2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 大変お待たせしました!
残業やらバイトやら、イベントやらラウクレやら……しまいには年に一回あるかないかの39℃越えの高熱が出たりとなんやかんやで一ヶ月以上空いてしまいました。

 待っていただいた方(いる?)、お気に入りを外さないでくださった方、新たにお気に入りに入れてくださった方。ありがとうございます。
 今回でAfterglow騒乱編(そんな名前だっけ?)完結です


第34話

 蘭の家に突撃した日からまるっと二週間。つまりはAfterglowのライブ当日。今日は蘭にとってーー少し大げさかもしれないけれどーー運命を左右する日。天気はどっちつかずといった感じの曇り空。……まぁ、ライブ自体はハウス内だし、あまり関係はないか。

 

「楽しみだね、ゆー兄」

 

 そして、例のごとく隣にはあこがいる。……どうでもいいけどラノベの題名にありそうだよね。『あなたの隣にあこがいる』。ラブコメなのか、コメディなのか、はたまたホラーなのか。それが問題だけれど……。

 

「本当にあこは巴が好きなのな」

 

 もう待ちきれない! と言わんばかりにウズウズしてるし。

 

「うん! 超、超、超かっこいい自慢のお姉ちゃんだもん!」

 

 巴を語るときのあこは目がかなりキラキラしていた。

自分が憧れ、指標とすべき姉のライブ。それを見逃すなんてできなかった。

 本来であれば今日は練習日だったのだが、友希那先輩を俺が誠心誠意『お願い』することでずらしてもらったのだ。

 

「ゆー兄が友希那さんにお願いしてくれたから来られたよ~。でも、何を言ったの?」

 

「あ、あー……『世界で二番目』のあこが認めるドラマーの巴が出るライブなのだから、見るだけでも勉強になることはあるだろうからライブに行かせてほしいって」

 

 嘘である(即答)

いくら友希那先輩がチョr優しいからといってもそんな簡単に認めてくれるわけはない。

 

「それに紗夜さんも説得してくれるなんて、さすがゆー兄」

 

「まぁ、友希那先輩に比べれば、姉さんのお相手はお手のものだしね」

 

 これは本当。ただ、今回は姉さんの説得は全くしていない。ではどういうことなのかというとーー

 

 

 ~数日前~

 

 

「練習日をずらしてほしい?」

 

 練習終了後、スタジオを掃除している時に友希那先輩に切り出した。少し眉がつり上がっている。おこ……というか不信感を露にしている。

 

 ちなみにスタジオ内にいるのは俺と友希那先輩、燐子さんと姉さんだ。リサ先輩はあこと一緒に次の予約をしに行ってくれている。

事前にリサ先輩と燐子さんには話をしていた。この二人は基本的に寛容なのですぐに了承してくれた。

そのあとでリサ先輩と打ち合わせをして、タイミングを見てアイコンタクトであこを遠ざけてもらった。こうすることで友希那先輩と姉さんのヘイトを俺に集中することができる。あこがいると二人の圧に押されて、『あの……えっと……』状態になりかねないし。

『えっ? なんであこも行くの?』と状況がのみ込めないあこを上手く言いくるめて連れ出してくれた。その時にこちらを振り向きウインクしていた姿は可愛かった。……げふんげふん。

 

閑話休題

 

 ともあれ、そもそもが参加も不参加も自由な俺がわざわざ練習日の変更を申し出るのはおかしいと思ったのだろう。

姉さんも声には出さないけれど『何言ってるのコイツ』的な目で見てーー

 

「何言ってるのあなたは!?」

 

 ……うん。口に出しましたね。とりあえず姉さんの方に笑いかけてから友希那先輩に向き合う。

 

「実は、今度の日曜日にあこの姉が所属するバンド、Afterglowのライブがありまして……」

 

「それをあこと見に行きたいと?」

 

 俺が言う前に友希那先輩が引き継ぐ。

 

「ご理解が早くて助かります」

 

 少しおどけながらも笑顔を浮かべる。そうでもしないと空気がギスギスして、せっかく残ってくれた燐子さんが『お家帰る』状態になりかねないし。

俺? 家のことで慣れっこさ。

 

「そんなこと認められるわけ「話を聞こうかしら」湊さん!?」

 

 即否定しようとする姉さんを制し、友希那先輩は耳を傾けてくれる姿勢だ。一見すれば姉さんの判断こそ正しく思えるのだけれど、俺に考えがあると読んでのことだろう。少しは信頼してもらえてるようで嬉しい。

