2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 ようやく30話まで来ました。
また、UA30000越えました。ありがとうございます。

 それと私事ではございますが、今月より残業+副業を始めたので、ただでさえ遅い執筆がさらに遅くなると思います。
 とりあえず週一投稿を目指しておりますが、場合によっては隔週投稿になる場合もあります。
 申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。


第30話

「暇だ……」

 

 ベッドに仰向けになった状態で一人呟く。

部屋には俺一人しかいないので、当然返事を返してくれる人などいない。

 

『私の染みでも数えたまえ!』

 

 なんて天井が気を利かせて話しかけるわけでもない。

そもそもそんな声が聞こえたらいよいよ頭が末期だろう。

 まぁ、今週に限ってはかなりドタバタしてたし、待ちに待った週末だ。いつもなら用事があるけれども、今日は時間がある。というか時間をもて余してしまっているので、今週のドタバタをダイジェストで振り返りながらゆっくりするとしよう。

 

 

 週のはじめから波乱の幕開けを迎え、一夜明けた火曜日。

昨日のことがあったからか、どこか校内が慌ただしく感じる。もっとも俺が当事者の一人だからそう感じるだけかもしれないけど。

そんな慌ただしさと視線を感じながら自分の教室まで向かう。

教室から漏れる声を聞く限り、うちのクラスは今日も元気だ。

 

「おはよ~」

 

 あいさつをしながら教室へ入る。

最初の頃は黙って入ってたけど、RoseliaやAfterglowと接するうちに社交性を覚えてあいさつしながら入るようにしている。

今日もいつものようにあいさつがーー

 

「ん?」

 

 気づくと教室はシンと静まり返り、みんなの視線は俺に向けられる。

 

(あれ? 俺何かやらかした?)

 

 自分の席に着くまでの行動を振り返るも、特におかしな事はしていない。

 

「え~と……俺、何かした?」

 

 苦笑いを浮かべながら一番近くのグループに訊ねる。

するとーー

 

ガタガタッ!

 

「「「ーーーー!!」」」

 

「えっ!? えっ!?」

 

 急に俺の周りを取り囲んだと思ったら、興奮した面持ちで口々に何かを言い出した。悪口ではないとは思うけど、生憎と聖徳太子ではない俺はそれぞれが何を言っているか理解できずに混乱する。

 そもそも、聖徳太子もこんなに興奮した状態で来られたら話を聞く以前に身の危険を感じると思う。だって、人というよりは……

 

(餌に群がるライオンだよね。これじゃあ……)

 

 そういえば、ライオンってメスが狩りをするんだっけ、とどうでもいいことを思い出していると、その中の1人が代表して口を開く。

 

 曰く、昨日の放課後に宇田川さんが血相を変えて職員室に飛び込んできたのを見た人がいる。少しして保健の先生を連れて職員室を飛び出していった。この時、目撃者は部室の鍵を返すために入れ違いで職員室に入っていった。

 しばらくして救急車のサイレンが聞こえ、職員室が一層慌ただしくなる

→誰かが担架で運ばれて、そのあと二人ほど救急車に乗り込んだ。一人は保健の先生、もう一人は遠目だったものの、日菜先輩に見えたらしい。

 

→宇田川さんが呼びに行ったってことは、運ばれた人は宇田川さんと仲のいい人じゃない?

 

→そう言えば、昨日、羽沢さんが具合悪そうじゃなかった?

 

→でも、何で日菜先輩? 共通点無くない?

 

→そんなタイミングで左手に包帯巻いた俺、参上 今ここ

 

 ということらしい。

 

 いやはや、女子校の情報網マジ怖い……あ、元だね。

ついでに昨日の朝、俺がつぐを訪ねて1-Bに行っていたこともあって『痴情のもつれ!?』なんていう憶測が飛び交ったりしていたが否定した。

さすがにドラマの見すぎだよ……。

 

「あ……」

 

 蘭が来たのが人垣越しに見えた。あいさつをしようとしたが、フイッと視線をそらされた。

 

(見えなかったのかな?)

 

 そのすぐ後に担任が入ってきて、朝のホームルームが始まった。昨日のことが触れられることはなかった。騒ぎ立てないようにするための配慮だろう。……残念ながらこのクラスでは周知の事実だけれど。

 ホームルームが終わると、蘭が教室から出て行ってしまった。そのまま午前中は一度も戻ってこなかった。

 

 

「しばらく練習には来なくていいわ」

 

 お昼休み、Afterglowの面々と顔をあわせづらかったため、中庭に行くと友希那先輩に遭遇した。

ちなみに約束はしてないんだけど……この人、いつもここにいるのかな?

ベンチに近づいていくと俺だと気づいてスペースを空けてくれた。お礼を言って座ろうとするとーー

 

「どうしたのよ、その左手」

 

「あー……」

 

 昨日のことを説明すると、先ほどの言葉を言われた。

冷たいと思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。

言葉はキッパリとしているものの、その表情からは心配の色が見てとれる。

 端から見たら表情に出にくいと思われがちな友希那先輩だけれど、Roseliaと行動を共にすしていたので、それなりに彼女の考えがある程度は分かるようになった。

さすがにリサ先輩ほどではないけれど。

 

「ですね。この手じゃあ機材の片づけなんかもままなりませんし……まぁ、演奏しないのが唯一の救いですよね」

 

 利き手じゃないにせよ、演奏に支障をきたしてしまうしね。そういう意味では迷惑かからなくてよかった。

 

「……」ジトー

 

 友希那先輩がこちらをジッと……というか明らかなジト目で見ていた。

 

「えっと……?」

 

 俺、変なこと言いましたっけ? と言おうとしたら友希那先輩は額を押さえてため息をついた。

 

「夕輝が演奏をしないからいいというわけではないのよ? 確かにあなたは演奏をするわけではないし、ライブにも出ることはないけれどRoseliaの一員には変わりないのよ? それは肝に銘じておきなさい」

 

 友希那先輩に怒られてしまった。とはいえ、『Roseliaの一員』と言ってもらえたのは嬉しかった。

 

「今回は不慮の事故ということにしておくけど、次にこんなことあったら……シめるわよ」

 

 気をつけよう、シめられたくはないからね。

もっともこれも友希那先輩なりの励ましだろう。……励ましだよね?

 

「ありがとうございます。まぁ、弁当作れないのは痛手ですけど……」

 

「お弁当……」

 

 友希那先輩がすごい悲しげに見えたのは気のせいだよね?

 

 

 そんなこんなで怒濤の火曜日だったものの、水曜日以降はこれといって騒ぎはなかった。強いていうなら、蘭がちょくちょく授業に出ていなかったのが気になった。噂話の方も、一時期は『つぐが意識不明の重体で面会謝絶』というところまでいったが(意識不明ではあったが、重体ではない。)下火になりつつある。

 それでも、『救いの王子様』、『名誉の負傷』なんてキーワードが聞こえたりする。あくまで俺にとっては事実ではないんだけどな……。

 

 ちなみに家ではどうかというと、学校ほどではないけれど大変だったりする。

まず朝、いつも通りに起床して台所へ行く。

 

「何してるの?」

 

 すかさず母に追い返される。習慣とは怖いもので、一度染み着いたことは簡単には抜けてくれない。いつものお弁当を作るつもりで起きてしまった。残念ながら今週は全部そのやり取りが行われた。

 

 制服で着替えるときもなかなかにしんどい。普通なら意図せず出来ることだが、片手となると勝手が違ってくる。まずはボタン。

外すときは片手でもなんなく出来るけれど、留めるのは大変だ。

穴の空いた方をボタン側に寄せて、ボタンを親指で押し込む。

それを五、六回繰り返す。しかもワイシャツのボタンは割と小さいので少し苦労する。一方でブレザーのボタンは少なく、ワイシャツに比べて大きいから楽にすんだ。

 

 最大の難所はネクタイ。羽丘では男女共にネクタイ着用が義務づけられている。しかし、これはめんどくさい。両手でも苦戦するものが片手で楽に出来るわけがない。挑戦してみるも、もちろん無理。

誰だよ、利き手じゃないから大丈夫とか言った奴は!? 俺だけど。

 

(父さん、まだいるかな?)

 

 こうなったら、父さんにわっかだけつくってもらったのを俺が頭から被り、引っ張ってネクタイをつける方法で行くしかない。

ネクタイを持って部屋を出る。

 

「あら? 夕輝、ネクタイは?」

 

 同じタイミングで部屋を出た紗夜姉さんに遭遇。

 

「あ~……これじゃあつけられないからさ……父さん、まだ出てないよね?」

 

 左手を見せながら訊ねる。

 

「今日は早めの出勤だからって出たわよ?」

 

「うぇっ!? マジかぁ……」

 

 よりによってもう行っちゃったようだ。

どうしようかと考えを巡らせていると、右手から何かがスルリと抜ける感覚が……

 

「姉さん?」

 

 ふと見ると、俺が右手に持っていたネクタイを姉さんが持っていた。

 

「動かないで」

 

「あ、はい」

 

 直立不動の姿勢をとると、姉さんは俺のワイシャツの襟を立ててスルリとネクタイを通す。ネクタイを締める関係上、多少距離が近いので姉さんのシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。

そんなこととはつゆ知らず、姉さんの表情は真剣そのもの。

 

(そういえば、幼い頃はなんやかんや姉さんにやってもらったっけな……)

 

 昔は姉さんの方が背が高かったけど、今ではこうして見下ろすようになったなぁ……5cmしか変わらないけれど。

 すると姉さんがこちらを見つめる。それは上目遣いのようにーー

 

「終わったわよ」

 

「はへ!?」

 

 気づいたら、しっかりとネクタイは締められていた。

 

「あ、ありがとう」

 

「ボーッとして、どうしたの?」

 

「いや……なんでもない」

 

 昔を思い出していたなんて言えるわけがない。

 

「そう? じゃあ先に行くけど、遅刻しないようにね」

 

 そう言うと姉さんは階段を下りていった。

その日から着替え終ったタイミングを見計らってなのか、たまたまなのか、姉さんが着てネクタイを締めてくれた。

ありがたいけれど、こちらはドキドキして顔に出ていないか不安だった。

 

「くっ……やっぱりやりづらい」

 

 夜、風呂に入っていたのだが体を洗うのにも一苦労。大体のところはいいけれど、当然右手では右腕を洗えない。さらに背中も右手だけでは限界がある。

 昨日はその事を完全に忘れていて、苦戦しながらも痛みを堪えて左手も使った。それでも、左手を庇いながらなので思ったよりも時間がかかってしまった。

 

「ゆーくん、入るよ~」ガチャ

 

「ちょっ!? 日菜ねぇ!!」

 

 いきなり浴室のドアを開けられ、咄嗟にタオルで隠す。

 

「何ビックリしてるの? 入るって言ったよ?」

 

「せめてこっちが許可してから入ってくださいよ……」

 

 そもそも風呂に入ってるんだから、裸だし……

 

(ってことは日菜ねぇも!?)

 

 タオルで体を隠しながら日菜ねぇの方を見ないようにする。

 

「ゆーくん? どうしたの?」

 

「いや、裸だし……」

 

「当たり前じゃん、お風呂なんだし」

 

 そうだけど……そうじゃないんだって!

とにかく日菜ねぇの方を見ないように必死に視線をそらす。

おかげで体を洗えないままだ。正直寒くなってきたので、早く洗って風呂に入りたいんだけど……

 

「日菜ねぇ……そろそろ寒くなってきたからさっさと風呂に入りたいんだけど……」

 

 冬ではないものの、いい加減に裸でいるのにも限界がある。

何が悲しくて湯気が立ちこめる湯槽を前にお預けをくらわなければいけないのか……

 そんな思いを込めて日菜ねぇに文句を言うと、

 

「じゃあ、あたしが洗ってあげるよ!」

 

「は?」

 

 いうが早いか、日菜ねぇはスポンジを手に取ると素早くボディーソープをつけて俺の背中を擦り始めた。

 

「ちょっ!? 日菜ねぇ!?」

 

 咄嗟のことに反応が遅れてしまった俺は抗議の声をあげるも、動くに動けずなすがままにされる。

 

「痒いところはな~い?」

 

「いや、その……」

 

(日菜ねぇに体を洗われている今がむず痒いです)

 

 とは口に出せずにまごまごしてしまう。

 

「んじゃあ次は右手ね~」

 

 そうしてる間に日菜ねぇは背中を洗い終わり、右手へ。

抵抗したいものの、風呂場で変に抵抗すると日菜ねぇが転倒して怪我するかもしれない。

そう考えると、俺に出来ることは抵抗せずにジッとして終わるのを待つだけかもしれない。

 

「他に洗うところは無い?」

 

「いや、あとは洗い終わってて流すだけだから!」

 

 そう言ってシャワーに手を伸ばす。

 

「じゃあ、流してあげるね?」

 

「いや、そこまではいいから!」

 

 日菜ねぇとシャワーの取り合いになってしまった。そして運悪く、どちらかが蛇口を捻ってしまいーー

 

「きゃっ!?」

 

「日菜ねぇ!?」

 

 日菜ねぇにシャワーのお湯がヒット!

日菜ねぇの方を反射的に向いてしまった。

 

「びしょびしょ~……」

 

 日菜ねぇは裸ではなく、学校の半袖ジャージにショートパンツと動きやすい服装だった。それはいい。裸じゃなくて助かった。

 でも、お湯がヒットしたことでジャージが透けて、エメラルドグリーンのーー

 

「日菜ねぇ……その……透けてる」

 

 すぐさま顔をそらして日菜ねぇに危機を告げる。

 

「へっ?」

 

 すぐさま事態を確認すると……

 

「わわっ、おっ邪魔しました~!」

 

 すぐさま出ていってしまった。

風呂場は静かになったものの、どっと疲れてしまった。

 

 

 そんな二人の献身はありがたいけど、正直こちらとしてはドキドキで身が持たない。

 幸い今はどちらも出掛けているから、今日はゆっくりーー

 

「んあ?」

 

 スマホに着信が来た。

発信者は『青葉モカ』と表示されていた。

                   

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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