幻想怪奇目録 ー人と天狗の奇妙な関係ー   作:ガーヘル313

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アンケートご協力ありがとうございました。
結果から、票の多い戦闘描写ありを採用いたしました。戦闘に関しては全くの素人のため、至らない点が多々あると思いますが、評価よろしくお願いします。
それでは、ゆっくりお楽しみください。


10話 会敵・後編

 集まってくる野次馬達を避けるようにして人里を出ると、はたては窮屈な上着を脱いで伸びをした。そんな彼女に先ほどの光景を尋ねると、驚いた反応をされる。

 

 

「貴方も能力が使えるんでしょ?」

 

「能力?」

 

「あら?文から聞いたんだけど……まあいいわ。一部の人間や妖怪は、何かしらの能力を持っているの。例えば私は-」

 

 額に携帯を当てて何やら念じ始める。時間がかかりそうなので大人しく遠くの風景を眺めながら待っていると、数十秒くらいしてから肩越しに携帯の画面を見せてきた。

 

 そこには胡座をかいて座るサンカと、背中にくっついて画面を見せているはたてが映っている。どうやったのか知らないが、今現在の二人の様子を真後ろから撮影したものだ。

 気の良い第三者に撮影してもらったのかと振り向くが、それらしい人影はいない。もう一度画面を覗き込むと、画面の中で振り向いたサンカがやや遅れて正面を向いた。

 

 どうやって撮ったんだ?慌てふためいて再度振り返るが、やはりカメラらしき物はない。はたてはその様子を見てクスクスと笑う。

 

 

「念写よ」

 

「念写?」

 

「ええ。それが私の能力。文が貴方も能力を使ったって言っていたから、てっきり知っているんだと思った」

 

 文の傷を治し、そして自身の傷を塞いだのは、この能力という概念のおかげなのか、とサンカは半分納得した。もしこの場が幻想郷で無ければ、そう言われても信じなかっただろう。彼は続けてもう一つの質問をしてみる。

 

 

「ええと、スペルカードって?綺麗な光の幕だったけど……」

 

「スペカは私達の弾幕を契約書的に記載した紙の事よ。決闘の時に宣言すると技の行使が可能になるの。気分も上がるわよ?」

 

 綺麗と褒められたのが嬉しいらしく、せっかくだからとポーチから無地の紙を数枚取り出し、サンカに渡した。決闘-弾幕ごっこなる遊びにも使えるため、持っていて損はないという。しかし当のサンカは技が使えないのは勿論、自身の能力の特性すら知らないのだ。暫くはただの紙切れとして過ごしてもらう事になるだろう。

 

 はたては説明を終えて伸びをして、その体勢のまま固まる。目は何かを凝視しているらしく見開かれており、釣られて視線の方を向くと一人の娘が静かに立っていた。先ほど男二人に絡まれていた娘だ。

 

 

「さっきの娘か。どうしたんだい?」

 

「少しお礼がしたくて」

 

 妙に無機質な声だ。先ほど会った時と比べ、色もヤケに白い。彼はその少女に対し少なからぬ不信感を抱き、帰るように促した。

 

 

「お礼はいいよ。早く帰りなさい」

 

「そういう訳にもいきませんので……」

 

 相変わらず能面の様な顔をしたまま、少女はゆっくりとした動作で此方へ歩いてくる。なんとなく近寄らせてはならない気がして、距離が詰まるとその分の距離を置く。

 

 一方のはたては異常性に気づいていないのか、何故か憤慨しながら逆に少女の方に歩み寄ろうとしている。

 

 

「何よアンタ。彼は私と話してるんだから余所者はさっさと失せて。調子乗ったらタダじゃ済まないわよ」

 

 嫌な予感がする。咄嗟にはたての手を引っ張って少女から引き離すと、シュパッと裂ける音を伴いながら何かが掠めた。頬に痛みが走り、生温かい物が垂れてくる。触れてみると、それは血だと分かった。はたては依然として状況が呑み込めていない。

