俺とアヤメはラファン村近くにあるダンジョンを目指して森の中を進んでいた。
同行者設定をしているから、アヤメが倒した魔物でも俺は経験値を上げることができる。
それをいい事に、俺は魔物が出てくればとりあえず戦闘をしていた。相手こそ、レッドバルーンやブルーバルーンなどバルーン系の魔物にしか遭遇していない。
まぁ、そのお陰で俺はLv.4に上がることができ。
武器であるオレンジフィストとイエローフィストは、
オレンジフィストLv.5/5
能力解放……装備ボーナス:防御力5
イエローフィストLv.5/5
能力解放……装備ボーナス:防御力5
とLvがMAX状態になった。能力も解放した。
俺は倒したレッドバルーンとブルーバルーンの残骸も拳に吸わせてさっそく武器を解放させた。
レッドフィストの条件が解放されました。
ブルーフィストの条件が解放されました。
レッドフィストLv.1/7
能力未解放……装備ボーナス:攻撃力3
ブルーフィストLv.1/5
能力未解放……装備ボーナス:攻撃力1 防御力1
やった!
ついに攻撃力のある拳が出てきた。俺はすぐに拳をレッドフィストに変えた。因みにこのカラーシリーズの拳はなんというかゴム手袋がくっ付いたような不思議な感覚だ。皮膚がゴムになるとこういう感じなのか?
それに、レッドだけ最大Lvが7だ。武器によってLvの最大値ってまちまちなのか?
「やったぞ、アヤメ。攻撃力のある武器を手に入れた! 今度、魔物が来たら俺1人で戦って見てもいいか?」
「構いませんが、私たちの目的はわかっていますよね」
もちろん、ダンジョンに入る前にまともに戦えるのか試してみたいだけだよ。
そうこうしているうちに、いったい何度目の遭遇になるのかオレンジバルーンが現れた。
よっしゃー! コイツならもしかしたら、ワンパンでいけるかもさんねぇーぞ。
それを知ってか、アヤメは武器を持たず俺の後ろに下がってくれた。
ガァー!
オレンジバルーンが飛び掛かった。しかし、その行動は単調ゆえに簡単に躱し、軽く手刀を食らわす。
すると、かなり呆気なくオレンジバルーンはパンッ! と破裂した。
……なにこれ? 呆気なく過ぎる……前に戦った時は3分かかったのに、マジでワンパンで倒してしまった。しかも、手刀って……拳じゃねぇーじゃねぇか。俺がやったことだけど。
「これなら、ダンジョンで戦っても問題ないよな」
「はい。それでも、まだユキナリ様を主体とした戦闘スタイルはダメですよ」
チッ。流石にまだ、俺を主体とした戦い方は危険か。
でも、この調子で戦って経験値稼いでいけばいずれ……
という淡い考えをしてから3時間。俺たちは未だにバルーンの森(俺名称)を歩いていた。その間、俺はとある不安に頭を悩ませていた。
いや、そんなハズないのはわかっているんだ。だが、もしやと考えてしまう。
そう、ひょっとして……俺達、迷っているんじゃね?
「…………」
いやいや。そんなハズない。
なんせ、ここっていわば冒険最初の森だよ。ゲームとかで迷いの森とか言われる場所でも実際に迷うわけないし。
アヤメだって何も言わずにいるんだ。
きっと、この森は広いんだ。地図だとそこまで大きく感じなかったけど、縮図だからわからなかったんだ。
うん! そうだ、そうしよう。
「……あの、ユキナリ様。大変申し訳難いんですが……その……私たち、迷ったようです」
迷ってたんかーい!! なんとも、申し訳なさそうな顔で謝るアヤメ。
「本当にすみません。なんで、こんな所で迷ったんでしょう……」
この森はそもそも迷うような複雑な森ですらなく商人なんかも当たり前のように利用している森だ。
そんな森を何時間もさ迷うのは流石におかしい。何らかの理由がある。
「考えられるのは幻妖花という周囲に幻覚作用をもたらす花が何処かに咲いているのかもしれません。あとは……
アヤメが現在の俺たちの状況を分析して述べてくれた。
つまり、俺たちがこの森を彷徨っているのは偶然咲いていた幻妖花という花のせいか。たぶん、この世界でいうとこの魔法使いに方向感覚を狂わせる幻覚魔法をかけられているかのどっちからしい。
そうなると幻妖花の線の方かな。敵なんて作った覚えないし。
幻妖花が原因と考えた俺たちはいったん来た道を戻り、近くに幻妖花が咲いてないか探った。
すると、幻妖花が見つからないどころか更に迷ってしまった。
「アヤメ。幻妖花の幻覚作用って、どのくらい続くの?」
「直接吸ってない限り、1時間もすれば無くなります」
なのに俺たちは未だに迷い続けている。
「……因みに、幻覚魔法だと、どのぐらい続くの?」
「……強力なものなら、2、3日は掛かっているでしょう」
これはもう疑いようがない! 俺たちは誰かに幻覚魔法をかけられている!!
