2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

22 / 40
 気づけばバーに色が( ; ゚Д゚)
ありがとうございます!!


第21話

 After glowのライブ当日。

あこと待ち合わせをしているのだが、その前に俺はとある場所を目指していた。

 

「聞いた話だとこの辺だったような……っと、あったあった」

 

 

 事前にもらっておいたメモに描かれた地図を見ながら歩いていると、目的地に到着。

 

『山吹ベーカリー』

 

 モカ行きつけのパン屋らしく、店名が書いてある紙袋いっぱいのパンを毎日のように持ってきている。

 

 おかげで店名は覚えたものの、肝心の場所が分からない。

ということでリサ先輩に場所を聞いたところ、わざわざ地図まで書いてくれた。ありがたいことこの上ない。

 

「って、つぐの家の近くなんだ」

 

 すぐ近くに『羽沢珈琲店』があった。たしかつぐの家は喫茶店って言ってたし、ここがつぐの家なんだろう。今度時間があるときにでも来てみよう。

 

 山吹ベーカリーに向き直りドアノブを手前に引いた。

まず、ドアベルの音が出迎えてくれて、その後で焼きたてのパンの香ばしい匂いが鼻を刺激する。

 そして、目の前には色とりどりのパンがーー

 

(これだけでお腹が減りそうだ)

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

 と、快活そうな声とともに出迎えてくれたのは、茶髪を黄色いリボンでまとめてポニーテールにしている女の子だった。

 

「あ、どうも~」

 

 無言でパンを選ぶのもどうかなと思ったのでペコリと頭を下げてトレーとトングを手にする。

 

(バイトの子かな? パン屋の奥さん……にしては若すぎるよな)

 

 見た目は高校生。おそらく俺と同じくらいなんだろうけど、女子高生には内容な安心感? 包容力がある気がするんだよなぁ。

 例えるならリサ先輩のような雰囲気……とでもいうのかな?

 

と、トングをカチカチならしながら思案しているとーー

 

「どうかされました?」

 

「へ?」

 

 気づくと女の子がすぐ近くまで来ていた。

 

「何か難しい顔をされてたみたいなので……」

 

 と、彼女は言ってくれた。

 

(まぁ、トングをカチカチならしながら難しい顔してるヤツがいたら変だもんね)

 

「いえ、どれも美味しそうなパンなので悩んでしまいました」

 

 自分の行いを反省しながらもそう告げる。

もっとも、この発言自体は本心なんだけどね。だって想像してほしい。目の前には焼きたてのパンがところ狭しと並んでいる。

あんパンやクリームパン、チョココロネといった菓子パンや、カレーパン、ホットドッグ、焼きそばパンといった惣菜パン、食パンやフランスパン、ラスクなんかも存在感を放つ。

しかも、まだ開店直後なのだろう。陳列されていないパンもあるようだ。

  それが意味することは、今なお焼かれたパンが厨房で陳列の時を待っている状況だ。

 

 さらに、パンの説明が描かれたポップもあり、購買意欲を掻き立てる。

 

(これはモカがたくさん買ってくるのも分かる)

 

 この中から選ぶなんて勿体ない。全種類を買っていきたい。

財布さえ許せばだけど……

 

 悲しいかな。バイトもしていない一般高校生には難しい。

それに今回はモカへの差し入れだ。それもライブ前だからいつものように紙袋にいっぱい、というわけにもいかない。

 

「お姉さんのおすすめってどれですか?」

 

 決められなければ、決めてもらえばいい。

初来店の俺より、店員のお姉さんの方が当然ながらこのお店のパンのことを分かっている。

 

「そうですね~」

 

 全部おすすめなんですけど、と前置きした上で、

 

「チョココロネですね。私の友達が大好きでいつも山ほど買っていくんですよ。あ、でもそれじゃあ私の友達のおすすめになっちゃいますかね?」

 

 と、苦笑いを見せた。

 

「じゃあ、お姉さんとお姉さんの友達のおすすめってことでチョココロネ、もらいますね?」

 

 と、トングでチョココロネを5つトレーの上に載せた。

他にメロンパンと、あこにクリームパン。自分にクロワッサンを購入した。

 

「ポイントカード、お作りしますか~?」

 

 お姉さんに聞かれて迷わず作ってもらった。このお店なら、きっとパンの味は美味しいだろうし常連になってもいいと思った。

 

(そもそもモカのお財布として来ることになりそうだし)

 

「えっと……お名前は?」

 

 ポイントカードに名前を書くためだろう。お姉さんがペンを片手に聞いてくる。

 

「あ、氷川。氷川夕輝です。氷の川に夕日が輝くで夕輝」

 

『氷川』と言った時にピタッとお姉さんの手が止まった気がした。

 

「氷川?」

 

「? どうかしました?」

 

「あ、いえ。今日のポイント、つけておきました」

 

 お姉さんの反応が気になったけれど、こっちも待ち合わせ時間があるため聞かなかった。

 

「また来ますね」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

 お姉さんに見送られ山吹ベーカリーを後にした。

 

 

 

 

 急ぐために少し走ったこともあり、待ち合わせ場所にあこはまだ着ていなかった。

ホッとしながらも乱れた呼吸を整える。

 

「ゆう兄、お待たせ~」

 

 しばらくしてあこがこっちに駆けてきた。

 

「いや、ついさっき着たとこだよ」

 

 そう言いながら紙袋の中からパンをひとつ取ってあこに渡す。

 

「えっ、なにこれ?」

 

「山吹ベーカリーのクリームパン。よかったらどうぞ」

 

 個別に入れられた袋越しでもパンの柔らかさが分かる。

 

「ゆう兄、さあやちゃんのとこに行ってたの!?」

 

「ん? さあやちゃん??」

 

 聞き覚えのない名前が飛び出し、首をかしげる。

これがマンガやアニメなら頭の上にクエスチョンマークが飛び交っているところだろう。

 

「あれ? 店番してなかった?」

 

 さあやちゃん……店番……あ!

