2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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第17話

『最近、友希那さんの様子がおかしくない?』

 

 日課でもあるNFO攻略前のチャットであこが言い出した。

 

『湊先輩が?』

 

『練習の時はいつも通りなんだけど、休憩時間とか上の空になってたりするんです(・・;)』

 

 気がつかなかった。

たしかに休憩時間の時、みんなから離れて考え事をしていることはあったけど、演奏のこと、または曲のことを考えていると思っていた。

それ自体、たびたびあることで最近に始まったことではないと思っていた。

 

(それだけ湊先輩と向き合っていないということなのだろうか)

 

 思えば、お互いに第一印象は最悪だった。

一方は自分の理想に満たないものは切り捨てる暴君(イメージ)

かたやいきなりあおってくるクソ生意気な後輩(事実)

 あの時はあこの実力を確認しないで『お遊び』と切り捨てたからカッとなっちゃったんだよなぁ。

 

 そんなこともあり、Roseliaのメンバーと打ち解けた今でも湊先輩との距離は未だに距離がある。

 

『ちなみにリサ先輩はなんて?』

 

 湊先輩の理解者といえばリサ先輩。湊先輩とは幼なじみで、家も隣らしい。俺もリサ先輩のような幼なじみが欲しかった。

 

『リサ姉は友希那さんが自分で言うまで待ってあげてって……』

 

 やっぱり湊先輩は何かを抱えていて、リサ先輩はそれが何かを知っているんだ。

でも、()()()()()()()()()で本人が言うまでは何も言わないんだ。

 

(この間のスーツの女性のことも含めて直接湊先輩に聞くしかないか……)

 

『リサ先輩がそう言うなら、待ってるしかないね』

 

『そうですね(*´∀`*)』

 

『それしかないね』

 

『んじゃ、さっそく今日のクエストだけど、どうする』

 

『あこ、欲しい素材があるんだよね』

 

『じゃあ、そこにしようか(。・∀・。)』

 

『今日も腕が鳴るねぇ~』

 

『でも、夕輝さんのシーフはちょっと……(;・д・)』

 

『なんていうか、シーフってなんだっけ? ってなるよね』

 

『え? シーフって、目立つ服着て、ハンググライダーで空飛んだり、アルファロメオ乗ったり、マジックみたいなことしたり変装するもんじゃないの?』

 

『それは、何か違う気が……(;・д・)』

 

 ともあれ、めちゃくちゃNFOした。

 

 

 昼休み、蘭たちや日菜ねぇの誘いを断って湊先輩を探していた。

 

(俺が湊先輩だったら……どこに行くだろう)

 

 可能な限り湊先輩の行動を考える。

混み合っている購買や食堂は避けるだろう。

教室……も多分いない気がする。

リサ先輩と一緒にいる……なんてこともない。先ほど日菜ねぇとのお昼を断った時に確認済みだ。

 

(行くとしたら静かなところだろう)

 

 音楽室や図書室はこれ以上ないくらい静かだろう……飲食厳禁なことを除けばだけれど。ともすればーー

 

(あ、やっぱりいた)

 

 選ばれたのは中庭でした。

そこに設置されたベンチに腰掛け、サンドイッチを頬張っていた。

ごく普通の光景のはずなのに、彼女のミステリアスな雰囲気のせいかまるで絵画のようだった。

 

(正直近寄りづらい。けどーー)

 

 湊先輩とも打ち解けたいと決めた以上、行動するしかない。

 

「湊先~輩♪ こんにちは」

 

「夕輝? どうかした?」

 

 おっと、湊先輩から訝しげなーーまるで不審者を見るような目線を向けられる。警戒心を解くために明るめに声をかけたのに……

 

「お昼、一緒にいいですか?」

 

 右手に持った手提げを自分の顔の高さまで上げる。

如何わしいものはないですよ~、敵ではないですよ~というアピールだ。

 

「私と?」

 

「ええ。湊先輩と」

 

「…………」

 

 湊先輩の警戒度がそれはかとなく上がった。

ここで取り繕っても湊先輩の警戒度が延々と上がるだけなので、にっこり笑って湊先輩の様子を見ることにした。

 

「……」ジー

 

「……」ニッコリ

 

 不毛なにらめっこだ。にらめっこというよりは、だるまさんが転んだに近いかもしれない。

ともあれ、湊先輩のどこか猫の様な目で見つめられること数分ーー

 

「……」スッ

 

 湊先輩がベンチの右側に寄った。これは?