だが問題がある。それは、誰が俺たちにそんな魔法を掛けたかだ。
「ユキナリ様。今から、この魔法をかけている者を見つけ出す為に少しこの場を離れますが、ユキナリ様はこの場にいてください」
俺が敵が誰か考えているとアヤメが見つけ出す作戦を提案した。
「アヤメ、見つけ出すことができるのか? 無理だったら、俺が大ピンチなんですけど……」
敵の狙いがアヤメならそれでも問題ないけど、俺が狙いなら格好の的になるじゃないか。なんせ俺めっちゃ弱いんだから。
「安心してください。私は一度離れたら、隠れてユキナリ様を見守ります」
「……それって、俺に餌になれってことか!?」
「まぁ、そうなりますね。敵がユキナリ様を狙っている可能性がありますから。ですが、ユキナリ様に危険が迫ったら私が必ず守ります!」
アヤメは真っ直ぐ俺の目を見て答えてくれた。そもそも、このままジッとしていても先には進めないしな。
「わかった。頼むぞ、アヤメ」
「はい!」
そう答え、アヤメは俺に背を向け森の中へと消えた。
アヤメが森に入り30分くらいが経過したころ、俺はすでに暇で暇で仕方がなかった。だって、やることないんだもん! 初めこそすぐに敵が来て戦闘とか思ったけど、よくよく考えたら相手だってバカじゃないんだから二手に分かれたら怪しむよな。魔物とかが出て来たら、戦って時間も潰せるけど全く現れないし。下手にうろちょろしたらアヤメが見失うかも知んないんだから。
その為なんの理由もないが、俺は何も変わってないだろう拳のウェポンブックを開きぼうっと見ることにした。
現在、俺が手に入れた武器はオレンジフィスト、イエローフィスト、レッドフィスト、ブルーフィストの4種類だけだと思った。
仲間の拳Lv.1/1
能力未解放……装備ボーナス:仲間の成長補正(小)
仲間の拳? 何これ? こんなの手に入れた覚えないんだけど。でも、装備ボーナスは良いな。成長補正って単純に強くなりやすくなるってことだよな。
でも、どうして開いたんだ? 俺が拳に吸わせたのはバルーンの残骸だけ。それが条件とは思えないし、Lvだけが条件なのか。
取り敢えず仲間の拳に変えてみたら見た目は普通の人間の手だ。ただ中指に赤い紐が巻きついているだけだ。
俺が突如出て来た武器に対して思考をめぐらしていると近くの茂みからガサゴソガサゴソと音が聞こえた。
これ、絶対に罠だよな。でも、ま、アヤメも何処かで見てるし問題ないよな。
でも、一応は拳をブルーフィストに変えておこう。
そして、俺は音がした茂みの方へ足を運ぶ。
だが、そこにいたのは俺たちを攻撃していた奴らではなかった。
そいつはまん丸の球体フォルムで血を全身に浴びたかと思うほどの赤黒い色。凶暴な目と口。その魔物は……バルーンだ。
ってまた、バルーンかよ!
と、怒声を出すのをグッとこらえて、戦うのも面倒だからゆっくりと後退して見なかったことにしよう。
「オイオイ、テメー。何、見なかったことにしてんだ、ゴラぁ!!」
逃げようとした俺にに向けてバルーンが吠えた。
てか、喋るのかよ!! どうやって喋ってんだよ!!
「オイ、ガキ。何、固まってんだ。そんなにバルーンが喋るのは意外かゴラァ」
それにコイツ、かなり口悪いな。ここは、当たり障りなく穏便な済ませよう。
「すみません。実は今、敵に攻撃を受けているんですよ。だから、巻き込みたくないんで、それでは」
踵を返して今度こそ、俺は去ろうと────
「待ちな」
ウッッゼェ!!!
なんだよ! また、呼び止めて。別に用なんか無いだろ! それとも何か、今まで倒したバルーンに対する報復か? なら、かかって来い。所詮おまえもバルーンだろ! 喋れるからって調子乗ってんじゃねぇぞ!