 

(ともあれ、『俺の話を聞く』ということはこっちのもんだね)

 

 中学時代に言われたことがある。『氷川弟に勝ちたきゃ声を聞くな。あいさつされたら負け確だ』と。

 当時は何をもっての勝ち負けなのか、あいさつされただけで負けるってなんだよと思っていたけど……今なら言わんとすることが分かる……気がする。

 

「あこの技術は高いとはいえ、発展途上。姉の巴が和太鼓をやっているので、何かしら参考になるはず」

 

「身体的にもまだ成長期で、巴のように成長する(可能性がある)ので、今から体の動かし方を覚えるという意味でも見ておくべき」

 

 それっぽいこと理由を並べてみるも、姉さんはおろか、友希那先輩も首を縦に振らない。アプローチを変えてみるか。

 

 ススッと友希那先輩に近づいて耳元に口寄せて囁く。

 

「友希那先輩……実はようやく左手が完治しましてね。来週からまたお弁当を作る予定なんです。つきましては来週一週間、好きなおかず一品追加でいかがでしょうか?」

 

「夕輝、あことライブに行って得られるものは一つ残らず得てきなさい」

 

「湊さん!?」

 

 思いの外あっさりと認めてくれた。あまりにあっさり過ぎて、姉さんが驚愕してる。姉さんの位置からは俺が何を言ったのか分からなかっただろう。急に友希那先輩が意見を翻したように感じただろう。

はたして友希那先輩の後ろ側に立っていた燐子さんからはどう見えただろうか……

 友希那先輩越しに視線を向けると、人影が()()……

 

(ん?)

 

 部屋にいたのは俺と友希那先輩、燐子さんと姉さんの四人。友希那先輩は目の前にいるし、姉さんは俺らの横。顔を赤くしながら、手で顔を覆いながらも指の隙間からこちらを見る燐子さん。

それと何が起こってるのか分からず、ワタワタしているあこと、あこの目を覆いながらもこちらを笑いながら見ているリサ先輩。

 

(あっ……)

 

 よく考えてみれば、今のこの状態って抱き合ってるようにも見えるね。

 

 ともあれ、友希那先輩の説得に成功し、姉さんも『湊さんがそう言うなら……』ということで渋々ながらも了承してくれたのだった。

 

 ~現在にもどる~

 

 

「そういえば、ゆー兄。あの時友希那さん達となにしてたの? 部屋に入った途端、リサ姉に目隠しされちゃって見えなかったし、りんりんは教えてくれなかったし……」

 

 あこは頬を膨らませて不満を露にする。

まぁ、誤解とはいえ、『友希那先輩と抱き合ってました~』なんて言えるわけないしな。

 

「あ~……あこさんや。控え室に行くのではなかったかな?」

 

「あっ!!そうだった!」

 

「ライブ始まる前に戻ってくるんだぞ~」

 

「分かってるー!」

 

 控え室へ駆けていくあこを見送り、受付でドリンクを購入して一息ついた。

ちなみに、リサ先輩と燐子さんの誤解は当日のうちに解いてある。骨が折れるかと思った(リアルで)が、友希那先輩からの『いかがわしいことなんて何もなかった』発言が無かったら本当にどうなっていたやら……。前々から思っていたけど、リサ先輩は友希那先輩に対して過保護なところがあるような気がする。

 でも、仮に姉さんが友希那先輩の立場だったら……うん。俺も同じことするかもな。

 

「すみません、相席いいですか?」

 

 そんなことを考えていると、ふと声をかけられた。開場間近でロビーも混みあってきて空いている席が少ないのだろう。

 

「どうぞ」

 

 にこやかに相手の方を見るとーー

 

「失礼します」

 

(おいおい……来ることは分かってたけど、これは……)

 

 まさかの美竹父とのエンカウントだった。

一番最初に思ったことは、『あ、今日は着物じゃないんだなぁ……』ということなのは内緒。

 

(いや、でもあの時はウィッグ付けてたし他人だと思われる可能性もワンチャン……)

 

「髪、切ったようだね」

 

(はい、バレましたね)

 

 友人とか知り合いに言われたなら、タ○さんか!! とツッコミを入れるところだが、相手が相手だけにそんなことは出来ない。

 

「それに、左手も……この間は包帯巻いていたね」

 

