僕たちは初音君の案内に連れられて、一般高校生には馴染み深い場所に案内された。
初音「ここに残りの新入生は全員集まってる。軽く挨拶を兼ねて自己紹介したらここから出る方法を考えよう。」
黒波「…ちょっと待って。間抜けな質問をするようだけど…ここって体育館?」
初音「あぁ、ここの施設はなぜか学校を連想させるような部屋ばかりなんだ。」
六魅「もしかしたら、ここはもう誰にも使われてない廃校舎なのかもしれないね…」
一之瀬「全体図を見てないから確定は出来ないけど、僕らが目覚めた所も教室みたいな場所だったし、その可能性は高いかもね。」
初音「…ここが何処なのかも後で全員で話し合おう。情報は共有した方がいいからな。」
そう言って、彼は体育館のドアを開けた。
ドアを開けた先でこちらの音に反応した10人程度の男女がこちらに一斉に視線を向ける。
にこやかにこちらに笑顔を向けるものもいれば、興味がないのかすぐにそっぽを向くもの…こちらに駆け寄ってくるものなどそれぞれ反応は違うものの、どの生徒にも超高校級の才能を持っているようなオーラを感じた。
勿論、左東さんや初音君の時も同じようなオーラがあったのかもしれない。
ただ、一度に各業界の一流高校生の視線を集めるとなると、その緊張感は少し意味合いは違うのかもしれないが"蛇に睨まれた蛙"と言っても差し支えないほどで、僕は緊張のあまり背筋が凍った。
中性的な顔立ちの女性「おっ、来たね♪君たちも私達と同じ超高校級の生徒ってことでいいんだよね?」
六魅「…うん、僕達4人も希望ヶ峰学園の新入生だよ~。」
茶髪ウェーブ髪の男子「男子3人、女子1人…これで16人だから、イレギュラーがない限りいい加減これで全員かな?」
タンクトップの少年「そうなんじゃねーの、てかいい加減どっかに穴でもあけて帰ろうぜ~。」
黒の学ランの男「…それはいかん…器物破損で捕まるぞ…」
紫髪ツインテールの少女「…今回の場合は器物破損ではなく建造物損壊罪になると思われますが…?」
黒の学ランの男「む…!?そうなのか…」
白衣の少女「構わんさ、馬鹿が一人捕まろうと私には関係ないからな。」
修道服の少女「もう!なんでさっきからそういう棘のある言い方ばかりするんですか!仲良くしましょうよ~!」
青いジャケットの女子「…はぁ」
…なんというか、いざお互いが喋ってるの聞いてると、普通の学生のやり取りに見えるな…
初音「まてまて、いっぺんにしゃべるな…まずはお互いの自己紹介をしてから…だろ?」
茶髪ウェーブ髪の男子「それじゃあ、効率的にするために、ここには全員で16人居るから二つの8人ずつのグループを作って自己紹介…ってことでおっけー?」
黒波「それで大丈夫だよ…そしたら俺と左東、六魅と一之瀬で別れて、あとの六人をそれぞれ入れ換えて自己紹介しようか。」
初音「了解だ。それじゃあグループ別けをするぞ…」
こうして初音君の指示のもと僕らは二つのグループに別かれて自己紹介をすることになった…
というか、こんな緊急事態に自己紹介する余裕があるって…超高校級の生徒って肝が据わりすぎじゃないか?
六魅「それじゃあ、誰から自己紹介する?」
初音「俺は既にお前らも含めて自己紹介済みだから良しとして…それじゃあ白石から時計回りで回していこう。」
修道服の少女「わかりました!一番手白石 莉央、がんばります!」
初音「あんまり気張らなくていいぞ。」
と言われた直後、初音君のアドバイスが耳に入ってなかったのか、彼女はお手本のように綺麗な正座を崩し、思い切り立ち上がってキラキラとした目で敬礼をしながら自己紹介をした。
白石「白石 莉桜(しらいし りお)です!趣味に料理と裁縫を嗜んでおります!よろしくお願いいたします!」
白石 莉桜…超高級のシスターだったけ?
六魅「確か、不定期に100%あたる予知夢をみることで話題になった奇跡の少女…だっけ?」
白石「そんな大それたものではありませんよ…主への感謝を一日も絶やさず、自分自身を人より律することで、稀に主からお告げを賜り、それを皆のために使う…私の才能と呼ばれるものは、その当たり前のことを繰り返していただけに過ぎません。」
い、いきなり雰囲気が変わった!?
