2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 お久しぶりです。
お気に入り登録、500人突破しました。ありがとうございます!
コロナのせいでお家時間が増えた影響ですかね。
 自分の職場はそんなこと知ったものか! と言わんばかりに通常業務どころか残業まであります。(他部署はGWが少し伸びました)

 なかなか投稿まではいきませんがちょこちょこ書いてます。
気長に待っていただければ幸いです。


第38話

 パスパレとの初会合(ただし初対面にあらず)から数日。

俺は、行きつけのファーストフード店にいた。というか頭を悩ませていた。というのもーー

 

(千聖さんと遭遇出来ない……)

 

 パスパレ最後の一人にしておそらく……というか確実に最大の壁だろう。

というかそもそもの話、アイドル(バンド)のメンバーの4/5が知り合いということが異常で、普通はそうそう遭遇出来るものではない。自分の学校の先輩が、バイトの先輩(僅かな差ではある)が、行きつけのファーストフード店の店員が、ましてや自分の姉がアイドルなんてそうそうない。

 

「アイドルグループの大半が知り合いなんだが」

 

 と野口君に相談すると

 

「それ、なんてエロゲ?」

 

 と返ってきた。いや、マジな話なんだと言おうとしたが、表情が修羅のようだったので止めた。

 

『ちょっと待て! なんでエロゲの内容知ってるんだ!? 高校1年生!』

 

 何処からかひまりの声が聞こえた気がしたが気のせいだろうか。

 

話が逸れた。

 

 ともあれ、最大の壁である千聖さんだけれど、その存在は逆にパスパレにとっても大きな後ろ盾ともなりえる。

 

 子役の時から芸能界で活動してきた千聖さん。芸能界のいろははもちろん、酸いも甘いも噛み分けてきたことだろう。

そんな彼女がいれば、パスパレは芸能界の荒波を越えられるだろう。実際、彼女の機転があったからこそお披露目ライブもアレだけで済んだのだ。そうでなければもっと長い時間好奇と怒りの視線に晒されて、良くてパスパレ解散。悪ければ視線恐怖症にでもなったかもしれない。そういう咄嗟の機転、メンバーのフォロー、それとリーダーシップ。彼女のそういった部分がパスパレには必要不可欠なんだと思う。

 もっとも、丸山さんはそういったことを抜きにして千聖さんに戻ってきてほしいんだろうけど……。

 

(難しいだろうなぁ……)

 

 良くも悪くも千聖さんは現実主義者。今回のことでパスパレから脱退してソロ活動したほうが傷が浅くて済む……と考えているだろうか。多少経歴に傷が付いたとはいえ、白鷺千聖の名は再び世に知れ渡った。ここからまた女優として復活すれば『悲劇のヒロイン』として取り上げられるだろう。

 その構想を上回れる条件を提示できればいいのだがーー

 

(そもそも交渉出来るのか?)

 

 まず丸山さんと若宮さんは無理だろう。純粋なあの二人は交渉に向かない。言いくるめられて丸め込まれるのが目に見えている。

 日菜ねぇは気まぐれや故に交渉出来るかすら怪しい。恐らく一番千聖さんに対抗出来るとは思うのだけれど……

 麻弥先輩は……一番の常識人だとは思うけど押しに弱いからなぁ……これまた千聖さんに言いくるめられるのが目に見えてる。

 

 結果……3敗1引き分け。こりゃダメだね。何がダメかは分からないけど。

もっとも、部外者の俺がでしゃばるのもどうかとは思うけど、あの日菜ねぇが飽き ーー本人曰く、るん♪としなくなるーーもせずに続けられるものが出来たんだ。それを守るためならお節介と言われようとシスコンと言われようと構わない! 構わないんだけど……

 

(まず遭遇出来ない……)

 

 最初の問題に戻るわけで……そもそも『元』が付くとはいえ国民的子役の芸能人と一介の高校生男子。接点なんて無いだろう。たまたま道を歩いていたらすれ違った。偶然利用した店が一緒だった。乗っていた電車が一緒だった(車両違い)。そんな偶然があれば御の字だ。もっとも、『今日乗ってた電車一緒でしたよね?』と言ったところで、『だから何?』と言われればそれまでなのだが。下手すればストーカーと思われるし。

