2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 いよいよRoselia1章完結


第19話

リサside

コンクール当日

 

「いよいよここまできたんだね~☆」

 

『Roselia』としては短い時間かも知れないけど、友希那からしたら待ちに待った、といえる長さ。

 

 もっとも今回のは予選で、これに受かればようやく本選。

 

(でも、友希那が目指すのはさらにその先なんだよね……だから、こんなところで止まってられない。られないんだけど……)

 

「リサ? どうかした?」

 

 友希那がジッとアタシを見ていた。

 

「な、なんでもないよ」

 

 いつもは我関せずって感じなのに、こういう時は鋭いんだよね。

 

「あ~。リサ姉、緊張してるんでしょ~?」

 

「き、緊張なんてしてないよ。うん、全然平気」

 

 あこに指摘されて、ついムキになって否定してしまう。

それでも、自分でも分かるくらいに声は震えているし、足もガクガクしている。

 最初のステージの時も緊張してたけど、今回はその比じゃない。

 

(こんな時、友希那達のメンタルがうらやましい……)

 

 友希那と紗夜はステージ慣れしてるし、『他人のことなんて関係ない』ってスタンスだし。

 あこはあこで緊張と無関係って感じだし。

 

(あれ? 燐子はーー)

 

 最初のステージの時ですら顔が真っ青だった燐子。

心配になって目を向ける。

 

「りんりん、大丈夫?」

 

「う、うん……」

 

 気にかかるあこに、顔を強張らせながらも答える燐子。

それでも、前回ほど緊張していない様に見える。

 

(あれ?)

 

 よく見ると、時々右手を強く握って、それを左手で包み込んで胸に当てている。

そうすると、燐子の表情が和らいだ様に見えた。

 

(右手が痛い……わけじゃないよね? 何か祈ってるような……)

 

 燐子、右手、祈り……頭の中でキーワードを思い浮かべる。何かあったっけ?

 

(あっ!)

 

 

 思いあたる出来事がひとつだけあった。

ここにはいない、Roseliaの6人目ともいえるメンバー。

その彼が力をくれた時のこと。

 

(そう言えば、アタシが言ったんだっけ……)

 

『夕輝……』

 

『なんですか?』

 

『勇気ちょうだい』

 

『……だじゃれですか?』

 

 うん。今思い出しただけでも恥ずかしいこといってるな~、アタシ。

 それでも、夕輝は嫌な顔ひとつしないで勇気をくれた。

 

背中を押してくれた。

 

時に厳しく、時に優しくRoseliaを支えてくれた。

 

(夕輝にいつまでも甘えていられないけど、今日ぐらいはいいよね。力貸して、夕輝)

 

 アタシも燐子に倣って右手を胸に当てて祈る。

 

「おはようございま~す」

 

「え!?」

 

 来ないと思っていたのにいきなりの登場に驚いた。

あれ? 夕輝……眠そう?

 

「夕輝……どうかしたのかしら?」

 

「いえ。コンテスト前の激励……といいますか、これを渡したくて」

 

 そう言いつつ取り出したのはーーミサンガ?

 

「これは?」

 

「まぁ、お守り……ですかね。Roseliaの成功を祈って」

 

 照れくさそうに語る夕輝。

 

「もしかして、夜遅くまで起きてたのって……」

 

「うん。作り方教えてもらったのいいんだけど、初めて作ったもんだから時間かかっちゃって……完成と同時に寝落ちしちゃった」

 

 これ、徹夜してまで作ってくれたんだ……。

 

「これ、ゆー兄の手作り!?」

 

「うん! あ、でも返品はしないでくれるとありがたいな」

 

 紫、青緑、赤、赤紫、灰色の五色。初めてなのに、こんな難しいの……

 

「上手に出来てますね……」

 

「本当ですか? 燐子さんに言われると嬉しいです」

 

 それに、ひとりひとりに声をかけてるからか、みんな適度に緊張が解されているような……

 

「はい、リサ先輩!」

 

「あ、ありがと……」

 

 ミサンガを受けとる手が微かに震えちゃった。

 

「あれ? リサ先輩。もしかして、緊張してます~」

 

 それに気づいたのか、夕輝はニヤニヤしながら指摘する。

 

「き、緊張なんてしてないし!」

 

 あ、またやっちゃった……

 

「本当ですか~?」

 

「……嘘、かなり緊張してる」

 