…正直、予知夢とか主からのお告げとか非現実的過ぎて信じられないけど…100%ってことはきっと適当いっている訳ではないってことなんだろうな…
六魅「ふーん、成る程ねぇ~…つまり君は当たり前の善行を繰り返していただけ…そういいたいの?」
白石「そうですね…訂正点があるとすれば、私は自分の今までの行動を善行とは思っていないというとこだけですね。あくまで私がしてきた修練は、教会に勤めるものとして当然の責務でしたから。」
六魅「…噂通りの聖女だね。」
白石「いぇいぇ、私なんてまだまだ他の修道女に比べれば未熟ですので…希望ヶ峰学園で更に精進したいと思います!こんなところで私の自己紹介は大丈夫でしょうか?」
雰囲気が戻った…スイッチのメリハリがしっかりとできている子なのかな?
初音「OKだ、この後もそうだがゆっくりと問答をできる状況でもないから、詳しいことはここから出てからでよろしく頼む。」
六魅「りょーかーい。」
タンクトップの少年「んじゃ、次は俺がいくぜ!」
初音「あぁ、よろしく。」
タンクトップの少年「超高級級の陸上選手、坂田 颯天(さかた はやて)だ!しっかりと覚えてくれよ!」
超高級級の陸上選手…100mの世界記録と並ぶ身体能力をもつ、テレビでも注目される神童…
六魅「高校生ながら世界記録と並ぶ期待の新星…噂では"名は体を表す"という言葉が近年最も似合う人物とかなんとか…」
坂田「あぁ、それな…自分で名乗っといてなんだけどよー…俺、超高級級の陸上選手っていう才能あんまり好きじゃねんだわ。」
…はい?
六魅「…それはどういう意味なのかな?」
坂田「あ?そのまんまの意味だよ。なんつーか陸上って飯食うのに融通利かねぇし、回りの期待?みてぇなのがあって自由な時間があんまりねんだわ。」
初音「…よーするに、今の環境は窮屈ってことだろ?」
坂田「そー言うわけで希望ヶ峰で卒業して、プラモの会社に就職するのが今の夢なんだわ。」
…さっきの白石さん風に彼について語るなら。
主はなぜ彼に陸上選手としての才能を与えてしまったのだろう…
坂田「というわけで俺の陸上選手としての才能にはあんまり期待しねぇでくれ。別に世界大会に出たいとも思わねぇからよ。」
初音「…さっきはその話題がなかったから色々聞きたい所だが…次の自己紹介を頼む。」
初音君はここから出ても苦労しそうだな…
赤髪の眼鏡男子「…次は俺か。」
赤い髪に黒いメッシュ…高級そうな眼鏡にピアス、指輪を着けていて大人びた印象がある男子。
彼はテレビを見ない僕でも知っているほどの有名人だ…
赤髪の眼鏡男子「どうも、超高校級…いや世界一の料理人の四宮 銀(しのみや ぎん)と申します。これからよろしくどうぞ、ムッシュ一之瀬、ムッシュ六魅。」
三ツ星レストラン【Grace】の若き副料理長であり、歴代最年少の三ツ星受賞者…メディア出演にも積極的だったから彼の名前はよく覚えている…
一之瀬「…あれ?なんで僕達の名前をしってるの?」
四宮「他のクラスメイトとの自己紹介を終えていたから消去法で名前が分かっただけですよ。それに、飲食店の料理長をやってると、正確性には欠けるが、自然にそういった噂や情報も流れてきただけさ。」
六魅「…一之瀬くんのことはともかく、俺の名前も分かったのはなんで?幸運枠の生徒の情報は入学式を終えるまでは本人と学校関係者、家族以外には公開されないはずだけど?」
四宮「…君の名前は自分が思っているより有名ということだよ。それは君自信も自覚していると思っていたんだが、説明が必要かい?」
六魅「…」
…どいうことなんだろう?六魅君はただの幸運でここに選ばれたんじゃないのか?
それとも、幸運の才能以外にも、彼には希望ヶ峰に入学できた理由があるのか?
