ありがとうございます。
アフグロ編、パスパレ編も書こうか悩んでますが、とりあえずロゼリアの1章を終わらしてから考えます。
「どうしましょう……」
自室の机に座り、頭を抱える。
机の上には長方形の似た紙が3枚。ちょうど
ただ、俺が購入したわけじゃあない。ある3人からそれぞれ渡されたものだ。
そのチケットに書かれている日付も時刻も会場も内容も全く同じ。ただ渡してきた相手が違うだけ。
別に3枚同じチケットがあるから何かが来る、というわけじゃ無いし、3枚分の特典があるわけでも、3倍曲が聴けるわけでもない。
1枚あれば会場に入れるし、ライブを見られる。
つまり、1枚あれば――ひどい言い方だけれど――残りの2枚は意味をなさない紙切れだ。
だからといって残りの2枚を捨てるなんて事は、わざわざくれた人の好意(または義理かもしれない)を踏みにじり、チケットともどもゴミ箱に捨ててしまうようなものだ。
外見は一緒だから見分けはつかないだろうけど、それなら、ということでもない。
「どうしましょう……」
今日何度目かの呟きに応えてくれる人は誰もいなかった。
応えてくれる人はいないけど、どうして俺が悩んでいるかお話しよう。え? 興味ない? いや、少しは楽になりたいから話すだけだよ。
と、言うわけで時間は今日の朝まで遡る。
※
Roseliaが始動して、さらに練習はハードになったらしい。もっとも、燐子さんの技術は姉さんや湊先輩から見ても納得のいくものだったようだ。あとはライブまでに完成度をかなり高く仕上げるらしい。
俺からしたら、燐子さんが観客の視線に耐えられるか、という点が1番心配なんだけれど。
そんなこんなで、あこと燐子さんとのチャットによるお話も少し時間が短くなってしまっている。
それでも練習で疲れているだろうに、寝落ちするまで(あこだけだけど)付き合ってくれる2人には感謝している。
「氷川君。お客さんだよ~」
教室で物思いに耽っていると、クラスメートに呼ばれた。
(は? 俺にお客さん?)
『お客さん』という時点で日菜ねぇではない。
日菜ねぇだったら断ることなく突撃してくる。
After glowのメンバーだったら、俺じゃなくて蘭のところに来るはずだ。
仮に俺に用事で、かつ他のメンバーに聞かれたくないのならトークアプリを使えばいい。教室に来る必要はない。
では誰だろうと入り口に目を向ける。
「お~い☆ 夕輝~」
「リサ先輩?」
まさかのリサ先輩だった。
「一体、どうしたんですか?」
リサ先輩が俺たちの教室に来るなんて滅多にない、というか初めてなんじゃないかな?
逆に俺がリサ先輩の教室に行くことは週に1、2回はある。――日菜ねぇによる連行だけど。まさか……
「日菜ねぇが何かやらかしました!?」
「あ、そういうことじゃないんだよね~」
何か日菜ねぇがご迷惑をかけたんじゃないかと想像したけど違うらしい。とすると――
「もしかして、俺に用事ですか!?」
「もしかしなくても夕輝に用事だよ~☆ あ、別に夕輝が何かしたってわけでもないから安心してね~」
俺が迷惑をかけたわけでもないらしい。
と、リサ先輩はブレザーのポケットから封筒を1つ取り出した。
「はい、これ。今度のライブのチケット」
「へ?」
ライブのチケット? 俺に?
