2人の笑顔は夕日に輝く   作:ハマの珍人

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 とりあえず、Roselia結成編です。


第4話

 最近、紗夜姉さんがイライラしているように見える。

たぶん、バンドのメンバーと上手くいっていないのだろう。

姉さんはかなりストイックだから毎日ギターの練習をしている。日常生活以外はギターに心血を注いでいると言っても過言ではない。

おしゃれしたりショッピングしてみたら? と言ったことがあったけど、

 

「ギターを引く妨げにならなければなんでもいい」

 

 って真顔で言われた。さすがの俺も何も言うことが出来ずあっさり引き下がるしかなかった。

 

(美人なんだからおしゃれにも気を遣えばいいのに)

 

 もっともそんなことを言えば、

 

「おしゃれしてもギターの技術があがるわけじゃあない。だったらその時間をギターの練習に費やした方が有意義」

 

 って返されるのが関の山なんだよね。うん。容易に想像がつくよ。

 

 そんなストイックな姉さんと、仲良しグループ(他意は無い)でバンドを組んでも、地力でそもそも差がある。加えて、片やバンドをしながらも遊んだりなんだり青春を謳歌したい。片や各々の技術向上に費やすべきと主張するミスストイック。

 

 当然衝突は避けられず、その度に姉さんはバンドから脱退していた。

姉さんとバンドを組める人がいるとしたら、それこそ音楽に全てを捧げる覚悟のある人だけなんだろうなぁ。

 

(でも、そんな都合のいい人いるものなのか?)

 

 花の女子高生が青春を謳歌することなく、音楽に全てを捧げる。そんな姉さんみたいな人が――

 

「――私は音楽以外のことに時間を使いたくないの」

 

「ううぇ!?」

 

 まさか、たった今自分が想像したようなことを言う人がいるなんて……思わず変な声が出てしまい、急いで身を隠した。

 

(あれは……今井先輩?)

 

 話し声が聞こえた方を見ると、見知った顔が1人。

日菜ねえと同じクラスの今井リサ先輩。

日菜ねえとは、親密というほどではないけど話すらしい。

 たびたび連行される俺を見て、

 

「いつも大変だね~」

 

 と苦笑している。

見た目はギャルだけど、かなり面倒見がいい人で、ダンス部、テニス部に所属しているらしい。この人も超人なのだろうか?

 

(隣の人は……誰だろう?)

 

 羽丘の制服を着ていることから羽丘の先輩であることは確かなんだけど、少なくとも日菜ねえのクラスにいないことは確かだ。

 

 

 今井先輩たちから距離をとり、バレないように距離をとって尾行するが――

 

(何を話しているか聞こえない……)

 

 2人の話している様子から、それなりに深い関係というのは分かるけど、話の内容が分からない。

せめて、もう1人の先輩の方の素性が分かればいいんだけれど。

 

 俺の願いも虚しく、目的地に到着したのか、今井先輩と別れてスタスタと行ってしまった。

 

(ここは……ライブハウス?)

 

「乙女の話を盗み聞きなんて、お姉さん感心しないなぁ~☆」

 

「!!」ビクッ

 

 気づくと今井先輩が横にいた。それに気づかないほど例の先輩のことを目で追っていたようだ。

 

「あ、今井先輩。ぐ、偶然ですね」アセアセ

 

「ふ~ん。あくまでしらを切るつもりかぁ~」

 

 今井先輩の口が『ω』の形に歪む。

 

(あ、イヤな予感)

 

 具体的には日菜ねえが目を輝かせて突撃してくるような……

 

「ねぇ、夕輝。嘘が顔に出やすいって言われたことな~い?」

 

「……正直にお話します」

 

 どうあがいても今井先輩に勝てる気がしなかった。

 

 

 とりあえず、日菜ねえとは別の姉がギターをやっていること、その姉がバンドのメンバーとの温度差を感じているんじゃないかと思ったこと、それを踏まえてで姉と同じくらい音楽にストイックに取り組む人を探していたこと、そんな矢先に先ほどの会話を聞き後をつけたことを話した。

 

「なるほどねぇ~。それなら確かに友希那に興味を持つのも納得いくねぇ~☆」

 

 代わりに今井先輩からもらったのは、『湊友希那』先輩の情報。彼女は今井先輩の幼なじみらしい。

 

「でも、お名前が分からなかったもので……とりあえず何か1つでも情報が手に入れば、と思いまして……」

 

 冷静に考えたら、やってることはストーカーだ。今井先輩にこのあと警察に突き出されても文句は言えない。

 

「大丈夫大丈夫。警察に突き出したりしないから☆」

 

「え!? 顔に出てました?」

 

「うん。まさしくこの世の終わりって顔してた☆」

 

