今年最後の投稿になります。
お気に入りかなり増えててビックリしました。年末マジック。
『蘭パパと』
「お邪魔します……」
何度来ても……というほど来てはいないけれど、美竹家の門には圧倒される。隣に蘭パパがいて縮こまっている自分が一層小さくなるように感じる。
そんな状態な俺を蘭ママは微笑みをもって迎えてくれた。
蘭パパは何か準備があるようで蘭ママに案内を任せて行ってしまった。
「そんなに畏まらなくて大丈夫よ」
廊下を歩きながら蘭ママが声をかけてくれた。
とはいえこれからのことを考えると気が気じゃないんだけど……
「あの人、今日のライブもだけれど、ユウキくんと会うのをとても楽しみにしてたのよ」
はしゃぐ子供を見守るような目をして語る蘭ママ。
だけど、約束してないんですけどね!? むしろ有無を言わさず(意思確認はあったけど、あの状態で断れるか? 俺はノーだ)連行されたんですけど!? ……何てことは言えず、
「あぁ、そうなんですか?」
と、苦笑い。
きっと、『蘭を誑かしたあの小僧に鉄槌を下せるぞ! ふはははは!』と思っていることだろう。帰りてぇ……
「お茶を淹れてくるから待っててちょうだい。しばらくしたら、あの人も来ると思うから」
「あ、いえ、お気遣いなく」
お茶を淹れに行く蘭ママにそう呼び掛けるも、行ってしまった。
歓迎してくれる蘭ママには申し訳ないのだが、一分一秒でも早く立ち去りたい。
神よ、私に今こそ力を!
ガラッ
「待たせたね」
「いえ……大丈夫です……」
待ってないので(体感30秒ほど)
神は無慈悲で残酷だ。
現れた蘭パパは先ほどのカジュアルな服装とはうってかわり、前回同様の着物姿だ。そして抱えてきたのは何やら分厚い本が数冊。
あぁ、あれを重石がわりに剣山の上で正座させられるんですね。
しかも時間をかけてじっくりと……考えただけでゾッとする。
『一思いにやってくれ!』と思うものの、拷問という性質上それでは意味がない。
「じゃあ……早速だけどーー」
「一思いにお願いします!」
両手を床につき、頭を擦り付ける……土下座。
わずかな沈黙の後……
「何を言っているんだい?」
「はえ?」
呆れたような蘭パパの声に間抜けな俺の声が客間に響いた。
「え? あれ? だって、蘭を誑かす自分に拷問するんですよね!?」
「いやいや、しないよ。というか、どうしてそう思ったんだい?」
テンパって意味不明なジェスチャーを交えつつ蘭パパに訊ねると、拷問する気は全くないという。
「先日、女装してお邪魔したことを怒ってるんですよね?」
「確かに驚きはしたものの、何か理由があると思ったし、そもそもあの日のうちに女装だってことは分かったよ?」
「……嘘」
そこまでクオリティが低かったのか!? あからさまに男って分かってて『あー、面白い子だな。バレバレだけどこのまま放っておこう』って思ったのか!? 蘭パパ黒い!
「というか、ユウキくんがボロを出さなければ気づかなかったよ?」
「え?」
ボロ出てたの!? いつ!?
「その様子だと気づいてなかったみたいだね。蘭が来た時、感情が昂ったのかな? それまで『私』だったのに『俺』になってたよ」
マジかぁ……マジかぁ……
あれ? じゃあ何故に俺は連れてこられたの? その事じゃないとすると心当たりが無いんだけれど。
「じゃあ……今日は一体どういう?」
意図をはかりかね、蘭パパに訊ねると、蘭パパは険しい顔をして腕くみした。
ただ事ではない気配に土下座を止め、姿勢を正して蘭パパに向き合う。
「ユウキくん。この間言ってたよね? 学校での蘭は自分の方がよく知ってるって」
「えぇ」
まさかその事で何か!?
「学校での蘭のこと話してくれないか?」
思わず前のめりになりそうになったが何とかし耐えた。
「最近……というか中学生あたりからあまり蘭と話さなくなってしまってね。顔を合わせても喧嘩ばかりで……」
「お父さん……それが男親と娘のごく一般的な距離感かと……」
「まだ君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」
呆れてしまい、思わず『お父さん』と呼ぶと、テンプレ通りの答えがーー
(ん? 『まだ』って言ったか?)
蘭パパの返答に違和感を覚えた。
「代わりに私の秘蔵の蘭コレクションを見せてあげるから!!」
「あ、いえ、別にーー」
「何!? 蘭の幼い頃の写真は見れないというのか!?」
(もう、誰でもいいから助けて!!)