 本当によく見てると関心せざるを得なかった。

普通の人が見えない、気づかないことを認知する。なるほど、これが長く続く華道の家元……。

そう考えるととんでもない人を相手取っていたんだと実感する。もっとも、今日は着物ではなくカジュアルな装いなのであの日のような重圧、凄まじさは感じない。

 

(それでも、まだ俺が男だとバレてはいないはずだ)

 

 今日はいきなりのことなのでボロが出るかも知れないけれど、あの日は暗示をかけて臨んだから振る舞いはどう見ても『氷川夕姫(♀️)』だったはずだ。

漢字が違う? 実際に名前を書いて見せた訳じゃないから分からないって。

 とりあえずは今日、ライブが終わるまではボロを出さないようにしよう。『私』は『氷川夕姫』。OK?

 気持ちを落ち着かせるべく、購入したドリンクに手を伸ばして一口。

 

「ユウキくんは、男女の間に友情ってあると思う?」

 

「ゴフッ!?」

 

 核心を突いた質問に思わず飲み物を吹き出してしまった。大半はストローを通して逆流したものの、いくらかは顎を伝うように垂れる。

 

「失礼しました。……それで、男女間の友情……ですか?」

 

 ドリンクを一旦机の上に戻して、ハンカチで顎の下を拭う。

とりあえず染みになるような飲み物ではないし大丈夫だろう。

 

「あると思いますよ。現に私の友人も男の子ですが、男友達より女友達の方が多いですし」

 

 実際に、蘭にモカ、ひまり、つぐ、巴、あこに……燐子さんもかな? NFOでフレンドだし。友希那先輩とリサ先輩は友達っていうか『先輩』だしね。丸山さんは……あれ? どうなんだろ。バイト先で会ったりして、あがりが近いとバイト終わってから話したりするけど。保留かな?

 男友達と言えるのは……野口、以上。授業の関係で関わりがないとはいえこれは……うん。

自分の交遊関係の偏りにうちひしがれる。

 

「それで……ユウキくんと蘭は友達ってことでいいんだね?」

 

「はい、もちろんです」

 

 答えてから、ふと違和感を覚える。

 

(あれ? 美竹父は今、何と聞いた?)

 

 最初に聞かれたのは『男女間の友情の有無』だった。これに対して私は有りと答えた。何の問題もない。

続いて私と蘭は友達かと聞かれた。一見何の変哲もない質問だがーー

 

(男女間の友情を聞いてからどうして俺らの関係なんか……)

 

『ユウキ()()は、男女の間にーー』

 

『ユウキ()()と蘭はーー』

 

 サァッと血の気が引くのを感じた。

 

「ん? どうしたんだい、ユウキくん」

 

「あ、いえ、なんでもないです」

 

 取り繕おうとするも、ドリンクを掴む手が震度5レベルはあるんじゃないかというほど震える。

 

(いや、待て、落ち着け。まだバレたと決まったわけじゃない。美竹父は男子でも女子でも『くん』付けで呼ぶ可能性だってある。華道の家元だし、弟子をくん付けで呼ぶときの癖が出たんだ。そうに決まってる)

 

 そうと決まれば、ここを耐えきれば女神は私に微笑むーー

 

「お待たせ~、ゆー兄」

 

「あ」

 

 来たのは逆転の女神ではなく、堕天使もとい駄天使だった。

 

「ユウキくん、ライブが終わったら()()()で話をしようか」

 

「……あい」

 

 拝啓、美竹蘭様。このライブがあなたにとっての試練だと思いますが、俺の試練はライブ後になりそうです。

願わくは……アンコールやってくれませんかね? 10曲くらい。

 

 

 

 

 

 どうやら美竹父とあこは顔見知りらしい。

まぁ、蘭と巴が幼なじみなのだから、当然といえば当然だろう。

幼いあこが巴の後を着いて行って一緒に遊ぶことも容易に想像がつく。少なくとも氷川家ではそうだったから。

 先ほども美竹父を『蘭パパ』と呼び話していた。

『パパ』、というよりかは『お父さん』と呼んだ方がしっくりくると思うのは俺だけではないだろう。もっとも、呼んだところで『君に呼ばれる筋合いはない!』という常套句が飛んでくるのは明らかなので呼ばないけれど。

 

「ライブってこんな感じなんだね」

 

 美竹父がーーもう蘭パパでいいやーー蘭パパが呟いた。

 

「想像と違いました?」

 

「ああ。前にテレビで見たバンドは派手なメイクをしてたし、叫んだりしてたからね」

 

