2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 少しオリジナル色強めです。
お気に入り200突破しました。ありがとうございます。


第18話

 いつものスタジオでのいつもの練習……のはずなんだけどーー

 

「今日は集まり悪くないですか?」

 

「そうだね~。どうしたんだろう?」

 

 練習の時間になったにも関わらずスタジオにいるのは俺を除いてリサ先輩と姉さん……Roseliaの半数がいない。なによりーー

 

「湊先輩が来ていないって珍しいですよね」

 

 時間になっても湊先輩が来ていないことが問題だった。

だいたい練習の時は一番乗りで来ているし、日直なんかで遅くなる時はリサ先輩に連絡が来ている。

そもそも今日は休日で学校は無いんだけど……

 

「連絡来てないし、用事があるって聞いてないんだけどなぁ~」

 

 あこと燐子さんからも連絡ないし……何か厄介事に巻き込まれていなければいいけど……

 

「時間は限られてますし、やれることをやりましょう」

 

「了~解☆」

 

 チューニングをしていた姉さんの提案でリサ先輩もチューニングを始める。

 俺はどうしようか……とりあえず燐子さんに連絡入れておいたけど、手持ち無沙汰なんだよね。

とりあえず邪魔にならないように部屋のすみにーー

 

「紗夜、準備出来たよ~☆」

 

「じゃあ、ここのところ合わせてみましょう」

 

「オッケー☆」

 

 姉さんとリサ先輩が演奏を始める。

 

(あ、このフレーズ……)

 

 まだ『Roselia』として活動する前、あこが動画に撮って、燐子さんが加入するきっかけとなったフレーズ。

 

(何度か燐子さんが弾いているのを見たっけ。たしか……)

 

 目を閉じて、燐子さんが弾いていた姿を思い出す。

 

(ただ弾くだけじゃなくて、時に弱々しく、時に激しく、時に妖艶に……)

 

 スッと目を開けて鍵盤に指を滑らせた。

 

 

side リサ

 

 時間がもったいないからってことで、紗夜と合わせながら練習することにした。

 まずは何度も弾いているフレーズをウォーミングアップがてら二人で合わせる。

 もう弾き慣れた部分ではあるけど、精度をあげなきゃね☆

 

「~~~」

 

 と、ギターとベースの音に()()()()()()()()混ざり始めた。

 

驚きながらもキーボードに目を向けるとーー

 

(えっ!? 燐子!? いつの間に……)

 

 燐子がいつの間にかキーボードのところにいた。

ドアが開いたのに気がつかないくらい集中してたのかなぁ、アタシ。

 でも、燐子が声もかけずに急に演奏に混ざるなんて……。

 

と、紗夜が演奏を止めて、燐子に近づいていく。あ、これは本当に怒ってる。

 

(とにかく紗夜を止めて、燐子に遅れた理由聞かないと!)

 

 演奏を止めて、紗夜を宥めようと近づく。

 

「練習の邪魔をしないで、()()!!」

 

「へ?」

 

 紗夜の言葉に驚きながらもよく見ると、怒られていたのは燐子ではなく、夕輝だった。

 

(あれ? 燐子は?)

 

 先ほどまでキーボードを演奏していたはずの燐子がいなくなっていて、なぜか夕輝が怒られていて……頭の上に疑問符を浮かべるアタシを後目に、紗夜は夕輝に正座させて説教していた。

 

 

 

「遅く……なりました……」

 

 結局、湊先輩が来たのは予定時刻から遅れること15分、全員が揃ったのは30分たった頃だった。

 

「遅いわよ!」

 

「そういう友希那も15分も遅刻したけどね~☆」

 

 リサ先輩の指摘に『言うな』と言わんばかりに睨み付ける。

 

「ともかく、理由を話してもらえますか?」

 

 腕を組みながらも訊ねる。冷静になろうとしているけど、指で肘をトントン叩いてことから、かなりいらだっていることが伺える。

……まぁ、俺にも原因の一端はあるんだけれど。

 

「……」

 

 それでもあこも燐子さんも何も言わずに黙っている。

いや、言わないんじゃなくて、言いたくても言えないのか?

二人とも妙に湊先輩の方に視線を向けているような……

 

(湊先輩が遅れたことも関係しているのか?)

