幻想怪奇目録 ー人と天狗の奇妙な関係ー   作:ガーヘル313

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27話です。ノンビリ?してるはずです。


27話 外界散策

 紅魔館の一件から数日後。サンカは畳の上で暑さに溶けるはたてに、ある思い付きを話した。何気なくだったが、彼女も快諾してくれた上に、紫からの許可も得られた。

 

 実は今回、自分が元居た世界を見てもらおうと、外界散策をしてみる事にしたのだ。

 制限時間はおおよそ24時間。それを過ぎれば二人揃って消滅してしまう。その間、自由に街の散策をするのだ。

 

 

「これが外で流行りの格好なの?どう?似合ってる?」

 

 はたては普段の紫を基調とした服ではなく、ふんわりした印象を与える白いトップスに、丈の長い水色のスカート、アクセントの入った黒いサンダルと、清楚な色調で纏められた格好をしていた。

 目立つ黒い翼は小さく畳まれているし、髪が普段のツインテ―ルではなく、ポニーテールにしてあるせいもあって、とても新鮮に思える。

 

 

「思った通りだ。良く似合ってるし可愛い」

 

「ほ、本当!?」

 

 はたてはクルリと一回転し、照れ隠しの笑顔を向けた。

 

 被服はサンカが良さげな生地を人里から見繕い、はたてが物欲しそうに読んでいた外界のカタログを参考にして製作した物だ。素人作業なので服のデザインを考えるのは苦労したが、喜んでもらえるなら苦労のかいがあったと言えるだろう。

 

 

「それじゃ、行こうか」

 

「うん!」

 

 紫から貰った札を取り出して行きたい場所を思い浮かべると、空間が渦をまいて歪み、隙間が静かに開いた。向こう側に見える風景には、はたてが見たことがない人工物が置かれている。

 

 サンカは速足で隙間を通り抜けると、はたてにも来るように促し、手を差し伸べる。はたては深呼吸をして心を落ち着かせ、未知の世界への期待と不安を胸に、サンカの手を取って、隙間を一気に通り抜けた。

 

 

「外界って幻想郷より暑いのね。嫌になっちゃうわ」

 

「自然が少ないからね。便利になると不便なところも出てくるんだ」

 

 降り立ったのは人気の無い公園だった。隙間から見えたのは飲み水場で、はたてにはその形状が目新しいのか、何枚も写真を撮っては興味深そうに観察していた。

 

 

「ねえ、なんでこんな場所に隙間を繋いだの?本に載ってたみたいな場所を想像してたんだけどー?」

 

 拍子抜けしたと、はたてがジト目でサンカに言う。それに対し彼は、

 

 

「大丈夫。はたてが行きたい場所には行けるから」

 

 と言い聞かせ、此処では幻想郷の常識が通用しないこと、空を飛んだり能力を使用したりすると人間達に混乱を招いてしまうことを伝え、振る舞いには気を配るよう注意を促す。

 

 はたては大袈裟なと笑っていたが、公園から出てそれが事実であると実感すると共に、幻想郷とは隔絶した景観に度肝を抜いた。

 

 

「わぁ……」

 

 天高く聳え立つ摩天楼に、アスファルトの道を行き交う車、熱中症対策を呼び掛ける電光掲示板。何もかもが幻想郷ではお目にかかれない風景に、はたては目を奪われた。

 

 彼女は呆然と巨大建造物群を眺めていたが、ふと近くに止まっていたタクシーを指し、興奮気味に質問してきた。

 

 

「サンカ!!この箱は何!?」

 

「それは自動車って言うんだ。馬より早く走れる乗り物だよ」

 

「外ではこんな物も作っていたのね!あ、こっちのは何!?薄い板に人が入ってる!」

 

「それはテレビ。カメラなんかで撮影した風景を映し出せるんだ。どんなに遠い場所でもね」

 

「なんだか私の能力みたいね!人間が念写を使えるなんて……こっちのは!?」

 

 こちらでは珍しくもない物だが、はたてには新鮮に映ったらしく、興奮しっぱなしで怒涛の質問責めを繰り出す。サンカは良くも悪くも周囲から浮いてしまっている彼女への対応に苦心していたが、気分が高揚してしまうのも仕方ないのだろうと割り切り、一つ一つ丁寧に教えてあげた。尤も、もう少し刺激の少ない場所にしておけば良かった、と少し後悔もしたが。