 

「さあやちゃん?」

 

 と言いながらポニーテールとリボンのジェスチャーをする。

 

「うん。その子がさあやちゃん」

 

 あこも真似してジェスチャーする。

傍から見たら変な二人組だよな。

 

 とりあえず立ったままなのもあれだから空いてるベンチに腰をかける。せっかくのパンだし、立ち食いじゃなくて座ってゆっくり頂く。

 

「あこも座ったら?」

 

 隣にハンカチを敷いて座るように促す。

 

「ゆう兄、かっこいい!」

 

「恥ずかしいから早く座ってくれると助かるかなぁ」

 

 あこはベンチに座り、先ほど渡したクリームパンにかぶりつく。

 

(俺もいただこっと)

 

 紙袋からクロワッサンを取り出す。

クロワッサン、好きなんだよなぁ。柔らかしっとりなのとサクサクなヤツがあるけど、俺は後者の方が好きかな。

ただ、パンくずがつきやすいのが難点なんだよなぁ。

 

(さて、ここのはどっちかなぁ?)

 

 一口かぶりつくとサクッとした食感がーー

 

(あたり! 食感とともに口に広がるバターの香りがたまらない)

 

 あまりにも俺好みだったため、ゆっくり食べるつもりがあっさりと食べ終えてしまった。

 

 ティッシュで口を拭い、あこの方を見るとーー

 

「わぁお……」

 

 どうやらクリームたっぷりだったんだろう。そう思えるくらいにはあこの口の周りがクリームでベトベトだった。

それでもあこは満足げだった。

 

「はい、お口拭きますからね~。動かないでくださいね~」

 

「んん、ありがとう」

 

 

 

「りんりんも誘えば良かったかなぁ」

 

「まぁ、燐子さんなら来てくれるだろうな」

 

 いい人だから、と心の中で続ける。

チケットは俺とあこ、それぞれ1枚ずつしか貰っていなかったが、ひまりたちに言えば1枚くらい工面してくれるだろう。

 それを片手に燐子さんを誘えば、燐子さんは十中八九来てくれるだろう。

 

でもそれをしなかった。燐子さんはきっと自分の意見を押し殺してでも来るだろう。

いくらライブで人に慣れたとはいえ、実際ステージ上には『5人』しかいない。

 

 でも、今回は出演者ではなくて観客側。ハコにもよるけどそれなりの人数が来ることだろう。

 そんな場所に燐子さんを呼ぶのはさすがに心が痛む。

 

「まぁ、お茶しながらライブの感想を話してあげることにしよう」

 

「うん!」

 

 

 

 あこと二人で控え室まで来たのだけど……

 

「これ、入って大丈夫なの?」

 

「おねーちゃんには連絡してあるから大丈夫だと思うよ!」

 

 それはあくまで同性だからだと思うんだけど……。

 

「おねーちゃん、来たよ~!」

 

『おぉ! 今開ける』

 

 言うが早いか、巴がドアを開けた。

 

「なんだ、夕輝もいたのか」

 

 あれ? あこさんや。先ほど『連絡した』って言いませんでしたっけ?

 

「あ、ゆう兄も一緒って言うの忘れてた」

 

 てへぺろするあこ。いや、一番大事なところだからね!?

 

「まぁ、着替えは終わってるから入れよ」

 

「あれ? 他の出演者の方は?」

 

「ここは控え室が分かれてるから」

 

「なるほど……」

 

 そういうことならお邪魔します。

 

「あ、ゆーくん。さんしゃいーん」

 

「さ、さんしゃいん?」

 

「気にしなくていいよ。いつものことだから」

 

 モカの謎のあいさつに呆然としていると、蘭がさらっと言った。

 

「むむっ、ゆーくん。その紙袋はもしや……」

 

 さすがモカ、目ざとい。

 

「うん。差し入れ」

 

 どうそ、と紙袋をテーブルの上に置く。

 

「本当!? ありがとう」

 

「おお、チョココロネですか~。分かってますなぁ~」

 

 つぐがお礼を言うより早く、モカは袋から1つ取り出し頬張る。

 

「うう、カロリーが……」

 

「1個じゃそんなに変わんないだろ?」

 

「たかが1個、されど1個なんだよ!」

 

 ひまりはひまりで嘆いてるし……そんなに気にするほどでもないと思うんだけど……

 

「って、モカ。口の周りにチョコが」

 

 ティッシュで拭うとーー

 

「あ、ありがとう……」

 

 モカが顔を赤くして距離をとった。

 

(やべっ、あこにやった時と同じつもりでやっちゃった)

 

「じゃ、じゃあ、先に会場行ってるね」

 

 いたたまれなくなり、一足先に控え室を出るのだった。

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。