 

 

「ちょ、ちょっと何?」

 

「あれは……あれは駄目だ。危険すぎる」

 

 再び何かが迫ってくるのを感じる。はたてを突き飛ばしてその場から避難させると、サンカはリュックサックを盾にして防御した。リュックは簡単に真っ二つにされ、中から物が散乱する。

 

 

「君が噂の通り魔か?」

 

「……二度も攻撃を躱すとは」

 

 少女の姿が醜く膨れ上がって弾け飛ぶと、中から何とも形容しがたい生物が現れた。図体はかなり大きく、両腕の肘から先にかけて刀状になっている。左腕は右腕と比較して短い。

 

 全体的な印象はカマイタチと呼ばれる妖怪に似ていたが、どうにも生き物らしからぬ継ぎ接ぎ感があり、全体的に不自然な印象を与えてくる。サンカは異質な生物を相手に、騒動を起こした理由を尋ねる。

 

 

「何故人や文を襲った?」

 

「強いと評判の者達を腕試しに襲ったまでの事。もっとも、どれも期待外れでは有ったがな」

 

「逃げてサンカ!貴方じゃ勝てないわ!」

 

 はたてが声を張り上げると、物の怪は彼女に向かってその凶器的な腕を振り下ろした。彼女は即座に反応できず、笠懸に斬られて倒れ伏す。

 

 

「はたて!」

 

「案ずるな。即死しない程度に斬ってある。貴様は中々殺し甲斐がありそうだ」

 

 はたては痙攣しながら血を流しているが、物の怪の言う通り致命傷ではないようだ。うわ言のように弱弱しくサンカの名前を繰り返している。

 

 人智を超えた異形を前にすると尻込みして逃げたくなるが、恩人であるはたてを放っておく訳にはいかない。もし逃げれば、アレははたてに止めを刺し、新しい獲物を探すだろう。それだけは絶対に阻止しなければ―

 

 

(やるしかない!)

 

 倒すまでいかなくとも、能力を使えるようになった今の自分なら、この場から退かせるくらいはできる筈だ。サンカは散らばったスペカの一枚を拾い上げて物の怪の方へ向けると、緊張を和らげるべく息を整える。

 

 物の怪の方は瞬時に間合いを詰めて斬りかかってくるが、サンカは動こうとはしない。

 

 

「スペルカード!修羅・百鬼若松の構え!」

 

 スペカが呼応して攻撃を防ぐと共に、速度の遅い光弾を一発だけ撃ち出した。物の怪は攻撃が弾かれてバランスを崩し、光弾を受けて天高く吹き飛ばされる。そこへ追い打ちをかけるように、若松葉の様に青く、鋭い弾幕が襲い掛かった。

 

 

「この程度!」

 

物の怪は弾幕を躱してサンカに肉薄する。人間風情には絶対に負けないという自負も勿論だが、動きが幼稚で遅い弾幕を見て油断した方が大きい。

 

 

「貴様も食ろうてやるぞ!あの天狗と一緒になぁ!!」

 

 勝利を確信して咆哮を上げたが、躱したはずの弾幕が直撃して我に返った。通り過ぎた弾幕が、再び物の怪を目指して飛来・急降下したのだ。目標を見定めた弾幕達は、まるで群としての意識があるような挙動を見せた後、それを皮切りに弾幕の速度が増し、追い打ちをかけていく。

 

 

「なっ!?」

 

 パンッと音を立てて手を合わせると、左右から更に弾幕が現れた。はたての弾幕と比べると隙が無い分極めて合理的だが、美しさの欠片もなく、正しく修羅の如く猛威を振るう力は、相手の自信を打ち砕くに十分だった。

 

 

「沈めええ!!」

 

 弾幕が容赦なく全身を打ち付け、物の怪は息絶える。それでも収まることのない弾の雨は、その亡骸を原型を留めないまでに破壊しつくした。

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