「今日はありがとうございました。今度来る時は、何か珍しいお菓子でも持ってきます」
「あら、それは楽しみね。それじゃあまた会いましょう?」
社交辞令的な別れの挨拶をサンカとパチュリーがしている間、はたてはお土産として咲夜から持たされた菓子を手に、ほんの少し喜んでいた。甘い物が手に入ったというのもあるが、どちらかと言えば何事もなくお茶会を終えられたことの方が嬉しかったのだ。
最悪の状態も考慮して何時でも弾幕を張れるようにしておいては居たが、有難いことに無駄に終わってくれた。 彼女も血を見るのは嫌だし、なによりもパチュリーがサンカに対して恋愛的感情を持ち合わせていない事が、一番の収穫だった。とは言え、警戒するに越したことはないが。
「それではお気をつけてお帰りくださいませ・・・と」
咲夜は依然居眠りを続けている門番を中庭に連れて行くと、門番の物と思われる凄惨な悲鳴が聞こえてきた。仕事を怠けていたとは言えど、一体どんな罰を与えられているのだろうか。
はたては同情しつつ、サンカがパチュリーに別れを告げるのを待って、紅魔館を後にした。
「それじゃあ次は魔理沙の所に行かないと」
「う・・・」
はたてはもう一つ大切な事を忘れていた。なんの用事があるのかは分からないが、この後魔理沙の家に行かなければならないのだ。
(なんであんな奴の所なんかに・・・)
はっきり言ってあの白黒魔法使いは嫌いだった。
彼女は魔理沙の強引な性格や態度、何より馴れ馴れしくサンカに接していくのが気に食わなかった。できれば会いたくは無かったが、サンカ一人で行かせようものならどうなるのか目に見えている。
押しに弱い彼の事だ。万が一魔理沙がサンカの気を引こうと行動に移したなら、強引にはたてから奪ってしまうだろう。
それだけはなんとしても避けたかった。
(油断できないわね。気を付けないと)
「はたて?どうしたんだ?」
「なんでもないわ。早く行きましょ」
少し怒っているように返事をすると、はたてはサンカに先立って空へ飛び立った。
迷いの森に差し掛かると、はたてから出ている強い圧をヒシヒシと感じていたサンカはため息を一度つき、空中で停止して声をかけた。
ここまで来る間にお互い無言で気まずさが募っていたのもあり、とにかく何か話そうと思っての行動ではあったが、いざ話しかけると何を話題にしようか思いつかなかった。
もっと何を話すか考えてから話しかければ、と自身のうかつさを呪う。
「あ・・・えっと・・・」
そうしている間にもはたては何?と首をかしげている。その動作もまた愛らしいのだが、話しかけた後に何を話すかで、サンカの頭は一杯だった。
それから数分程経ってようやく何を話すか纏まったので、どもりながらも口を開いた。内容的に少し恥ずかしい気もするが、この空気を打開できるのならそれで良い。
「あの・・・さ、僕が・・・」
「おーい!」
はたての物とは違う別の声がして、即座に声の主を探した。声質からすると魔理沙のようだが、どういう訳か姿が見えない。
「魔理沙か?どこにいるんだ?」
「わっ!!」
後ろからドンっと背中を押され、反射的に姿勢を保とうと体が動く。足に装着した装置は使い慣れてきてこそいるが、バランスを崩すと容易く制御できなくなる程のデリケートさがある。
そのため上手い具合に足の向きを微調節しなければ、高度によってはバランスを崩すことは死を意味するのだ。
悪気はなかったのだろうが、殺されかけたサンカは少々苛立ちながら振り向くと、いつもの明るい調子で笑う魔理沙がいた。
「なんだ・・・後ろにいたのか」
「えー、リアクションが薄いぜ全く・・・」
彼女は片手に薄汚くなったぼろ布を持っており、それをブンブン振り回しながら不服そうにした。
聞いてみれば、その布は最近作った透明になれるマントなのだそうだ。実際に彼女が被ったり脱いだりして見せると、姿が消えたり現れたりする。
「どうよ!結構自信作なんだぜ?」
「へえ、凄いじゃないか」
「だからその反応の薄さは何なんだぜ・・・まあいいか。家まで案内するぜ」
魔理沙はそう言って地上へ降りていくと、すぐさまはたてが腕を掴んできた。眉間に皺が寄っており、魔理沙の後ろ姿を睨みつけている。
「なんだか怒ってないかい?」
「別に。それより話そうとしてたことって何?」
「・・・いや、忘れてくれ」
話の輪に入れなかったのが気に入らなかったのだろうとサンカは予想すると、はたての腕を握り返し、見失わない様に魔理沙の後を追った。
外伝の制作も予定しています。ご期待ください