元人工フラクトライト達と二人の死神物語   作:り け ん

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お口直しの話な番外編です。
長いです。ちょっと設定を羅列する感じで書いたので雑です。
番外編なので、読まなくても支障のない話です。
この小説が万が一無事に完結して、億が一続編を書くことになった際に使うことがあるかもしれない設定というイメージで書きました。


番外編②
リアルワールド・ゲームメイキング


「何ィ!? 尸魂界を元にしたゲームを作る!?」

 

「さっすが黒崎さん、いいリアクションをありがとうございますー」

 

 

詳細は省くが、傍迷惑な方法で浦原商店に呼び出された黒崎一護は、浦原喜助の語ったとある計画に驚きの声を漏らしていた。

 

 

 

 

「てゆーか、何もかも急すぎんだろ。ゲーム作るとか駄菓子屋のやることじゃ…それとも何か? 作るゲームってのは、こうピコピコするちっちぇやつだったりとか…」

 

「違いますよォ。作る予定のゲームジャンルは、VRMMOになんスよ」

 

「はああ!? VRMMOって……超最先端のやつじゃねーか! マジでそれをアンタが作るのか!? この駄菓子屋のどこにそんな機械技術があんだよ!?」

 

 

相変わらず驚きで叫びっぱなしの一護の言葉を、まるで扇でパタパタと弾き返しているかの如く、浦原は平然としたままだ。

 

 

「いやあ、より正確にいえばアタシが一から作る訳じゃないんですよ。開発そのものは『ワイハンス・エンタープライズ』社に完全委託しています。アタシはただ、ゲーム用の設定を提供してるだけなんス」

 

「なんだよ、やっぱ作るのはちゃんとした会社がやんのか……ん、ワイハなんたら…って、確か……」

 

「ええ。黒崎サンもよくご存知の…雪緒・ハンス・フォラルルベルナさんが代表取締役を務める会社ですよ」

 

 

そう言われて、一護はポンと膝を打って思い出す。会社の名前は薄ぼんやりとした記憶でしかなかったが、雪緒の名前さえ出ればすぐに頭の中で結びついたのだ。

 

 

「ゲーム事業を礎として、娯楽業界を中心に急成長を遂げている雪緒サンの会社ですが、今まで開発してきたのは携帯ゲームが中心でした。しかしこの度は据え置き型VRゲームの領域に進出するとのことで、その第一作としてちょうどいいファンタジーな世界観である尸魂界をゲームにしたら面白いんじゃないかということで、アタシに声がかかったんです」

 

「浦原さんに声をかけた…? あの雪緒がか? ホントか?」

 

 

確かに、雪緒と浦原は全く知らぬ仲ではないことは知っている。かつて滅却師との対戦の折に、浦原が協力を頼んだ完現術者(フルブリンガー)の一人であるのだから。しかし、世界の危機という事態に雪緒が浦原に協力するのは分かるが、自分の会社の事業という分野で浦原に頭を下げて協力を依頼するとは、一護には到底思えなかった。

 

 

「違います。そもそも今回の話を立ち上げたのは、アタシでも雪緒社長でもありません。とあるVRゲームに見識のある人が、雪緒さんにコンタクトを取るのと同時に、アタシに声かけをして情報提供を頼んできたんス。いわば、今回のゲーム開発の立役者っスね」

 

「…誰だ?浦原さんや雪緒を知ってて、VRゲームに詳しい…」

 

「ああいえ、黒崎サンはご存知ない方だと思いますよ。アタシの古くからの友人ッスから。ちなみに、れっきとした普通の人間の方ですよ」

 

 

そんな風に嘯く浦原を見て、一護は「ホントかよ」と疑念の感情を抱いた。正直VRゲーム云々を作ると言う話も100%信用できないが、それ以上に信用できないのは「浦原さんに()()()人間の友達がいる」という話だった。

 

 

「ちなみに…黒崎サンはVRゲームのご経験は?」

 

「ねえよ。ゲームっつてもあれはバカみたいにたけーし、それにああいうゲームの世界に入るなんてこと自体、その雪緒にやられてもうコリゴリだぜ」

 

