IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~   作:風森斗真

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決闘~5.vs例外第一号:決着~

「化け物、ね……」

 

刀奈はアリーナに響いた勇人の声に、そっとため息をついた。

確かに、勇人の異能は化け物と言わざるを得ないだろうが、彼がそう発言した理由は、もう一つある。

「女性権利団体」。

元々は女性の人権について言及する団体だったが、ISが搭乗して以降、女尊男卑の風潮を広めた原因となっている組織であり、過激な活動にすら手を染めることもいとわない、危険な集団。

 

彼女たちから見れば、確かに、月影勇人という男性は化け物だ。

一夏はまだ、世界最強の女性(織斑千冬)の弟だから、という理由で納得できているのだが、勇人はこの世界に生まれた異分子(イレギュラー)だ。

異分子は、化け物は、排除しなければならない。自分たちの身を守るために。

人間ならば、誰もが抱く思考であり、当然、行きつく答えだ。

 

「ある意味、宣戦布告ね、これ……」

 

刀奈はそっとため息をつきつつ、勇人の意図を読み取った。

あえて、自分を化け物と、討伐の対象だと宣言し、向かってくるものに対して抵抗することを表明している。

だが、と刀奈は同時に思う。

はたして、彼は誰と、何と戦うつもりで宣戦布告をしたのだろうか。

そこだけは、刀奈でもわかることはなかった。

 

------------------

 

一方、アリーナで勇人と対峙している一夏は、内心、かなりびくついていた。

自分自身を化け物と呼び、それを証明するかのような威圧感と、それらを裏付けするような、粗いが的確な戦い方。

正直に言って、勝てる見込みが見当たらなかった。

だが、退くわけにはいかないし、退くつもりもない。

 

――千冬姉ぇの名前を守るって決めたんだ……こんなところで逃げることなんてできるか!!

 

ようやく、守るための力を手にすることが出来た。

その事実が、一夏の闘志をより燃え上がらせていた。

 

「だったら示してやるよ!俺の覚悟を!!《零落白夜》!!」

 

ブースターにエネルギーを集中させながら、一夏は青白い光を放つ雪片弐型を構えた。

その構えを見た勇人は、次に一夏が何を仕掛けてくるのか、簡単に予測できた。

だが、勇人はまったくぶれなかった。

これから出そうとしている速度が、勇人の本気(・・・・・)と比べれば、まだまだ遅い方であることに加えて、一夏はフェイントを仕掛けるような技巧を持ち合わせていないし、そもそも一夏自身が対応しきれないと踏んでいたがゆえだ。

それは、ある意味で余裕とも、油断ともとられるものだ。

だが、勇人は甘くはない。

 

「零落白夜、たしかブリュンヒルデが使っていた単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)だったな……なるほど、確かにお前はあの人の弟だよ」

 

だからこそ。

 

そうつぶやいた瞬間、振りかざした一夏の刃が、勇人に向かって振り下ろされた。

だが、その刃が勇人を捉える前に、勇人の姿が消えた。

突然、目の前から敵がいなくなったことに、一夏は驚愕し、慌てて周囲を見回したが、勇人の姿は見当たらなかった。

SEの残量を考えてか、零落白夜を解除し、一夏は周囲を警戒し始めた。

 

「だが、お前はまだまだ、戦乙女の泣き所のままだ」

「え?」

 

突然、勇人の声が聞こえたかと思うと、一夏は様々な個所から攻撃を受けた。

胸や胴体はもちろん、腕、足、肩、背中に衝撃が走った。

絶対防御があるため、実際に斬られたということはないが、まるで電流でも走ったかのような痛みは感じられた。

 

「ぐぅ……い、いったい、何が?」

「考える暇があるなら感じ取れ、余計な思考は人間本来の闘争本能をかき乱す」

「がっ?!」

「ほらほら、どうした?きりきり舞えよ?」

 

跳躍の名前がついている某少年漫画雑誌にかつて連載されていた、明治時代を舞台にした剣客浪漫譚の主人公のような速度で動いているため、一夏は対応しきれていなかった。

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

頭に血が上った、ということもあるのだろうが、まもなく白式のSEが底をついてしまう。その前に、せめて一太刀浴びせたい、という思いがあったのだろう。

一夏は「零落白夜」を発動させ、身構えた。

カウンターを狙っている。

それがわからない勇人ではない。

 

「…………ほぉ?まだやるか」

「当たり前だ!せめて一矢報いてやる!!」

 

その言葉に偽りはなく、何より本気であることは、目を見ればわかった。

ゆえに、勇人も。

 

「ならば、お前のその本気に敬意を表し、俺も全()力で相手しよう」

 

手にした二振りの刀を鞘に納め、居合の構えを取った。

 

「……行くぞ」

 

そう宣言した瞬間、勇人の姿が消えた。

一夏は、使い慣れていないハイパーセンサ―だけでなく、その耳で、肌で、どこから攻撃が来るのか身構えた。

ぞくり、と背中に冷たいものが走った瞬間、一夏は振り向きながら雪片弐型を振るった。

その瞬間、アリーナ中にけたたましいブザーの音が鳴り響いた。

 

「……ほう?ちょっとはやるな」

「く、そっ!!取り切れなかった……」

 

ブザー音の中、勇人が感心したようにつぶやくと、一夏は悔しそうに顔をゆがめた。

結果は、SEが同時にゼロとなったために、引き分け(ドロー)

内容的には常時攻められていた一夏の敗北になるのだろう。

だが、それでも高速移動中の自分に一太刀浴びせたことに素直に感心した勇人は。

 

「ふっ……今後が楽しみだな、イチ(・・)

 

アリーナを去りながら、一夏に笑みを向け、そう呟いていた。

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