 

 

「あ……」

 

 すれ違う人々に奇異の視線を送られながら歩いていると、はたての足がある店の前で止まった。彼女は物欲しそうにショーウィンドーを覗き込み、釘付けになっている。

 

 何を見ているのだろうとサンカも背後から顔を出すと、煌びやかな装飾が施されたネックレスや指輪が所狭しと展示されていた。妖怪の山に住む鴉天狗といえど、やはり年頃の女の子らしく、こういった物が気になるらしい。

 

 

「はたて」

 

「ん?何?」

 

「ちょっとお店に入ってみようか」

 

「いいの!?」

 

 宝石に負けず劣らず目をキラキラさせる彼女と共に店に入ると、眼鏡を掛けた妙齢の女性が出迎えてくれた。サンカはその女性にお薦めの品はどれかと尋ね、幾つか持ってきてもらう。

 

 

「こちら少し型は古いですが、その分お安くなっています」

 

 トレーに載せられて来たのは、控えめな装飾の指輪だった。はたてが外で見ていたのはその指輪だったらしく、他にも豪華な商品が並んでいるのにもかかわらずに、見向きもしないでいる。

 

 

「ちなみにおいくら程……」

 

 女性は電卓を持ってきてパチパチと数字を打ち込んでサンカに見せると、少し高いなと彼が漏らした声を聞き、しょんぼりしながら他の品を見に行ってしまった。

 

 

(値切れるかなぁ?)

 

 サンカにはその後ろ姿が不憫に思えたのだろう。はたてが離れてからもなお、彼は購入するか否かを考えていた。確かに高いが、決して買えない値段ではない。そこで、物は試しと交渉をして少し値段を下げてもらい、無事購入を決定した。

 

 

(喜んでくれるかな)

 

「お買い上げありがとうございます。ところで、お連れの女性は彼女さんでしょうか?とっても可愛らし―」

 

「いいえ。ただの連れです」

 

 キッパリと言い切ると、女性はそうですか、と何故か残念そうにしながら指輪を箱に収め、丁寧に梱包してくれた。

 

 

「お待たせしました。どうぞ」

 

「ありがとうございます。はたて、気になるものは見れた?」

 

「うん」

 

「じゃあ、そろそろ行こうか」

 

 その言葉を聞くと、はたては名残惜しそうに店を出て、後ろ髪を引かれながらサンカの後に続いた。

 

 

―その後、はたての行ってみたいという要望に答えて、様々な施設を周った。カフェ、ショッピングモール、水族館など、どれも幻想郷には存在しない物ばかりで、彼女はその光景や食事に一々大げさ気味なリアクションを取り、それをサンカが苦笑いしながら見守るのがお決まりと化した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「楽しかったー!」

 

 一日を通して外界を満喫した二人は、最初に出た公園へと戻っていた。周辺は薄暗くなり始めており、赤い夕焼けに照らされた遊具や林が、昼間とはまるで違う雰囲気を醸し出している。加えて、ヒグラシや秋の虫達が素晴らしい音色を奏でており、夏の終わりが迫っているのが感じられた。

 

 

「もうすぐ秋か。早いな」

 

「ねえねえ、今度はいつ来れるかな?」

 

「いつでも来られるさ。余裕さえあればね」

 

 そう言いつつポケットの中の札を取り出そうとするが、はたてが購入した商品(衣類や雑貨)で両手が塞がり、上手い事取り出せない。彼女の自腹なので文句は言えないが、幾らなんでも買い過ぎではないだろうかと、サンカは心の中で愚痴った。

 

 

「二人とも、旅行は楽しかったかしら?」

 

 札と格闘していると、突撃隙間が開き、紫が日傘を持って顔を出した。嫌な予感がするなとサンカが直感すると同時に、彼女は扇子で口元を覆い、一方的に要件を伝える。

 

 

「紅魔館の一件、ご苦労様。今から新しい仕事を頼むわ」




外界散策の詳細な内容は、後程おまけに纏めようと思っています。
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