「なるほどー。黒崎サンにも色々とあったんスねえ。でもまあご安心を。何も実際にゲームをやれとは言いません。そもそもまだ企画段階の未完成ですしね」

 

 

そう言うと浦原は、床にまとめて置いてあった書類をちゃぶ台の上に広げ始めた。

 

 

「今回黒崎サンに来ていただいたのは、意見を聞きたいからなんス。開発側からの目線ではなく、ナウいヤングの消費者視点からの意見が欲しいんですよねー。それに加えて、ある程度尸魂界の世界を知っててかつ死神の戦いを経験している方…という事で、黒崎サンにご協力願おうかと♪」

 

「……まあ、そんくらいなら別にいいけどよ」

 

 

要するに、現世の人間としての視点と死神の戦いを知る若者としての意見が欲しいらしい。確かに人間として生まれ、死神代行として様々な戦いに身を投じてきた一護は人選としては相応しい。かくいう浦原本人もある程度現世にも尸魂界にも精通していそうなものだが、「ナウいヤング」なんて表現をしてしまう辺り、現代の若者の感性とは程遠いことがよく分かる。

 

 

「ご協力、感謝します。それじゃあ、現時点までで決まっているゲーム企画のご説明をいたしましょう」

 

 

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「まず大前提としては、これは三つの陣営にそれぞれ分かれて戦う陣取り戦争ゲームみたいなもんでしてね。死神、破面(アランカル)滅却師(クインシー)…プレイヤーはこの三つの種族から一つを選んで自分のキャラを作るんです」

 

「なんだ、死神だけじゃねえのか……って、待て待て! 滅却師は分かるが破面って…!?」

 

「おや、黒崎サンは破面が気になるご様子。それでは、破面の特徴からご説明いたしましょう」

 

 

そう言って浦原が手に取ったのは、ゲーム上の破面の性能を示した部分の紙。

 

 

「黒崎サンもご存知の通り、破面とは死神の力を手にした虚の進化体です。このゲームの破面は藍染サンが崩玉の力で生み出した”成体”の破面をモデルにしてますが、ゲーム中には()()藍染サンも崩玉も登場しません。あくまで普通の虚から自己進化したという設定っす」

 

「破面の一番の目玉といえばやはり刀剣解放(レスレクシオン)ッスよね。自分の持つ斬魄刀を開放することで体が異形化し、死神でいう卍解にも相当する力を得ます」

 

「そうだ! おかしいと思うのはそこだよそこ!」

 

 

浦原の説明を遮って、一護がビシッと指を突きつけて突っ込む。

 

 

「破面の解放って、翼が生えたり腕が増えたりする連中もいんだぞ。VRゲームってキャラそのものになって動かすんだろ? 普通の人間が突然翼や腕が増えたりしてうまく動かせるもんか普通?」

 

「黒崎サンったら無知ですねえ。VRゲームってのは思った以上に万能なんスよ。違和感なくキャラに獣耳や尻尾やら翼を生やして動かせるようにするのなんて朝飯前。とある海外のVRゲームだと、なんと昆虫そのものになって虫の体を動かすゲーム・・・なんてのもあるくらいです。それに比べれば、ちょっと異形化するとはいえ大抵は人の形を保ったままの破面の刀剣解放くらい、ゲームで再現するのは簡単なんすよ、カンタン」

 

「……そうかよ」

 

 

胡散臭い浦原がいうと本当に胡散臭く感じるが、ここで嘘をつく理由もないし実際そうなんだろうと思って納得することにする。それにしても自分がVRゲームに無知な部分があるのは確かとはいえ、浦原さんに言われるとなんだか倍くらいムカつく気がする一護であった。

 

 

「そして、他の種族の比較した場合の破面の特徴といえば、なんと言っても『最初から強い』という点ですね」

 

「最初から?」

 

