2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 かなりお待たせいたしました。
Afterglow編の山場です。

 コラボガチャはなぜかハロハピガチャでした。余裕で頂点(天井)まで登り詰めました。
 バイト&残業頑張んなきゃ(白目)


第33話

side 蘭

 

 あたしはこの和室が苦手だ。

和室自体は華道をやってるし、そもそも家自体が純和風だから嫌いとか苦手とかじゃない。『この』和室。正確に言えば、この和室の上座にお父さんが座るときが一番苦手だ。あたしという人間の小ささを再認識させられる。

 

『半端者』。それがあたしに貼られたレッテル。

華道でも、バンドでもどちらも中途半端。

 この部屋に来ると、いかにあたしが華道と向き合っていないかという指摘から始まり、『バンドに現を抜かしているからだ。あんなごっこ遊びは辞めてしまえ!』と続く。それが毎回……。

 別にあたしがなんと言われようと構わない。それ自体は事実だし、自覚もしている。

 でも、バンドを……あたしの仲間を貶すのは勘弁ならない。

何度か反論したことがある。説教の時間が延びただけだった。

睨み付けたこともある。結果は同じだった。

うっかりため息をついたこともある。結果は同じだった。

 

 

「蘭! 聞いてるのか!?」

 

「……はい」

 

 だからあたしは反論も不満も今は黙って押し殺す。

心の中で怒りの炎を燃やしながらーー

 

「失礼します」

 

 そんなとき、急にお母さんが襖を開けて入ってきた。

いつもは説教が終わるまでは入ってくることはないのに……

お父さんも何事かと視線を向ける。

 

「蘭のお友達が来てるのだけれど……」

 

「こんな時間にか?」

 

 時間は一般的には夕飯時。まだ夕刻ではあるものの、来客のある時間としてはどうかというところだろう。

あたしの家なんかはそういうところも気にしてしまう。特にお父さんはそうだ。

現に今も口には出さないけど、『そんなヤツと付き合っているのか』という目をあたしに向けている。 

 とはいえ、あたしにも心当たりがない。自分で言うのもなんだけど、あたしは友達がそんなに多くない。それこそAfterglowのメンバーと夕輝くらいだ。

 

(こんな時間に来そうなのは……)

 

 つぐみなら事前に連絡を入れてくれるだろうし、まずこの時間帯で来ることはないだろう。ひまりも事前に連絡を入れてくれるだろう。もっとも稽古があったからスマホを確認出来てないけれど、返信がなければ来ないだろう。巴やモカだって来るとしたらもう少し早い時間で来るだろう。

夕輝はそもそも家を知らないだろうから論外。

 

「それが……あなたに用があるらしいのよ」

 

「「は?」」

 

 あたりとお父さんの声が重なる。

誰だか知らないけど『自称』あたしの友人はお父さんに用があるらしい。うん、よく分からない。誰だかも分からない上、目的も分からない。

 それはお父さんも同じようで、さっきまでは怒気をはらんでいたはずなのに、呆気にとられてしまい怒気も霧散してどっかにいってしまったようだ。

 

「私にか?」

 

「ええ」

 

 お母さんの肯定の返事にため息を一つ。

 

「待ってなさい」

 

 その一言を残して部屋を出た。残されたのは事情を知らないあたしと、唯一訪問者に会っているお母さん。

 

「ねえ、お母さん」

 

「うん?」

 

「どんな人だった? あたしの……友達って言った人は」

 

 少なくともいつもの四人だったらお母さんも名前を呼ぶはず。そうじゃないってことはお母さんが会ったことがない人だろう。

もしかしたらクラスの誰かかもしれない。少しでも外見の情報がほしい。

 

「髪が長くて、キレイでとても礼儀正しい子だったわよ」

 

(分からない!)

 

 外見の特徴が『髪が長くてキレイ』なことしか分からないし、礼儀正しいということも接した母さんしか分からない

 お母さんはそんなことお構い無しとばかりに『おみやげもらっちゃった』と小躍り。普段はおとなしいのに変に子供っぽいところがあったりするのだ。

 

「他に特徴ないの?」

 

「そんなに気になるなら、見た方が早いわよ?」

 

 急に正論を言われた。この感情の急な変化についていけないことがある。

 

「でも……」

 

「蘭。たまには自分に正直になりなさい。あなたはいろいろ考えすぎなのよ……」

 

「お母さん……」

 

「それにバレなきゃ大丈夫よ♪」

 

 いろいろ台無しだった。一時のあたしの感動を返してほしい。切実に!

 

「で、どうするの? 見るの? 見ないの?」

 

 なんでこの人は目をキラキラさせて楽しそうにしているんだろう。……もういいや。考えるの止めよう。

 

「見ようか」

 

「じゃあ、お父さんにバレないようにこっそりね?」

 

 そう言いながらススッと襖を開けるお母さん。

その隙間から顔を覗かせ玄関の方に目を向ける。

 まず見えたのはお父さんの背中。その背中越しに『彼』を彷彿とさせるような特徴的な色の髪。『彼』を彷彿させる目……

 似ているところがある一方、似ていない部分もある。

先ほどあげた髪。『彼』は男にしては長いかもしれないが、ここまで長くはない。

何より、やや猫背気味の『彼』に対して、今お父さんと相対している人物の背中はピンとしている。まるで体の中心に鉄心が入っているようだ。

 そんな『自称、あたしの友人』はお父さんに何かを言うと、頭を下げた。

何を言ったか聞こえないが、突如お父さんが声を荒げた。

 

side out

 

 

 つぐの家を出て、急いで蘭の家に向かったのだがーー

 

「ここ……だよね」

 

 モカに教えられた通りに来たのだが、該当しそうな家は見あたらない。……一応目の前に立派な表札がかかっている門がある。

『美竹』と読めないこともないけど、ここじゃないよね?……ここじゃないよね(懇願)

 本来人を招き入れるはずの門は、威圧感からかこちらの存在を矮小なものであるかのような印象を与え、来客を拒んでいるようにさえ思えた。

 

(これは訪問販売だったりN○Kも尻尾巻いて帰りますわ)

 

 自分の覚悟が揺るがないうちに、とお夕飯時という失礼を承知な上で来たつもりだったのだが、早くも俺のなけなしの覚悟はこの大きな門の存在感の前にぶっ飛んでしまいそうになる。

 

(俺一人の覚悟なら無理だろうね)

 

 俺のなけなしの覚悟に加えて、五人のいつも通りの場所を守りたいという気持ちが俺の背中を押す。

加えて、『秘策もある』

 

(姉さんだったら……)

 

 こういったお宅訪問(?)の際の作法やらは勝手がよく分からない。なので、そういったことに詳しそうな紗夜姉さんになりきることにした。

 

 服装はともかくとして、頭には『とある事情』にて手に入れたウィッグ。これにより、ただでさえ女性に近い見た目がさらに女性に近づく。

 

(俺は……いや、『私は』氷川紗夜……)

 

 

 暗示をかけることで自然と背筋が伸びる。

さて、なすべきことをなすとしましょう。まずは……

 

(こういった和風のお宅の場合……どうするのがいいのでしょうか?)

 

 大声で呼ぶわけにもいかず、ノッカーがついているわけでもない。

 

「あ、インターホンはあるんですね」

 

 我ながら間抜けな声が響いた。

 

 

 インターホンを鳴らして待つこと少し。出迎えてくれたのは和服を着た黒髪の女性。メッシュが入ってなかったり、髪が長かったりと違いはあれど蘭が大人びるとこうなるのか……というくらい似ていた。

 

(お母さん……かしら? にしては若い気もしますし……お姉さんにしてはかなり落ち着いてられるような……)

 

 女性というのは難しいもので、見た目で判断するのが難しい。

落ち着いた物腰、大人びた容姿で実は年下だったり、子供じみた振る舞い、童顔で実は年上だったりする。

 男性にも言えることなのだが……

 

