2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

39 / 40
 すみません。ずいぶん間が空きました。
その間、三時間残業だったり、バイトだったり、休日出勤だったり、1日13時間超えの労働×2だったりと自分の時間を作るのにも苦労する状態でした。
 待っていた476人のお気に入りしてくださってる方々、ならびに読んでくださってる方々。お待たせいたしました!
……もっともこの話を読んで何人の方が残ってくださるやら……では、どうぞ


第37話

 無事に昼食を摂ってから戻ると、日菜ねぇが復活していた。

 

「んで? どうして俺はここに連れてこられたわけ?」ナデナデ

 

 ともあれ、なぜここに連れてこられたのか、話を聞かなきゃ何も分からないし、冷静になって聞いてみることにする。

話し合いは大事だ。争いからは何も生まれないし……まぁ、戦争がきっかけでコンピューターが出来たりと例外はあるけれども。

 

「ほら、ゆーくんはお姉ちゃんのバンドの練習をよく見に行ってるでしょ? だから指導してもらえたらなぁ~って」

 

 まぁ、確かにRoseliaの練習には前ほどではないとはいえ顔を出してるし、最近はAfterglowの練習だったりライブだったりも見に行く機会がある。

 

「って言っても、俺も指導できる立場じゃないんだけど……」ナデナデ

 

 むしろ友希那先輩に教わっている側だし、それだって友希那先輩の時間があるときに限られる。

 

「え? でもキーボードを弾いてたってリサちーが言ってたよ?」

 

 ……あの先輩の口は塞がないといけないかもしれない。

そもそも何度も弾けないと言っているのに信じてもらえない。

……もっとも、最近キーボードのレベルも上がってきてはいるが、教えるほどではない。

 

「そもそも俺が楽器の経験ないのは日菜ねぇが知ってるじゃん」ナデナデ

 

 仮に楽器を演奏できたとしても、

ドラム→大和先輩(経験者)

ギター→日菜ねぇ(こっちが教えるより先に覚える天才)

キーボード→若宮さん(このキーボード……触ったことない)

ベース→白鷺さん(教えられないし、本人不在)

 

……どうしろと?

 

「ほら、ゆーくん歌も上手いでしょ?」

 

「アホ言わさんな」ナデナデ

 

 それこそ教えられる立場じゃない。ボイトレとかなら専属のトレーナーがいるし、あくまで個人のやり方を教えたところでそれが合ってる保証もない。名選手が必ずしも名監督になれるとは限らないのだ。

 

「そもそも、俺がでしゃばったところで他の3人が困惑するだろう」ナデナデ

 

 先ほどから遠目でこちらを窺っているが、声をかけられずにいる3人。そりゃそうだろう。いくら知り合いとはいえ、実力も分からないヤツを引っ張り出してきて、

 

『はい。今日からトレーナー(非公式)です』

 

 と言われれば、いよいよヤバくなったと思う。……もともとヤバいとは口が裂けても言えない。

 

「いや、そうじゃなくってね……」

 

 ほら、丸山さんも俺なんかに気をつかってるし……いいんですよ、正直に言っちゃって。事実なんですから。

 言いづらそうにしていた丸山さんだけど、意を決したのかついに口を開く。

 

「夕輝くん……なんで日菜ちゃんの頭を撫でてるのかなって……」

 

 

 3人の目線は俺……の右手。その手は先ほどから絶え間無く日菜ねぇの頭を撫でていた。

 

「「なにかおかしなところある(あります)?」」

 

 

「え"っ……」

 

 丸山さんの疑問に日菜ねぇと二人でハモりながら答える。言葉だけでなく、コテンと首をかしげる仕草まで図らずともシンクロする。

いや、姉弟ってこんなものじゃないの? そりゃあ俺と日菜ねぇの立場が逆かもしれないけれど、弟に甘える姉ってのもあると思うの。

 日菜ねぇの場合はかなりオープン過ぎるけど……学校でも仲のいい氷川姉弟(しまい)と言われている。……一部不本意なところもあるけどまぁいいや。かくいう俺も学校でも……とまではいかないが、日菜ねぇの話を聞くときには『真面目な時を除き』ーーとはいえ日菜ねぇの真面目な時はそんなに多くないのだがーー今みたいに頭を撫でながら聞く。