「ええ。硬質な防御となる鋼皮(イエロ)を始めとして、上級虚の攻撃術である虚閃(セロ) 虚弾(バラ)。探知術の探査回路(ペスキス)に、高速歩法の響転(ソニード)。それに加えて刀剣解放(レスレクシオン)。これら全てをレベル1の段階から使えるんですからね。同じくキャラを作ったばかりの死神や滅却師と戦っても、余程の場合でなければ破面が無双するでしょうね」

 

「…それ、ゲームバランス的に大丈夫なのか?」

 

 

“無双”なんて状況が起こること自体ゲームとしては欠陥なのではないかと心配する一護。だが流石にそこまで浦原はゲームバランスについて無知ではないようだ。

 

 

「その代わり破面は『成長が遅い』というデメリットがあります。レベルを上げても霊圧はさほど上がりませんし、覚えられる技や技能も少ないです。高レベル同士の戦いになるにつれて、他種族に後れを取る場面が増えてくるでしょうね。キャラの成長を楽しみたいタイプの人は向いてないかもしれません」

 

「もちろん、全く成長しない訳じゃありませんけどね。虚閃や響転などの基礎能力をパワーアップしたり、解放状態の姿をより自分好みの形や能力に変えたり…とかね」

 

「なるほどなあ…そんならまあ、釣り合ってる…のか?」

 

 

首を捻る一護。最初が強い代わりにあまり成長しないというのは確かにメリットと対比するデメリットではあるが、それでも初期状態から無双ができるというのは初期環境がクソゲー化しないか…という点で心配である。

 

 

「ま、細かなバランス調整は雪緒サンの会社にお願いするとして…続いて、一番お馴染みの死神についてご説明しましょう」

 

 

破面の資料は横に退けて、次に手を取ったのは死神の資料。

 

 

「死神は破面とは対照的に、『最初は弱いが成長率が高い』という特徴があります。キャラが育っていく楽しみを一番楽しめるのはこの種族でしょうね。そんな死神の一番の見所はなんと言っても鬼道でしょう」

 

「鬼道?」

 

 

怪訝そうな表情をする一護だが、浦原はそれも予定通りと言った顔だ。

 

 

「黒崎サンは『斬魄刀じゃねえのかよ』とでも言いたげですねー。そりゃ、ニワカ死神の黒崎サンは鬼道を使えないからそう思うのも無理はないですけど…よく考えてみてください。破道が一から九十九まで、縛道も一から九十九まで。実際はもう少しありますが…少なく見積もっても百九十八の術を覚えられるんですよ。これだけでも魅力的すぎるくらいッス」

 

「……それ、全部実装すんのか?」

 

「他のファンタジーゲームでも、そんくらいはありますよ」

 

 

平然と言い放つ浦原。よほど他のVRゲームを調べて研究しているのだろうか。

 

 

「百九十八以上の術を覚えられる上に、白打という戦闘技術に瞬歩の高速移動歩法も習得可能。そして…死神の象徴とも言える斬魄刀。ま、実際は破面も持ってはいますが、ご存知の通り性質が異なります」

 

「死神を選ぶと最初に浅打をもらえますが、当然これは始解もできないただの刀です。素材を用いれば強化することはできますが…一番手取り早く斬魄刀戦術で強くなりたいのなら、虚を倒しまくってより強い斬魄刀をドロップして手に入れることですね」

 

「なるほど、そりゃ確かに…………って、待て待て待て!!」

 

 

今の浦原の説明に、とんでもない事実が紛れていたことに気づいた一護は慌ててストップをかける。

 

 

「今アンタ『虚を倒しまくってより強い斬魄刀をドロップして手に入れる』とか言ったか!? なんだ、虚が斬魄刀持ってんのか!?おかしくね!? 斬魄刀って普通浅打一本だけを強くしていくもんじゃねえのか!?」

 

「おやあ? 黒崎サンが普通を語るんスか? 最初の頃、一番普通とはかけ離れた斬魄刀を生み出していたじゃあないですか」

 

「……うっ」

 

 

痛いところを突かれ、一護は思わずビクッとなる。確かに浅打から斬魄刀を作り上げていくとは一護にとっては又聞きに過ぎない。実際の一護は死神史上初めて、浅打を使わず自分の斬魄刀を生み出したイレギュラー中のイレギュラーなのだから。

