前回までのあらすじ
俺、田村 幸成はエルフで魔法使いのユリアスさんの弟子になりました。
なお、ユリアスさん曰くこの世界に魔法使いと言う職は存在せず、使う魔法によって呼び方が変わるそうだ。因みにユリアスは
そんな、魔導師のユリアスさんとの修行は想像を絶するものだった。
まず最初に教わるのは、この世界の文字だった。以前にもアヤメが言っていたように魔道書を読むには、この世界の文字を読めるようにならなければいけない。最初こそ文字を必要としない修行だと思っていたが
「やっぱり、読み書きできる方が色々都合がいいからね」
と言う、理由から読み書きが始まった。内容は、この世界の文字を読むための表を使って簡単な文章を書く事とユリアスさんが空中に書いた文字をひたすら模写することだった。勿論、発音込みだ。しかも、文字は炎出てきているからか少し時間が経てば消える。模写できなければ1つにつきユリアスさんが作っているあやしい薬を1つ飲むように言われている。この初日に1つ模写できなかったからユリアスさんが作った痺れ薬を飲まされ10分くらい動けなくなった。
───ただ、文字の勉強だけをしているわけではない。
まず魔法の仕組についてだが、魔法は何らかの効果を生じさせるイメージを、特定の法則によって具現化するものだそうだ。
そして、この世界の魔法は〈元素魔法〉〈精霊魔法〉〈神聖魔法〉〈召喚魔法〉と大きく4つに分けられる。
その中の1つ元素魔法は自分自身の持っている魔力の元と言われる、魔素だけで打てるわけではない。魔法の発動前にイメージを大気に満ちている魔素を取り込み、自身の魔素を着火源にして放つ。制御には相応の魔力が必要になる。
そのためにやるもう1つの修行内容は魔力の底上げだ。内容は単純に周囲の魔素を取り込んで自身の制御できる魔力量を大きくしていくことだ。
他にも精霊魔法、神聖魔法に召喚魔法などとユリアスさんが知り得るすべての魔法とそれに関係することも波が来るまでの1ヶ月の間に教えてくれるそうだ。
修行を始めて3日が経った。未だに魔法は教えてもらっていない。
「先生。いつになったら魔法を教えてくれるんですか?」
「そうねぇ。取り敢えず、最低限の魔力量か文字を手に入れからかな」
そうは言っても、魔力量の方は増えてるのかわかんねえし、文字はすぐに覚えられないし。
「あ! そうだ。何か簡単に文字を覚える魔法とかないんですか?」
「アハハ。君、楽しようとするなぁ〜。まぁ、あるけどさ」
あるんだ!! こういう時、普通ないってオチのはずなのに……でも、ラッキー!
「それじゃあ。それ、お願いしまーす!」
「いいけど……それ、精神魔法の応用で頭に情報を無理やり流し込むんだけど。───失敗したら廃人になるんだけどぉ……本当にやる?」
「やっぱり、自力で頑張ります!」
「うん。よろしい」
やっぱりズルはダメだな。地道にコツコツとがんばろう。千里の道も一歩からだ。
「それじゃあ、何か魔法見せてくださいよ。出来れば攻撃魔法を」
せめて、魔法がどんな感じか見てモチベーションを上げないとサジ投げそうだ。
「うーん。そうねぇ……まぁ、いいわ」
ユリアスさんは少し悩んでいたが、すぐに了承してくれた。
と同時に俺たちは何処かの荒地…………の上空にいた……って落ちる! 落ちる!! 落ちる!!! ───あれ、落ちない?
「はぁ。空中に居るぐらいで慌てないでよ」
空中でドタバタしている俺を見てユリアスさんが呆れてられていた。あ、そういえば初めて会った時に飛んでたなこの人。
「じゃあ、ユキナリくん。アレが何かわかる?」
ユリアスさんが指差した方に目を向けると7、8頭のドラゴンの群れがいた。さすが異世界、やっぱりドラゴン居るんだ。
「あれは、
とユリアスさんが説明してくれる……と言うか、そんなのが8頭も居るのヤバすぎだろ。
「じゃあ、今から
…………え? 今なんて? あの人、1頭でも国滅ぼせる化け物を8頭も相手取るの? 普通逃げるだろう。正直、あのスカイドラゴンとか言うのがどれほど強いのかはわからないけど、なんかヤバイのは何となく分かる。こう……早くこの場から逃げてぇ! って感情が湧き上がっている。
俺が混乱しているとユリアスさんが持っていた杖から魔力弾を8撃ってスカイドラゴン全てがこちらに気づいた。
「「「「グギャアアアアアア!!!」」」」
雄叫びを上げながら、こちらに迫って来るスカイドラゴン。8頭のうち3頭は口から雷撃を放ち、3頭は翼を羽ばたかせて衝撃波を生み出し、2頭は他6頭より高度へ飛び、鋭い爪を俺たちに向け強襲しに来た。
───あ、これ死んだかも。わずか1秒にも届かない刹那……俺には死を悟ることしかできなかった。
「残念だけど。まだ、死んじゃいけないよ」
スカイドラゴンの攻撃が当たるよりも速くユリアスさんは魔法を発動させた。
結界のような球体に包まれ、スカイドラゴンの攻撃を全て防いでいる。結界内で更にユリアスさんは魔法の詠唱を始めた。
「力の根源たる私が命ずる。森羅万象を支配し、神々よ雷神の一撃を以って、彼物を灰燼と帰せ……
次の瞬間、後方で雷撃と衝撃波を放っていたスカイドラゴンを中心に半径数百メートルは優に超える光のドームが轟音と共に発生した。ドームの所々に電流のようなものが見える。
これがケラウノス……って、まだよくわかってないんだが、ドームが消えてその恐ろしさがわかった。もちろん、攻撃を食らったスカイドラゴンが消し飛んで詠唱道理の灰燼と帰しているが他にもある。
何せ、さっきまでただの荒地に数kmも及ぶクレーターができているんだからな。
「ハ、ハハハ……アハハハ……」
俺が見ていない間に巨大な隕石でも落ちたか?