「ああ……」

 

 前者に関しては女王の名を冠す世界的バンドだろう。さすがに一般の、それもガールズバンドがやったりはしないだろう。

 後者はまぁ、メタル系ならシャウトするだろう。あとはシャウトとは違うが、十万六十歳の『閣下』と呼ばれる人ーー悪魔だっけ?ーーは『お前も蝋人形にしてやろうか!?』という決め台詞があるし、『キラキラドキドキさせっぞ!』、『しゅわしゅわにすんぞ!』という人たちも……あれ? 後半二人知らない……誰だ? 片方は丸山さんに声が似てるんだけど……

 

「まぁ、全部が全部そういうわけじゃないんですけどね……」

 

 それでもメディアの影響力というのは大きいもので、よく分からない人からしたらチャラくて大きな音だして、派手なパフォーマンスして……と思っていることだろう。

 

 

「そういう意味では、華道も一緒なのかな……」

 

「ん?」

 

 俺の呟きを聞こえたのだろうか、蘭パパが反応する。演奏中ではないとはいえ、どんな耳してるんだよ。

実際、隣のあこは気づくことなく、先ほどの演奏の余韻に浸っている。

 

「いえ……あくまでも華道を知らない若輩者の言葉として、深く考えないでほしいんですけどね」

 

 前置きをした上で自分の考えを告げる。

 

「華道って、良家のお嬢様とかが着物を着てやるイメージしかないんですよね。あとは、妙に堅苦しいイメージと言いますか……もちろんそれだけではないとは分かっているんですけどね」

 

 ただ、何より華道にふれる機会がない。それこそ小、中学校での展覧会でお目にかかるかどうかというところだろう。

 さて、少し話が脱線するが、市やら地区の展覧会へ行くときどんなことを考えるだろう。

 

『授業がつぶれてラッキー』、『コレ見た後で感想書かなきゃいけないんだろな』、『何が凄いのか分からない』

 

 こんなところだろうか。ここで重要なのは『何が凄いのか分からない』というところだ。絵やら書道なら授業を通して多少なりとも理解がある。それでも同じ小中学生までで、それ以上となるともう理解が及ばない。

 それが何の接点もない華道ともなれば全く分からない。

今でも蘭がいなければ華道と関わることもなかっただろう。

 

「イメージだけが独り歩きして、ただでさえふれあう機会がないのに、そのイメージによるハードルの高さで始める機会すらも失われていくと思うんですよね。そういう意味ではバンドも華道も同じなのかな……と」

 

「なるほど」

 

 俺の拙い考察に目を閉じ吟味する蘭パパ。そこまで深く考えんでも……。

 

「そういう意味では蘭には期待してるんですよ?」

 

「ほう?」

 

「バンドではカッコよさがありますし、華道だったら若者目線での作品が出来るんじゃないかなと……」

 

「「「ワァアアアアア!!!」」」

 

 そんなとき歓声が上がり、演奏が始まる。

 

 蘭は……気負った様子もなくいつも通り、やれることを全力でやるだけ。そんな感じだ。

 蘭のことで悩んでいたモカは悩みから解放されて晴々とした気持ちでギターをかき鳴らす。

 あの日、ショックで動けなかったひまりはベースとして、リーダーとして演奏を支えている。

 俺を叱責し、間違えに気づかせてくれた巴。今日もパワフルなスティック捌きでドラムを打ちならす。

 自分の技術に悩み、とことん自分を追い込んだつぐ。そこに一切の迷いはなく、今までの演奏のなかで一番いいんじゃないかという出来だ。

 

 

 

「ゆー兄、本当に行かないの?」

 

「あ、あぁ」

 

「彼は私と約束があるからね。あこちゃんはみんなで楽しんでくるといい」

 

 そういいながらなにやら封筒をあこに渡す蘭パパ。

 

「コレはお祝いの品だよ」

 

「ありがとう! じゃあね、ゆー兄、蘭パパ」

 

 手を振って控え室まで行ってしまった。

 

「さてと。じゃあ男同士、仲良くしようかユウキくん」

 

「あい……」

 

 Afterglowとしては雨降って地固まるだが、俺としては一難去ってまた一難。無事に帰れることを祈ろう。

 

 

 




 次回は短編を挟んでパスパレ編に参ります。
それとアンケートも実施いたします。今後の参考にさせていただきますので、よろしければ投票お願いします。

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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