神星物語 -Masking Load who kill?- 作:陽下 ノクト
変わったことはあまり起きない平穏な毎日。充実はしているし、これといった不服もない。それが悪いことなのかどうかは分からないが、皆が幸せに暮らせるのならばどうだっていい。
今日もそう。何か特別なことがおきることもなく一日が終わろうとしていた。
床に入り、ゆっくりと目を閉じようとした。
そのときだった。
轟音。俺は跳ね起きた。同時に低く響く声のような音。何が起きた?
始まった地響きのなか外套に身を包み、外に飛び出る。辺りにはついさっきまで建物を形成していたであろう沢山の瓦礫。その元凶が何なのかは考えるまでもなかった。目の前にそれがいたからだ。
空を覆わんとするほどの大きさの生き物。大蛇のような形の鱗を持った太い尾。人の骨格のようで巨大な四肢。それの体ほどあるの大きさの翼。鋭い手足の爪。
いまだかつて見たこともない姿をした化け物は島を火の海にし、なにもかもを破壊。
変化する能力など、まるで意味のない俺は立ちすくむことしか出来なかった。
壊れていく、安寧が。日常が。
炎のなか、駆けていく二人の影を見た。ああ、シリウスたちか。お前たちだけでも逃げてくれ。俺たちの宝物、グランディア。
すっかり火に囲まれ、退路をたたれた。化け物も満足したのか、空にあいた深遠へと入っていき、消えた。
平穏な日常から一転。騒がしく、刺激的な終末。思わず自笑してしまう。
後は自らの死を待つだけ。なんとあっけないことだろうか。地に寝そべり、俺は瞳をもう一度ゆっくり閉じ、安らかな終わりを迎え入れようとした。
『キミはここで終わるつもりかい?』
……誰だ?俺は再び目を開ける。周囲の炎は静まり返り、まるで絵画のようだ。肝心の声の主は見つからない。
『いくら探してもムダ、ボクはまだ君には見えないよ。それより本題。キミはこのままここで永遠に眠るかい?それとも生き延びたい?』
いきなりなんなんだ。思考が追い付かない。
『じっくり考えてもいいよ。ボクはいつまでもキミを待つ。時間も忘れるくらいでもね。』
心のなかを見られているようで気持ち悪い。
『ボクはキミの能力を気に入ったんだ。キミを仲間にするためなら、なんだってする。』
「……例えば。」
『おっ、ようやっと口を開いてくれたね。』
「いいから話せ。」
『はいはい。例えば、ねぇ。ええっと、じゃあ、キミが見届けた二人について話してもいいよ。』
「あいつらはきっと逃げられたはずだ、聞くまでもない。」
『ちょっと、話を終わらせないでよ。まあ、逃げられたことには逃げられたさ。だけど結界の外に出たせいで良くないことが起きる。キミなら……あっとこの先はキミの回答次第だね。』
「なんだ。」
『本題を忘れたかい?キミはここで死にたいのか、それとも生きたいのか。話の先を聞いたところで、キミが死んでちゃ意味がないだろ?』
「俺は何をすればいい。」
『はいかいいえで答えてくれればいいよ。』
「そんなもの、決まっている。」
『ん?』
「お前について行ってやる。ただし、気にくわなかったら俺はすぐに自ら命を絶つ。」
『おぉ~、ありがとう。じゃあ自己紹介しなくちゃね。』
その言葉のあと、一人の青年が目の前に現れた。
「ボクの名はオーディン。キミたちの島の外じゃ神サマって呼ばれてるよ。キミは?」
「マスキローフカ。マスキロでいい。」
「じゃあマスキロクン、ここで話すのも何だからボクの宮殿に行こうか。」
俺は差し出された手を渋々ながらもとった。
悪神オーディン。推し神だった場合はごめんなさい。
補足ですが、この物語に出てきた外套。彼らの民族衣装でポンチョみたいな感じを想像していただけるとわかりやすいかと思います。皆着てます。シリウスもライラもマスキロも、もちろんばばさまも。裾が長いから事故の心配はありません…………ありません(大事なことなので2回言いました)。