そんな俺の願いが届いたのかーー
スッ
「あらあら、すっかり仲良くなったようで」
お茶とお茶菓子を持った蘭ママが来てくれた。
良かった、コレで少しは治まる。
「ユウキくん、よかったらお夕飯も食べていかない?」
「そうだ! それがいい!!」
(あっるぇ~!!?)
蘭ママの(相手方の)援護射撃でさらに混沌とした。
断るにも断りきれず、蘭パパとの蘭の情報交換は延長戦に突入した。
『バイト探しの行方』
目の前の少女はただでさえ大きな目を見開き、驚いている。
何故俺がいるのか信じられない、目の前の出来事が整理出来ない。そういった感じだ。
その後ろで彼女のご両親はイタズラが成功した子供のようにはしゃぎ、『イエーイ』と言いながらハイタッチしている。うん。仲いいね。
「えっと、今日からアルバイトとして働かせていただきます。氷川夕輝です。何分アルバイト自体が初めてですので至らない部分もありますが、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
緊張を抑えながらいうと、先ほどまではしゃいでいたご両親は拍手をもって出迎えてくれた。
彼女……つぐは『え? えっ!?』と未だに状況を整理出来ないでいた。
左手も無事に完治し、Afterglowの問題も落ち着きをみせた頃。俺はバイト探しを本格的に始めた。というか、一ヶ所アテがあり、そこがダメなら手当たり次第……という『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』戦法だ。
いつになく気合いを入れて、その店のドアを開ける。
来店を知らせるベルが鳴ると、直ぐ様つぐのお母さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
娘の友達とはいえ、客だと判断して接客してくれたのだろう
「あ、いえ。店長さんいらっしゃいます?」
客としての来店ではないと察したのか、つぐのお母さんが呼びに行き、少ししてつぐのお父さんが来てくれた。
「いらっしゃい。待ってたよ」
「わざわざお時間いただき、すみません」
つぐのお父さんに頭を下げる。
「なんのなんの。じゃあ、ちょっと裏に行こうか」
店をお母さんに任せて事務所の様なところに案内された。
「あ、これ履歴書です」
座るように促された後、持参したバックから履歴書を取り出し手渡す。
「ありがとう」
そう言ってつぐのお父さんは履歴書を受け取ると、デスクの引き出しに閉まった。
(あれ?)
まさかのノーチェックに面食らう。確かに大したことは書いてはいないものの、面接を行う上で必要なんじゃないか?
それとも今のやり取りで不採用が決定してしまった? こんなことなら紗夜姉さんに面接の心得とか作法を聞いておけば良かった……
「夕輝くん。正直に答えて欲しいんだけど、君がウチでアルバイトをするのは何のためかな?」
「はい! 私はーー」
履歴書に書いた動機を言おうとすると、
「あ、履歴書に書いたことじゃなくてね本当の君の気持ちを知りたいんだ。例えばお金が欲しいとか、つぐみともっと仲良くなりたいとかね」
「え……」
つぐのお父さんの発言にびっくりする。確かにこの店でバイトしたいという男子学生がいれば疑われる要因だろう。特に後者。
しかし、それを正直に言って落とされることを考えると……
「大丈夫。君がどういう人間かというのはこの間話したときに大体は分かっているから、それを聞いて不採用ってことはしないから」
この人がそういうなら落とすことはないのだろう。もっとも、怒られそうではあるけど……
「確かに、バイトを始めようと思ったのはお金が欲しかったからですが、ここに決めたのはつぐみさんの負担を少しでも軽く出来ればと思ったのが一つですね」
バイトに生徒会にバンド。全てにおいて手を抜くことなく全力で取り組むつぐ。ただ、自分の健康面をあまりに度外視してるように見えたのだ。
「それは……夕輝くんの言うところの罪滅ぼしのつもりでもある?」
さすがに核心をついてきた。
「最初はそのつもりでした。でも、ご両親のような明るくアットホームなこの環境で私も働いてみたいと思いました」
「なるほど……」
黙りこむつぐのお父さん。あれ? これはダメだった?
と思ったら、スッと手を出してきて、
「よろしく頼むよ」
どうやら合格のようだ。
「ありがとうございます」
その手を握り、お礼を言った。
「というわけで、今日からお願いしますね。つぐみ先輩」
さらに爆弾を投下しワタワタするつぐを見て三人でニヤリと笑った。
というわけで駆け足ながら短編2本でした。
今からバイトなので急いで書きました。
来年もよろしくお願いします。
良いお年を~ノシ
ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?
-
許す! 書くことを許す!
-
ただでさえ話進まんのだからやめーや!!