幻想怪奇目録 ー人と天狗の奇妙な関係ー   作:ガーヘル313

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9話になります。性懲りもなく前後編です。後編は現在調整中のためしばらくお待ちください。


9話 会敵・前編

「行ってしまった……しかし、外界にただの人間で能力を使えるのがいたとは。私もまだまだ知らない事が多いわね」

 

 文は二人を見送ると、作業部屋に入って起こった出来事を特集するべくペンを手に取り、ふと考察をしてみる。というのも、サンカの能力を身をもって体験した彼女は、その力を強く警戒していた。

 

 これまで外界からやって来た者は能力持ちが大半だったが、それは神職だったり、霊感が高かったりと所謂`普通の人間´とは違う。文字通り`普通の人間´が幻想入りし、能力を発現させたのは、記憶の中では今回が初の事例だ。

 幸いにも本人の様子を見る限りでは能力の制御は出来ていないらしいが、あれはこれまで見たことがない異質なタイプだった。もしも彼が完全に力を支配下に置いて異変を引き起こせば、幻想郷最強である博麗の巫女でさえも勝てる可能性は低いだろう。

 

 しかしそれ以上に心配なのは親友でもあるはたてである。文が倒れたサンカを家に運び込んだ時、彼女は直ぐにやって来て、文を見るなりサンカを返せと怒鳴ってきたのだ。その場は彼をどうこうするつもりはないと納得させたが、彼女はサンカが目覚めるまで片時も離れようとはせず、文が部屋に立ち入る度に強く警戒していた。数少ない友人である文を、だ。

 

 

(何もなければいいけど……)

 

 

 原稿にペンを走らせながら空を見上げると、その心中を表すかのように、暗く重い雲が広がり始めていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さあ、着いたわ」

 

 そう言って降ろされたのは里の端だった。彼女は、天狗だと分かると追い出されてしまうとサンカに説明しながら翼を折り畳み、上着を着込む。

 

 

(どこでも同じか)

 

 ここでも差別があるのか、とサンカは少し残念な気持ちになった。妖怪も妖怪なら、人間も人間である。自分を受け入れてくれたはたてのように、お互いが仲良くできればどれ程良い事なのだろうか。

 

 

「行きましょ。自分で歩けるの?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

「本当に?無理はしないでよね?」

 

 はたては歩くスピードをサンカに合わせてくれた。四肢はまだ少しだけ動かしにくかったが、運んでもらっている間に暫し眠っていたおかげか、幾分かマシになっている。

 

 

「あんまり歓迎されないか~。まあ無理もないわよね」

 

 それを他所に、落胆気味にはたてが呟いた。時折すれ違う人々は皆、見かけない二人組を警戒している素振りを見せていた。とても心外であるが、噂の通り魔と疑われているのかもしれない。

 よそ者が歓迎されないこの土地でマトモに聞き込みできるだろうか。不安要素は強いが、無理を言って連れて来てもらった以上、用事は達成しなければならない。

 

 

「すみません」

 

「なんだ?何か用か?」

 

 最初に尋ねたのは店前で掃き掃除をしている恰幅の良い男だった。事情を話し情報を聞き出そうとする。

 

 

「ああ知ってるよ。隣に住んでた奴だ」

 

「本当ですか?」

 

 詳しく話してくれと頼むと、男は快く話してくれた。

 

 

「あの日は釣りに行くって言ってたな。で、あんまりにも帰りが遅いもんだから見に行ってみれば……」

 

「死んでたと?」

 

「そうそう、刃物で切ったみたいにスッパリと。おっかないもんだよ」

 

 男は怖い怖いと言いながらブルっと震えた。サンカは成程と相槌を打ち、今度は犠牲者の性格について尋ねた。

 

 

「大分粗暴なやつだったね。酔っぱらうと手がつけられなくなって、大分困ってたんだ。おまけに喧嘩を売って歩いてるときたもんだ」

 

「喧嘩を売る?」

 

「男4人をのしたってんで、調子に乗ったんだろうな。自慢して歩いていたよ」

 

「へえ」

 

 一体どんな奴だったのだろう。生きていたなら顔を見てみたかったと、サンカは思った。

 

