勇者が剣を抜き、最後の戦いが始まる・・・・・
と思ったが、やっぱりこれで最後とはいかないわけで、横やりが入るわけで。
『主君!無事かぁー!』
この部屋に轟く声、聞いたことはない。しかし、声が聞こえるが姿は見えない。
その声の主は、まだこの部屋には来られていないようだ。それはそうだ。
この部屋は、魔王が使うような豪華な椅子や大きな家具のような物はない。どちらかというと、会議などで使う部屋の様だ。言ってしまえば、地味。
だからなのか、俺でも三回ぐらい間違えたもん。別に言い訳ではない。
『ここかー!』
『ここなのかー!』
『・・・・もういい壁、壊すぅ!』
バーン。ドドドーン。
俺のすぐ横の壁が壊れる。危な!
「・・・見つけた!主君!」
歓喜の声をあげ、俺に近寄ってくる女性。
赤い目に赤い髪、その赤は、紅葉のような赤だ。普通の人がこんなカラーリングとカラコンでやってもこんなには似合わないだろう。そして、鎧も赤なので全身、真っ赤。
「・・シーカ=スルト・・・殿」
黒騎士が、聞いてもいないのにタイミング良く、フルネームで紹介してくれる。ナイス。
へぇ~、この人が・・・でも俺、嫌われているんじゃなかった?
「主君!侵略者が主君の命を狙っていると副王から聞いて、守りに参りました!」
俺の前にひざまずいた。おお~、中世の貴族みたいな気分だ。
あ、俺、今王族だ。
「おお、おう・・・」
ちょっと、戸惑ってしまう。どんな風に接すればいいか、わからない。
嫌われているのに、どど、どうする。
「シーカ殿。ディールは今、記憶喪失になっているんですよ!」
ここでその設定出してくるのは、ナイスだ。
「ム?・・・貴様!主君に向かって呼び捨てするとは!その精神叩き直してやる!」
シーカは、剣を抜き黒騎士に向けた。そこか!さては、話聞かないタイプだな、コイツみたいに・・・。
俺は、カテーナに視線を向けた。「?・・・ぽっ///」と恥じらっている。・・・イラッ。
「ディール・・もうめんどくさいから・・・な」
黒騎士が、耳打ちをしてきた。え、そんなに話聞かない人なの!もう、あきらめちゃうの!
「だから、カクカクしてシカジカして、これでいこう!」
黒騎士は、何故か変なことを指示してきやがった。コイツ、俺を使って仕返ししようとしているな。多分。
ま、やるけどね。
「・・・やめろ!シーちゃん!」
指示に従って、言ってみる。コイツのことそんな風に読んでいるのか・・・俺。
「・・・・」
「・・・・」
えっ、この間、何?
「ッ・・・しっし・・しゅくん!みっみみなのまえでは、呼ばないややくそくだだったはじゅっ ///」
ん?何言っているのかわからない。恥ずかしがっているのか?そうだよな。
「くっくく(笑)」
黒騎士が笑っている。今は頭がくっついているのでわかる・・・もうコメントが見つかりません・・・この状況。
「アハハハハ!シーカ=スルト!何で顔赤いのかな~?あっ、そうですよね!いつもディールと二人っきりの時の呼び名で呼ばれてからだよな~」
嫌味を言ってやがる黒騎士の奴、イジメる気だよな・・・。
「なななぜ!知っている貴様!」
「『なぜ?』だって?え~このことみんな知っていますよ~。あ、あと、ディールに撫でってもらうのも好きなんですよね~『褒美に撫でてください』とか言ってさー」
「・・・ひあぁぁぁ////」
顔を手で覆い、縮こまる。
もう、流石に可愛そうだろうと思い、黒騎士を止めようとすると黒騎士は、「もう満足しているからやらないぜ」と言ってきた。・・・・。
ところで、何か忘れている・・・気がする。なんだっけ?ん~・・・・あ!勇者!
普通に切りかかってきてもおかしくないのに・・・。
どこいるんだろ。探してみると近くにだれか倒れていた。
だれ・・・・。
・・・・・って勇者じゃん!なんで!
よく見てみると、頭の方に傷があった。死んで・・・・あ!無い。息しているし脈もある。
どうやら、あの時の瓦礫が当たったらしい。まさか、勇者との最終決戦これで終わり?
・・・ナイナイ、こんな終わり方聞いたことナイ。
・・・・。
「おぅおい!起きろぉぉお!此処で終わっちゃだめだー!俺の事殺しにいたんじゃないのかー」
強く揺さぶる。これ以上(話)長びいたら俺、精神的にヤバイ。ヤバイからぁー!
「何やっているんだ?ディールよぉ」
黒騎士が、ニコニコしがら近寄ってきた。さっきの一件で機嫌が良いようだ。
「ん?勇者って野郎何で、気絶してんだ?」
「さっきの壁の瓦礫が頭に・・・・」
「もろいなー、人間ー。ツンツン」
黒騎士は、気絶している勇者の頬っぺたをつつく。
「右大臣とかに、売り飛ばすとかどうよ!『オスがいるのにメスがいない!』とか言っていたし」
それ冗談でもキツイ。ダメ。
そういえば、魔王に倒された勇者とかどうなるんだろ?殺されるだろうけど、最近の魔王と勇者の関係では、殺さない・・・気がする。ほとんど知らないけど。
「どうする?」
黒騎士が、聞いてきた。俺は、早く元の世界に戻りたいだけであって『どうする』って言われても・・・あっそうだ!護衛に来たっていう奴に聞けば何かわかるかも。
「俺だけの意見じゃ足りない。シーちゃ・・・シーカは、どうしたらいいと思う・・・」
俺が聞こうと思って、シーカの方を見る。うずくまっていた・・・そんなに恥ずかしかったのか・・。その横には、カテーナもちゃんといた。会話をしているようだ。
「シーカお姉ちゃん大丈夫?」
「う~・・・ばれてしまった・・・皆にからかわれる~」
「大丈夫だよ。みんなニコニコしながらこのこと、言ってたし」
「そそれって・・・笑っていたって事だよね・・・うううぅ」
シーカは、泣き始めた。カテーナお前・・・慰めたいのか、トドメ刺したいのかどっちかにしろよ・・・。
「あいつら、親戚だから仲良いだよ」
「へ~」
「で、どうするんだ、ソレ」
勇者を指さしている、ホントどうしましょう・・・。やっぱ起きて貰うしかないんだよな~。
「あ~もう、起きて勇者!」
俺は、少しヤケになりながらも、勇者を起こそうとするのだが、なかなか起きない。
次の話で勇者起きてくれるのだろうか・・・。