2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 あけましておめでとうございます。
今年も本作をよろしくお願いします。

 今回からパスパレ編です。少し時空が歪みますが、気にしないでください。

 それと、アンケートの回答ありがとうございます。
予想以上の回答数に驚いております。


第35話

「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

 

 つぐの家……羽沢珈琲店でアルバイトを始めた俺。まだ接客もまだ慣れないものの、つぐやつぐのお母さんの接客を見て学び、レジ打ちやオーダーをとれるようにはなってきた。

それでも出来ないこと(コーヒーや料理の説明など)はつぐやつぐのお母さんにお願いして、その説明を聞きながら覚えるようにしている。

 ちなみに、俺とバイトの先輩以外はみんな『羽沢さん』なので、呼ぶときはつぐのお父さんを『マスター』、お母さんは『羽沢さん』、または『奥さん』(基本羽沢さん)。つぐは『つぐみさん』と呼び分けている。

最初テンパった時に『羽沢さん!!』って言ったらみんな飛んできてくれて申し訳なく感じたからなぁ。

 

 ただ、多少接客が出来るようになったとは言え、接客業をしている人なら分かると思うが、『どうしようもない客』というのはいるものである。

 

 

「ねぇねぇ、ゆーくん。このあと暇ぁ?」

 

テーブル席に座り、そんなことを聞いてくるのは自分と瓜二つの顔をした人物。我が下の姉こと氷川日菜だ。

 

「お客様、申し訳ありませんが従業員のシフトに関してお話することは出来ません」

 

 あくまでも姉弟としてではなく、一人の客として接する。……例えテーブルの上にあるのがカフェラテ一杯だとしてもだ。

 

(というか、カフェラテ一杯で粘らないでくれ!)

 

 口に出そうになった言葉をなんとか飲み込み、接客スマイルを浮かべる。

不安そうにマスターがこちらの様子を窺っている。とりあえず大丈夫ということと、申し訳ないという気持ちを込めて目礼する。

 

「えぇ~!! お姉ちゃんに言えないの!?」

 

 不満げに頬を膨らませる日菜ねぇ。

 

(例え姉だろうと教える義務はないと思うんだが……)

 

 これが紗夜姉さんなら理詰めで押し切るんだろうけど、生憎俺にはこの姉を宥める手段がない。

 

「はぁ……昼には終わるから」

 

 仕方なく日菜ねぇに終わりの時間を教える。長々と居座られても困るし、教えてしまえば帰るだろう。

 

「んじゃ待たせてもらうね!」

 

「えっ、はあっ!?」

 

 まさかの居座り宣言に『帰れ』と言いたいけど、客(カフェラテもまだわずかながら残ってるし)なので言えない。

 

「それと、カフェラテおかわり♪」

 

「かしこまりました♪(早く帰れ)」

 

 営業スマイルで応じながらも、心の中では悪態をついた。

 

「三番テーブル、カフェラテのお代わりお願いします」

 

「夕輝くん、顔が怖いよ。スマイルスマイル。接客は笑顔だからね」

 

 どうやら苛立ちが顔にでていたようだ。つぐのお父さんに指摘される。

 

「……すみません」

 

「夕輝くんのお姉さんだっけ? なるほど。そっくりだね」

 

「ええ。下の姉です」

 

「下の……ということは?」

 

「双子なんです」

 

 上の姉は花咲川なんですけどね、とつけ加える。

 

「花咲川って女子校だっけ? じゃあ、夕輝くんが羽丘に入ったのって……」

 

「姉がいるからですね」

 

 上に兄、姉がいることのメリット。通っている学校の様子が分かること。まぁ、男子校、女子校ならあまり意味はないんだけど去年の時点で羽丘は『共学になるかも』という噂があったからその時点で決めていた。……そこ、シスコンとか言わない。

 

「じゃあ、羽丘じゃなく花咲川が共学だったら?」

 

「花咲川に行ってましたね」

 

 ちなみにどっちも女子校なら近くの男子校に通っていたかもしれない。

 

「じゃあ、どっちも共学だったら……どっちに行ってた?」

 

 どっちも共学ならか……羽丘か花咲川かで選ぶんじゃなく、紗夜姉さんか日菜ねぇか、で選んでしまうのが俺の悲しいところかもしれない。

 

 人間関係で言えば、紗夜姉さんの方が不安かもしれない。

よく言えば品行方正、悪く言えば融通の利かない堅物な姉さんは、風紀委員をしていることもあって煙たがられることもある。

今でこそRoseliaもいう居場所が出来たから不安はそれなりに解消されたものの、いまだに『兄弟・姉妹』の話題は地雷である。

 

 一方で日菜ねぇは、俺や紗夜姉さんに比べて社交性がある。

現に今もカフェラテを待っている間に常連さんと話をしている。

 ただ、紗夜姉さんと違い、不満などが表面化しにくいかもしれない

天才(変人)』のレッテルを貼られている日菜ねぇは、社交性こそ高く友達だっているが、果たしてその友達は日菜ねぇの悩みを理解し、共感してくれるだろうか……

 

「ーーきくん。夕輝くん!」

 

「! は、はい!」

 

 思考の海に沈んでいた俺は、マスターに呼ばれ浮上する。

 

「三番テーブル、オーダー上がったよ」

 

「はい」

 

 カウンターにはカフェラテとーー

 

「マスター。オーダーミスですか?」

 

 何故か注文にないはずのケーキが置かれていた。

 

「いや。間違ってないよ」

 

 マスターは否定するが、日菜ねぇのオーダーはカフェラテのおかわりのみ。間違いない。

 

「ケーキはサービスだよ。お姉さんが羽丘にいてくれたからこそ、夕輝くんがうちに来てくれてるんだからね」

 