 

 紗夜姉さんの場合は、日菜ねぇほど頻度は高くない。とはいえ、わりとギリギリまで頑張ってしまう人なので甘えた時のスキンシップは日菜ねぇ以上かもしれない。

もっとも、爛れた関係ということはけしてなく、不器用ながらも抱き締めてほしいという態度を表す(けして自分からは言わない)程度なのだ。

 

 一方で丸山さんは『本気で言ってるの?』という反応を示す。

俺も顔に出るとよく言われるけど、この人も大概だと思う。

チラリと大和先輩と若宮さんに視線を移すと、大和先輩は『あぁ……』と半ば諦めたような表情をしていた。

その横ではスッゴいニコニコしている若宮さん。今、この場ではあなただけが味方です。

 

「あれ? 私の方がおかしいのかな?」

 

「大丈夫です。彩さんは正常ですよ……」

 

「お二人とも仲がいいんですね」

 

 あれ? 本当に俺らがおかしいの? 誰かに聞きたくても、身近で姉弟な人はいたかなぁ?

 友希那先輩と燐子さんとリサ先輩は一人っ子だし……もっとも、リサ先輩と友希那先輩で姉妹みたいなところあるけど。

あこと巴は言わずもがな。蘭、モカ、つぐも一人っ子。ひまりは……お姉さんがいたんだっけ。

 

(あ! 沙綾がいるじゃん!!)

 

 沙綾のところは弟と妹がいたはず。今度パンを買いに行ったときに聞いてみよう。

 

 

 スタジオを借りているとはいえ、時間は限られている。このまま雑談でムダにするわけにもいかないので、(個人的に納得いかない部分もあるが)切り上げて自主トレを開始した。

今日は大和先輩が若宮コーチのもとでビジュアルレッスン、丸山さんが日菜ねぇ指導のもとダンスレッスンらしい。

 ビジュアルレッスンって何をするのかと思ったが、要は若宮さんの指定する感情、喜怒哀楽を表現するらしい。なるほど。『アイドルバンド』らしいことだけど、当然ながら俺に出来ることはない。

 

「ゆーくんはこっち」

 

 と、日菜ねぇに引っ張られる。いや、ダンスだとしても俺に指導能力なんてものはないんですが……。せいぜい『鏡』になってあげるくらいかと……

 

「はい、コレ。ダンスの映像。踊ってるのはトレーナーさんだから大丈夫だよね」

 

 と、ポータブルのプレーヤーを渡される。

いや、大丈夫って……逆にコレを一般人の俺が見ても大丈夫なワケ?

 

「だって、ゆーくんはコレを悪用しないでしょ?」

 

 まぁ、そうなんだけどね。ほら、守秘義務とかなんとか……ってこの姉に言ったところで分かっててやってるんだろうだから仕方ないか。

ため息ついでに目を閉じながら深呼吸。

 

(何かあった時には責任とってもらうかんね?)

 

 目を見開き、コンマ一秒とも見逃さないようにプレーヤーを見つめる。

 

 

 さて、先ほども言ったが名プレイヤーが必ずしも名監督になれるわけではない。選手時代にどれだけすごい実績を残してようと、素晴らしい技術を持っていても、指導したり運用する技術がなければ何にもならないからだ。

 

「彩ちゃん、そこはへにゃってなってるよ~、ピッとしなきゃ」

 

「へ、へにゃ?」

 

「そこのところはもっとキュッ、グイーンって」

 

「きゆっ? ぐいー、あたっ!」ズテン

 

 何か日菜ねぇの擬音を繰り返す可愛い生物になりつつあるぞ、丸山さん。

とはいえ、感覚派の日菜ねぇの指導では少々難しいところがあるかもしれない。

 

「ほら、もう一回!」

 

「日菜ちゃん、もっと分かりやすく教えてよ~」

 