 その言葉に夕輝はクスリと笑う。

そして、右手を出してーー

 

「勇気、お貸ししましょうか?」

 

 あぁ、やっぱりーー

 

「やっぱりずるいね、夕輝は……」

 

 言いながらも強く夕輝の右手を握る。

 

「風評被害もいいところですね」

 

 笑いながらも夕輝もギュッと手を握り返してくれる。

 

「勇気、いきました?」

 

「もうちょっと」

 

 離すのが惜しくて、少し長めに勇気をもらう。

 

「あ! ゆー兄とリサ姉、何してるの?」

 

「「!?」」

 

 ビックリして手を離しちゃった。

 

「リサ先輩に気合いを注入してたんだ。あこもやるか?」

 

「ううん。あこは、頭撫でてほしい」

 

「「「えっ!?」」」

 

 あこの提案に驚いた。

 

「ゆー兄に頭撫でられると、闇の力が、こう……ドドーンと溢れてくるんだよね!」

 

「俺、闇の眷属じゃないはずなんだけどなぁ~。まぁいいや」

 

 そう言いながら躊躇することなくあこの頭を撫で始める夕輝。

その姿はまるで兄妹のようだ。

 

「ふっふっふ、これで妾の闇の力が漲ってきたぞ」

 

「そっか。最高のパフォーマンスが出来そうか?」

 

「うん!」

 

 満足そうなあこ。

 

「夕輝、私にもお願いできるかしら?」

 

 ここで友希那が無自覚に爆弾を放り投げた。

 

「へ!?」

 

「ちょっ、友希那!?」

 

 言った本人は『私、変なこと言ったかしら?』と首をかしげている。

 

「最高のパフォーマンスが出来るなら私もお願いしたいのだけれど……」

 

 そうだよね。深い意味はないよね。

 

「えっと……じゃあ、手を出してもらっても……」

 

「いえ、喉に近い頭の方がいいのだけれど」

 

(友希那~!?)

 

 謎理論を展開しながら頭を差し出す友希那。

さすがに夕輝も反論するよね……

 

「あ、そうですね。じゃあ失礼します」

 

(夕輝~!?)

 

 友希那の謎理論に納得したのか、はたまた徹夜したから頭が回っていないのか友希那の頭を撫で始める。

 

(何これ?)

 

 果たして、この光景を見て『最高のパフォーマンスをするために頭を撫でてもらってます』と言われて理解できる人はいるかな? 

少なくとも、アタシは分からないし、他の二人もーー

 

「わ、私も……いきます」

 

「えっ!? 燐子!?」

 

「輪を乱すわけにはいかないわ」

 

「紗夜まで!?」

 

 結局、Roselia全員が夕輝に頭を撫でてもらった。

 

※ side out

 

 

 会場入りしたRoseliaを見送って、ため息を1つついて近くのベンチに座った。

 

(間に合ってよかった~)

 

 安堵とともに脱力する。

 

 目が覚めたら朝で、完成したミサンガをポーチに突っ込んで急いで駆けつけた。

 リサ先輩と燐子さんの表情が強張っていたけど、会場入りする頃には解れたみたいで安心した。

 

(リサ先輩は妙に気にしすぎるからねぇ~)

 

 大方、『湊先輩のために!』とか、『アタシが足を引っ張らないように』とか考えて気を張ってたんだろうなぁ。頭撫でたときには顔を真っ赤にしてたけど……

 

 ところで――

 

(なんでみんなの頭撫でたの!? 俺!)

 

 あこの頭を撫でたところまではいい。あこは年下だし、頭を撫でられると言うのが、あこにとっては願掛けとか、不安を取り除いてもらうための行動とかあるだろうし……

 

(他の4人はどうなのさ!?)

 

 自分より年上の、先輩や姉の頭を人前で撫でるってどんな羞恥プレイだよ。

 あの時は湊先輩の勢いに圧されて受け入れたけれど、そもそも俺が頭撫でたところでパフォーマンスの向上はしないから! そもそも喉に近いから頭ってどんな理論だよ!?

 しかも燐子さんも来るし、いつもはストッパー役の姉さんやリサ先輩も要求してくるし……。

 

(なにより皆さん、いい匂いなんですけど!)

 

 シャンプーの匂いなのか、個人の匂いなのか、その両方が化学反応を起こした結果なのか知らないけど、働かない頭で頑張った! 俺の理性!!