 

 試しに○ー○ル先生に頼ってみよう。『芸能人 知り合うには』……っと。……うん。これは止めておこう。これは明らかに違うからね。

 

 せめて共通の知り合いとかいればいいんだけれど……パスパレ抜きとするといないんだよなぁ……。学校は花咲川だってのは分かってるけど(丸山さん談)それが分かったところでどうしようもないんだよ。

出待ちするわけにはいかないし、守衛や先生がすっ飛んでくる可能性が大きい。そうでなくても姉さんがいるしーー

 

(あ、姉さんがいるじゃん!!)

 

『鬼の風紀委員』と恐れられているらしい(恐らく事実)姉さんなら十中八九知らない人などいないだろう。共通の知り合いとしては十分だ。もっともーー

 

(親しい仲とは思えないけれど……)

 

 どちらも規律に厳しい、音楽活動をしているなど共通点はある。

しかし、かたやプロ(活動自粛中)の音楽バンド、かたやプロ顔負けのアマチュアバンド(ガチ勢)。話題合わないよね、これ。

 友達という線は薄いだろう。せいぜい芸能活動で遅刻、早退する千聖さんと挨拶を交わす、先生への伝言程度の間柄だろう。

 仮に友人だとしても姉さんは取り計らってはくれないだろう。むしろ

 

『白鷺さんはお忙しいのだから』

 

 と諭されるだろう。

 

 堂々巡りに陥り、飲み物のストローに口をつけて吸うも出てくるのは溶けた氷により何倍にも希釈されたコーラの残滓。

 

(はぁ……もう帰ろ)

 

 

 コーラの水割りでは気持ち的にも量的にも満たされないものの、飲み残しに捨てるのもなぁと思い飲み干す。

 いつもは折り畳むハンバーガーの包み紙を頭のモヤモヤとリンクさせてくしゃくしゃに丸める。ちっとも気分が晴れず、ポテトの入っていた箱とカップ共々ゴミ箱に放り込んだ。

 

「ありがとうございました~!」

 

 店員さんの挨拶を背に受け、店を後にした。

 

 

 

 

 帰路に着いたのはいいが、母さんに買い物を頼まれていたのを忘れていた。

 

(豆腐と玉ねぎと……なんだっけ?)

 

 いくつかあったものの忘れてしまった。まぁ、スマホのカバーにメモを挟んでいたのでいいや、と思い上着のポケットに手を伸ばす。

 

「はれ?」

 

 スマホの感触がない。ただの空だ。当然反対側もない。

急いでいる時何かは無造作に尻ポケットにいれることもあるのだがそこにもない。

 

(落とした?)

 

 最悪の事態が頭を過り血の気がサーッと引く。

 

(いやいや、冷静になれ。ここまでの道のりを辿ればいいだけの話だ)

 

 くるりと振り返り、もと来た道を引き返そうとしてーー

 

「ふえっ!?」

 

「!?」

 

 背後にいた人にぶつかりそうになる。

咄嗟に身を捩り衝突を避ける。1歩、2歩とよろけながら何とか踏み留まる。

 

「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

 

 振り返り声をかけるも、その人はしゃがみこんだまま動こうとしない。

 

(まさか怪我でも負わせてしまった!?)

 

 こちらからはしゃがみこみ丸まった背中しか確認することが出来ない。

 

「お怪我はありませんか?」

 

 回り込み、正面から声をかける。

 

 水色の髪を少し高めにサイドテールーーといっていいのだろうか?ーーに結わえ、花咲川の制服を身にまとった女生徒がペタンと座り込んでいた。その紫色の眼は不安からかうるうると不安げに揺れ、すらりと伸びた白い脚とその奥に髪の色と同じーー

 

「!!」

 

 危ない、直感でサッと目をそらす。

 

(見てない! 俺は何も見てませんよ!!)

