃけイケメンだし結構かなりトキメキましたけど今はいろいろあり過ぎて冷静じゃないですしその辺り落ち着いてからお願いしますごめんなさい。」
「いやだから、何で告白もしてないのにフラれてるの。つーか、早口過ぎてほぼ聞き取れなかったんですが…………。」
「…………とゆーか、ここでイチャつかないで欲しいんですけどー?」
結局、一色の特典は『史上最高のクルセイダーとして、早期に大成し得る資質』になりました。
「…………さて! これで準備は整ったわね! それじゃ、これからあなた達を異世界に送るから、魔法陣の上から出ないでちょうだいね!」
アクア様がそう言うや否や、俺と一色の足元に、青白く輝く魔法陣現れる。
おお! ファンタジーっぽいなこれ!
「さぁ、勇者たちよ! 旅立ちの時です! 願わくば、これから現れるであろう数多の勇者候補たちの中から、あなた方が魔王を打ち倒さんことを!!」
思い出したかのように、女神っぽい事を言い出すアクア様。
ぶっちゃけ今更感が半端ない。
ともあれ、そんなアクア様に見送られ、俺たちは異世界へと旅立った。
「ようこそ死後の世界へ。ヒキガヤ ハチマンさん。イッシキ イロハさん。」
…………筈だったんだけどなぁ。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
既に色々とやりたい放題やっておりますが、これからよりはっちゃけていきます(ぇ。
今後とも、お楽しみ頂けると幸いです。
さて、今回の言い訳を少しだけ。
①八幡の目
これは作者がイケメン主人公に拘った訳ではなく、『あれだけアンデットを目の敵にする天界が、ゾンビ染みた八幡の目を放置するだろうか?』という疑問から、実験的にこうなりました。
付け加えると、彼がイケメンだった方が、ヤキモキさせられるいろはすが見れて作者☆大☆満☆足! だと思ったというのも理由の1つです。(笑)
②2人の特典
かなり悩みましたが、作中で述べた通り、リスクを排除していった結果こうなるのではないか、という考えです。
八幡の性格(拙過ぎる作者の分析に基づく)を考えると、異世界の情報を何も聞かずにほいほい特典を選ぶとは考えにくく、初対面のアクア相手に横柄な態度で応じるとこはまずないでしょう。
となると、お調子者のアクアは彼の問いに快く答えてくれるでしょうし、彼は十分に判断材料が揃った上で選択ができたと思うわけです。
以上、今回はっちゃけた内容の言い訳でした。
さて、本作は基本的には週1回程度の更新を目標にしております。
しかしながら皆様のご声援により、作者がkskする可能性も無きにしも非ずですので、どうか生暖かく見守ってやって下さい。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう。