この素晴らしくあざとい後輩との冒険者生活はまちがっている。 作:水刀 言心
皆様のおかげで、日間ルーキーランキングにランクインする事が出来ました。
お礼に、というのもおかしな話ですが、1話分書き上がりましたので、投稿させて頂きます。
お楽しみ頂けると幸いです。
《名もなき冒険者の証言》
その日、ギルドは特に変わったこともなく、荒くれ者どもの怒号と、受付嬢の挨拶が行き交う、いつも通りの光景が繰り広げられていた。
そんな日常が、音を立てて崩れ落ちたのは、ちょうど昼を過ぎ、昼飯目当ての客で、ギルドがごった返し始めた頃だ。
聞き慣れた鈴の音と共に、ギルドの羽根扉が開かれる。
さっき言ったように、時間が時間だ。
俺はさして気にも止めず、そちらを振り返る事もしなかった。
しかし、直ぐに異変は起こった。
あれだけ騒がしかったギルドが、しんと、静まり返ったのだ。
何事かと、周囲を見渡せば、皆一様に入り口の方を見つめて固まっている。
俺は直ぐ様そちらへ視線を向け、他の連中と同じように息を飲んだ。
そこにいたのは、1人の女。
いや、幼さの残る顔立ちと、小柄な体躯から、少女というべきだろう。
亜麻色の髪に黒目がちな大きな目。
黒を基調とした荘厳な法衣。
首にはエリス教のロザリオ。
何より目を引いたのは、彼女の身の丈を越える長大な黒い槍。
そんなチグハグは出で立ちの少女は、これだけの視線を一身に集めながらも、しかし動じた様子はなく、その大きな目をキラキラと輝かせながら周囲を見渡し、不躾な視線を送っていた1人、若い剣士と目が合うと、にこり、と可憐な笑みを浮かべた。
笑みを向けられた剣士は、そりゃあもう酷い取り乱し様で、耳まで真っ赤にした上、盛大に椅子から転げ落ちていた。
そんな剣士の様子がお気に召したのか、少女はくすくすと笑みを零し、受付に向けてだろう、ゆっくりと歩き始める。
そしてちょうど件の剣士の前を通り過ぎようとした時だ。
その剣士は完全に少女の美貌に魅了されていたんだろう。
何をとち狂ったのか、彼女を振り向かせようと、その肩に手を掛けようとしたのだ。
しかし、その目論見はあっさりと失敗に終わる。
がちゃり、という金属音と共に、剣士の腕が何者かに払われたのだ。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
剣士と少女の間には、確かに誰もいなかったからだ。
しかし、その正体に気づいた時、ギルドは先程とは違う、ひりついた静寂に包まれた。
そこにいたのは、1人の男だった。
宵闇を想起させる漆黒の全身鎧。
腰には一見して上等と分かる黒い両手剣。
決して巨躯ではない、中肉中背でありながら、全身から言いようのない迫力を滲ませる漆黒の騎士が、いつのまにか、そこに立っていた。
これには、俺も慌てたさ。
何故って?
俺は盗賊職だ。気配察知には、それなりに自信がある。
しかし、そんな俺も、奴の気配にはまるで気がつかなかったんだからな。
手を払われた若い剣士も、その瞬間まで奴に気がつかなかったのだろう。
驚きの余りか、奴の迫力に当てられたのか、茹で蛸の様に赤かった顔を蒼白にして、どさり、と音を立てながら腰を抜かしていた。
それを意にも介していないのか、鎧の男は剣士を一瞥することも無く、まるで影の様に少女の後ろに付き従う。
その豪胆さから、俺は確信した。
こいつらは、俺たちとは次元の違う、凄腕の冒険者だ、と。
気がつくと、そいつらは受付に辿り着いていて、1番人気の受付嬢、ルナさんの前に立っていた。
「ぼ、冒険者ギルドへようこそ。きょ、今日はどういったご用件でしょうか?」
普段から荒くれ者たちを相手に揉まれ、必要であればそんな奴ら相手に、一歩も引かない胆力を見せるルナさん。
そんな彼女でも、さすがにこんな次元違いの化け物の相手をした事は無かったのだろう。
声は上擦り、緊張でその肩は震えていた。
一体、こいつらは駆け出しの集まるこの街に、何を求めてやってきたのか。
全員が固唾を飲んで見つめる中、連中が発した言葉は、俺たちの想像を遥かに超えたものだった。
「「冒険者登録をしたいんですが。」」
声を揃えてそう言った少女と鎧。
水を打ったような静寂の後…………。
「「「「「はああああああああっ!!!?」」」」」
ギルドに居た全員がそう叫んだのは、当然の結末だろう。
《名もなき冒険者の証言 了》
エリス様に送り出された俺たちは、今度こそ異世界に辿り着いていた。