 

 

「こ、腰が抜けちゃって……」フェー

 

 どうやら怪我をしたということはないようで、俺とぶつかりそうになり驚いて腰が抜けてしまっただけのようだった。

まぁ普通に考えて、前の人が急にこちらに向かって走ってきたらビックリするよね。俺もそうだし。

 

「えっと……立てますか?」

 

 とりあえず両手を差し出す。意図を察したようで彼女も俺の手を握った。それを確認して、こちらに引き寄せる。

 

「ふえっ!?」

 

 思った以上に引き寄せる力が強かったみたいで驚かれた。

 

「あ、足に力入らないなら肩掴んでください」

 

「ごめんね」

 

 申し訳なさそうに謝りながらも『お借りします』と小声で断って肩に手を回してくる。

 

 

「いえ、こちらの不注意ですので気にしないでください」

 

 彼女の歩調に合わせながら、近くのベンチまで誘導する。

その時、肩を回されているが故の柔らかさを感じたけど黙っておく。

 

 

 さて、ともあれベンチに座らせることは出来たわけだがーー

 

(この後どうしよう)

 

 彼女に怪我はないようで、腰が抜けただけと言っていたため、時間が経てばなんとかなるだろう。問題は俺のスマホ。

 どうやら落とした可能性もあるため、もと来た道を戻って探しに行かなければならない。最悪の場合、警察に届け出をださなきゃいけないし。

でも、このまま放置するのもなんだかなぁ……このまま居座っても、『え? この人いつまでいるの?』と思われても嫌だし……

 

「えっと……大丈夫?」

 

 ああでもないこうでもないと考えていたのが表情に出ていたのだろう。自分の悪い癖が出たことで彼女に気をつかわせてしまったが、これは好都合。

 

 

「すみません。実はスマホをどこかに落としてしまったようで、それに気づいて探しに行くところだったんです。自分の不注意とはいえ、こんなことになってしまって……後日お詫びを「知ってたよ」へ?」

 

「これ、キミのスマホだよね?」

 

 彼女が取り出したるは見紛うことなき俺のスマホ。

 

「あ、それ俺の……」

 

 咄嗟のことで言葉が出なかった。

 

「お店に忘れてたよ?」

 

 はい、とスマホを渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言いながら……

 

(『お店』?)

 

 俺が今日寄った店と言えばーー

 

「あ!」

 

「ふえっ!?」ビクッ

 

 彼女に会うのは初めてなはずなのに、どこか既視感というか会ったことがある気がしていた。

 

「もしかしてーー」

 

「あ、分からなかった? いつもご来店ありがとうございます」

 

 ふふっといたずらっぽく笑う彼女。

さっきまでいたファーストフード店の店員さんだ。何度かお会計してもらったこともあったのに気づかなかった。

 

「今日はシフトを見に行っただけなんだけどね。ちょうどキミが帰る時だったんだけど、トレーの隣にスマホ置いて行っちゃったから」

 

「あぁ……」

 

 それに気づいて追いかけて来てくれた、と。

 

「声をかけたんだけど、気づいてなかったかな? 難しい顔してたし」

 

 あちゃあ。それは申し訳ないことをした。

 

「すみません……」

 

「ううん。キミのことは彩ちゃんから聞いてるから」

 

 あぁ。丸山さんも同じバイト先だからね。果たしてどういう話をしているのやら……

 

「大変だよね。彩ちゃんも()()()()()も」

 

 あぁ、その話も知ってーー

 

(ん? 『千聖ちゃん』?)

 

「もしかしたら、キミの力になれるかもしれないよ」

 

(この人は一体……)

 

 どうやらただのファーストフード店の店員さんでは無いようだ。

 

 

 




 原作より某ふえぇ系店員さん登場。一体何原さんなんでしょう。
というか、謎の美少女感はある(?)ものの松なんとかさんの薄皮を被った別人感が……ファンの方、ごめんなさい(;>_<;)

 感想、評価などお待ちしております(お気に入り、評価が減ると怖いビビり)

 皆様も体調に気を付けて三密にならないように気をつけましょう。
 ではまた次回ノシ

ポピパ、ハロハピ編も書いた方がいい?

  • 許す! 書くことを許す!
  • ただでさえ話進まんのだからやめーや!!

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