 

「とりあえず、何も言わなきゃ何も伝わらないし、始まりませんよ~」

 

「ゆう兄、足プルプルだけどどうかしたの?」

 

「触れないでください……」

 

 全員集まるまで正座での待機を命じられたから脚が痺れてるの……

 

「まぁ、こんなに張り詰めた空気の中じゃ言いにくいでしょうし何か飲み物でも……」

 

 プルプルする足にむち打ち、ロビーまで飲み物を取りに行こうとするとーー

 

「実はーー」

 

 と、あこが口を開く。

 

「あこちゃん」

 

 すかさず燐子さんが止めようとする。

 

「ごめんりんりん。……りんりんとスタジオに来る途中で、友希那さんを見かけて……気になって後を着けたんだけど……」

 

「湊さんにもプライベートはあるでしょう?」

 

 すぐさま姉さんが指摘する。

 

「そうですけど……」

 

「そこで友希那さんがスーツを着ていた女の人と話してて……」

 

 あこの代わりに、燐子さんが語る。

 

(スーツの女性って、もしかしてこの間来てた……?)

 

「そこで……『Roselia』としてF.W.Fに出場するか、契約して本選から出場するかって……」

 

「「「!!??」」」

 

 これには俺も姉さんも、リサ先輩ですら驚いた。

 

(まさかのプロダクションのスカウトか……)

 

 少なくともパスパレとは違うプロダクションなんだろうな。

そうでなければ節操が無さすぎる。

 

「湊さん、お二人の言っていることに相違はありませんか?」

 

 全員の視線が湊先輩に注がれる。

 

「間違い……ないわ」

 

 湊先輩が絞り出す様な声で言った。

 

「私たちとではなく、お一人でコンテストに出るということですか?」

 

 おっと、雲行きが怪しくなってきた。

 

「それ……は……」

 

「否定出来ないということは、そういうことですよね?」

 

 歯切れの悪い湊先輩にしびれを切らし、姉さんがいい放ち、出ていこうとする。

 

「退きなさい」

 

 そのタイミングで(足の)しびれが切れた俺が出入口の前に立ちはだかる。

 

「退きません」

 

 ドアを塞いでいるものの、姉さんとの身長差、体格差はほとんど無いに等しい。姉さんが力ずくで通ろうと思えば俺を押し退けて通るのも簡単なことだ。

もっとも、姉さんがろくに対話もせずに力ずくで通るとは思えない。

 その証拠に手を出すことなく、ただこちらを睨んでいた。

怯みそうになったけど、ここで退いてしまえばいつかの二の舞になるだろう。

なので、意地でも退くわけにはいかない。その意思を示すために、グッと姉さんを見据える。

 

「ちょっ、紗夜。落ち着いて。夕輝も……」

 

 この間のような大事になりそうな空気を察知して、リサ先輩が止めに入る。

もっとも、俺自身はそんなつもりは無いんだけど……

 

「まだ湊先輩の考えを聞いていないよ。湊先輩がどう考えているのか……それを聞いてから出ていっても遅くはないんじゃないかな?」

 

 リサ先輩のおかげで少し落ち着きを取り戻した姉さんに諭すように優しく告げる。

 

 姉さんはため息を1つつくと、ツカツカと元いたところへ戻った。

 とりあえず説得には成功したことに安堵した。

 

「リサ先輩、助かりました」

 

「いや~、また夕輝と紗夜が揉めるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ~」

 

 小声でお礼を言うと、リサ先輩も俺にだけ聞こえるくらいの声で苦言を呈した。

 

「すみません……」

 

「夕輝のおかげで助かってることは事実だけど、あんまり自分を犠牲にしないでね☆」

 

「……善処します」

 

「その答え方は善処しない政治家の答え方なんだけどなぁ~」

 

 そう呟きなから湊先輩の元へ行くリサ先輩。

 

「湊先輩、この間言ったことですけど……馴れ合いは不要でも、お互いのことを理解するのってやっぱり大事だと思うんです。今がいい機会だと思いますよ。と、言うわけで、湊先輩の考えを聞くまでは誰も出られませんので」

 

「……夕輝、あなたずるいわよ」

 