(年齢を聞くのはタブーですからね)

 

 全くもっての理不尽でしかないのだけれど、暗黙の了解なのだから仕方ない。

 

「はじめまして。美竹蘭の母です」

 

(あ、やっぱりお母さんでしたか)

 

 目の前の女性はお母さんだったようで柔らかく優しげな笑みとともにたおやかにこちらに礼をした。

 

「お夕飯時に申し訳ありません。私、蘭さんの同級生の氷川夕輝と申します」

 

 先ほど述べたことの繰り返しになるが自己紹介とともに頭を下げる。

 

「あら? 蘭のお友達?」

 

「ええ。蘭さんには仲良くしていただいてます」

 

 自分で可能な限りふんわりと笑った。

 

「あら? あらあら?」

 

 先ほどまでの表情を崩して、まるで新しい発見をした少女のように喜ぶ。

 

「蘭にこんなに可愛らしくて聡明そうなお友達がいたなんて! あの子、人見知りが激しいでしょ? だからモカちゃん達以外の友達がいなくて……」

 

 そう言いながら寂しげな表情を見せる。先ほどまでの表情は『家元の妻』としての表情で、本来は喜怒哀楽がハッキリした人なのかもしれない。

 

「大丈夫です。蘭さんはお優しい方ですから。ただ、それをまだ皆さんが分かってないだけかと思いますよ」

 

 本当の彼女は人付き合いが少し苦手なだけで、優しいのだ。優しいが故に誰にも言うことができず、一人で抱えてここまで来てしまった。

 

「ありがとうね。……あ、蘭に用事かしら?」

 

「いえ、ご主人……蘭さんのお父さんはいらっしゃいますか?」

 

 蘭のお母さんは目を丸くして驚いた。

 

 

 自宅の玄関に通された。本当は客間まで案内してくれるようだったけど断った。そこまで時間をかけるつもりじゃなかったしね。

夕飯時にお邪魔してるし、そこまで長居するのもね。

 

 じゃあもっと早く来ればよかったじゃないかって? ……うん。分かってはいるんだよ。でも、つぐの勉強見てたらこんな時間になっちゃったんだよ。ノート渡してさよならバイバイなんて出来るか? 俺は出来ない!

 

ガラッ

 

「!!」

 

 そんなことを考えていると、奥の襖が開いて着物を着た男性が出てきた。

見た目は若そうなのに、妙に貫禄がある。この人が蘭のお父さんなんだと分かった。

 

(とりあえず、見た目は格闘経験者には見えない)

 

 自分の想像したような偉丈夫でないことに心の底から安堵する。

もっとも、これで格闘技の有段者で計十段とかいう可能性も捨てきれたわけではないけれど。……というか、華道の家元で格闘技の有段者とか化け物スペックでしかないけれど。

 

「こんな時間に申し訳ありません。蘭さんと同じクラスの氷川夕輝と申します」

 

 先に身分を明かし、一礼する。

 

 先日分かったことなのだが、羽丘『女子』学園だったこともあり、『同じ学校』、『同じクラス』と言うと女子だと思われるらしい。ソースは友希那先輩のお母さん。

 今回はそれを利用して、ウィッグを付けていかにも女子です、という印象を持たせている。騙しているようで気がひけるけど、果たして、『私』が『俺』ならば話を聞いてもらえるだろうか……

 

「蘭の父です……それで、用件というのは?」

 

 取り繕うのが苦手なので、早速本題に入っていただけるのはのぞむところ。

 

「単刀直入に申し上げます。蘭さんのバンド活動を認めていただけないでしょうか?」

 

「……君は何を言っているのか、分かっているのかい?」

 

 まるで凪いだ海のように平淡な声だった。まるで小さな子供に言って聞かせるような優しげな声だった。きっと声『だけ』で判断していたならば勘違いしていたところだろう。

目の前の人物、その目には業火が宿っているかのようだった。

 

「はい。分かってーー」

 

「分かってない!!」

 

 彼の声が雷鳴のように鼓膜を殴りつけた。

 