 

 

 ともあれ……Roseliaの勇姿を見たい気持ちがあるけれど、寝不足の状態で人の多いところに行くには不安がある。

 

(5人の成功を祈って、帰ろう)

 

 終わってからは反省会も兼ねた打ち上げかな、と思いながら会場を後にした。

 

 

side 紗夜

 

「出場者のみなさん。出番の5分前にはステージ袖で待機をお願いします!」

 

 楽屋内でコンテストのスタッフから注意事項や説明を受ける。

 

「やばっ! メンテ用のスプレー……」

 

 今井さんがメンテナンス用のスプレーを忘れてしまったらしい。

 

「忘れ物には注意してって、連絡したじゃない。はい」

 

 私のスプレーを取り出し、手渡す。

いつもは周りの人に気を配っている今井さんだけれど、自分のことが疎かになってしまったようだ。

 

「あ……りがとう……」

 

 虚を突かれた、というか狐につままれたような顔をしていた。

 失礼じゃない、と思ったけれども今までの自分を考えると、驚かれても無理はないのかしら……。

 

「よーしっ! 練習の成果、見せてやろうねっ」

 

「あこ。他の応募者もいるんだから、騒がないで」

 

 宇田川さんが大声を上げたのを湊さんが注意する。

楽屋は個別じゃなく、湊さんが言ったとおり共同なので気をつけなければいけない。

 

「それよりテレビ見てよ!」

 

 他の応募者の声に、ついテレビに目を向けると――

 

(pastel*palettes――)

 

「――ギターとドラムの子は上手そうだけどさー」

 

「さ、紗夜……?」

 

 不安そうにこっちを見ている今井さん。

 

「今井さん。スプレー終わった? 私も使うから」

 

「えっ、あっ、うん……。はい」

 

 前までの私だったら、気が気じゃなかったかもしれない。でも今は――

 

『姉さん。言いたい人には言わせておけばいいんだよ。で、その人たちを――』

 

(『演奏で黙らせて』やればいいのよね)

 

※ side out

 

side 友希那

 

「5分前よ」

 

 紗夜が告げる。

 

「問題ないわ。いつでも行ける」

 

 もっとも、なるようにしかならない。ここまできたら出来ることは何もない。今日までの練習の成果をぶつけるしかない。

まぁ、コンテストの前に夕輝と話せたおかげでリサも燐子も適度に緊張が解れている。

 過度の緊張は演奏の妨げにしかならないけれど、適度の緊張はパフォーマンスをする上で必要なものだ。

 

(夕輝には感謝しないといけないわね)

 

 最初の出会いは最悪だった。それでも短期間でメンバーを集めてコンテストまで来られたのは間違いなく夕輝のおかげだろう。

 

「Roseliaさん、お願いします」

 

『はい!』

 

「行くわよ」

 

 ()()()()()()とともに私たち()()でコンテストに挑む。

 

 

※ side out

 

 

 コンテスト後、ファミレスにて

 

「え~っと、コンテストお疲れさまでした」

 

 結果としては落選らしいが、審査員からしたら好評だったらしい。

 まぁ、『頂点を目指す』Roseliaからすれば中途半端な入選よりずっと価値があるものだ。

 来年までには実力と経験を積み、優勝したうえで本選へ――いや、更なる高みへ行くだろう。

 

「今回は残念ではありましたが、各々収穫もあったことだと思います」

 

 音楽的な部分だけじゃなく、多少ではあるけどお互いのことを理解できたんじゃないかな?

 

「今回のことを糧に、これからも頑張っていきましょう! 乾杯!」

 

「「「乾杯~!」」」

 

 




 次回予告的な何か

「なんでこんなことになっちゃったんですかね~」

――すれ違う心――

「pastel*palettes、よろしくお願いしまーっす♪」

――再スタート――

「所詮、子どもの遊びだろう!」

――越えなきゃいけない壁――

「あなたに私の何が分かるの!?」

――心の叫び――

「最初はごっこ遊びだったかもしれない。でもそれが彼女たちが『いつも通り』でいるために選んだことなんだ!」

――After glow編――

「あなたにとっては選択肢の1つかもしれない。でも、その道を唯一の道と決めてひたすらに努力してきた彼女の気持ちが分かるか!?」

――pastel*palettes編――

 始動(予定)

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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