 今井先輩だから分かるのか、他の人にもあっさり分かってしまうのか……出来れば前者であってほしいかな。

 

「まぁ、とにかくライブハウスに行ってみたら友希那の実力が分かると思うよ?」

 

「ありがとうございます。このご恩はいつか――」

 

「いや、いいって。そこまで気にしなくても」

 

「でも…」

 

「あ~……じゃあ……『リサ先輩』って呼んで。『今井先輩』って言われると、背中がむずがゆくてさ」

 

「掻きましょうか!?」

 

 咄嗟に口から出てしまい、思わず口を塞ぐ。これじゃ本当に警察に突き出される……

 

「じゃあお願いしようかな」

 

「へ!?」

 

 予想外の返答に驚き、リサ先輩を見ると、イタズラが成功したとでもいうようにニヤニヤしていた。

担がれたんだと分かると、顔が熱を帯び始めた。

 

「し、失礼します!」

 

 恥ずかしさから、一礼して脱兎のごとく駆けだした。

 

「またね~☆」

 

 とリサ先輩の声が後ろから追いかけてきた。

 

 

 

 リサ先輩と別れてライブハウスに入った俺は、チケットを購入した。

 

(ライブハウスってこうなってるんだ)

 

 思えば、紗夜姉さんのライブは見たことないから来たのが初めてだった。

 

(湊先輩の出番は……良かった。まだ終わってないみたいだ)

 

 ここまで来て、出番終わってました~だったらなんのために来たか分からなくなっちゃうしね。

 

「―――!!」

 

「ん?」

 

 何やら揉めているような声が聞こえた。出演したバンドが今日の演奏のことで揉めてるのかな?

そう思い目を向けると、そこにいたのは――紗夜姉さんだった。

 

「そうね。私が抜けるから、あなたたちは今まで通り続けて。それがお互いのためになると思うわ。今までありがとう」

 

 懸念したとおり、まさかの脱退を目の前で見せられ――

 

「紗夜といったわね。提案があるの。私とバンドを組んでほしい」

 

 そのあとすぐに湊先輩にスカウトされていた。

それはつまり、湊先輩から見て紗夜姉さんの実力はそれほどのものだったらしい。

 しかし、紗夜姉さんは湊先輩の実力を見ていないわけで、とりあえず湊先輩の出番を一度見てから決めることになった。

 

(話がとんとん拍子に行き過ぎて怖い)

 

 

 湊先輩の出番になると、今まで熱を帯びていた会場はさらにヒートアップしていた。

リサ先輩には常連だということを聞いてはいたけど、ここまでファンがいるということは相当らしい。

 

(近くで見てみたいけど、これじゃあ身動きがとれなくなりそうだ)

 

 事故やらなんやらを考慮して、人ごみから逃れ、後ろの方へ移動する。こちらは前に比べて比較的に空いているようだ。

 

「りんりん! 大丈夫!?」

 

「ん?」

 

 騒がしい声が聞こえ、見ると、中学生くらいの少女と、清楚な格好をした女性(といっても高校生くらいか?)がいた。

 

「無理……おうちかえる……」

 

 女性の方は顔を青くしている。人ごみに酔ったのだろうか?

 

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 何かあってからでは遅いと思い、声をかける。

 

「「えっ!?」」

 

「人ごみに酔ってしまいましたか?」

 

「あ、はい……」

 

「あれ? この人、さっき……」

 

 少女の方は俺を見て驚いているようだけど、俺は面識がない。そんなことより、こっちの女性の方が先だ。

 

「―――」

 

「「「!!!」」」

 

 そんな中、湊先輩の歌声を聞いた途端、焦りも何もかもが消し飛んだ。

 すさまじい声量と裏打ちされた技術によって紡がれる歌声が俺たちの懸念材料を全てを押し流す。

 

「音楽以外のことは今は気にするな」

 

 とでも言うかのように時に穏やかに、時に荒々しい歌の波に俺たちは流された。

 

 歌を聴きおわり、呆然としていた俺たちは、徐々に復帰していった。

 

 その後、2人――宇田川あこさんと白金燐子さんに自分の身分を明かした上で、あたりも暗いし、燐子さんの体調の方も心配なので、2人の自宅まで送っていくことを提案した。

 燐子さんには疑いの目を向けられたが(知らない男から言われたら当然)、あこさんの方は、驚くことに巴の妹だったので信じてもらえた。

 

「あこちゃんが信じるなら」

 

 と、燐子さんにも了承を得て2人を自宅まで送っていった。燐子さんはお家も大きかった。

 

 その後、ライブハウスに行ったことが紗夜姉さんにバレて、お説教をくらった。

 

 

 




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