「蘭は美竹流の跡継ぎだ! バンドなんてごっこ遊びは早く卒業すべきなんだ!!」

 

(ごっこ遊び……ですか……)

 

「そんなものに現を抜かしているから半端者なのだ!」

 

 勢いのままに言いきり、荒げた呼吸を整える。

 

「確かに……最初はお父様の言うとおり、ごっこ遊びだったかもしれません。バンドの勝手も分からない。ただ変わらずに、いつも通りに五人で居られる場所を作っただけ……でも、音楽に真剣に向き合った思いは本物なんです!」

 

 気づけば今度はこちらが声を張り上げる番だった。

彼女たちの……Afterglowの何もかもを否定された気がしたからだろうか。

 でも、ただのごっこ遊びなら……真剣じゃないなら彼女たちは悩んだり、すれ違って傷ついたりなんてしていない。

 

「君に蘭の何が分かると言うんだ!?」

 

 言ったあとで彼は『はっ』としたような顔をした。そこまで言うつもりはなかったんだろう。売り言葉に買い言葉というやつだ。ばつの悪そうな顔をしている。

 

 彼も蘭の父親ということだろう。相手のことを考えているけど、表に出せない不器用なところは蘭そっくりだ。少し笑いそうになってしまう。

 

「確かに私のような若輩者ではお父様の気持ちを推し測るなんてとてもじゃないけど出来ません」

 

 親子の仲がいいか悪いかは分からない。それでも十何年育ててきた実績がある。たかだか一、二ヶ月の付き合いで全てを理解するなんておこがましいにもほどがある。

 

「ですが、学校での蘭さんのことはお父様より分かっているつもりです」

 

 取っつきにくいようで実は心優しく、友達思いだけど、素直じゃなくて不器用。

 

「先ほど『半端者』とおっしゃいましたが、それだってバンド仲間と華道、どちらかを切り捨てることなんて出来なくてどちらもやろうとした結果だと思います」

 

 他人の悩みには寄り添うくせに、自分は一人で抱え込んでしまう不器用。

 

「今すぐに認めてほしいなんて言いません。一回、せめて一回だけでもライブを見てもらえませんか? 一回見るだけでも彼女たちの真剣さが分かると思います」

 

 お願いします、と頭を下げる。

顔は見えなくなったものの、悩んでいるのか唸る声が聞こえる。

 

 

「そこまでしなくてもいいよ」

 

 ここにいないはずの声が聞こえて顔を上げると、お父様の後ろから蘭が歩いてきた。

 

「「蘭……」」

 

「この人にとってあたしらのコトなんてどうだっていい、取るに足らないものなんだよ」

 

「そんなこと……一度見ればきっと理解してもらえるって。俺はそうだったし!」

 

 目線を蘭に、そしてお父様に移す。

蘭は床を見つめているし、お父様は腕を組んだまま唸っていた。

 

「そもそも、夕輝にここまでしてもらう必要だってないんだから」

 

「それは!……そうだけど……」

 

 でも、それでいいのか? このまま平行線で分かりあえないままでいいのか? このままじゃなにも変わらないんだぞ?

 

「……蘭、次のライブはいつなんだ?」

 

「「え?」」

 

 俺と蘭は思わず声の主を見やる。きっと俺の顔はマヌケ面なんだろうな。

 

 声の主は目を閉じ、腕を組んだままだった。

 

「いつなんだ?」

 

「……再来週の日曜日だけど」

 

「そうか……」

 

 ……あの、もう少し会話しません? 正直息が詰まりそうなんですが。かといって俺が口を開く場面でもないだろうし。

 

「一回、一回だけだ。そこでお前の本気を見せてみろ」

 

「あ、うん……」

 

 お父様はお父様で仏頂面してるけど、素直じゃない。蘭は蘭で感情を押し殺そうとしてるけど、嬉しさが滲み出て変な顔になってる。

 

(似た者同士の不器用親子め!!)

 

 心のなかでぶちまけるくらいは許されるよね?

 

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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