 礼を言うと、他の犠牲者についても尋ね歩いた。犠牲者は共通して、取っ組み合いでそこそこ強かったという評価がつけられているらしい。また性格もあまり人に好かれていないらしく、厄介がられていたようだ。

 

 腕試しをしたいが為に襲うのか、若しくは無害な妖怪をも殺傷する正義感溢れる通り魔だと言うのか。何にせよ、死に様からすると人の所業では無いのだが。

 

 

「厄介払いできて助かる、か……あれ?はたては?」

 

 気がつくと、隣にいたはたてが居ない。考え事をしていてはぐれてしまったようだ。人里の中なら安全かもしれないが急いで探しにいかなければ。

 

 

「やめてください!」

 

「いいじゃねえか、少しくらい相手しろよ」

 

 路地裏から声が聞こえた。その声に惹かれるようにして見物しに行くと、うら若き少女が男二人に絡まれているところだった。どこにでもこういう輩はいるのだなと思いつつ、足元にあった石ころを男に向かって投げる。

 

 

「なんだてめえ」

 

「その子を離せ。嫌がってるだろ」

 

「てめえにゃ関係ないだろうが!」

 

 やめるよう説得するべく注意を向けさせる。よく見ると手元に鈍く光るものが見えたので若干後悔したが、ひるまず彼らを見据え、新たな石を拾い上げた。

 

 

「コイツ外来人じゃねえか?」

 

「金目の物持ってるかもしれねえなぁ」

 

 二人はサンカの傍に寄ってきた。酔っているのか酒臭く、体臭がキツいのもあって思わず呼吸を止める。

 

 

「おい兄ちゃん、今気分が良いんだよ。金目の物出せば見逃してやっからさっさとよこしな」

 

「お前らに渡す金はない。早く家に帰れ」

 

 次の瞬間、目に飛び込んできたのはこちらに向かってくるナイフの刃先だったが、サンカは自身の命の危機よりも絡まれていた少女を案じていた。姿が見当たらないので、上手く逃げられたらしい。

 

 

(逃げれたか。良かった)

 

 安堵すると腹部へ刃がめり込み、激痛が走った。せめて防御はするべきだったと後で思いはしたが、どの道難しかっただろう。男等も意表を突かれたのか、ナイフを手放した。

 

 

「ぐうっ!!」

 

「なんだコイツ、避けねえぞ」

 

「面白くねえな。殺しちまえ」

 

 玉のように吹き出る汗を滴らせながら刺さったナイフを引き抜くと、鮮血が傷口から溢れてきた。思わずうずくまって手で押さえるが、その程度で止まる筈がない。

 

 視線を戻すと、男らは目障りな相手を殴ろうと手を振り上げている所だった。

 

 

(カッコ悪いなぁ……僕は)

 

「スペルカード。遠眼・天狗サイコグラフィ!!」

 

 女の声が響き、大量の光弾の雨が男達を射抜く。彼らは断末魔を上げる間もなく肉塊へと姿を変え、それすらも光の奔流によって消え去った。

 

 

「サンカ!!」

 

 はたてだ。彼女は持っていた紙袋を落とし、サンカの両手を握る。

 

 

「しっかりして!」

 

「はたて……どうしてここに」

 

「女の子が教えてくれたのよ。どうして私の傍から居なくなったの?……」

 

 さっきの子か。と彼は察した。腹部を刺されたことをはたてに伝えると、彼女は血相を変えながら患部を見、そして不思議そうな顔をする。

 

 

「?どこにも傷はなさそうよ?」

 

「え?」

 

 そんな筈はないと触れるが、確かに痛くもなければ傷口もない。それだけでなく血が出て服に染みた後も無いときた。

 

 一体どういうことだろうか?確かに刺され筈と抜き捨てたナイフを見ると、しっかり自分のものと思わしき血が付いている。夢ではないようだ。

 

 

「と、ともかく急ぎましょ。騒ぎを聞いて人が集まってくるわ」

 

「あ、ああ。わかったよ」

 

 さっきの光弾はなんだったんだろうか。聞きたいことは多かったが、今はそれどころではない。起き上がるのを手伝ってもらうと、はたては手を引いて走り出した。




次回に戦闘描写を書く予定ですが、話の内容的に迷っています。アンケートを実施しましたので、よろしければお答えいただけると助かります。
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