先ほどの、俺の言葉から黒騎士はだまりこんでいた。話は聞いているようだが、自分からは話をしようとしなくなった。
もしかして俺のせいなのか?と、気になったが、先ほどの嫌がらせを思い出し、気にかけるのをやめた。
そして、俺は勇者に話しかけている。答えてはくれないが、こちらも話は聞いているようだった。俺だけしか喋っていないってことかよ!
「ああ、もうなんで、こんなに無視するのかなー。俺何もしてないのに・・・」
その言葉に、勇者は激怒した。
殺意をむき出しにして俺をにらみ、「殺す」と叫んでいる。
「え、俺なんかしたの?」
少し、ビビった。冷たい目で見られたことはあるけれども、こんなにもブちぎれた目で見られたことはない。ちょっと、人間関係というのが得意でなかったせいか、あまり人と係わってなかったので、こんな感情を向けられるのが初めてだった。すこし、戸惑っていると、黒騎士が怒りをあらわにしている勇者に向かって言った。
「なぜそんなにも威嚇してくるのかわからんが、お前がコイツを恨む理由はない」
黒騎士の淡々とした言葉に勇者が叫んだ。
「そいつが、私の父を殺したんだ!!!」
・・・一瞬、時が止まったかのような、衝撃だった。
俺が人を殺した?俺に、そんな記憶はない。『ディール記憶』の中にも無い。もしかしたら、憶えていないのかも、と焦る。
「いや、そんなことありえない」
黒騎士からの発せられた言葉に、また驚く。もう何がなんだかわからない。
「コイツはな、人間の住む土地に入ったことなんてないんだよ。ましてや人間を殺すことなんて、絶対にありえない」
「父は魔王城の近くで殺されたんだ!首がもぎ取られて殺されていたんだ!」
「何で、魔王城の近くにいたんだ?しかも『殺されていた』ってことは、殺されるところは見ていないってことか?」
「見ていない。けど、父が並の魔族に殺されるわけない」
「だから『魔王に殺された』と言っているのか?だったらこいつは殺してないだろうな、弱いし・・・ってどうしたディール。膝抱えて?」
俺は、膝を抱えて座わっていた。もう、何がなんだかわからないし、話聞いてもらえないし、あれ俺って、魔王になるんじゃなかったっけ?魔王ってもっと威厳があって強い人の事じゃなかったけ?ほら、織田信長とか。
「まあいいや。おい、人間、お前の言っていることは、嘘と言えることだな」
「どういう意味だ。私の父が魔王に殺されたというのが、ウソだと言いたいのか?それなら、なぜ父は、二年も帰ってこない?父の死に立ち会った者は口々に『殺された』言っているのだぞ!」
「知らねーよ。こちとら、魔王令で生物殺傷禁止令が敷かれているんだ。何があろうと、魔族が国内で人間を殺すことはありえない。人間殺して、死刑だなんて誰でも嫌だし・・・ってどうした、床に寝そべって」
俺は、膝を抱えたまま寝そべり、一人、ネガティブなキモチになっている。
全く、話に割り込めない。そのことでこんなにも落ち込むかと思うと、少しイラつく。
「おい、人間。コイツがお前の父親を、殺せる奴だと言えるのか?」
「・・・ふん。父がこんなやつに殺されてたまるか!」
勇者が、俺をディスり、そのままそっぽ向いた。勇者の気持ちを落ち着かせるためとはいえ、俺をこんな気持ちにさせるのは、いかがなものか。まあ、他に手が無かったから別にいいけども。
「コイツが殺してないにしても、私の父は、魔族に殺された。それは、変わりないことだ」
それでもなお、勇者は自分の父が魔族に殺されたと言い、俺達に対する態度は変わらなかった。
「だから~そんなわけないって。魔族内では、人間を襲ったりする奴なんていないての!だいたいな、なぜ、魔族の国に人間がいる?」
「・・・」
勇者は黙った。何をしようとしていたのか答えない。
「この国に、人間がいたら珍しいさで、色々話題になっていると思うんだが。それがないのがな」
黒騎士のさりげない圧力に、勇者は黙る。正直、見ているコッチもなんだか怖い。気の毒なので、止めてあげようと思ったその時、勇者は口を開いた。
「・・・わ、わからない」
勇者はうつむき、震える声でそう言った。
「・・・殺されたトコを見たやつから、聞いていないのか?」
「父が死んだという事だけだ」
「・・・そうか」
黒騎士は、少しこわばった勇者の回答に、何故か黙る。自分自身が求めていない反応だったのだ。人間が魔界(そういう名前かは、知らないけど、今、命名)に居るという事は、何かよからぬことを考えているのだと、高を括っていたのだろう。
「いや、あれだ。俺が言いたかったことは、この国に人間はいない。少し、紛れ込んだりはしていると思うが、俺の知っている限りではいない」
黒騎士はそう言った。しかし、俺には腑に落ちないことがあった。何かは思い出せない。あ~、ここまで出かかって居るのに、もう少し、もう少し、あ。
「あ、右大臣、人間飼っているとか言ってなかった?」
俺の言葉に、二人は唖然とした。