この素晴らしくあざとい後輩との冒険者生活はまちがっている。   作:水刀 言心

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週に一回程度と言ったな? あれは嘘だ!

というのは冗談で、プロローグは書き上げておりましたので投稿します。


プロローグ② この呪われた装備たちに救済を!

 

 

「混乱させてしまったみたいで、申し訳ありません。」

 

 

そう言って、頭を下げてくれたのは、2人目の自称女神様、幸運の女神エリス様。

 

アクアに見送られた俺たちは、異世界ではなく、何故か先程まで居た場所と、そう変わらない空間に飛ばされ、アクアの時と同じような挨拶を受けた。

 

謎の無限ループにでもハマったのかと、内心ビクついていたのだが、どうやらそう言うわけでは無いらしい。

 

 

「本来であれば、あなた方2人には、このまま異世界へと旅立って頂く所なのですが、実はいくつかお願いがありまして、こちらにお呼びしたのです。」

 

 

…………と、言うのがエリス様の言い分である。

 

 

「お願い、ですか?」

 

 

目を白黒させながら、そう聞き返す一色に、エリス様は、見る者を虜にしてしまいそうな、可憐な笑みを浮かべて頷いた。

 

 

「実は、お2人に受け取って頂きたい装備がありまして。その、実はその装備というのが…………所謂『呪いの装備』というモノなんです。」

 

 

…………あれ? この人女神様じゃなくて、悪の魔女なんじゃね?

 

そう思ってしまった俺は、決して間違っていないと思う。

 

 

 

 

 

危うく女神様を魔女認定するところだったが、話を聞いてみると、納得のいく理由が存在した。

 

今から半世紀以上前、1人の転生者が異世界へと降り立った。

 

彼は神々から『神器に比肩し得る武具を創り出す能力』を授かっていた。

 

しかし、残念ながら彼には、冒険者としての才能が著しく欠落していた。

 

その事実に彼は大きく落胆したが、やがて立ち直り、持ち前の器用さと、神から授かった能力を活かすため、鍛治師に弟子入りすることに。

 

やがて独立した彼は、数々の武器や防具を生み出し、魔王軍に脅かされた人類に、大きく貢献した。

 

誰もが彼を褒め称え、彼が生み出した武具を欲しがった。

 

 

しかし、彼の名声が世界中に広まった頃、悲劇は起こった。

 

 

「…………さて、少し話が逸れますが、彼は古典文学を愛しておりまして、特にウィリアム・シェイクスピアの作品を愛読していたそうです。お2人はシェイクスピアの四大悲劇というものをご存知でしょうか?」

 

「え、ええと、ロミオとジュリエット、くらいなら。」

 

「違うぞ一色。ロミオとジュリエットは有名だが、四大悲劇には入らない。」

 

「く、詳しいですね。流石は国語学年3位。」

 

「まぁ、濫読家なだけだけどな。『オセロー』『リア王』『ハムレット』『マクベス』の四つですよね?」

 

「はい、その通りです。お詳しいんですね、ハチマンさん。…………話を戻しますが、彼は自身の作品に、古典文学の作品名、或いはそれに関連した銘と能力を付与していました。」

 

 

最高の鍛治師であった彼の作品の内、自他共に認める至高の品が四つ存在した。

 

 

簒奪の魔剣『マクベス』

 

慟哭の鎧『レクスリア』

 

因果の魔槍『ハムレット』

 

転換の法衣『オセロー』

 

 

神をして、神器と遜色無いと言わしめたそれらは、対魔王軍、対魔物への切り札として、多大な戦果を齎した。

 

 

しかし、それは悲劇の始まりに過ぎなかった。

 

 

『マクベス』の所有者が、自らの主に対して反旗を翻した事から全ては始まった。

 

『マクベス』の所有者は遂には主を弑し、一時は領土をも手にしたが、やがて主の息子らによって追い詰められ、魔剣に強力な呪いを残し自害した。

 

無論、それだけでは終わらない。

 

『オセロー』の所有者が、『レクスリア』の所有者が、『ハムレット』の所有者が…………次々と、まるでその由来となった物語をなぞるように非業の死を遂げた。

 

そして、それぞれが武具に決して消し去れぬ呪いを残し、後に武具を手にした者たちにも、次々に不幸が襲い掛かった。

 

そして人々の恐怖、怒りは、それを生み出した鍛治師、転生者である彼に向けられる。

 