「この間も言ったけど、今のRoseliaがあるのは夕輝のおかげでもあるんだよ。夕輝は『部外者』って言うけど、夕輝がいたからあこも、燐子も、もちろんあたしも1歩を踏み出せた」
「だからさ、Roseliaの最初の1歩を夕輝に見てほしいんだ」
「そういうことでしたら……ありがたくいただきます」
「うん☆ 場所はいつものライブハウス。日時は書いてるから来てね☆」
じゃ~ね~、と手を振りながらリサ先輩は自分の教室へ戻っていった。
Roseliaの最初の1歩……か。
リサ先輩からもらったチケットを胸ポケットに大事にしまい、教室へ戻った。
何の用だったのか聞き出そうとするクラスメートをはぐらかしながら席に着くのだった。
※
学校帰り、俺は連絡を受けて駅前にいた。
正直、この間のこともあって駅前は避けたいところなんだけど、相手方からの珍しい提案だったから了承した。
ところで、あの人はいつの間に俺の連絡先を入手したんだろう? 姉さんはいくら姉弟とはいえ個人情報を本人の同意なく教えるとは思えないし……
「お待たせしました……」
そこへ待ち人――燐子さんがやって来た。
学校帰りにまっすぐ来たようで制服のままだった。
っていうか、花咲川だったのね。
「それは構いませんが……いつの間に俺の連絡先を?」
「実は、この間パーカーをお借りしたときに……スマホが入ってまして……それであこちゃんが、『連絡先入れちゃえ~』と……ごめんなさい……」
まぁ、面倒くさくてロックしてなかったからね。
燐子さんからトークアプリの通知来たときは何事かと思ったけど、そういうことね。
確認したら本当にあこのも入ってるし。
これはあこをとっ捕まえて一言言ってやらないとね。『グッジョブ』と。
「いえ、けして怒ってはないです。ちょっと驚いただけで……ところで、お話というのは?」
『大事なお話があります。放課後、お時間いただけませんか?』
と来たときにはびっくりした。特に用事もなかったし、OKしたら駅前を指定されて尚更びっくりした。
「これを……夕輝さんにお渡ししたくて……」
と、燐子さんに渡されたのは見覚えのあるチケット――
「夕輝さんのおかげで……新しい世界に踏み出すことが出来ました。その初舞台をぜひ見てほしいんです!」
そこまで言われて、断れる人います? 即OKしましたとも。
※
コンコン
夜、自室で明日の準備をしているとドアがノックされた。
ノックの音からして日菜ねぇではないのは確かだ。
「どうぞ~」
母さんかと思い、返事をすると――
「いいかしら?」
紗夜姉さんだった。
「紗夜姉さんが来るって珍しいね。どうしたの?」
いつもならギターの練習をして、明日の準備をして寝るはずの姉さんがこうして俺の部屋に来るとは……
日菜ねぇの件がバレたかとも思ったが、応対した感じではそんなこともない。
(他に姉さんが来る用事って何かあったかな?)
何か約束をしたわけじゃないし……『夜の約束』は俺から姉さんの部屋の部屋に行くことになってるし……何か借りっぱなし、または貸してたっけ?
めったに来ることがないから姉さんが訊ねてきた理由をあれこれ考えていると――
「これを渡したくて……」
姉さんが取り出したのは1枚の封筒。
(あれ? なんかデジャヴ……)
受け取って、断ってから中を確認すると――
(ですよね~)
『またお会いしましたね』と言わんばかりに(喋るわけ無いが)例のチケットが姿を見せた。
「Roseliaが出来たのは少なからず夕輝のおかげでもあるから、ライブに来てほしいの」
「うん。分かった。何を差し置いても必ず行くよ」
「いえ、学生としては勉強を優先してほしいのだけれど……まぁ、いいわ。じゃ、おやすみなさい」
「あ、うん。おやすみなさい」
用は済んだというばかりに姉さんは自分の部屋に戻っていった。
それを確認して机に戻ると、先ほどもらったチケットを机の上に置き、引き出しからさらに2枚チケットを出した。
「どうしましょう……」
そして冒頭に至る
※
「というわけなので、ぜひとも私めとライブに行ってください」
お願いします、と椅子に座ったままではあるけれど頭を下げる。
翌日の昼、学校の食堂でお馴染みのAfter glowとお昼を前にしてお願いする。
さすがに土下座は目立つから勘弁してください。
「何? 夕輝のモテ自慢じゃないの?」
「ゆ~くん、モテモテですなぁ~」
蘭の批評に続くようにモカが冷やかす。
確かに話だけ聞くとそう思いたくなる(願望)
でも、現実にはそんなことないから。ないよね? なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「あたしはあこからチケット貰ってるからなぁ~」
