2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 大分空いてしまい、申し訳ありません。
気づけば7月。まだ30℃超えが数回しかないものの、着実に暑くなってますね。熱中症にはご注意を。

 気温とは反比例して懐は氷河期です。


第20話

 物事には『不変』というものはないのかもしれない。

凪いでいる水面に小さな小石を投げ入れるだけで揺れるように、線路上に石1つあるだけで脱線するように。ちょっとした要因で保たれていたものがあっさりと崩れてしまう。

 

『いつも通り』なんていうのは難しいのかもしれない。

 

 

 

「ガルフェス?」

 

 ライブハウスのカフェで1人時間をもて余していた俺は、練習終わりのAfter glowに遭遇。そのままカフェで雑談していた。

 

 

「うん! スタッフさんに『出てみない?』って勧められてね」

 

 ひまりが嬉しそうに語る。

 

 前のRoseliaのライブに誘ってから、After glowも何か目標を掲げてーーと思った矢先に勧められたらしい。

 

 

「ガルフェスかぁ……ちなみにF.W.Fとどっちがすごいの?」

 

 あいにくと規模が分からないので、最近知ったフェスの名前を出す。

 

「そりゃあ……F.W.Fだよなぁ~」

 

「あっちはプロ候補みたいな人たちが出るからね」

 

 巴とつぐが『比べるまでもない』と言った感じで答える。

 

「でも、ゆくゆくはAfter glowも出られるんじゃないかな?」

 

「まぁ、夢はぶど~かんだからね~」

 

 モカが胸を張り、『ふふんっ』と不適に笑う。

 

「マジで!?」

 

(そこまで考えていたのか……)

 

「あくまで目標なんだけどね……」

 

 

「まぁ、バンドマンの夢だろうしね。目標は高くってね」

 

「よ~しっ! 頑張るぞ~! えいえいおーっ!」

 

 掛け声とともに拳を高く突き上げるひまり。

 

「お、お~」

 

 ひまりに倣って拳を挙げる。

 

「「「あ……」」」

 

 『やっちゃった』と言わんばかりの顔をしている3人と、対照的に目をキラキラさせて喜びがにじみ出ている。

 

「えっ……俺、何かしちゃった!?」

 

 知らず知らずのうちに何かやらかしてしまったのだろうか……

 

「いや~、ひーちゃんの号令はスルーするのが常だから~」

 

「まさか夕輝がのっちゃうとはな~」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

 まさかの事実をつぐに訊ねる。モカと巴はひまりを弄ることが多々あるから……

 

「あはは~……」

 

 苦笑いを浮かべるつぐ。否定しないことから、本当のことらしい。

 

「よし、次から俺もスルーしよう」

 

「しないで!? お願いだからのって!!」

 

 必死に頼みこんでくるひまり。あまりに必死すぎてかわいそうになってくる。

 

 

「ところで、蘭はどうしたの?」

 

 必死すぎるひまりを時に宥め、時にかわしながら、さっきから姿が見えない蘭の居場所を訊ねる。

 

「お~? 蘭のことが気になります~?」

 

 ニヤニヤしながらモカが弄ってくる。

モカが言っていることに間違いはない。ただ、ニュアンス的には気になる。かといって、ムキになって否定しても弄られるだろう。

 

「あ~、うん。そうだね~」

 

 抑揚のない俗にいう棒読みで答える。

 

「む~。ゆーくん、ノリが悪い」

 

 モカが口を尖らせ、ぶーぶーと不満を漏らす。

そう簡単には弄られないぞ……日菜ねぇで慣れてるからね。

 

「蘭なら……ほら、あそこ」

 

 巴が指差した先では蘭が電話で話していた。

白熱しているのか、少々身振り手振りが見てとれる。

 

「最近、練習の合間とかも電話が来るんだよね」

 

 しかも、通話が終わったあとの蘭はどこか疲れて見えた。

 

「相手は分かってるの?」

 

「年上の男の人だよ~」

 

「なぬ!?」

 

(蘭に男だと!? それも年上!?)

 

確かに蘭は見た目派手だけど、根は真面目だから変なことになったりしないと思うけど……。でも、さっきの様子を見るに、うまくいってないのかな? 

 そもそも、付き合っているのかな? もしかしたらストーカーなんじゃないのか?

 

 そんな考えが頭をよぎっていた。

 

「まぁ、蘭のお父さんなんだけどね~」

 

 あっけらかんとモカがネタばらし。

 

「……」

 

「あれ? ゆーくん?」

 

「……」

 

「何で無言で近づいてくるのかな~」

 

 モカが俺を見て、後ずさっている。どうしたんだろうね~(棒読み)

 

「ひーちゃん、ともちん、つぐ、助けて」

 

 モカにしては珍しく慌てた様子で助けを求めている。

 

「まぁ、仕方ないよな」

 

「自業自得だしね」

 

「モカちゃん、しっかり」

 

「えっ……」

 

 3人にも見捨てられ、モカの顔が絶望に染まる。

そんなモカの肩に手を置く。

 

「モカ。少し頭冷やそうか?」

 

 

 

 side 蘭

 

 練習終わりに父さんから電話が来た。

うちが華道の家元ということで、遊び歩いてないで華道に専念しろ、ということだった。

 

 父さんからしたらアタシたちのバンドは『くだらないもの』に見えているのだろう。

 家でも毎日のように言われるし、今日みたいに電話がかかってくることも少なくない。

 