見覚えのない街並み、行き交う人々の格好。
全てが既知のものとは大きく異なるその様子に、俺はここが異世界であるという事実を噛み締めていた。
「ほぁーーーー…………ホントに異世界に来ちゃったんですねぇ…………。」
俺の直ぐ隣で、あざとい溜め息を零し、感慨深そうに呟く一色。
彼女は見慣れた制服姿ではなく、例の中二病装備…………転換の法衣『オセロー』という、何というか修道服をファンタジーアニメチックにアレンジした様な服に身を包んでいた。
そして右手には、彼女の身長をゆうに越えた長槍、因果の魔槍『ハムレット』を握りしめている。
…………何というか、制服姿を見慣れてるせいか、クオリティ高めのコスプレにしか見えないな。
まぁ、俺も人の事は言えないのだが。
「ちょっと先輩? 黙らないで下さいよ。 兜で顔が見えないから、ホントに先輩か疑っちゃうじゃないですか。」
「…………そりゃ悪うございました。」
一色の言った通り、俺の顔は現在、フルフェイスのヘルムで覆われていた。
尤も、覆われているのは頭だけでは無く、全身余す事なくだが。
そう、俺も一色と同じく、例の中二病装備をまとっているのだ。
慟哭の鎧『レクスリア』…………まさか全身鎧だったとは。
お陰で着込むのには相当苦労した。
寝床を確保したら、死ぬほど着脱の練習しないとダメそうだ。
因みに腰の後ろには、簒奪の魔剣『マクベス』を携えている。
ハムレットに比べれば大した長さではないが、そこそこの剣身を持つこの魔剣は、エリス様曰く両手剣に分類されるとのこと。
スキル選択時は気をつける様に、などと、釘を刺された。
「んー…………やっぱり顔が見えないと落ち着きませんね。まぁ、今の先輩だと顔が見えてても違和感半端ないですけど。むしろ隠してた方が良いですね。…………羽虫に集られてもウザいですし。」
「おい。腐った目は直してもらったのに、何でまだ虫にたかられてんだよ。あれか? それは暗に俺の性根が腐ってることを揶揄してんのか?」
「被害妄想激し過ぎませんかね? …………まぁ、先輩が脱ぎたいなら止めませんけど、面倒なことになるのは確実ですよ? これ、一応ちゃんと先輩のこと考えて言ってあげてますからね?」
「お、おう? ま、まぁ、そういう事なら…………。」
「うんうん。素直で大変よろしいです。それじゃ、冒険者ギルドでしたっけ? 早速向かいましょう♪」
花が咲いたような笑みを浮かべる一色。
そしてそんな彼女に手を引かれながら、俺は冒険者ギルドへと向かうのだった。
そして辿り着いた冒険者ギルドの受付にて、登録をしたいと告げたところ。
「「「「「はああああああああっ!!!?」」」」」
…………こんな大絶叫を頂く羽目になりました。
一色は意味が分からず、目を白黒とさせていたが、俺に言わせれば、然もありなん、である。
どう見ても上等と分かる防具と武器を持って、楽しげにギルドを練り歩く2人組。
誰がどう見ても凄腕の冒険者だと勘違いするだろう。
途中、俺にぶつかって、尻餅をついた剣士風の少年を、無視したのも良くなかったかもしれない。
いやだって彼、俺にまるで気付いてなかったみたいだし、これで声かけたら恥の上塗りだと思ったんだもの。
決して、知らない人に話しかけるのが、怖かった訳ではない。
というか、ぶつかるまで気づかないってどういうことなの?
全身鎧なのに、俺の存在感の無さはそこまで悪化してるの?
それはさておき、黙っていても話は進まない。
俺は溜息を吐きながら、誤解を正す為に、立派なものをお持ちな受付嬢さんに向き直る。
しかし…………ヘルム被ってて良かった。
こんなんどう足掻いたって万乳引力の法則には勝てねぇって。
「あのですね、多分俺たちの装備で勘違いされたんでしょうが、これは呪いの装備で、使える人間がいなくて死蔵されてたものを、適性があるからと譲り受けただけでして…………。」
「え、えぇと…………それじゃ、本当に?」
「はい、俺たちはレベル1の駆け出しで、モンスターとの戦闘経験もありません。」
「し、失礼しました! そ、それではこちらの用紙にご記入を。」
丁寧な対応が功を奏したのか、気を取り直した受付嬢さん(爆乳)は、テキパキと手続きを始めてくれた。
…………胸がでかくても、みんながみんな由比ヶ浜みたく、そこに栄養を吸われてる訳じゃないんだな。
まぁ、平塚先生や雪ノ下さんだってかなりのもんだったし、一概に言い切れるものでも…………!?
