この素晴らしくあざとい後輩との冒険者生活はまちがっている。 作:水刀 言心
イチャイチャ回・続!!
と言っても、前回より甘み成分は少な目かもです。(汗)
なお、今回は マ ジ で !! 独自解釈の嵐です。
苦手な方は、本当にごめんなさい。
大丈夫だ、問題ない、という皆様、お楽しみ頂けると幸いです。
「は? ちょ? え?」
「うわ、先輩動揺し過ぎじゃないですかね? 触れてる所、めちゃくちゃ熱くなってますよ?」
「そりゃそうだろうよ!?」
慌てふためく俺に、あくまでも冷静に、一色が指摘してくるが、こっちはそれどころじゃない。
今、この後輩は何と言った?
俺の聞き間違いか、とそんなことを思い付き、一色に尋ねようとするが。
「むぅ、わたしが先輩のこと大好きだったら、そんなに困ります?」
機先を制するかの如く、一色に尋ねられ、あえなく轟沈した。
…………マジでか。
「…………からかってる、訳じゃないんだよ、な?」
「さ、さすがに、言っていい冗談かどうかくらい考えてますよぉ。」
不満げに言った一色の台詞に、再び頭が真っ白になる。
とはいえ、その言葉に納得もした。
俺の知る限り、一色 いろはは己の可愛らしさを逆手に取り、他者をからかう事はあっても、悪戯に心を弄ぶような事はしない。
その程度には、彼女を信用している。
が、それ故、この告白に、俺はなんと答えれば良いのか、皆目見当がつかないでいた。
…………いたのだが。
「まぁ、恋愛的な意味かと聞かれたら、正直わたしもはっきりとは分からないんですけど…………。」
一色が放った一言で、もう何度目になるか分からない、思考停止に陥った。
…………なんなの、もう。
「…………ごめん。マジ無理。処理が追いつかない。どーゆーことなの…………。」
「な、何だか不思議な口調になってませんか? それにどういう事かと聞かれても…………うー、わたしも、上手く言葉に出来ないんですけど。」
そう前置きをした上で、一色はぽつり、ぽつりと、取り留めのない話をするように、語り始めた。
「ええと、そもそもわたしが、先輩の事を好きだって自覚したの、クリスマスイベントの終盤くらいでして…………その時って、正確には先輩が、っていうより、先輩を含めた、奉仕部の3人が大好きって感じだったんですよ。」
「もちろん、わたしが奉仕部を好きになったきっかけは先輩ですし、3人の中で1番はって聞かれたら、そりゃもちろん1番大好きなのは先輩だって即答しますけど。」
「でも別に、先輩と恋人になりたいとか、お2人から先輩を盗ろうだとかはなくて…………時々先輩にちょっかいかけちゃうことはありましたけど、あれは2人の反応が可愛いからつい、って感じですし。」
「何ていうか、仲良くしてる3人を見てるだけで充分というか…………。この際なので、ぶっちゃけちゃいますと、生徒会とか葉山先輩とか、本当はどうでも良くて、奉仕部に行く口実が欲しかっただけなんですよね。」
「ただ、3人を見てて、この間には入れないなぁ、って実感しちゃうと、ちょっと寂しくなって泣いちゃったりもして…………自分でも、どんだけ先輩たちの事好きなの!? って、ちょっと引いちゃうくらいでした。」
「そんな感じだったんですけど…………こうして異世界に来ちゃって、ここにはお二人はいなくて、わたしが先輩を独り占め出来るんだ、って思ったら、わーっとなっちゃって、歯止めが利かなくなっちゃったと言いますか…………。」
「でもでも、ルナさんが先輩にアピールしてるとこ見たら、渡すもんか! ってなっちゃうくらいには独占欲もありまして…………。」
「これが恋愛感情なのか、単に不安から来る依存心なのか、もともとある親愛なのか、自分でも良く分からなくなっちゃって…………みたいな感じなんですけど…………ええと、ちゃんと伝わりましたかね?」
話を区切り、俺に預けていた体を起こして、こちらを振り返る一色。
そしてこちらを見た瞬間、その表情が引き攣った。
「せっ、せんぱいどうしたんですかっ!? 限界まで息止めてた人みたいになってますよ!?」
…………何でよりによってその例えなんですかね?
