幻想怪奇目録 ー人と天狗の奇妙な関係ー   作:ガーヘル313

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40話 夢

 道中、正邪の能力で何もかもがひっくり返っていた魔理沙を元に戻させると、魔理沙は土埃を払いながら立ち上がった。帰ったら洗濯だな、と彼女は笑う。

 

 

「じゃあ私は帰るけど、何かあったら頼ってくれよな。幻想郷で一番信頼できるこの私に」

「ははは・・・まあ、はたてに頼ることができない事があったら、そのうち・・・ね」

「まーまーそう言わずにさぁ、私とお前は友人だろ?なんでも任せてくれよな!」

 

 魔理沙は泥だらけの顔で二カッと笑った。彼女の笑顔は清々しい物だが、文にも匹敵するこの強引さには些か閉口する。

 

 暫しの押し問答の後、サンカはある事を思いついた。彼女は会話の中でなんでも任せてくれと言った。それなら今現在悩んでいる、はたてに頼ることが出来ないことも解決してもらえるのではなかろうか。

 サンカははたてや椛に聞こえないよう、小声で魔理沙と二、三言交わすと、彼女あっさり承諾してくれた。

 

 

「わかったんだぜ。明後日辺りに来てくれよ」 

「感謝するよ。はたてには内緒で頼むよ」

「・・・サンカ?何を頼んだの?」

 

 怒気を含んだはたての声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。空へ消えていく魔理沙を見届けると、サンカは大きくため息をついた。

 

 

 

 

「と、いう事で捕まえてきました」

「あら、思っていたより早かったわね」

 

 椛とはたてを外に待たせて紫の元に行くと、紫は珍しく眼鏡を掛けており編み物をしていた。最近趣味で初めてみたらしいが、中々手先が細かいらしく、絵柄まで編み込んだセーターを作っている。

 彼女は美人であるし、裁縫などの作業もできる様になれば、何も知らない外界の男達を簡単に魅了することが出来るだろう。・・・性格さえどうにかなれば。

 

 彼女は一旦手を止めると、逃げられないと悟って仏頂面で座っている正邪をジロジロと見て、再び編み物を始めた。

 

 

「ご苦労様。報酬は後程渡すわ」

「ありがとうございます。ところで彼女は今後どうなさるおつもりで?」

「そうねぇ。閻魔の元に送るかここから追放するか、後々ゆっくり考えるわ」

 

正邪のした事は重罪なのだ。当然の結果だろう。

 

 今日はなんだか疲れた。帰ったら寝てしまおう。サンカは紫に一礼すると、フラフラとおぼつかない足でその場を後にした。

 

 

 

 里に戻った3人は疲労しており、椛は用事があるとさっさと帰ってしまった。酒を奢るのは暫く先になったようだ。

 

 サンカは伸びをすると、はたてに誘導されながら家に入った。眠気が強く、歩くことも難しい。

 

 

「少し休みたいのだけども、いいかな?」

「良いわよ。あ、でも折角だから・・・」

 

はたては正座すると、膝の上をポンポンと叩いた。

 

 

「膝枕してあげるから。ほら、おいで」

 

 一度やってみたかったんだとニコニコする彼女は、サンカに促すように手招きする。

 サンカは最初、普段の様にやらなくていい、と断ろうと口を開きかけたが、思いとどまった。

 

 はたてはサンカが孤独感を感じているとき、傍に居てくれると誓ってくれたのだ。自分から遠ざけるのは、そんな彼女の気持ちを踏みにじり、自分の心に開いた穴をより広げる事になる。

 

 彼は荷物を置くと這いずるようにして移動し、膝の上に頭を載せた。太ももは柔らかく、被服からは良い匂いがする。

 はたては普段と違うサンカの様子に以外そうにしながらも頭を撫でてくれた。

 

 

「来てくれたの?いつも断ってくるのに」

「僕だって甘えたい時はあるさ。それにその・・・断るのは・・・もう・・・」

 

 言葉は聞き取れない程小さな声になり、サンカは眠りに落ちた。

 

 

 その日見た夢は、どこか懐かしい感じのする物だった。古めかしい銃を携えたサンカが見知らぬ女の子の手を引いて、ただひたすら荒れた道を歩くだけの夢だ。

 

 女の子の顔は靄がかかって見えないが、赤い着物を着ていて、長い髪の毛を紫色のリボンで左右に分けて束ねていた。

 それとは対照的に夢の中のサンカは無駄のない服を着ており、サーベルに喇叭、胴乱(弾入れ)を、白い革帯に装着している。

 

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

「なんだ」

 

 ぶっきらぼうに返事をした彼は、立ち止まって心底つまらなそうにしながら女の子を見た。女の子はニコニコと愛想よく笑顔を振りまくと、突飛な事を言い出す。

 

 

「私、お兄ちゃんのお嫁さんになる!」

「そうだな、あと130年したら考えてやろう」

 

 子供の言う事だ。適当に話を合わせておけば満足するだろう。女の子はあしらわれている事に気が付いたのか、ムッと頬を膨らませた。

 

 

「・・・私は本気だよ?」

「そうかそうか」

「お兄ちゃん私を馬鹿にしてるでしょ!」

 

 機嫌を悪くされるのもそれはそれで困るのか、サンカは舌打ちをしつつ目線の高さまで屈んで小指を差し出した。爪は浅黒く変色し、指も骨と皮だけの様に細い。

 

 

「約束は守ってやる。それでいいか?」

「本当に?絶対守ってよ!」

 

 もう十分眠ったと体が判断したのか、指切りげんまんの声が霞みがかかったように遠のき、急速に意識が覚醒していった。

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