「…………先輩?」
寒気を感じて振り返ると、一色は笑みを浮かべて俺を呼ぶ。
しかし、その声色は何時ぞやと同じ、聞く者を腹の底から震え上らせるような、恐ろしく冷たいものだった。
「…………何を考えてたのか知りませんけど、その兜で何もかもを隠せると思ったら大間違いですよ?」
「ひゃ、ひゃい。しゅみませんでした…………。」
…………女子って怖い。つーか、いろはすやっぱ怖い。マジ怖い。
「用紙の記入は終わりましたか? はい、確認させて頂きます。…………問題有りませんね。それでは次に、お1人ずつこちらの水晶に…………。あっ、その前にヒキガヤさん、大変お手数ですが、本人確認のために、一度ヘルムを外して頂けますでしょうか?」
「げっ…………。」
「いや、何でお前が嫌そうなんだよ。」
冒険者カードは身分証にもなるんだから、本人確認くらい当然だろう。
まぁ、面倒なことは認めるが。
何故か俺に代わって呻き声を上げた一色を窘めつつ、俺は受付嬢さんの要求に従い、兜の留め金を外してヘルムを脱ぐ。
数分ぶりの開放感に、数度首を振り、俺は脱いだヘルムを右腕に抱えた。
「これでいいです、か…………?」
「…………(//////)。」
俺が掛けた確認の言葉に、何の反応も示さず、頬を紅潮させて呆然とする受付嬢さん。
…………え? 何この反応? どゆこと?
「…………ちっ。言わんこっちゃないですよっ。もう!」
そんな悪態と共に、突如として、ぱんっ、と両手を打つ一色。
「はっ!? し、失礼しましたっ。ひ、ヒキガヤさん、もうヘルムを戻して頂いて結構です。あ、ありがとうございました…………(//////)。」
一色の柏手で我に返ったのか、受付嬢さんは早口でそう促してきた。
因みに、その頬は今だに上気したまま。
気のせいか、出来るだけ俺を視界から外そうとしている様にも感じる。
一色の行動を含め、いまいち釈然としなかったが、俺は素直にヘルムを被り直すのだった。
「…………だから言ったじゃないですか。『面倒なことになるのは確実』だって。」
小声でそう伝えてくる一色に、俺は三度首を傾げる。
しかし、その疑問は直ぐに氷解した。
…………なるほど、これはつまり、男女のあれか。
自分でも、目さえ何とかすれば、とはよく口にしていたが、どうやら余程劇的な変化が俺の顔には起こっているらしい。
未だ自分で確認していないので、その程度は分からないが、初対面の女性を惚けさせるくらいには整っているのだろう。
つまり、これは人生最大のモテ期到来ということでは!?
…………ダメだわ。
いろいろと柵を抱えまくってた某人気者の姿がチラついて、全く喜べん。
やはり、俺は骨の髄からぼっちなのだろう。
ぼっち最高。ああぼっちよ。ビバぼっち。
「ちょっと先輩、せっかく治ったのに、また目が腐りそうなこと考えるのはやめて下さい。」
…………いや、ナチュラルに心を読むのはやめて下さい。
ホント、いろはすマジ怖い。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
思いがけずランキング入りを果たしましたので、調子に乗って連投してしまいました作者でございます。
今後もこのペースが続くのか、と問われそうですが、まず間違いなく不可能ですので、ご了承ください。いや割とマジで。
さて、本日の言い訳のコーナー。
①2人の服装の描写
手抜きです。(震え声)
八幡はまんま◯ate◯eroの◯ーサーカーを。
いろはについては、服装が◯ブリン◯レイヤーの◯官ちゃんの服装の、青い部分を白く、白い部分を黒くしたものを。
槍は◯GOの◯リュン◯ルデの◯マンシアなアレの黒バージョンをご想像下さい。
②(目だけ)きれいなはちまん
もはや何番線じかも不明。
やってみたかったのです許して下さい。
以上になります。
遅々として話が進まず、力不足を痛感しております。
なるべく早く続きをお送り出来るよう、頑張りたいと思います。
たくさんのご意見ご感想、お待ちしております。
皆さまのご意見ご感想が。作者にとってのカンフル剤になりますので。(笑)
それでは、また次回の更新でお会いしましょう。