一色が指摘した通り、現在俺の顔は、人生最大級の赤さを誇っているのだろう。
鏡を見なくとも、それを自覚できる程に、俺の体は頭の天辺から爪先まで、余す事なく熱を帯びていた。
一色の腰に回していた手をそっと離し、自分の顔を両手で覆う。
「…………お前さぁ、頼むからもうちょっと言葉を選べよ…………女子高生の『大好き』はな、ぼっちにとって…………いや、思春期の男子高校生にとっては、時に何よりも強力な凶器なんだぞ?」
「えぇっ!? せんぱい、それ照れてたんですかっ!? どう見ても窒息か、熱湯にでも浸かったみたいな赤さでしたけどっ!?」
…………皆まで言うんじゃないよ。
女子高生が口にする『大好き』と言う言葉は、時に神器にも匹敵し得る凶器なのだ。
例えその言葉の対象が自分ではないと分かっていても、気になる女子の口から、その言葉が出ただけでドキッとしてしまい、それを聞けただけで、その日一日何だか得をしたような気になってしまう。
それが悲しき男子高校生の性なのだ。
そして、自分に向けて言われたわけでもないのにその有様だ。
自分に向けて、しかもこんな至近距離で、それを連呼されようものならば、耐えられるはずがないではないか。
あまつさえ、度々口にしていた生徒会や葉山のことが、自分たちに会いに来る為だけの口実だったとか、独り占めとか、渡さないなどと聞かされて、平静を保てる訳がない。
こいつ、俺を悶死させる気なんじゃないか、と本気で疑うレベルだ。
「…………無理。もうホント無理。しばらくそっとしといて…………。」
「えぇー…………。ま、まぁはい、分かりました…………。」
困惑する一色を他所に、俺は冷静さを取り戻す為、脳内で『最も恥ずかしかった黒歴史決定戦』を開始するのだった。
「…………鬱だ。◯のう。」
「顔色戻ったと思ったらいきなり何なんですかっ!? というか、女の子に大好きって言われて鬱とか失礼にも程がありませんかねぇっ!?」
「いやそっちじゃない。こっちの話だから気にするな。冷静になる為に、ちょっと脳内で苦行してて、心が折れそうなだけだから。」
「れ、冷静さを取り戻す方法、斜め下過ぎますよ…………。」
軽く50回は◯にたくなる思いをしたが、その甲斐あって、幾分か落ち着きを取り戻すことができた。
とは言え、一色にかける言葉が見当たらない事は、さっきの話を聞かされる前と変わらないのだが。
…………そもそも、一色は俺に一体どうして欲しいのだろうか?
そんな事を考えて、彼女の顔へと視線を向ける。
すると一色は、照れ臭そうにして、体ごと正面を向いてしまった。
いや、そういう反応されると、こっちも恥ずかしくなるんですが?
そして再び、ぽふん、と俺へと体を預けてくる。
「…………そ、それで、落ち着いたなら、何か言って欲しいんですけど? その、恋愛感情かどうかはともかく、一応、大好き、って告白した訳ですし…………。」
照れ臭さからか、決してこちらに表情を見せないまま、ど真ん中どストレートの豪速球を投げ込んでくる一色。
言い分は尤もなのだが、その言葉が見つからなくて困ってるんですがそれは?
「あー…………何だ? 今日びの女子高生って、そんな色々考えて恋愛してるもんなのか?」
「こ、告白の返事を聞かれてその返しとか、どんだけ先輩なんですかっ!?」
ついに八幡だけではなく、先輩まで悪口のカテゴリーになったらしい。
やったねユキペディアさん!