 にっこりと笑いながら物理的にも精神的にも『逃げ場はありませんよ』と告げると、湊先輩はこちらを睨んできた。

 

 こうでもしないと湊先輩、話してくれそうにないんですもん。

それにこのままだと、肝心のF.W.F出場より先にRoseliが解散してしまいそうだし……

 

 湊先輩の苦情も笑顔で受け流す。

湊先輩はしばらく睨んでいたが、効果がないと観念したのため息をついて語り始めた。

 

 

 彼女の父親はインディーズではかなり名の知れたバンドマンだった。数々の曲を歌い、男女問わず支持され、ついにはメジャーデビューを果たした。

 しかし、プロになってからは、事務所の意向で『万人受け』するような曲を強要され、支持していたファンが離れていき、ついには解散。彼自身も音楽から離れていってしまった。

 

 そんな彼の悲願が――F.W.F

 

父親の音楽が大好きだった少女は、ただそれだけを目標に音楽を続けた――大好きが義務に、全てに変わってしまった。

 

「もともとは、コンテストに出るためだった……コンテストに出られるなら誰でもよかった……」

 

「でも今は……この5人で音楽がしたい! この5人じゃなきゃダメなの!」

 

「私はRoseliaを続けたいっ!」

 

 湊先輩の独白をみんな黙って聞いていた。

 

「あなたが私に言ったのよ。……私情は持ち込まないって」

 

 そんな中、最初に口を開いたのは姉さんだった。

 

「でも……あなたの気持ちもわかるわ。音楽を続ける理由はともかく、始める理由なんて、みんな私的なものなんじゃないかしら」

 

 その姉さんの言葉を受け、他のみんなも口々に賛同する。

 あこは巴みたいになりたくて。燐子さんは自分を変えたくて。リサ先輩は湊先輩と一緒にいたくて……それぞれが抱えるそれぞれの思い。

 人によっては、そんなもの……というかもしれない。それでも当人にとっては無視できない、ないがしろにできないものなんだ。

 

「それに私もこの5人で音楽をしたい」

 

 姉さんの心からの言葉に湊先輩は言葉を失った。

 

「ん? これって……Roselia再結成フラグ!?」

 

「「「解散してない(から)」」」

 

 あこの的外れな一言に思わず湊先輩と姉さんと突っ込んでしまった。

 

 でもそれでスタジオの張り詰めていた空気が弛緩した。

 

 こうして、RoseliaとしてF.W.Fを目指すことになった。

 

 

 

「夕輝~、ちょっといい?」

 

 練習が終わりスタジオから出ると、リサ先輩に声をかけられた。

 

「はい? どうかしました?」

 

「練習のことで聞きたいことがあるんだけどさ~……」

 

 練習のこと? と言ってもベースのことなんてからっきしだし……

 

「えっと、演奏技術のことでしたら、俺より湊先輩か姉さんに――」

 

「そうじゃなくってさ……今日、紗夜と3人でいたときにさ、キーボード弾いてたでしょ? 夕輝、キーボードできたんだ~って思ってさ」

 

 あぁ、あのことかぁ。

「いえ()()()()()()

 

 途端にリサ先輩は目を見開いた。

 

 

リサside

「いえ、弾けませんよ」

 

「え?」

 

 夕輝の答えに思わず声が漏れた。

 

(私の目に映っていたのは『燐子』だった)

 

 でも、あの時紗夜は『夕輝』と呼んだ。それに燐子はまだスタジオにいなかった。

つまり、キーボードを弾いてたのは夕輝……のはずなんだけど……

 

「弾けないけど、()()()()()()()をしたんです。燐子さんはあんな感じに弾いてたなぁって」

 

「え!?」

 

 燐子のマネ!? いや、あれがマネ?

 

「リサ先輩? 大丈夫ですか?」

 

 夕輝が心配そうに見てくる。

 

「あ~……いろいろあったから疲れちゃったみたい」

 

「今日は早めに休まれた方がいいですよ?」

 

「うん。そうする☆ じゃっ、また学校でね」

 

「はい、お疲れさまでした」

 

 夕輝と分かれて帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 




 夕輝君の隠された才能がでました。
割と前の方でそれっぽいことは書いていましたが……

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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