と怒声を吐く前にバルーンから驚きの一言を聞いた。
「今から、テメーに幻覚魔法をかけた奴が来っから、ジッとしてろ」
「…………え? どういう事?」
その後のバルーン、名前をブランと言うらしいが。その説明に俺は絶句した。
なんでも、その人物は俺に魔法を教えるために自分が住んでいる場所まで誘導していたそうだ。誰がどう考えても、そんなめんどくさい事するよりも目的地で待ち伏せした方が楽だと思う。
もちろん、ブランもその考えは言った。しかし、その人物は「こういうのは、シュチュエーションが大事なんだよ。普通に村で待ち伏せするよりも、偶然の巡り合わせの方が運命を感じない?」との意見だった。
確かに運命は感じるけど……それって必要なのか? 単純に待ち伏せしたら警戒される。なら、わからなくもないが。バレたら余計警戒するだろ。
色々とよくわからない作戦だけど、1つわかっていることがある。
魔法を教えてくれるのなら有難い。
「───という訳で、今からその魔法使いに会うことになりました」
さっきのブラムとの会話を何処かで見張っていたであろうアヤメを呼び戻して説明した。
しかし、説明していくにつれアヤメの顔がだんだんと渋くなっていった。
「ユキナリ様。その話に疑問に思う点はありませんでしか?」
「疑問? まぁ、なんで待ち伏せなんかするんだろうなぁ? って、思ったぐらいかな?」
「それもですけど! もっと、根本的に疑問に思わないといけないところがあります!」
えっ!? これ以外でなんか気になるとこってあったけなぁ。俺が悩んでいるとアヤメが深い溜息を吐いて、答えた。
「ユキナリ様。そもそも、その方は、どうしてユキナリ様が魔法を覚えたがっているのを知っているですか?」
「それは…………なぜ?」
そういえばなんでだ? 俺が魔法のことを言ってたのは昨日、草原の時だけだ。その時、聞いたのか? 周りに人いたっけ?
「どうですか? よく考えると、ものすごく怪しくないですか?」
……うん。よく考えなくても、普通に怪しかった。
「────まぁ、そんな怪しがらないでよ。本当に、善意で教えてあげたいんだからさ」
その声は虚空から聞こえた。そして、声の主は瞬間移動をしたように俺たちの目の前に現れた。
インテリチックなメガネの奥に見える、綺麗な翠緑の瞳に腰まで届きそうなプラチナブロンドの髪。黒いローブに身を包み、同じ黒い三角帽子を被り、杖を持った、ザ・魔法使い。そして、あの長い耳は────
「エルフ……」
ファンタジーでの代表的な亜人の一人。ほぼ全てのファンタジー作品において、エルフは高度な魔法を得意としている。
「貴女が元凶ですね。おかしな真似をしたら、有無を言わせず斬りますので何もしないことをオススメします」
俺がお姉さんを見て惚けているとアヤメが俺の前へ出て小太刀を抜いてお姉さんを威嚇した。
「アハハ! 落ち着いてよ、アヤメちゃん。私が、君たちのことを知ってるのは、偶々、遠隔透視魔法で見つけただけだからさ」
エルフは俺たちを見つけた方法を教えたが、それはかえってアヤメの警戒レベルを引き上げらことになった。
俺には悪いエルフには感じないんだけどな。
「ユキナリ様。私の後ろに下がっていてください」
アヤメが俺にそう促した。それを見てエルフが呆れたようにアヤメを見る。
「随分と警戒するわねぇ。本当に純粋に魔法を教えたいだけなのに」
「そう易々と信用するわけにはいきません」
「なるほどね。でも、それを決めるのは君じゃなくてそこの坊やじゃないの?」
ここで俺に目を向けるのか.……
「……エルフさん。本当に俺を強くしてくれるんですか?」
「それは知らないよ。私は君に魔法を教えるだけ。強くなれるかは、君次第よ」
結局は、俺の努力次第か……よし!
「よろしくお願いします!」
「ちょっ、ユキナリ様。相手が誰かもわからないんですよ」
「わかってる。でもまぁ、1日でも早く強くなりたいじゃん」
波だって後、1ヶ月だって言ってたし。武器を持たない以上、俺が1番弱いはずだ。それなら、1番頑張らないとダメだ。
「と言うわけで……えーと、名前なんですか?」
「そういえば言ってなかったわね。私の名前はユリアスよ」
こうして俺は、魔法使いエルフのユリアスさんの弟子になりました。