…………何がだよ。
「まぁせんぱいですし、良いですけどね…………んー、多分普通はそこまで考えてないと思いますよ? 何となく良いな、って思ったら付き合って、何となく違うな、って思ったら別れて…………そんな感じじゃないですかね?」
「えぇー…………それはそれで夢が無さ過ぎんだろ。って待て。それじゃ何でお前、そんな七面倒なこと考えてんだ?」
「…………それ、先輩が聞きます? わたし言いましたよね? 『本物』が欲しくなった、って。」
その言葉に、再び凍りつく俺。
先程の脳内黒歴史王決定戦において、猛威を奮ったその記憶がリフレインする。
「…………後生だから、忘れてくれ。いやホント、マジで…………。」
「ふふっ、お断りです♪ わたし、忘れられません、とも言いましたよ?」
項垂れる俺に、一色は楽しげにそう言うと、先程のように背を逸らし、首筋へ額を押し当ててくる。
「…………わたしが先輩に、先輩たちに興味を持ったきっかけって、言うまでもなくそれだったんです。だからこれは、わたしにとって、大切な思い出…………忘れられる訳ないじゃないですか。」
そう口にする一色の言葉は、酷く愛おしげで、彼女にとって、それがいかに大切な思い出か、如実に物語っているようだった。
「真剣に向き合ってる3人が、すごくキラキラしてて、眩しくて、羨ましくて、憧れて…………自分も、そうなりたいって、子どもみたいにそれが欲しいって、そう思っちゃったんです。」
口にしながら、一色はベッドについていた俺の右手に手を伸ばし、まるでガラス細工に触れるかの如く、そっと自分の右手を重ねる。
「きっとそれって、すごく疲れるし、面倒だし、他人からすれば…………ううん、自分たちでも、何年かして振り返ったら、ああ、バカな事してたな、って、そう思っちゃうような、そんなことなのかも知れません。」
恐らく、一色 いろはの言葉は正しい。
大多数の人間は、他者にも自分にも、そんな面倒な向き合い方をしてはいない。
俺でさえ、時を経て、経験を積み、いつかはそんな自分と、社会と折り合いを付け、より効率的な…………言ってしまえば、何となくでも、自他との向き合い方を見つけていってしまうのだろう。
しかし、それでも…………。
それでも、俺は…………。
いつの間にか、重ねられただけだったはずの、一色の右手は、しっかりと俺の右手を握っていた。
「…………それでも、それでもわたしは、やっぱり『本物』が欲しいんです。どうしようもないくらい憧れた、色も形も、あるかすら分からない、そんな何かが。」
思わず、息が詰まる。
自分にとって、恥だとすら思っていたあの言葉が、こんなにも彼女の心を動かしていたことに、驚かされた。
俺の手を握る一色の手に、さらに力がこもる。
「…………だから、いろいろ考えもしますよ。きっとそうしないと、見つけられないと思うから。先輩だって、そうなんじゃないですか?」
その問いかけに、俺は答えることが出来なかった。
しかし今回は、決して返す言葉が見つからなかった訳でも、その言葉を否定したい訳でもない。
一色 いろはが口にした、その一語一句が、いつかだったか、俺が自問したその言葉と重なり、胸が詰まったのだ。
…………本当に、何てあざといんだこの後輩は。
散々に文句を言った後で何だが、この体勢で良かったと、心から思った。
この姿勢なら、顔を見られずに済む。
きっと今の俺は、誰にも見せられないような、酷い顔をしているだろうから。
だから、今感じている、胸に生じた仄かな温みは、きっと安堵の感情なのだろう。
そう自分に、言い聞かせることが出来る。
だから、そう、良かったんだ…………。
「ちょ、ちょっとせんぱいっ? ちゃんと聞いてますかぁ?」
「…………聞いてるよ。っつか、この距離で聞いてないとか有り得ないから。」
だんまりを決め込んでいた俺に、抗議の声を上げる一色。
それに答えながら、俺は今日何度目になるか分からない、苦笑いを浮かべた。
「…………まぁ、俺にも良く分からん。だから足掻いてるんだろ。じたばたと、みっともなく。だから、少なくともそこは…………何だ。お前と一緒、なのかもな。」
存在すら疑わしい、その輪郭すら掴めない、『本物』とやらを探して、俺も一色も彷徨っている最中なのだろう。
それは、何て途方も無い話だろうか。
諦めとも、感傷ともつかない、そんな万感の思いを込めて、俺はそう口にした。
一色がそれをどう捉えたのか、この姿勢では、表情から窺い知ることすら出来ない。
ただ…………。
「何ですかそれ。…………本当、先輩は先輩なんですから。」
呆れたように、呟いた彼女の声色が、どこか嬉しさを孕んでいるように感じたのは、気のせいではないだろう。
最後までご覧頂き、本当にありがとうございます…………が!!
いつから、これで終わりだと錯覚していた?
…………というわけで、もう少し続きます。(泣)
イチャイチャ回になると、どうしても文字数が増えてしまう、どうしようもない作者でございます。(土下座)
そういう事なので、あとがきは次回まとめて、3話分書き込む予定です。
確か、3〜5話の時も似たような事してた記憶があるんですよねぇ…………。
つくづく話が進まなくて申し訳ございません。
討伐クエストが遠いよぉ…………。
こんなどうしようもない作者ですが、今後ともお付き合い頂けると望外の喜びです。
それでは、また次回の更新でお会い致しましょう。
…………あ。
流石に次回でイチャイチャ回は一先ず完結しますよ?(笑)