 

「座らないの?」

 

「あ、失礼します」

 

 空けてもらった左側に座り、包みを開く。

 

「湊先輩もいかがですか? お口汚しではありますが……」

 

「いいのかしら?」

 

 まるっきり断らないところを見ると、興味はあるらしい。

 

「構いませんよ。箸もピックもありますからどうぞ」

 

 そう言って箸を湊先輩に手渡し、ピックも取りやすいところに置く。

 

「ずいぶん準備がいいようね」

 

「まぁ、箸を落としたりしたら洗いに行かなきゃいけないですし……」

 

(ひまりとかモカとか巴が取っていくから仕方なくとは言えない)

 

 ごまかすように笑いながら卵焼きを1つ口に放り込む。

うん。今日のは甘めだ。

 

(湊先輩の口に合えばいいんだけど……)

 

 卵焼きの味付け1つでも好みが様々だ。甘い卵焼きが好きな人がいれば、塩気が強い方が好きな人もいる。

 湊先輩の場合は、コーヒー飲むときにそれなりに砂糖を入れていたので甘党だと信じたいところだけど……

 

「――」

 

 おそるおそる湊先輩の方を確認すると、口を押さえて黙っていた。

 

(うそ……ダメだった?)

 

「この卵焼き、ちょうどいい味付けね」

 

 うん。コメントは素っ気ないようだけど、表情が柔らかくなっていた。口以上に表情が物語っていた。

 

(湊先輩、普通に表情に出てるじゃないですか)

 

 クールビューティー、孤高の歌姫……そんなイメージが俺の料理を咀嚼するたびに音を立てて壊れていく。

もはや小動物にすら思えてきた。

 

(あこが見たらどう思うだろう)

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「……どうでした?」

 

 箸を箸入れに収めたタイミングで湊先輩に訊ねる。

 

「とても美味しかったわ」

 

「お気に召していただけたなら嬉しいです」

 

「えぇ。お母さんにお礼を言ってもらえるかしら」

 

「あ~……」

 

 どうやら母さんが作ったと思っているらしい。

まぁ、普通はそう思うよね。

 

「どうかした?」

 

「これ作ったの……自分です」

 

「えっ!?」

 

 気持ちは分かるけど、驚きすぎでしょう。

驚きのあまり、かなり目を見開いている。

 

「卵焼きは……?」

 

「甘めが好きなので」

 

「他のおかずも?」

 

「前日のおかず入れたり、作り置きしているもの入れたりしますね」

 

 入学当初は母さんに弁当を作ってもらっていた。

でも、さすがに3人分を毎日。それに加えて朝ごはんも作らなきゃいけない。

 何とかしてあげたい、と思い本を購入して弁当を作ってみたら意外とハマってしまった、というのが真実だ。

 

 

「湊先輩?」

 

「……気にしないでちょうだい」

 

 ベンチに座ったままどこかうなだれている湊先輩。

体調が悪くなったんじゃなければいいけど。

 

「ところで、湊先輩は苦手な食べ物ってあります?」

 

「私はゴーヤがダメ。あの苦さが……」

 

「あ~……納得です」

 

 口にする機会はそうそう無いものの、あの苦さは一度食べたら忘れられない。

それがいいのに、と言う人もいるだろうけど、あれがなければ食べられるのに。

 

「そう言う夕輝は?」

 

「自分は豆類、ナッツ系が苦手ですね」

 

「豆?」

 

「なんていうか、食感がダメなんです加工されていれば大丈夫なんですけどね」

 

「そう……」

 

 姉さんはニンジン、あこはピーマン、燐子さんはセロリ、リサ先輩はグリーンスムージーが苦手なんだっけ。

こうして見ると、Roseliaって野菜が苦手なんだなぁ。

 

 

「ところで今日はどうしたのよ?」

 

「どうしたって、何がです?」

 

「そもそも一緒にお昼を食べる仲でも無いでしょう」

 

 さすがにおかしいと思いますよね~。

 

「湊先輩と少しでもお近づきに、と思いまして」

 

 言い方はちょっとアレだけれど、本心だ。

 

「Roseliaには――」

 

「馴れ合いは不要……ですよね」

 

 そういうこと、と湊先輩は頷く。

 

「でも、自分はRoseliaではありませんし……」

 

 あくまでオブザーバーですしね。

 

「それに、お互いに理解を深めることは馴れ合いとは違うと思いますよ?」

 

「そうね……」

 

 押し黙る湊先輩。やはり切り出すとしたら俺から、ということか。

 

「まぁ、同じバンドのメンバーにも言いにくいことってあると思いますし……()()()()()()()()バンドメンバーじゃないのがここに1人いますしね」

 

「……」

 

「実は、先日……スーツを着た女性と一緒にいるのを見たのですが――」

 

「夕輝」

 

 先ほどとは違い、湊先輩の冷たい声が響いた。

 

「そのことについては話せない。それに関係ないことよ」

 

 それは完全なる拒絶だった。

それだけ告げると、湊先輩は去って行ってしまった。

 

 

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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