程なくして彼は捕らえられ、魔王軍との内通の嫌疑から火刑に処される。

 

最期まで無実を主張した彼の声は、終ぞ誰にも届く事は無かった。

 

 

「…………彼の死後、四つの武具を回収した事で判明したのですが、それらには『因果を捻じ曲げる』効果が、付与されていました。無論、彼にはそんな付与をした覚えはなく、物語への愛着が、無意識に起こしてしまった悲劇、というのが事の真相です。」

 

「「…………。」」

 

 

急に聞かされた壮大な悲劇に、一色と俺は、ただただ押し黙ることしか出来なかった。

 

そしてふと、当然の疑問が浮かぶ。

エリス様は何だって、そんな物騒な品を俺たちに渡そうとしているのか、と。

 

 

「先程お話しした通り、これらの武具には、2つの呪いがかけられています。1つは『因果を捻じ曲げ、所有者に悲劇を齎す呪い』。2つ目が、最初の所有者が遺した無念による『装備者を狂気に堕とす呪い』です。そしてこれらの呪いには、実は明確な対処法が存在するのです。前者は死の因果を断ち切った者、すなわち転生者には効かず、後者は高い精神力を持つ者には効きません。」

 

 

エリス様はそこで言葉を区切ると、困ったような、しかし優しい笑みを浮かべた。

 

 

「これは、亡くなった彼の最期のお願いなんです。『私の生み出した武具が、悲劇を齎したのは事実だが、武具たちに罪は無く、悪名を刻まれたまま封印されるのでは、生みの親として申し訳が立たない。だからどうか、どうか彼らを、呪いを克服し正しく振るえる者に託して欲しい。』と…………。そして今日、ようやく私は、彼らを託すに相応しい方々に出逢う事が出来ました。」

 

 

エリス様はゆっくりと椅子から立ち上がると、俺たちの目の前まで歩を進める。

 

立ち止まった彼女は、俺に右手を、一色に左手を伸ばし、切なる声でこう嘯く。

 

 

「…………どうか、彼の最期の願いを聞き届けて頂けませんか?」

 

 

…………やはり、彼女は女神より、魔女か女悪魔の方が、よほど性に合っているのでは無いだろうか。

 

そんな表情で、そんな声で懇願されて、断れる人間など、居る訳がないのだから。

 

 

 

 

 

「あの、ふと思ったんですが。」

 

 

武具の受け取りを承諾した後、俺は気になっていた事をエリス様に問い掛けた。

 

 

「その呪いって、女神様の力で解く事は出来なかったんですか? もし解けるなら、条件を狭めず、人格的に信用できる人間なら、直ぐにでも見つかったんじゃ…………。」

 

「あー、あ、あはは、はは…………。」

 

 

そんな俺の問いかけに、エリス様は気まずそうに視線を逸らす。

 

あ、これ絶対しょうもない理由で呪い解かなかったパターンだわ。

 

 

「そ、その、私もそれは直ぐに提案したんですよ? ですが彼は『いや、呪いの武具というのは、それはそれで趣深いものだから、是非このまま使って欲しい』って言って取り合ってくれなかったから…………。」

 

 

案の定である。

 

先程の重たいやり取りは、一体なんだったのか。

 

思わず一色と共に、半目で女神様を睨みつけてしまった。

 

 

「か、彼は根は善人なのですが、空想に耽る気らいがありまして、日本に転生した今でも、自分の事を『剣豪将軍』と名乗ってみたり、その、らいとのべるなるものの執筆に夢中で勤しんでいる有様でして…………。」

 

「せ、先輩、それって…………。」

 

「おい止めろ。お前の言いたい事は分かるが、その先を聞きたくはない。」

 

 

あいつ前世で何してくれちゃってんの?

 

というか、前世から中二病だとか、業が深過ぎるだろ…………。

 

 

 

 

 

「気を取直して、2つ目のお願いについてお話ししてもよろしいでしょうか?」

 

 

知りたくもなかった事実に、愕然としていた俺たちだが、エリス様の言葉で無理矢理に意識を切り替える。

 

2人して頷いた所、エリス様はようやくそれを語り始めた。

 

 

「実の所、こちらの方が重要な案件でして、場合によっては、ハチマンさんの命に関わる問題なのです。」

 

 

命、と言われて、俺は自分の心臓が大きく跳ねるのを自覚した。

 

今しがた死んだばかりで、また命の危機にさらされるなんて冗談じゃない。

 

