2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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FIRE BIRD、いい……(語彙力)


第22話

「ゆう兄、お待たせ~」

 

 しばらくして、あこが控え室から戻ってきた。

 

「って、顔真っ青だよ!?」

 

 何を仰るあこさんや。いつもこんな感じの顔色でしょう。

 

「いやいや、友希那さんのライブ見に行ったときの時のりんりんぐらい顔色悪いから!」

 

 えっ、そんなに!? 

 

「あ~……帰っていいかなぁ?」

 

「いやいや、何しに来たのさ!?」

 

 まぁ、そうなんだけどさぁ……自業自得なんだけどさぁ……

 

「モカ、怒ってたよね?」

 

「モカちん? ……あ~、確かに怒ってたかなぁ」

 

 だよねぇ……この間まではあそこまで距離置かれることなかったもん。

 

 

「あれはひまりちゃんが悪いと思うけどね」

 

「は? ひまり??」

 

(何でそこでひまりが出てくるんだ? 俺じゃないの??)

 

 俺が首をかしげているとーー

 

「時の歯車は、黄昏時の使者が去ったーー」

 

「ごめん。普通に説明してくれるかな?」

 

 正直、今はその手の解読をする余裕すら惜しい。

 

「分かったよ……ゆう兄が行ったあとなんだけどね……」

 

 ブー垂れながらもあこが語り出す。

 

※ side あこ

 

 ゆう兄が控え室を出てから、微妙な空気が流れていた。

あまり表情に出ないモカちんが珍しく顔を赤くしていることに、驚いているような、さっきのやり取りを含めて微笑ましく思っているようなそんな雰囲気だった。

 

 そんな雰囲気をぶち壊したのはーー

 

「モカ~? 顔赤いけど、どうしたの~?」

 

 ひまりちゃんだった。

いつもはモカちんに弄られるひまりちゃんだけれど、今日はいつものお返しとでもいうようにモカちんを弄る。

 他のみんなが突っ込まないようにしていたことも関係ないとばかりに突っ込む。

 

(わざわざ本番前にやらなくてもいいのに……)

 

 あこはそう思ったけど、たぶん他のみんなも同じことを思ったんだろうなぁ。

 それでも日頃弄られているひまりちゃんの勢いは止まらない。

 

「そういえば昨日、夕輝くんと二人でなに話してたの?」

 

 端から見たら普通のことを聞いたはずなんだけど、その一言のあと、モカちんから何がブツンと切れる音がした気がした。

 

 モカちんは山吹ベーカリーの紙袋をひっつかむとーー

 

「ムグムグ」

 

 チョココロネを次々と口の中へと放り込んだ。

いつもはやらないモカちんの暴挙。1人を除いて仕方ないと割りきっていた。触らぬ神に祟りなし、ともいう。

 

「あ~!? 全部食べた!?」

 

 ショックを受けるひまりちゃんに、モカちんは不敵に笑い

 

「カロリーはひーちゃんに送るから」

 

「いやぁ~!?」

 

 たぶんカロリーの行き先はあそこなんだろうなぁ……

 

※ side out

 

 

「なるほど……」

 

 とりあえず、ひまりは自業自得だということが分かった。

 

「ところでゆう兄。昨日、モカちんと何かあったの?」

 

「昨日……」

 

 昨日の顛末をあこに話すと、

 

「あぁ……それはね……」

 

 妙に納得された。

 

「やっぱり、頬っぺたつねるのは良くなかったよね……」

 

 リサ先輩にも怒られたし……と反省する。

あこはそれを聞くと、ため息をついた。

 

「ゆう兄、分かってない。分かってないよ」

 

 やれやれ……といったように首を横にふった。

 

「え? どういうこと?」

 

「ゆう兄は鈍感ってことだよ」

 

 まるで年下を諭すように言われた。理不尽だ。

そのあとも聞こうとするも最初のバンドの演奏が始まってしまい、聞き出すことは叶わなかった。

 

 

 

「ねぇねぇ、あこさん?」

 

 何組かのバンドが終わって、あこに話しかける。

ちなみにさっきの質問に対しては、

 

「ゆう兄への宿題にするから! 以上!!」

 

 とぶった切られてしまった。

 

「何?」

 

 そのせいもあり、あこさんはかなりご機嫌が悪く、いつもの力関係が逆転している。

 

「あこさんから見て、After glowってどんな感じ?」

 

 俺はまだRoseliaしか知らないため、Roseliaを基準に考えてしまう。

でも、あこは違う。

 それは()のカッコよさに憧れ、追い続けてきたあこだから分かることもあると思う。それを教えて欲しかった。

 

「とにかくカッコいいの! こう……ドン! バン! ドドン! みたいな感じ」

 

 

 (……うん)

 

「じゃあ、Roseliaは?」

 

「Roseliaは……ドーン! バーン! みたいな」

 

 (……なるほど)

 

 普通の人なら首を傾げるところだろうけど、俺にはなんとなく理解できた。身内に似たような言語使い(日菜ねぇ)がいるからね。

 

「つまり、Roseliaはラスボスっぽく荘厳な音楽で、After glowは王道派のロックバンド……ってことでいいのかな?」

 

「そう! まさにそれだよ!!」

 

 あこが興奮しながら肯定する。

確かにRoseliaは何処か荘厳な感じがするし、あながち間違いでもないだろう。

もっとも湊先輩にそのまんま伝えようものならーー

 

『ラスボス? 何を言っているの? 訳のわからないことを言って私の音楽を貶めないで』

 

 って言われそうだな。

 

「あ、そろそろ来るよ!」

 

 あこの声が合図になったかのように会場が赤一色に染まる。

まるで『夕焼け』のようにーー

 

「After glowです!」

 

 多くを語らないスタイルはRoseliaと同じ。MCで語るより、音楽で語る。そう言うかのように最低限の自己紹介をしたのち、早々に演奏に入る。

 

 

 まず注目したのは巴。本人は『技術はあこの方が上』と言っていたが、俺にはそんな風には見えなかった。

 それに加えてリーチもあるため、あこ以上にダイナミックに見えた。さらに和太鼓を幼い頃からやっていたため、リズム感もあるらしい。

ともあれ、あこの言う『カッコいい』がよくわかる。

 

 次にひまり。いつもはおっちょこちょいで何かしらやらかす(実際に今日もやらかした)彼女ではあるけれど、それが嘘のようにしっかりとリズムキープ出来ている。三年の経験は伊達ではないらしい。

それでも今日もいつも通りに『不発』だったのだろう。

 

 

 つぐはピアノ歴が長いらしい。それも納得いくような手つきで奏でている。

綺麗、と表現される燐子さんと違って、可愛らしい。

ただ、笑顔ではいるものの余裕がないように見えるのは気のせいだろうか。

 

 モカは、自称『天才』と言うだけあって、演奏技術が高い。

努力してるにしろ、もともとの才能にしろ、そうそう真似出来ないだろう。

 ともあれ、昨日、今日のことが演奏に影響ないようでホッとした。

 

 蘭はギターとボーカルをこなしている。

どちらも中途半端でないのは、それだけ努力をしたのだろう。

 湊先輩ほど声量はないものの、それでも引き込まれる何かがその歌声にはあった。

 

(これが……After glow)

 

 最初のうちは発見やら比較やらをしていたが、段々と意識を思考に割くのが難しくなり、ただただ彼女たちの演奏に聞き入っていた。

 

 

 

「ゆう兄! 打ち上げやるらしいんだけど……行かない?」

 

「ん~、今日はいいや」

 

 打ち上げに誘われたが、断った。理由なんて無かったけど、なんとなく。

 

「じゃあ、今日はここまでだね」

 

「遅くならないうちに帰りなよ?」

 

「ゆう兄、ママみたい」

 

 まぁ、世間の親御さんからしたら年頃の娘の夜遊びなんて気が気じゃないもんな。よくわからないけどさ。

ともあれ、あこの文句をさらっと流す。

 

「んじゃ、また練習で」

 

 

 

 

 幼なじみで、お互いを理解しあって、隠し事もない。

喧嘩はしてもすぐに仲直りできる。そんな風に思っていた。

 

 

 そんな俺の認識が間違いだったと気づくのはもっと後で……ライブハウスを出ると、彼女たちを象徴するような夕焼けが広がっていた。

 




 『卒業』、読んでいただきありがとうございます。
投稿後にこっちの閲覧がかなり伸びててビックリしました。

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ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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