四宮「というわけで俺の自己紹介は以上だ。」
一之瀬「…え?名前だけ?」
四宮「日本暮らしの二人なら、俺のことは名前さえ言えば大々どんな人間なのかくらいは分かるだろ?それとも、俺の名前がわからないくらい浮世離れしているのかい?」
六魅「…そうだね、俺は別に大丈夫だよ。一之瀬君もそれで大丈夫?」
一之瀬「う、うん。そういうことなら僕も大丈夫だよ。」
四宮 銀…三ツ星を取るほどの料理センスを持つが、つい先月に大手政治家の客に対して暴行する事件を起こし、店をクビになったっていう噂の危険人物。
言葉使いの節々に棘があるし、あまり仲良くなれなそうだ…それに、近寄りがたいオーラがある。
茶髪ウェーブの男子「そんじゃ、次は俺か。かるーく自己紹介して、新しい子を口説きに行かせて貰いますよ♪」
初音「ほどほどにしとけよ?さっきも脚を蹴られてただろ。」
茶髪ウェーブの男子「あれはツンデレってやつだろ?あれも一種の愛情表現♪」
坂田「…いや、あれは完全にお前の急所を狙って蹴ってただろ。」
変わった制服を着てるな…というか口に咥えてるのは…飴?なんか見た目からだと才能が分かりづらい…
茶髪ウェーブの男子「どうも~、菊門寺 影虎(きくもんじ かげとら)でっす!よろしくなっ!」
菊門寺?レスにはそんな名前の人居なかったような…?
六魅「聞いたことない名前だけど、君はなんの才能でここにきたの?」
菊門寺「俺のは超高校級の忍っていうつまんねぇ才能だよ。まっ、そんなことよりお前らはぶっちゃけ女性陣のなかで誰が好みなん…」
一之瀬「忍!?それは言葉の通り受け取っていいの!?」
菊門寺「ん?あ~、まぁそうだな。俺の実家は日本で有名な、霧隠とか風魔とかみたいな家柄ではないんだけど、歴史のある家で俺はその31代目の元・跡継ぎ。」
六魅「元?」
菊門寺「そ、俺はあんな家を継ぐのは嫌だから、家出したってわけ♪…まぁ、結局家の使いに捕まって、親父殿に半強制的に希望ヶ峰に入学させられたんだが…」
忍者か…まさか現代にも実在してたなんて…
菊門寺「まっ、俺の自己紹介はこんなもんでいいんじゃねぇか?そんじゃま、三年間よろしくな!」
初音「…まぁ、こういう才能がいてもおかしくないだろう…それでは次は黄泉月、頼む。」
いや、忍者はだいぶイレギュラーだと思うけど…
青いジャケットの女子「…」
初音「おい、自己紹介はしっかりとしろ。三年間共にするクラスメイトだぞ。」
青いジャケットの女子「はぁ…黄泉月 四季。超高校級の傭兵…特に用がなかったら話しかけなくていいから…」
…いったそばからまたイレギュラー…傭兵に忍者?ここは天下一武道会かなにかなの?
六魅「…アジア近辺を主に活動する傭兵部隊"スコーピオン"の現頭目…各地の戦場での目まぐるしい武功から、蠱毒の王と呼ばれる今期の生徒で最も危険と紹介された人物…だったけ?」
黄泉月「…別に、仕事柄そう呼ばれるようになったっていうだけだし…っていうか、その意味わかんない呼び方はやめて。」
初音「…忍者に傭兵か…まさか実在していたとは、最初聞いたときは驚いたぞ。」
黄泉月「…別に、あんたらがテレビを見たり、ゲームをしているときに、私は戦場でナイフを握ってた…それだけの違いでしょ?」
白石「それだけって…」
黄泉月「別に…人類全員が同じ行動をするわけじゃないんだから、なにが変とかなにが不思議とか、考えるだけ馬鹿馬鹿しい…」
白石「ん~、そういうものなのですかね…」
言ってることはそれっぽいけど…彼女と僕達とじゃ根本的な苦労や経験のベクトルが違う気がする…
その後、僕と六魅くんも自己紹介を終え、半分の生徒との交流をした。
それにしても、忍、傭兵、シスター…半分に分けてもこれだけ特殊な才能の生徒がいるってことは…
もう半分もかなり個性的なんだろうな…
初音「よし、こっちは全員終わったな。」
中性的な顔立ちの女性「こっちも終わったよー。」
左東「それでは、私達2人と六魅達だけを入れ換えて続きをしましょう。」
六魅「りょうかーい。」
…先が思いやられるが次の六人が常識的な人物…または、一般的な才能の持ち主ばかりなことに期待しよう。
次は来週の金曜日目標でがんばります。