因みに俺たちに爪を立てていたスカイドラゴン達は恐怖からか何処かへ飛び去って行った。
「さっき見せたのは、核撃魔法って言うの。平たく言うと元素魔法の奥義みたいなものよ」
と、ユリアスさんはケラウノスの説明をしてくれていた。詰まる所、この世界における最強魔法って事だな。
はっきり言って厄災の波……この人がいれば簡単に止まるんじゃないか? 勇者必要か?
「まぁ、最終的にこれぐらいの魔法が使える人間なんてそうそういないから落ち込まないで」
割と絶望している俺にユリアスさんが優しく慰めてくれた。
その言葉通り、そう易々とあんな化け物魔法が使えるわけ───あったんだよなこれが……
それを説明するためにまずは、ステータス魔法の説明をしよう。
ステータス魔法とは、自身の今の状態を見ることができる魔法だ。
見れるのは主に自分のレベルと装備品とスキル、魔法が見れる。更に詳しく見ると、HP、MP、体力、攻撃力、防御力、魔力、素早さまで見れる。
これは、ユリアスさんに魔力量が増えているのか確かめたい。と言った所、ステータス魔法の見方を教えてくれた。
早速、見て見ると
田村 幸成
職業 拳の勇者 Lv.4
装備 ヒューマンフィスト(伝説武器)
鎖帷子
スキル
魔法
「あのー。ユリアスさん。なんだかわかりませんが……その……
「いやいやいや、幾ら何でもそう易々と覚え……てる」
割と軽いノリで対応していたユリアスさんが初めて顔を強張らせた。
「うーむ……なるほどねぇ。いや〜、恐ろしいスキルだね」
スキル? この
「ステータス魔法で
意識を集中か、ステータス魔法を見るときと同じようなものかな。ピコーンと新しいウィンドウが出てきた。
能力:解析鑑定と完全模倣。実際に見て理解したスキル、魔法、技能を習得するスキル。
「つまり、ユキナリくんは
…………なんだよ、そのチートスキルは
「それじゃあ、試し撃ちして見よっか」
そう言い、また荒地に瞬間移動した。多分、これも魔法だよな
「じゃあ、撃ってみ」
随分と軽いな、地形を簡単に変える威力を撃ってみってこの世界の魔法への扱い軽!
とりあえず、あの大岩を的にしよう……巻き込まれないよな
詠唱は、えーと確か……
「力の根源たる私が命ずる。森羅万象を支配し、神々よ雷神の一撃を以って、彼物を灰燼と帰せ……
強烈な光と共に轟音が炸裂した。大岩は言うまでもなく粉々になった。だが、ユリアスさんほどの威力ではないのだろうがそれでも、5メートル程のクレーターは出来ていた。…………バタン
───アレ、動けない。
「あー。やっぱり、倒れたか〜」
「あのー。先生。指すら動かせないんですけど何ですか? これ」
「MPが足りてなかったみたいだね。魔力疲労の限界を超えて動けなくなってしまったようだね」
マジか! 1発撃ってしばらく行動不能状態って死ぬじゃん。
「それじゃ、戻って動けるようになったら修行再開ね」
確かに、これじゃあ戦闘には使えないな。良くて敵が1体だけで、トドメ刺しぐらいじゃないと無理かな……そうだ! ひらめいた!
「先生! この後、色々攻撃魔法を見せてください。説明込みで」
「えー、やだー」
えー……なんでだよ。動けない間、ユリアスさんにこれでもかと頼み込んで見たが、一切聞いてくれなかった。魔法は自力で覚える他ないようだ。
因みに動けるようになったのは翌日だった。