幻想怪奇目録 ー人と天狗の奇妙な関係ー   作:ガーヘル313

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37話 輝く

「へえ~。寄せ書きねぇ」

 

 はたてはサンカの持っていた寄せ書きを不服そうに見ていた。

 

 折角あの騒ぎで彼を依存させる事が出来たと思ったのに、これではまた振り出しだ。それに文字を書いた人数の多さ。名前から推測すると都合の悪いことに男より女の方が多い。

 この女たちの中には、サンカをはたてから奪おう考えている者もいる筈だ。サンカが彼女から離れて行かないようにするためにも、より監視を強化しなくてはならないだろう。

 

 

「・・・せめて悪い虫が付かないように見張ってなくちゃ」

「ん?何か言った?」

 

 心の声が表に出てきてしまったようだ。はたては咄嗟になんでもないと追及を逃れ、話を逸した。

 

 

 

 

「そ、そうだ!早く正邪を捕まえないと!」

 

 そういえば紫から頼まれていたのだった。今回は何か褒美にくれるらしいので、先を越される前に動かなければならない。

 

 

「あの天邪鬼を捕まえるんですか?」

「そうだけど・・・二人も捕まえに?」

「結局逃げられちゃいましたけどね。反則アイテムさえ取り上げられれば雑魚中の雑魚なんですが・・・」

「反則?」

「打ち出の小槌の力が宿った道具の事です」

 

 成程、振れば願いを叶える打ち出の小槌の力を持った道具を所持しているのか。それなら逃げられもする筈だ。

 しかし、昔話しに出てくる伝説上の物もここにはあるのか。一度一寸法師とセットでお目にかかりたいものだ。

 

 サンカは卓上に寄せ書きを置き、自室の扉を開けた。

 

 

「ここがサンカさんのお部屋だったんですか?てっきり開き部屋だと」

 

 無理もない。普通の感覚なら箪笥の一つあっても良いと思うはずだ。

 以前にも調度品の一つでも購入してはどうかと勧められた事もあったが、無くても問題がない事は放浪生活でわかって居るので断っていた。

 

 サンカは何も言わずリュックサックの中をゴソゴソと漁りだすと、椛が興味深げに部屋を隅から隅まで見回す。

 

 

「男の人の部屋って、こんなに殺風景なんですか?」

「男の人って言うより、僕が単に変なだけだと思う」

 

 手を右へ左へ動かして目当ての物を探り当てると、彼は数個それを手に取って引っ張り出し、三人に見せる様に掌の上で転がした。

 サイコロのようなそれは、魔理沙との弾幕ごっこの際に使った物と同一の物だった。

 

 

「それって確か・・・」

「河童製の小型爆弾。威力は目くらまし程度だけど使える事は分かった」

「こっちのは黒い粉?何に使うんです?」

「内緒だ。はたて、もうすぐ待ち合わせの時間だ。直ぐに出よう」

「わかったわ」

 

 椛の耳がピコりと動いた。

 何か言いたげにモゾモゾしているのでついてきても構わないと言うと、彼女は明るい顔になり、

 

「直ぐに仕度します!!」

 

と風のように出て行ってしまった。てっきりこのままついて来ると思っていたが、家まで戻ったのであればそこそこ時間がかかるだろう。

 時計を見ると、予定的に彼女を待って居られるほどの時間は残されていない。

 

 

「先に行ってくる。はたては後から来てくれ」

「あ、ちょっと!」

「いってらっしゃい。良いネタ期待してますよ」

 

 サンカは一瞬で高空へと飛び立った。足先から出る燐光は、あたかも彼の存在を強く主張するかのように、暗い大空に輝いた。

 

 

 

 

 妖怪の山上空、彼女は月の光に照らされながら魔導書を読んでいた。ブロンズの美しい髪は黒い服に良く映え、時折吹く風に静かに靡く。

 

 彼女は一人の男を待っているのだ。ある目的のために。

 

 

「来た」

 

 紫色の眩い光を放ちながら彼はやって来た。話では二人の筈なのだが、どういう訳か一人だけだ。

 彼女は読んでいた本を仕舞い、ランタンを下げた箒を彼に向けた。

 

 

 

「遅いぜ・・・って、なんだよその目と肌」

 

 待ち合わせていたのは魔理沙だった。

 最初は霊夢と共同で正邪を捕らえる予定だったが、サンカが激しく拒否したため、代役として暇そうだった魔理沙が選ばれたのだ。

 

 彼女は開口一番、人間だった頃の彼と違う点を指摘してきた。事情は紫から聞いている筈だが、姿まで変わっているとは思わなかったようだ。

 

 

「気にしないでくれ。それとはたて達は後から来るよ」

「達?二人だけじゃないのか?」

 

 簡潔に説明すると、サンカははたて達がやってくるのを待ってから仕事を始める事を提案した。

 魔理沙は読み途中だった本の読みたさもあり、快く応じる。

 

 

「じゃあ記憶喪失って奴かよ」

「そういう事になるね。食べたパンの数以上に覚えてない」

「私は覚えてるぜ。13枚だ」

「よく覚えてるな」

「和食派だからな!っと皆来たみたいだぜ」

 

 他愛もない話をしつつ時間を潰し、二人がすっかり打ち解けた頃、椛とはたてが先を競うように到着した。最初に到着したのは椛で、息を切らしながら遅れてくるはたてを見て尻尾を千切れんばかりに振っている。

 

 

「決まりですね!約束は守ってもらいますよ!」

「ちょっとは・・・手加減しなさいよ・・・」

 

 何を約束したのかと問うと、此処に来るのに酒の奢る奢らないの競争をしていたと言われた。少し真面目にやってほしいものだ。

 

 中途半端に読み進めた本をため息交じりに仕舞う魔理沙に、サンカが申し訳ないと手を合わせると、彼女はどうでも良いらしく欠伸をして手を振った。なんでもいいから早くしてくれと態度に出ている。

 

 

「それじゃあ早速・・・はたて、椛ちゃん。ちょっと能力を使ってほしいのだけども」

「はい!任せてください!」

 

 サンカは彼女達に正邪がどこにいるかを探り当てて貰った。

 元々はここに逃げ込んだという情報のみを頼りに、土地勘のある魔理沙とはたてと共に手分けして探す予定だったのだが、この広大な山の中から探し出すのは至難の業だと思えていた。

 

 だが椛が居ればどんな場所に居ようとも見つけることが出来るのだ。サンカを探し出したときのように、千里を見通す能力を使えば。

 

 

「いたわ。木の陰に隠れてる」

「こっちも見つけました。南西に6間離れた場所です」

 

 想像より早く、いとも容易く正邪を見つけることが出来た。

 

二人の力は味方であるうちは頼もしいが、敵になれば一生逃れることはできないだろう。

 改めて恐ろしい能力だと痛感すると共にサンカは感謝の意を伝えると、魔理沙とはたてを連れて急降下した。

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