巴はあこから既に貰っているようだ。『一緒に行く』ことは出来るけどね。
「私もバイトがあるから……ごめんね」
つぐが申し訳ない、といったように手を合わせて謝っている。むしろ、こっちが申し訳ない。この間もお世話になったし、何かお礼しなきゃなぁ。
「いや、こっちこそごめんね。また機会があったら誘うね」
つぐは用事があってダメ……と。
「ゆ~くん、ゆ~くん」
「なんでしょう? モカさん」
モカに話しかけられ、返事を返すと――
「実は、やまぶきベーカリーで新商品が出るんですよ~」
「……ぜひとも購入させて下さい」
「交渉成立~」
ふふんとドヤ顔するモカ。
まぁ、チケット代がパンに化けたと思えば――
「あれ? モカ、バイト始めたんじゃなかったっけ?」
「おぉ~、そうでした~。あ……」
「どうした?」
「シフト入ってた~」
スマホでスケジュールを確認したら、その日はバイトらしい。
「じゃあ、交渉はなかったことに~……」
「シューン」
「なかったことに~」
「シューン」
「……」
「シューン」
はぁ、とため息を1つつく。
「分かった。ちゃんと新商品は購入するから」
「……シューン」
「……お楽しみ袋」
「交渉成立~」
ニヤリと笑うモカ。
してやられたけど、自分から持ち出した条件である以上仕方ない。
ちなみに『お楽しみ袋』とは、やまぶきベーカリーで売っているパンがランダムで5個~10個入って1000円というもの。
5個の場合は比較的高いパンが入っていることもあり、質をとるか、量をとるかで常連を悩ませている。
(俺も小遣い少ないんだけどなぁ……)
予想外の出費に、俺もバイトしようかなとすら思い始める。
モカもバイトでNG。となると――
「どうかお願いします!」
※
「なぁ。あこたちの出番、まだかな?」
隣でずっとソワソワしている
一組終わるごとに毎回聞いてくる。
「まだだと思う。ってか巴、落ち着けって。そんなんじゃ身が持たないぞ」
「そう思うなら、夕輝も貧乏ゆすり止めなよ」
「えっ!? してた?」
蘭に指摘されて自分も巴のこと言えないなぁと思う。
「そういう蘭もキラキラした目で見入ってたよ」
「ちょっ、ひまり!」
「ほうほう」ニヤニヤ
「違うから! そんなんじゃないから!」
(はい、ツンデレいただきました)
唯一の光源のステージの照明だけでも蘭の顔が赤いのがわかる。
「あ、ほら。出てきたよ!」
ひまりの声にステージに視線を戻すと――
「こんばんは、Roseliaです。さっそくですが、聞いて下さい――」
MCもそこそこに挨拶替わりに1曲目を奏ではじめる。
知らない人からしたら無愛想に感じるだろうけど、
『前置きなんていらない。私たちの音を聞けば分かる』という湊先輩の自信の表れだろう。
(そういえば、『Roselia』の演奏を初めて見た)
あの時見せてもらった動画は、燐子さんが加入する前だったし、湊先輩、姉さん、燐子さんの技術は個別に見せてもらっただけ。こうして見るのは初めてだ。
あこは、本当に中学生なのかと疑わしいくらい激しいスティック捌き。それでいて楽しそうに叩いている。
リサ先輩はブランクがあるって言ってたけど、ブランクを感じさせないように弾いている。
それでいて、観客を見る余裕もあるようだ。
ニコッ
「!」
今、自惚れじゃなければ俺の方を見て微笑んだ?
もしそうじゃなかったとしたら、観客の何人かは彼女の虜になっただろう。
燐子さんは人前で演奏するのが不安と言っていたけど、前にご自宅で見せていただいた時と同様、いや、それ以上にも思える。これだったら、本番前に勇気をあげなくてもよかった気がする。
1曲目が終わり、簡単なメンバー紹介が行われたのだが、やはり湊先輩の時は1番歓声が上がった。
姉さんの時も上がったことから、この2人はやはり名実ともに知られているのだろう。
メンバー紹介のあとすかさず2曲目。観客のボルテージも上がり、ステージは熱を帯びる。
「次で最後の曲。聞いて下さい『BLACK SHOUT』」
それは咆吼――叫びを冠する歌。でも俺にはRoseliaというバンドの産声にも思えた。
ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?
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許す! 書くことを許す!
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ただでさえ話進まんのだからやめーや!!