 

 

「いいんスよこれで。ゲームなんてのは現実じゃ味わえないことを味わうためにあるんですし。無理に現実に合わせようとしたってただのクソゲーにしかなりませんしね」

 

「さて、話を戻しますと…死神の斬魄刀にはそれぞれ一から六までの”レア度”が設定されています。一、二の斬魄刀はただの浅打ですが、三以上のレア度の斬魄刀は始解が可能になります。ちなみに当然、レア度が上がるにつれて斬魄刀の基礎性能も高くなっていきます」

 

「先ほど『素材を用いれば強化することはできる』と言いましたが…それで上がるレア度は四まで。虚との戦いで通常ドロップする斬魄刀もレア度四が上限となります。というのも、実はレア度五の斬魄刀は…特殊な入手条件でしか手に入らず、ゲームの中でそれぞれ一つずつしか存在しない一点モノなんス」

 

 

「特殊な入手条件って、なんだよ?」

 

「そりゃもう、特殊な方法ですよ。それぞれ頭を絞って考えた秘密な条件を満たさないと手に入らないんス」

 

 

答えになっているような、なっていないような答え方をされてしまった一護。

おそらくは一概に言えないということだろう。

 

 

「…これはゲームをやっている一般人には預かり知らぬことでしょうが……レア度五の斬魄刀は全て”実在する斬魄刀”のみを再現したものになるんス」

 

「実在だと……!? ってことはアレか!? ルキアとか恋次の斬魄刀とか…!?」

 

「ええ、可能な限り資料を集めましたから。『袖白雪』も『蛇尾丸』も。アタシの『紅姫』も黒崎サンの『斬月』も…」

 

「俺のもかよっ!?」

 

 

思わず声を上げて立ち上がりかけた一護に対し、浦原は座るように扇でジェスチャーを送った。一応大人しく座る一護。

 

 

「そしてご存知の通り…実在する斬魄刀の中には、”卍解”が可能なものがありますよね? ゲームでも同じです。決められたレア度五の斬魄刀を持って経験を積むことで…卍解の習得ができます。そして卍解を習得することで、レア度五の斬魄刀が初めてレア度六として覚醒する……と、そういう仕組みになっています」

 

「…理解はしたけどよ。なんつーか……他人が斬月を使うのを想像すっとなあ…」

 

「まあまあ、所詮ゲームの真似事っすから。黒崎サンのファンが斬月のおもちゃ振りかざして死神代行ごっこをしてると考えれば、可愛いもんじゃないっスか」

 

「……お、おう」

 

 

よく分からん例えをされて、納得できるようなできないような曖昧な表情で一護は頷いた。まず「自分のファン」なるものを想像するのが格段に難しいことである。

 

 

「さて…最後の種族、滅却師の説明に入りましょう」

 

「滅却師か…ちなみにそれ、石田のヤツからも話を聞いたりしたのか?」

 

「ええ。ですがご本人の口から滅却師のことを語らせると止まりそうにないので、言いたいことを紙にまとめて送っていただきました」

 

「………そうだな」

 

 

滅却師に強い誇りを持つ友人が饒舌に語り続ける様子が自然と脳内に思い浮かび、一護は思わず頷いた。

 

 

「滅却師とは、これもまたご存知の通り、周囲の霊子を用いて霊子兵装と呼ばれる武器を作って戦う人間の一族のことっスね。見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の滅却師は実に様々な武器を用いていましたが、このゲームでは他種族との差別化も兼ねて、遠距離武器に統一しています。基本である弓を初めとして、ボウガンやスリングショット。そして特に銃火器全般も使用できます。遠距離だけとはいえ、この豊富な武器種選択が滅却師の一番の魅力と言っても過言ではないです」

 

「初期の強さや成長率は他種族に比べて平均的ですね。初期は死神より弱い訳ではないが、破面ほど強くもない。成長率は死神より高い訳ではないが、破面より低くはない…という認識で間違いないっス」

 

