この素晴らしくあざとい後輩との冒険者生活はまちがっている。 作:水刀 言心
期間が空いた為、本来であれば連投したかったのですが、どう考えても今日中に仕上がりそうにない為、1話だけ更新致します。
あまり話は進んでいませんが、平にご容赦を。(ジャンピング土下座)
「どうした? 『速過ぎて』見えなかったか?」
不敵な笑みを貼り付けて、俺は身じろぎすら出来ずにいるチンピラに、そう突き付けた。
…………あせったぁぁぁぁああああああ!!!?
何なのあのスキル!?
精神力値に比例したステータス減少効果じゃなかったのかよ!?
何人か泡吹いて気絶してるんですが!?
◯王色の◯気かよ!?
異世界というか某偉大なる航路に来たかと思ったわ!!
…………とは言っても、事は概ね俺の思惑通りに運んでんだよなぁ。
ここでそれを自ら台無しにする程、俺は愚かでは無い。
内心の焦りを、決して表には出さぬよう、細心の注意を払いつつ、剣を鞘へと納める。
それで緊張の糸が途切れたのか、チンピラは、どさり、と酒場の床に尻餅をついた。
ゆっくりと正面に回り込むと、その表情は蒼白で、呼吸さえ忘れていたのか、息は荒い。
それを絶好の好機だと捉え、俺は最後の仕上げに取り掛かる。
「…………なぁ先輩様、名前を聞いといても良いか?」
俺の言葉に、ギリリ、歯を噛み締め、睨みを持って応えるチンピラ。
「…………ダストだ。テメェ、覚えてやがれよ。」
恨み言とともにそう名乗ったチンピラは、予想を裏切らず、この一件をしぶとく根に持ちそうな様子を隠そうともしない。
しかし、それでは少々都合が悪いのだ。
ポケットから小銭、この酒場で一杯頼むのには十分な額、を取り出し、座り込んだチンピラの前に、そっと置く。
「なっ!?ふざけ「これは、あんたを見くびってた事に対する詫びだ。」ん、な…………?」
俺の行動を憐憫と捉えたのか、怒鳴り散らそうとしたチンピラ。
しかし、それを遮り、行動の意味を口にする事で、チンピラは、訳が分からなくなったのか、あっさりと閉口した。
つけ込むなら、ここを置いて他にない。
気絶した面々を指差し、俺は苦笑いを浮かべる。
「本来なら、あんたにもああなって貰うつもりだったんだがな。真正面からあれを受けて、しかもまだ俺に噛み付いてくるなんて…………良い根性してるよ。」
「…………ケッ。嫌味かよ?」
「まさか。素直に感心してるんだ。口先ばかりのチンピラかと思ったが、あんたは確かに『敬意を払うに値する先輩』だったらしい。そいつはその詫びだ。一杯奢るってのは、冒険者にとって、交渉成立の相場なんだろ?」
「…………チッ。」
舌打ちしながら、しかし一応の納得はしたのか、チンピラは俺が置いた小銭を拾い上げる。
詰みだ、とそう確信した。
「…………比企谷 八幡だ。こういった対人戦は得意だが、あんたが言った通り、対モンスター戦はずぶの素人なんだ。これからよろしくしてくれると助かる。頼りにしてるぜ、『ダスト』?」
出来るだけ穏やかな笑みを心がけながら、右手をチンピラへと差し出す。
一瞬呆けたような顔を見せたチンピラは、すぐにバツが悪そうに顔を背け、頭をがしがしと掻き、しかし、おずおずと俺の手を取った。
「…………ったく、んだよ。出来んなら最初からそういう態度しとけっての。…………こっちこそ、変に絡んで悪かったな。よろしく頼むぜハチマン。」
立ち上がりながら、照れ臭そうに笑うチンピラ。
緊張の面持ちで、成り行きを見守っていた周囲から、一斉に安堵のため息が溢れる。
ほうら、簡単だろ?
今度こそ本当に、誰も傷つかない世界の完成だ。
…………尤も、スキルという、超常の恩恵ありきの話だがな。
内心で独りごち、俺は一色が待つ席へと戻るのだった。
「むぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!」
一仕事終えた俺を迎えたのは、何故か再びジャンガリアンと化した一色だった。
何故にWhy?
「…………さては、この流れ結構正確に予想してましたね!?」
「お、おう…………ま、まぁじゃないとあんな大立ち回り出来ないだろ、常識的に考えて。」
「やっぱり…………もう!! どうしてそう『ほうれんそう』が出来ないんですか先輩は!? わたし半泣きになっちゃいましたよ!? 」
答えた瞬間、家の前を不審者が通りがかった番犬のごとく吠え立てる一色。
…………そういや、何も言ってなかったか。
別に言わなくても何とかなったし、結果オーライだと思うのだが、それでは彼女の気が済まないようだ。
「はぁ…………もういいです。先輩のバカ、唐変木、八幡。」
「いやだから、人の名前を悪口みたく言うのやめてね?」
「この埋め合わせはキッチリして貰いますからね! 宿に帰ったら覚えておいて下さい!」
「えぇーー…………。」
思いの外重たい、『ほうれんそう』を怠った代償に、がっくりと肩を落とす。
…………次から何かする時は、余程じゃない限り、しっかり伝えておこう。
そんな誓いを立てていると、何者かに肩を叩かれる。
振り返ると、そこには素敵な笑顔を浮かべたルナさんの姿が。
「ハチマンさん? 少しあちらでお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
…………OH.