固唾を飲んで、俺はエリス様の言葉の続きを待つ。

 

 

「単刀直入に言いますと、ハチマンさん、イロハさん、私の信者になって頂けませんか?」

 

「「はい…………?」」

 

 

その衝撃発言に、俺たちは2人して素っ頓狂な声を零すのだった。

 

 

 

 

 

「…………幸運値が低い、ですか?」

 

 

唐突な宗教勧誘の真意をエリス様に問いただした所、帰ってきた答えはそれだった。

 

 

「はい。イロハさんもそこそこの低さなのですが、ハチマンさんは最早群を抜いていると言いますか、寧ろその年齢まで良くぞご無事で、と言いますか…………。その、危機的状況を理解して頂くために、測定担当部署の者の言葉をそのままお伝えしますと『ヤバイ。とにかくヤバイ。長らくこの仕事してるけど、幸運値がマイナスで始まってる人間なんて初めて見た。ヤバイ。このまま異世界に送ったら、ギルドに辿り着く前に死ぬんじゃないか? マジでヤバイ』…………との事でして。」

 

「担当部署の人の語彙力も大概ヤバイですけどね。」

 

「先輩、ショックのせいか論点ズレてますよ。」

 

 

…………うるせえよ。

 

 

「と、とにかくそういう訳でして。このままお2人を異世界にお送りすると、余りにもふび…………コホンッ! 余りにも危険なので、私の祝福を授けよう、という話になりまして。」

 

「「今不憫って言いかけましたよね!?」」

 

「そ、そんなことありませんよ? た、ただ、本来であれば、女神の祝福は長らく修行した僧侶や、偉業をなした英雄に与えるものでして。」

 

「…………角が立たないよう、せめて俺らにはエリス様の信徒になって欲しい、と?」

 

「そういう事になります。話の流れでご理解頂けたと思いますが、私は幸運の女神ですので、祝福を与えた者の幸運値に、大きな補正を施すことが可能なのです。…………少なくとも、マイナス分くらいは打ち消して、人並みの幸運値には出来るはずです。」

 

 

最後の方で自信が無くなってきたのか、尻すぼみになるエリス様の声に、言いようのない不安を感じる。

 

とはいえ、今の話を聞いて、『結構です』と突っぱねられる程、俺の肝は座っていなかった。

 

 

「…………よろしくお願いします。」

 

 

結論…………2名様、入信です。

 

 

 

 

 

そして俺たちは、エリス教への入信を宣言し、御神体であらせられる女神様本人から洗礼と祝福を受けるというVIP待遇で入信を果たした。

 

戒律は俺が想像していたような厳しさは無く、生活に影響はなさそうだった。

 

入信を終えた俺たちは、例の中二病装備を受け取り、着替え、また恐らくアクアが渡し忘れていたらしい軍資金を受け取り、エリス教の戒律についての説明を受け、不死・即・斬の心得と魔・即・斬の心得について、半ば洗脳染みた教育を施され、今度こそ本当に旅立ちの時を迎えた。

 

 

「それではお2人とも、準備はよろしいでしょうか?」

 

 

エリス様の言葉を受け、一色の方に視線を向ける。

 

目が合うと一色は、小さく笑みを浮かべて頷いた。

 

それに頷きで返し、俺は視線をエリス様へと戻す。

 

それを承諾と受け取ったのだろう、エリス様は満足げに微笑み両手を広げた。

 

足元に再び青白く輝く魔法陣が現れる。

 

 

「さぁ、勇者たちよ! 旅立ちの「「あ、さっきもやったんで、大丈夫です。」」…………せめて最後まで言わせて下さあああああいっっ!!」

 

 

エリス様の絶叫に見送られながら、俺たちを謎の浮遊感が襲う。

 

こうして、今度こそ俺たちは、異世界へと旅立ったのだった。

 









最後までお読み頂き、ありがとうございました。

前回同様、少し言い訳を。

①呪いの装備
ぶっちゃけ作者の中二病が再発しただけです。
生暖かい目で見守ってやって下さい。

②材なんちゃらの前世
このすば!における転生者は、皆どこか残念なので、ちょうど良い人ばし…………人材だったのです。

③エリス教入信
今後の展開の為、としかコメントしようが…………。
今後ともご贔屓に。(笑)


以上になります。

さて、これで今度こそ週1回程度の更新となります。

是非、今後ともお付き合い頂けると幸いです。

それでは、また次回の更新でお会いしましょう。
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