「また霊子兵装の武器の他、銀筒などの道具を用いた戦術。血装(プルート)を用いた身体強化、高速移動歩法の飛廉脚なんかも滅却師の見所となる……とまあ、こんな感じッスね」

 

 

「…他と比べて、説明が短い気がすんな」

 

「気のせいっスよ。ああそう、ちなみに…」

 

 

浦原はまた、別の紙を手にとった。

 

 

「この三つの種族は、実はそれぞれジャンケンのような三すくみの力関係にあるんス」

 

「三すくみ?」

 

「ええ。滅却師は死神に強く、死神は破面に強く、破面は滅却師に強い…といった感じッス。もちろんこれはあくまで強さの補正でしかなく、絶対的な力関係という訳ではないっスけどね。では、せっかくですのでそれに関連して、種族ごとの”陣営”についてお話ししましょう」

 

 

新たに一枚、二枚、三枚と扇のように紙を広げ出す浦原。

 

 

「まず大前提として、それぞれの種族の陣営にはボスというか…頭領がいます。破面には”バラガン・ルイゼンバーン”。滅却師には”ユーハバッハ”。そして死神には…”山本元柳斎重國”が」

 

「ちょーっと待てえ!」

 

 

今度も何か聞き捨てならない言葉が聞こえ、一護が待ったをかけた。

 

 

「ちょっと待て! ゲームの中だろ!? そんなかに山本の爺さんやユーハバッハのやつが出てくんのか!?」

 

「もちろんNPCですけどね。この三人だけですよ、現実の人物を実際にゲームの中に登場させるのは。まあ黒崎サンからしてみれば、例えNPCでもユーハバッハなんかは二度と見たくない相手かとは思いますが」

 

「いや、俺は別にいいんだけどよ……死んだ爺さんをゲームに登場させるのは…その…」

 

「ええ、ええ。黒崎サンの言いたいことは分かります。山本総隊長殿は多くの方に慕われておいででしたからね。ゲームに理解のない方が概要だけ聞くと、不愉快な思いをする方もいらっしゃるでしょう」

 

 

 

 

 

 

「ですが問題はありません。山本総隊長をゲームに登場させる”許可”は既に取ってありますから♪」

 

「……は?」

 

 

全く予想外の軽薄な言葉を聞き、一護は開いた口も塞がらんとばかりにポカンとした。対して浦原が懐から取り出したのは、一本の巻物。それを広げて一護の前に見せるが、毛筆で書かれた達筆な筆跡は現代っ子な一護には読むのが難しかった。

 

 

「正式な書状のため色々と言葉は飾ってありますが、端的に言えば『適切な表現の元、儂をげえむに登場させることを許可する』ってことッスね」

 

「待て待て待て!あの山本の爺さんがそんな許可を出すのか!? それともナニか!? アンタ、総隊長に許可を迫ったのか!?」

 

 

バンバンと机を叩いて疑問をぶちまける一護。そもそもの話、いざ戦いとなると鬼神のごとき強さを振る舞いを見せるあの強者の口から「げえむ」なんて言葉が出るとは到底一護には思えなかった。しかし実際、平和な時分の山本元柳斎重國は穏やかな好々爺の気性がよく見える人物なのだ。

 

 

「いやあ、これは黒崎サンも知らなくて当然のことですが…平和な時代、山本総隊長が直々に『尸魂界の総力を結集してげえむを一本出そう』なんて言い出したことがありましてね*1。二度くらい」

 

「爺さんが言い出したのかそれ!? しかも二度も!?」

 

「まあ、当時の死神達はゲームに疎いもんですから結局二度とも頓挫はしたんですが…そのタイミングにかこつけて、ゲーム出演の許可を取ってきたんス。何かの役に立つかもしれないと思ったので、当時の隊長格達の分も全部」

 

「…つーことは何か? 浦原さんはそん時からゲームを出すつもりで…?」

 

「いいえ」

 

 

浦原の顔が微かな笑いを帯びる。

 

 

「言ったでしょ。役に立つ”かも知れないと思った”んス」

 

「だから”備えた”」

 