素敵な笑顔に丁寧な口調。
しかしルナさんには、有無を言わせぬ迫力があった。
あ、これ後ろに薄っすら般若がおるわ。
そうして、俺は一色とともに、ギルドの小会議室へと連行されるのだった。
「本当に何を考えてるんですかっ!? ギルド内での乱闘騒ぎはそもそもご法度ですし、戦闘用スキルの使用に抜剣なんて、冒険者資格を剥奪されたっておかしくないんですからねっ!?」
小会議室に着くや否や、物凄い剣幕でそう捲し立てるルナさん。
ぶっちゃければ、それは承知の上だし、今回は初犯な上に、一応は被害者の立場な為、高確率で見逃して貰えるだろうと高を括っていたりする。
「今回は初犯ですし、そもそもハチマンさんたちは被害者の立場ですから、厳重注意で済ませますが、二度目は有りませんからね!」
「…………っす。」
ほらな? と内心で舌を出しつつ、表面上は反省した振りをして、ルナさんに頭を下げる。
二度目はない、との事だが、そもそもその二度目を起こしたくないから、甘んじてこんな騒ぎを起こしたのだ。
これをもう一度なんて、こちらから願い下げである。
「でも先輩、凄かったですね。殺気って言うんですか? 睨んだだけで、気絶させたり、見えないくらいに素早く動いたり…………ぶっちゃけ、わざわざ慎重に情報収集とか、する必要なかったんじゃないですか?」
救援のつもりか、ルナさんの説教の合間を見計り、先程の俺の立ち回りを褒め称えてくる一色。
説教していた手前、手放しで褒める訳にいかないであろうルナさんだが、その目が明らかに一色と同意であると示していた。
…………こいつら、俺のハッタリ信じ込んでるのかよ。
「いやいや、いくらステータスが高くても、流石にそんな速度で動ける訳ないから。」
「はい? で、でも、実際にやってたじゃないですか?」
「そ、そうですよ。ハチマンさんだって、速過ぎて、って言ってたじゃないですか?」
「そう言っておいた方が、相手がビビってくれると思っただけですよ。」
「「えぇーー…………。」」
声を揃えて、何とも言えない顔をする2人。
仲良いなオイ。俺の心配返してくれ。
そもそも、最後の瞬間移動もどきに限らず、先程の俺の立ち回りは、徹頭徹尾全てがハッタリ、尤もらしく見えるよう振る舞っただけのパフォーマンスだ。
いくらチート持ちとは言え、レベル1、戦闘経験なしの素人が、その道のプロでさえ出来ないことを、そう易々と出来る訳が無いだろう。
それに、実際やった事としては、大した事はしていない。
まずは火付け役であるチンピラを煽り、敵意を持った者たちを炙り出す。
炙り出しが終わったら、狂化を抑え込める事を知らしめ、『臆病者に騙された美少女を救う』という、連中のお門違いな大義名分を叩き折る。
そして皸の入った連中の正義を、『命』や『責任』と言った奴らが嫌うであろう重たい言葉を使い、所詮嫉妬から来る醜い自己満足だと思い知らせ、あらゆる敵意を失わせる。
その辺りで念の為、狂化に加え、先程習得したばかりの『逆境スキル』で更にステータスを強化。
そこまで徹底的に精神を叩きのめしても、なお手向かって来る頭の悪い輩が出てくるだろうから、同じく習得した『威圧スキル』を使用してステータスを低下させ、ついでに俺の存在感を増す。
十分に視線を引き付けた時点で、発動済みのスキルをオフにし、『気配遮断スキル』を発動。
存在感の落差で、目の前から消えたように錯覚させ、背後に回り剣を突き付ける。
…………とまぁ、実際に列記すれば、この程度の事しかしていない。
マクベスの狂化と、3つのレアスキルありきという、非常にタイトに見える策だが、前提さえクリアしていれば実行は容易で、リスクも少ない。
最初の時点で、話が通じず暴力に訴えられる危険はあったが、そうなっていたとしても、狂化と逆境による二重強化によって、俺のステータスは大幅に底上げされていた為、撤退ぐらいであればどうにでもなっただろう。
「そ、それじゃ最後の、何だか先輩らしく無い、河原で殴り合った後の不良マンガみたいな台詞は…………。」
「当然、ブラフに決まってんだろ。誰が好き好んで、あんな臭い台詞吐くか。」
ああしておかないと、無用の敵意を延々と引き摺られる可能性があった。
それを避けるために、一芝居打ったに過ぎない。
羨望も嫉妬も、結局は劣等感から生じるもの。
それらを敵意に変え、他者を攻撃しようなどという輩は、往々にして、強い承認欲求を抱えている。
ならば、その欲求を満たしてやれば良い。
そしてそれは、奴らがより羨望を、憧憬を抱く者からの言葉である程、その効果を増す。
だからこそ、俺は強者として不敵に振る舞った。
無数の敵意に、怒号に屈さず、己が信念を徹し、正義を振り翳し、その刃でもって、征く道を切り拓く、そんな強者の姿を。
