『家族は他人か?』その疑問を持ったのが、中学の頃だったか。親に反抗してケンカになった時に、ふと思ったのが始まりだった。それからというもの時折思い出しては、考えていたりした。
親とケンカしたときは、『他人』で、普段では『家族』と。答えは、考えるたびにその状況の違いで二通りに分かれていた。ただ自分の気持ちが、考えが正しいと思いたかっただけで答えが変わるのだ。でも最後には、わかった。家族は『他人』だ。
それでないと、『赤の他人』と言うものは、説明ができない。それは、自分の中での説明の問題なので人には話せなかったが、そうなのだと完結させていた。
でも、またそれも違うのだと思うようになってきた。
『他人』とは、自分が考えないこと思いもしないことをする人なのだと、気付いたからだ。気付いたのは、またも、ふとしたことがきっかけだった。
『他人に自分を理解してもらいたい』『他人を自分が理解したい』と思ったことだ。大それたことだと思うかもしれないが、これは人と人との係わりの中で最も大切なことだ。
だから、考え、答えを出した。
人の気持ちを理解する、自分の気持ちを理解してもらう。それを達成?・・・言い方が分からないが、とにかくこれらをするため、してもらうためには、やはり自分と相手が歩みより、両者が相手の意見や思いを受け取ることが、大切なのだ、と。
だから、多少の暴言を言われ、暴力を振るわれようとこの姿勢を崩すわけには、いかない。そうしていれば、自ずと相手も聞いてくれるはず。そう思っている。
そうすれば、『他人』もいつか、何か特別なものになるかもしれない・・・。
「まず、俺何も理解してないから説明して」
状況が分からなかったので、黒騎士に聞いてみる。前回、一人だけ置いてけぼりにされたから、理解してからじゃないと話を進めてほしくない。あ、置いてけぼりで思い出したんだけど、昔、小学校の遠足で出発する前にトイレに行ったら、おいて行かれたことあるんだよね。そのあと、俺、家帰ったんだよね。で、次の日、『なんで、昨日休んだの?』って聞かれたよ。あー、トラウマ。あと、関係無いよね。
「ああ、わかった。どこから話すかな」
「ん~、じゃあ、種族について」
「ああ、種族には大きく分けて、『人間』、『魔族《ディアボロス》』、『海類族《マーレ》』、『天使族《アンゲルス》』の4つが居る」
「むっぐ」
黒騎士は、俺の質問に答えつつ、プロディティオに猿轡をしている。キモイから無視で。
「『人間』だけ言い方が違うのは、何?」
「『同じ種族同士で、殺し合いしているから、《族》という表現は、違うのではないか』と話し合いがされたらしい。詳しくは知らね。うん、よしできた」
「へぇ、その種族同士の関係は?」
「えーと、今は、マーレ族と魔族、俺らが同盟を結んで友好関係にある。魔族には海で暮らす奴が多いから、自然に良くなっている。お前の許嫁の姫様を見れば溝は、無いと考えて良い」
「天使族は?」
「天使は、ん~。同盟は結んではいるけど、あまり仲良くない。今、天使の中で内乱が起きていて、反王国軍が魔族狩りを始めようとしているからな。悪くなっていているって言ったほうが良いか。お前の叔父さんや親父の子供の頃には、仲が良かったとは聞いたけど」
あのおじさんの子供の頃か・・・想像できない。
「多分、この人間は、天使の反王国軍に差し向けられたと考えていいな」
「それじゃあ、人間と天使は仲が良いのか?」
「まあ、天使は人間と深く交流があるって聞いたことがあるから、そうじゃないか?あんまり、見た目変わらないし」
黒騎士は、勇者を横目にそう言う。
「人間と魔族は?」
「あんまりだな。特にこいつ等と係わっても、得無いし。昔は、技術がすごかったと聞いたことあるけど、何故か、一夜にして消えたそうだ。たしか、爆発したとか言っていたな」
黒騎士にも、『人間』のことはよくわからないらしい。話を聞く限り、『人間』はそんなに重要でなく、不安定な立場にあるらしい。しかし、これだけの情報では、正直よくわからない。なので、当の本人に、聞くとしよう。
「あの~、勇者さん?聞きたいことがあるのですが」
どう声をかけていいのか分らなかったので、思わず敬語になる。しかし勇者は、冷たい目で見てくるだけだった。俺にとっては、ご褒美でも何でもないよ!というか、話聞いてよ!
「無視しないでほしいんだけど・・・ただ話が聞きたいだけだからさ・・・頼む」
俺は、頭を下げる。すると、黒騎士と勇者は、困惑した表情を浮かべた(いや、片方の表情はわからないんだけどね)。
「なっ、何しているんだ、お前は!侵略者に対して、頭を下げて、頼みごとをする王子が、どこに、いるってんだ?あぁ!」
黒騎士は、俺の胸元をつかみ、一喝する。表情が見えないにもかかわらず、周りの雰囲気を一瞬にして変えるほどの怒りが見える。
「けど、そうしないと・・・何もわからないままだ」
俺の言葉に、黒騎士は反論することはなかった。