「千の備えで一使えれば上等。可能性のあるものは全て残らず揃えておく。それがアタシのやり方です」

 

 

「………ムチャクチャだな……」

 

 

呆れたような一護の言葉も、浦原は平然として特に気にする様子もなし。

 

 

「という訳で、しっかり許可を取ってる以上文句を言われることはありません。バラガンとユーハバッハに関しては…ま、許可を取る相手もいませんし、取る必要もないでしょう」

 

 

「さて、各陣営について話を戻しますと……最初に種族を選択すると、まずはそれぞれの頭領が統括する組織に属することになります。死神は護廷十三隊に。滅却師は見えざる帝国に。破面は…組織と呼べるかはちょっと微妙ですが、まずはバラガンの部下としてスタートすることになります」

 

「もちろん組織に拘らずに、組織を抜けてフリーの身となり、他種族同士で徒党を組むことも選択肢の一つです。しかし組織に属していれば、フリーの身分より豊富な『任務』を選べるというメリットがあります。任務を達成すればそれに応じた報酬がもらえるので、強くなったり豊かになったりするには、とにかく任務をこなすことが必要不可欠になりますからね」

 

 

「それに加えて…組織の中で昇進していけば、それぞれ良いことがあるんス」

 

「良いこと…?」

 

 

どの組織にも所属したことのない一護にとっては実感し難く、首を捻った。

 

 

「まずは死神の場合、昇進をしていけば最終的に護廷十三隊の隊長にまで上り詰めることができます。その場合に得られる特典は『邸宅』と『部下』ですね」

 

「部下? それもNPCか?」

 

「ええ。他陣営に比べて死神は一番NPCが多いんス。強さは正直あんまりですが、隊長になることで何十人単位での死神の部下を指揮する集団戦闘が可能になります。数は力ともいいますし、指揮官プレイが好きな人は目指してみるのもいいと思いますよ」

 

 

「例によって死神と対照的なのは、破面ですね。破面はバラガンに働きを認められることで十刃(エスパーダ)に任命されることがあります。十刃になった場合の特典は、住みどころとして与えられる『宮』と部下の『従属官(フラシオン)』になりますね」

 

「…対照的っつー割には、同じ風に聞こえるけどな」

 

「もちろん全く同じという訳ではなく、細部が異なります」

 

 

浦原はさらに詳しく、一護のために説明する。

 

 

「死神とは逆に、破面のNPCはその数が少ないです。代わりに少数精鋭とでも言いますか、戦闘力が高い個体が多いです。従属官にできるのは1〜3人までですが、部下にした上でしっかり戦闘経験を積めさせれば、一般プレイヤーにも劣らない実力を誇るでしょう」

 

「住居である『宮』も死神とは異なります。隊長格に与えられる邸宅はみな同じ形の屋敷ですが、十刃の宮はよりプレイヤー好みの装飾が効きます。外観から内装、内部に罠を仕掛けたりすることも自在です。よりオリジナリティを重視する人にオススメしたいですねー」

 

 

「…そういえば、恋次や石田が戦ったっつー十刃は面倒な仕掛けの建物のせいで大変だったとか聞いたな…恋次は『俺が頭働かせて建物ごとぶっ壊してやったぜ!』とか言ってやがったが…」

 

 

そういう友の供述を、一護はあまり信じてはいない。何せ恋次のことは、頭を使った戦いから最も遠い死神だと思っているからだ。傍目から見れば、おそらく一護も同じ穴の狢扱いされるだろうが。

 

 

「さて、滅却師の方ですが……昇進した場合は、星十字騎士団(シュテルンリッター)に所属する権利を得ます。ですが…他の二つと違って、星十字騎士団になったとしても住居や部下が手に入るといったことはありません」

 

「じゃあ、何が手に入るんだよ?」

 

「黒崎サンもご存知…聖文字(シュリフト)ですよ」

 

 

それを聞いて、相変わらずいい思い出のない一護は思わず口をひき結んでしまう。

 

 