結果、あのチンピラ…………カストだったか? は、あっさりと俺の思い通りに動いてくれた。実にチョロい。
流石に威圧スキルで気絶する人間が出てきたのには焦ったが、結果的により早く話を進めることが出来たので良しとしよう。
因みに、今回俺が使用した威圧スキルは、魔力に殺気を乗せて拡散させ、精神力に応じて相手のステータスを減少させる、というもの。
減少効果は使用者の精神力に比例して、概ね1割減から半減まで。
ある程度の精神力をもった前衛職しか習得出来ないくせに、使用に魔力を要する上、その燃費が非常に悪く、死にスキル扱いされている不遇のレアスキルだ。
また、同じく使用した逆境スキルは、3つの条件の内、1つでも条件を満たせば、精神力に応じて全ステータスを強化する、というもの。
その条件は、
一、 敵のレベルが自身を上回る。
二、 敵のステータスが1つ以上自身を上回る。
三、 敵の数が自身を含む仲間の数を上回る。
…………というもの。
容易に満たせるが、強化の幅が一般的に三割増し程度と低く、習得に多大なスキルポイントを消費する、という欠陥スキルだ。
前者は異様に魔力の高い俺ならば問題なく、後者に関しては狂化が最終ステータスを上昇させることから、俺の場合は6割ステータスが上昇し、天賦の才により消費スキルポイントも2pと低コストだった。
その為、運用におけるデメリットが消失し、かつ効果が有用だと採用したのだが…………少し資料の情報と食い違いがあるようだし、十分な検証が必要だろう。
さて話を戻すが、あのやり取りには、副次的な効果も期待出来る。
カス何とかを屈服させるまでのやり取りでは、周囲の冒険者たちからの俺への認識は、
『狂化を制御する程の精神力を持ち、殺気だけで荒くれ者たちの意識を奪い、視認できない程の速さで移動し、己への侮辱に対し、抜剣する事も厭わない危険人物。』
といったところだろう。
…………自分で言っておいて何だが、相当にヤバイ奴だな俺。
そんなヤバイ奴だと認識されたままでは、いらぬ悪評に足を取られかねない。
そこで最後のやり取りを見せつける事で、『話が通じる人物』という印象を周囲に刷り込んだのだ。
敵対者の筆頭であっても、認める点があれば認め、賞賛する。
そういった懐の広さを示しておけば、無闇矢鱈に悪評を広めたり、敵対しようという輩は大幅に減らせるだろう。
それでも悪感情を抱く者は、ゼロにはならないだろうが、やらないよりは100倍マシだ。
…………と、そんな思惑を掻い摘んで説明していると、それを聞いていた2人の視線が、驚愕を通り越して、徐々に呆れたようなものに変わっていく。
あれ? 何かおかしな事言った?
「先輩…………。」「ハチマンさん…………。」
「「冒険者より詐欺師の方が向いてるんじゃないですか?」」
そして声を揃えて、そんなこと言い出す始末。
終いには泣くぞ? わんわん泣くぞ?
とは言え、その自覚は十分以上にあった俺は。
「…………放っといてくれ。」
苦し紛れに、そう言い返すことしか出来なかった。
…………悔しいです!
最後までご覧頂き、ありがとうございます。
前書きで述べました通り、本来であれば連投したかったのですが、力及ばず、申し訳ございません。
次話に関しましては6割程度執筆しておりますので、次回はそう間を空けず更新出来ると思いますので、どうかご容赦を。(土下座TAKE2)
それでは、本日の言い訳に参りたいと思います。
①八幡の策略(笑)
やはり本家のようには参りませんね。(白目)
そもそも書き方を間違えた気も致します。
…………三人称を挟むんじゃなかったかな?
広い目で見て頂けると幸いです。
②オリジナルスキル
第8話で八幡が取得したスキルの内、2つをお披露目する事が出来ました。
八幡の取得したスキルを整理しますと。
・天賦の才
・女神の祝福(幸運)
・心理掌握
・気配遮断
・両手剣
・威圧 New!
・逆境 New!
・??? New!
ということになります。
オリジナルスキルが少々強過ぎる感はありますが、八幡はカズマさんと違い、正統派チート主人公路線を貫いてもらうつもりなので、まぁいいかな、とこのような仕様になっております。(笑)
広い心で、お許し頂けると幸いです。
以上、本日の言い訳でした。
さて、つい先日ですが、皆様のご声援のお陰で、日間ランキング3位にランクインすることが出来ました。
加えて、お気に入り登録数も2000件を突破いたしました。
本当にありがとうございます。
これに慢心することなく、今後も精進を重ねていく所存です。
どうか皆様も、最後までお付き合い頂けると幸いです。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう。