「おお……」
感嘆する声に俺はハッと我に返る。
纏まらなかった視点を前に向けるとローブを着た男達が何やらこちらに向って唖然としていた。
「……ここは」
と思わず呟いた。一体何があったんだ?
確か、さっきまで俺は三上さんの部屋に居たよな。そして、急に意識を失くして………気がついたらこの状況。………ダメだ意味がわからん。
「おお、勇者様方! どうかこの世界をお救いください!」
「「「「「はい?」」」」」
あれ、他にも声が……
少し周りを見てみると俺以外にも4人の男達がいた。
男達はそれぞれ、剣、弓、槍、そして盾を手に持っている。
……ていうか、なんで俺だけなんも持ってないんだ。背中に何かを担いでいる感覚はない。手にも何も持ってな………え? 手の平を確認した際、何故か手の甲の方も見た瞬間、俺は自分の目を疑った。なんと俺の右手の甲に何か宝石のようなものがくっ付いていた。
試しに触って見たが特に違和感はなかった。宝石と皮膚の境目をなぞってみても、問題なし。手の甲に接着剤か何かでくっ付けてるだけだと思い、境目に爪を食い込ませ方としたが……全く通らなかった。
はめ込んでいるとか……いや、それなら右手を動かしただけで違和感があるだろ。
なんなんだこれ……
「おい」
俺が考え込んでいると盾を持った男が声を掛けてきた。
「なんだ?」
「さっきまでの話、聞いてなかったのか?」
話? そういや、世界がどおのこうのって言ってたな。
「………聞いてなかった」
「はぁ……しょうがない、移動する間に説明してやる」
やれやれと言いたげに盾の人は俺に状況の説明をしてくれた。なんやかんやで教えてくれるし、いい人だな。
要約するとローブの人達は世界を救ってもらうために俺達5人を召喚したが、剣の人と弓の人、槍の人がタダ働きは嫌だみたいなことを言って今からこの国の王様に報酬なんかの話をするようだ。
確かに、世界救うのにタダ働きは嫌だな。
「ほう、こやつ等が古の勇者達か」
謁見の間の玉座に腰掛ける偉そうな爺さんが俺達を値踏みして呟いた。
正直あんまり良い印象じゃないなぁ。なんか舐めてる感じがする。
「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者達よ顔を上げい」
下げてはないんだけど……まぁ、王様だし、偉そうにしたいんだろうな。
「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつある」
王様の話を纏めるとこうだ。
この世界は今、世界を滅ぼす波と呼ばれる厄災が起きている。
そして、今から1月ほど前にこの国メルロマルクにも波が起き凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。その時は辛うじて国の騎士と冒険者が退治することが出来たのだが、次に来る波は更に強力なものとなるという。このままではマズイと考えた重鎮達は伝承に則り、勇者召喚を行い今に至る。
因みに俺達がこの世界の言葉がわかるのは伝説の武器の能力によるものらしい。
武器を持っていない俺もわかるのは何故だ?
ちょっと待てよ。この話、三上さんが書こうとしたネット小説とかなり似てるぞ。というかいっしょだ。剣とか弓とか槍に盾も。という事は俺が拳の勇者って奴か。
「話は分かったが、召還された俺達にタダ働きをしろと?」
「都合のいい話ですね」
「だな。自分勝手としか言いようがない。滅ぶんなら勝手に滅べばいいだろ。俺達にとってはどうでもいい。」
「確かに、助ける義理はないよな。タダ働きした挙げ句、平和になれば『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないしな」
「報酬とか以前にまず、帰れる手段があるのか知りたいんだけどその辺どうなの?」
「ぐぬ………」
俺たちの文句に王様は臣下の者に目線を送る。
「もちろん、勇者様方には存分な報酬は与える予定です」
4人が、グッと握り拳を作った。
「他に援助金も用意できております。ぜひ、勇者様たちには世界を守っていただきたく、そのための場所を整える所存です」
「へー……まあ、約束してくれるのなら良いけどさ」
「俺達を飼いならせると思うなよ。敵にならない限り協力はしておいてやる」
「……そうだな」
「ですね」
なんだろう。ちょっと上から目線な気がするんだけど……
「では勇者達よ。それぞれの名を聞こう」
王様がそう言った後に、剣を持った人が前に出て自己紹介を始めた。
「俺の名前は
剣の勇者、天木 錬。女装をしたら女の子に間違う奴だって居そうな程、顔の作りが良い。髪はショートヘアーで青みがかった黒髪。
切れ長の瞳と白い肌、なんていうかいかにもクールという感じだ。
「じゃあ、次は俺だな。俺の名前は
槍の勇者、北村 元康。なんと言うか軽い感じのお兄さんと言った印象の男性だ。
髪型は後ろに纏めたポニーテール。男がしているのに結構似合っている。
「次は僕ですね。僕の名前は
弓の勇者、川澄樹。見た目は、なんかピアノとか習っている坊っちゃんの感じだ。
髪型は若干パーマが掛かったウェーブヘアー。
「次は俺だな、俺の名前は
盾の勇者、岩谷 尚文。この人は、何処にでもいそうな大学生だな。
髪型は癖っ毛のある黒髪。
……って、俺は何様で人を見てるんだか。それに全員、日本人なんだ。
「最後は、俺だな。田村 幸成。年齢は19歳、大学生だ」
「ふむ。レン、モトヤス、イツキ、そしてユキナリか」
「王様、俺を忘れてる」
「おおすまんな。ナオフミ殿」
忘れられた尚文がツッコム。
自己紹介してすぐに忘れるとか無いだろ。
「では皆、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰おう」
「は?」
「えっと、どのようにして見るのでしょうか?」
樹が王におずおずと進言した。
「何だお前ら、この世界に来てすぐに気付かなかったのか?」
錬は情報に疎い連中だと呆れたように声を出した。
「視界の端にアイコンが無いか?」
「え?」
何となく視界の端に、アイコンのようなものが見えてきた。
「それに意識を集中するようにしてみろ」
アイコンをじっと見つめ続けてみると、ピコーンと軽い音がして、視界に大きな、ウィンドウのようなものが現れた。
田村 幸成
職業 拳の勇者 Lv.1
装備 ヒューマンフィスト(伝説武器)
異世界の服
スキル
魔法 無し
「Lv1ですか……これは不安ですね」
「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな」
「というかなんだコレ」
「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ」
「そうなのか?」
そもそも、俺らの世界には魔法自体ないし。
「それで、俺達はどうすれば良いんだ? 確かにこの値は不安だな」
「ふむ、勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたいのです」
「強化? この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」
「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうです」
「伝承、伝承ね。その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」
元康が持っている槍をペン回しのようにくるくる回しながら意見する。
それより、槍を片手で弄ぶとかどんだけ力あるんだよ。
「ふむ、となると……自分磨きするにしたって、Lv1じゃやっぱ危ないよなぁ……」
「じゃあ、俺達5人でパーティーを結成するのか?」
尚文のたぶん独り言に、元康が答えた。
それが良いよな。安全だし。
「お待ちください勇者様方」
「んん?」
俺達が旅に出ようとしていると大臣が進言してきた。
「勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になります」
「それは何故ですか?」
「はい。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様たちだけで行動すると成長を阻害すると記載されております」
「本当かどうかは分からないが、俺達が一緒に行動すると成長しないのか?」
すると、全員が武器の所に使い方やヘルプがついていたようでそれに気付き目で追った。
注意、伝説武器同士を所持した者同士で共闘する場合。反作用が発生します。なるべく別行動しましょう。
……本当みたいだ。
となると、仲間探しから始めないとダメだな。
「ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく」
「ありがとうございます」
「サンキュ」
それぞれの言葉で感謝を示し、その日は王様が用意した来客部屋で俺達は休むこととなった。