「家や人が手に入らない代わりに、昇進した滅却師が手に入るのは”力”です。アルファベットの1文字から連想される能力を与えられ、強くなることができます。力は絶大ですが、その代わり手に入る力の種類はランダムなので、自分が好きな戦闘スタイルとあわない能力が手に入る可能性もありますね」

 

「各陣営の説明はこんな感じですが……そうそう、最後に一つだけ。各陣営の頭領に対して、プレイヤーは”下克上”を挑むことができます」

 

「…下克上?」

 

 

効き慣れない言葉だと、一護は思った。歴史の勉強をしてる時くらいにしか聞かない言葉である。

 

 

「そうッス。”山本元柳斎重國” ”バラガン・ルイゼンバーン” ”ユーハバッハ”。この三人を一騎打ちで倒すことで、代わりに各陣営の頭領となり代わることができるシステムなんですよ」

 

「……めっちゃ思い切った仕様だな、それ。そんなんしていいのか?」

 

「良くないっスね」

 

「良くないのかよっ!」

 

 

渾身のツッコミを受けて、浦原は愉快そうに笑う。

 

 

「ま、ご安心ください。そうホイホイとプレイヤーがボスになってもらっても困るんで、この三人の強さは桁外れなものにしてあります。例えプレイヤーがカンストまでステータスを育てたとしても、まず勝てる見込みはありません。ある意味では、忠実な再現とも言えますね」

 

「ゲーム上のありとあらゆる強さを極め、その人自身が持つ戦いの反射神経を存分に活かした上で、何千何万分の一という乱数をすり抜けて、ようやく勝てるか勝てないかというラインに辿り着ける……そんな感じっスよ。そうそう勝てる相手じゃないので、そこはご安心ください」

 

「いや、俺は別にゲームやる気はねえから、安心も心配もねえんだけどよ…」

 

 

そんな感想をボソリと呟くと、耳聡く聞きつけた浦原は深い笑みを漏らす。

 

 

「またまたあ…せっかく作るんだから、そんな悲しいこと言わないでくださいよぉ。黒崎サンのような死神の方々がこのゲームをプレイする場合は、とっておきの()()をご用意する予定なんスから♪」

 

「…?」

 

 

一般に発売するであろうゲームでありながら、死神限定の特典とは…ちょっと気になる謎ではあるが、浦原はそれ以上詳しく語るつもりはないようだ。またはぐらかす気満々の浦原を見て思わずため息がでかけるが、ふとまた違うことに気がついた。

 

 

「ちょっと待て。俺は散々アンタの話聞くだけ聞いてたけどよ……なんだ、俺の意見とやらは聞かなくていいのかよ?」

 

「ああいえいえ、危うく忘れるとこでした。もちろんありますよ。ほら、これ」

 

 

そう言って浦原が取り出した最後の紙は非常にシンプルで、いくつかの単語が羅列して書かれているだけのものであった。

 

 

「いやあ、黒崎サンにはゲームタイトルについての意見を聞こうと思いまして」

 

「……まさか俺、それだけのために呼ばれたのか?」

 

「それだけなんて、そんなこと言わないでくださいよ〜。一番大事と言っても過言じゃない要素じゃないっスか〜」

 

 

ヒラヒラと扇子を操る浦原に、一護は懐疑的な目を向ける。

 

 

「そんな大事な要素っつーなら、逆に俺なんかに決めさせていいのかよ?」

 

「そりゃあもちろん、即決じゃあないっスよ。あくまで消費者側の一目線の意見として聞くまでっス。黒崎サンの意見通りになるかも知れないし、ならないかも知れないっス」

 

「結局、俺を呼んだ意味はあんまりないってことじゃねーか。…いいよ、選ぶだけ選んでやるから、見せてみろよ」

 

「さっすが黒崎サン♪ それでは、よろしくお願いしますよ〜」

 

 

こうして、浦原が示した紙の単語に一護は目を通し、吟味していく。

そして、最終的に選んだのは……

 

 

 

*1
『BLEACH OFFICIAL BOOTLEG カラブリ+』より

死神達の世界を元にしたVRMMOゲームが発売!? タイトルに入れるのにふさわしそうな言葉は?

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