 おそらく半泣き状態の丸山さんを尻目に、俺はプレイヤーの動画を()()()()()()()()()()

 

「そこ、ピッとして」

 

「指先までまっすぐを意識して!」

 

「は、はい!」ピッ

 

「キュッとしてグイーンだよ!」

 

「回る前の一歩をもっと内側に!」

 

「こ、こうかな?」キュッ、グイーン

 

「で、出来た!」

 

「最後まで気を抜かない!」

 

「はい!」

 

 

side 麻弥

 

 イヴさんとトレーニングしていたジブンは信じられない光景に我が目を疑った。

 彩さんがミスせずに踊りきった? それはあるかもしれませんが、違います。日菜さんが連れてきた弟クンこと夕輝さん。彼が行っていることにある。

 

「マヤさん、ユウキさんには心の目があるんですかね?」

 

「そんなことはない……とは思うんですが……」

 

 隣のイヴさんも目を輝かせて見ているのは彩さんのトレーニング。正確に言えば指示している夕輝さんだ。

目線をプレイヤーから一切離すことなく彩さんのダンスに対して的確な指示を出している。

 

(それを可能にしているのは、日菜さんの指示……)

 

 日菜さんの普通の人なら理解できない擬音だらけの指示で状況を把握、翻訳することで一度も見ることなく指示を出せるのだ。

 

 

「よし、見終わったよ~」

 

「なんとかなりそう?」

 

 伸びをして目頭を抑える夕輝さんに日菜さんが声をかける。

 

「落とし込みはしたけど、やってみなきゃ分からないかなぁ」

 

 そういいながら一人黙々と柔軟をする夕輝さん。

 

 

『落とし込み』? 夕輝さんは動画を見ていただけに見えたけど、他に何かしていたのだろうか?

 

「えっと……何が始まるんです?」

 

「第三次世界大戦だ」

 

「「「「え?」」」」

 

 夕輝さんの突拍子もない言葉にジブンだけではなく、彩さんとイヴさん。果ては日菜さんも目を丸くする。

 

「あ、すみません。少し踊ってみようかなと……」

 

「「「え!?」」」

 

 今度は日菜さんだけが驚きの声をあげなかった。

 

(踊るって、動画を見ていただけで実際にフリを確認する動作すらなかったのに、そんなこと……)

 

 そんなジブンの考えを余所に、日菜さんのカウントで踊りだす夕輝さん。

 

「え!?」

 

「すごいですっ!」

 

「そんなこと……」

 

 夕輝さんの踊りは本当に初めて踊ったのか疑わしいほどにキレがよく、指先、足先まで意識したようにまっすぐ。それでいてムダな力が入っていないように感じた。

ダンスを踊ったことがないジブンでも凄さを感じた。

 

side out

 

 

「ふぃ~……キッツい~」

 

 踊り終わると同時に床に倒れ込んだ。ある程度運動経験はあるから大丈夫かとタカを括っていたが、すぐに起き上がるのはしんどい。いつもと違う筋肉使うからだろうか。

 

「ゆーくん、お疲れ~。水飲める?」

 

「ちいと待ってほしいかな。呼吸整えたい」

 

 労いとともに日菜ねぇが水を勧めてくるがそれは断る。

 

「夕輝くんって、ダンス経験者なの?」

 

「いえいえ、さっき覚えました」

 

「えっ!?」

 

 驚きとともにしょんぼりする丸山さん。まぁ、そうだよな。自分が時間かけても上手く出来ないことをあっさりとやられたらね。

 

「いや、でもダンスって割ときついんですね。コレを踊っても息切れしない丸山さんって、かなり体力あるんじゃないですか?」

 

「そう……かな?」

 

「えぇ。努力の賜物ですよ。誇っていいですよ」

 

「本当? えへへ」

 

 はい、かわいい。信じられます? これで年上なんですよ?

 

 ともあれ、関わった以上はライブを『成功』させるまでは協力するつもりなんで……覚悟してくださいよ? 白鷺千聖さん。




 今日からガルパ3周年ですね! 皆さんのところに幸運が訪れることを……

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。