 日菜ねぇが羽丘に通っていたから……今年から共学になったから俺は羽丘に行った。そこで蘭たちと仲良くなり、つぐの件があったからこそ、俺はここでバイトをしている。

 

「その件はーー」

 

「まぁ、これからつぐみがお世話になるかもしれないし、前払いみたいなものかな」

 

 そうマスターは笑うけど、いくら日菜ねぇがつぐの面倒をみている光景を思い浮かべようとしてもーー

 

「つぐちゃん、よろしく~」

 

「え!? 日菜先輩!?」

 

 何故か日菜ねぇがつぐを振り回している光景しか思い浮かばないのだけれど。

 

「まぁ、本音を言えばこのケーキの試食をお願いしたいだけなんだけどね」

 

 ペロリと下を出すマスター。

いつもならつぐ共々ひまりがいるのだが、今日はAfterglowの練習があるためいない。

 

「そういうことでしたら……」

 

 受け取って三番テーブルへ向かう。

 

「お待たせいたしました。こちらカフェラテと……ケーキになります」

 

「え? あたし頼んでないよ?」

 

 テーブルに並べると、予定通りの言葉がとんできた。

 

「こちらマスターからです」

 

「ん? どういうこと?」

 

 手元のストローを弄びながら訊ねられる。

さて……なんと説明したらいいやら……

 

「このケーキ、新作の予定なんだけど、試食して感想をもらいたいんだってさ」

 

 ススっと顔を寄せて耳打ちする。

 

「くすぐったいって~」

 

 うん。分かってはいるけど大きな声で言うわけにはいかないから我慢してほしいかなぁ。

 

「と、いうわけで感想だけ聞かせていただければ幸いです」

 

 

「ふふん、日菜ちゃんに任せなさい!」

 

 自信満々に胸を張るな。意外とあるんだから……ひまりほどではないけれど。

 日菜ねぇはフォークを手に取り、ケーキにスッと入れて一口サイズにしてから口へ。

 

「むむっ!」

 

 咀嚼すること数回。日菜ねぇの目が1.2倍ほどに輝いた。

 

「このケーキ、るるるるんって感じ! つるんとしてて、べたーっとするのかと思ったけど、スキッとしてるね!」

 

 おう、かなりお気に入りになったみたいだね。

 

「えぇ~と……レアチーズケーキなのかな? 舌触りが滑らかで、舌に残る感じがなくて、柑橘系を使っているのか後味は爽やかっと」

 

 日菜ねぇが言った感想を翻訳して書きまとめる。

今日のはまだ簡単な方で、もっと難易度が高いと『は、が、と、に、も』以外が日菜ねぇ独自(擬音語)のオンパレードだったりする。

 

 

「それで? 一体どこに連れて行こうっていうのさ~」

 

 バイトが終わって直ぐさま日菜ねぇに手を引かれた。

正直腹が減っていたので山吹ベーカリーでパンを買おうと思っていたのに……

 

「まぁまぁ、いいから~」

 

 そう言いながら、駅の改札を抜けて電車に揺られーー

 

「いや、さすがに目的地も言わずに電車移動ってどうなのさ」

 

 二駅、三駅くらいならと思っていたが、思ったよりも長く乗っている。

 

「まぁまぁ。あ、この駅で降りるよ~」

 

「はいよ……」

 

 もうここまで来ると諦めて帰るという選択肢はもはやなく、面倒ごとをサッサと終えようという頭しかない。

それで○ック寄って帰る。その頭しかなかった。

 

 来たこともない場所なので、日菜ねぇを見失わないように日菜ねぇに着いていく。

 

(というか、日菜ねぇはどうしてこんな場所に?)

 

 少なくとも通学ルートではないし……雑誌においしい料理の店でもあったのかな?

それだったら何かを食べる時間をとらせないことも納得がいく。

 

「はい、ここだよ」

 

「は?」

 

 連れてこられた場所は明らかにお店じゃありませんでした。

 

「え? ココドコ?」

 

「スタジオだよ?」

 

 何言ってるの? って顔で見られた。

すたじお、スタジオ、studio……スタジオ!? ジ○リだったり、ぴ○ろだったりする!?

 

「ゆーくん? なにしてんの?」

 

「は!?」

 

 日菜ねぇに声をかけられーー

 

「はい、これ」

 

 袋に入った何かを渡される。

 

「なにこれ?」

 

 というか、いつの間にか建物の中にいたし……

 

「ジャージ。これに着替えて4番レッスン室ね」

 

 は? ジャージ? レッスン室?

 

「じゃ、あとでね~」

 

 説明もないまま日菜ねぇは行ってしまった。

せめて最低限の説明をーー

 

「あ、男子更衣室はあっちね」

 

 戻ってきたと思ったら、それだけ言ってまた行ってしまった。

 

(違う、そうじゃない、そうじゃないんだ)

 

 思ってはいるものの、どうしようもないのでさっさと着替えに行く。

 

 

「っと、ここだね」

 

 指定されたレッスン室のドアを開けるとーー

 

「あぁ、まさしくレッスン室だな」

 

 バレエのレッスンとかで使われるようなガラス張りの部屋。そこにジャージ姿の人物が立っていた。まぁ俺なんだけどね。

 

「日菜ねぇは……いないな」

 

 先に着替えて来てるかと思ったが、そんなことはなかった。

 

「てか、何の説明もないし、誰か来たら一体ーー」

 

 ガチャ

 

 どうやら日菜ねぇが来たようだ。

一言文句を言ってやろうと振り返るとーー

 

「おはようございます」

 

 そこにいたのは日菜ねぇではなく、しかも『三人』立っていた。




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ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
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