 きちんと説明しなきゃと思いながらも、実際に話すとお互いの言いたいことをただぶつけ合うだけ。そこにお互いの考えも、妥協点もありもしない。

 

 頭の中を占めるイライラをため息を1つついて吐き出す。

 

 

「おまたせ……ってどうしたの?」

 

 みんながいるとこに戻ると、何故か夕輝もいた。

不思議に思ったけど、まぁそれはいい。

問題は目の前で繰り広げられている光景だ。

 

「ひゅーふん、ほへんははひ。ほろほろひゅるひへ~」

 

「い~や、まだだね。俺の怒りはこんなものじゃ治まらない!」

 

 パッと見女の子に見える変態(夕輝)が『これでもか!!』と言わんばかりに揉みしだいていたーーモカのほっぺを。

いや、揉みしだくというより両手で挟んで円を描くようにして弄んでいた。

 

「なにしてんの?」

 

 理解できないのが半分、呆れ半分で聞く。ーーいや、半分どころか全然理解できないけど。

 

「この口か、人をおちょくるのはこの口か!」

 

「ほへんははひ~」

 

 

「柔らかくて、しっとりしてて、揉み心地いいんじゃ!」

 

 そんなアタシをお構いなしにひたすらモカのほっぺを弄り続ける夕輝。

 

「そろそろ止めるか」

 

「さすがにね」

 

「はい、夕輝くんすとーっぷ」

 

「いや、本当になんなの……」

 

 

 アタシの疑問をよそに他の3人は夕輝の奇行を止めるべく割って入るのだった。

 

side out

 

 

 

 

「ふぅ~、堪能した」

 

 モカを反省させるためのお仕置きだったはずだけど、モカのほっぺの感触についつい力が入ってしまった。

巴が止めてくれなきゃ、危うく怪しい世界の扉を開いてしまうところだった。巴には感謝しなきゃ。

 

ただーー

 

「ーー」ズーン

 

(先ほどから蘭がゴミを見るような目でこっちを見てるんですが)

 

「ゆーくんに汚された……もうお嫁にいけない~。よよよ~」

 

 あからさまな泣き落としの演技をするモカ。

 

「誤解される言い回しは止めてもらえますかねぇ!?」

 

 それにモカなら嫁ぎ先に困らないと思うけど。

 

 蘭の俺を見る目つきが犯罪者を見るそれに変わった。

 

「えっと……ら、蘭?」

 

「なんですか? 変態の氷川さん」

 

 瞬間、膝から崩れ落ちた。

 

「さ、行くよみんな」

 

 そう言うと、こちらに背を向けてスタスタと行ってしまった。

 

「あ……蘭! 夕輝くん。今度の日曜にライブあるんだけど、よかったら来てね」

 

「夕輝くん、ごめんね?」

 

「あまり気にするなよ?」

 

 みんなのフォローがありがたいけど、辛い。

その場に残ったのは、加害者である俺とーー

 

「えっとぉ……そのぉ……ドンマイです」

 

 被害者のモカ。

 

「あ、うん。大丈夫。気にしてないから」

 

 自業自得だし、仕方ない。だけど、立ち上がるのに時間がかかるだけだ。

 

「蘭の誤解はモカちゃんが解いておくから~」

 

「そうしてもらえると、非常に助かるかな」

 

「じゃあまた、学校で~」

 

 声をかけてモカが蘭たちを追う。

 

「あ、モカ!」

 

 顔を上げて呼び止める。

 

「なぁに~?」

 

「もし、貰い手がいなかったら、その時は責任とるから」

 

「……ゆーくんのたらし~」

 

 そう言ってモカは走って蘭たちを追いかけた。

 

(ほっぺが赤かったのは、俺が揉んだからだよね?)

 

「ゆ~き☆」

 

 声をかけられ振り向くと、リサ先輩がいた。

 

「あ、リサ先輩。どうも」

 

(見られてなければ大丈夫)

 

 後ろにリサ先輩がいたのは驚いたけれど、リサ先輩はいつも通りニコニコ笑っているし大丈夫だろう。

 

 

「リサ先輩……ちなみにいつからここに?」

 

「ん~、少し前かな」

 

(少し前……なら大丈夫。見られてない)

 

「うん。『夕輝がモカのほっぺを弄りたおしていた』あたりかなぁ」

 

「あ……」

 

 この瞬間、俺はとある言葉を思い出した。

 

『笑顔とは威嚇行動である』

 

 厳密には歯茎を見せて笑うことが威嚇行動に似ているとのことらしいが、そんなことを知っていても、今の状況を覆す一手にはなりもしない。

 

「何を話していたかは、距離があったから聞こえなかったけどね~☆」

 

「……」

 

「ただ、女の子の柔肌をあんなにいじくり回すのは、お姉さんどうかと思うな~☆」

 

「……」

 

「夕輝、聞いてる~?」

 

「はい……」

 

「とりあえず、外じゃなんだし続きはスタジオで聞こうか~」

 

 リサ先輩の提案に異を唱えることなど出来るはずもなく、俺はリサ先輩に連れられてスタジオへ向かった。

 

(誰かが来てくれれば尋問も終わるはず)

 

 そんな淡い期待を込めたものの、実際には姉さんが来てしまい、姉さんを含め二人に見事なまでの飴と鞭を食らうのだった。




 

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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