IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~   作:風森斗真

16 / 36
一応、これにて第一章は終了
この時点でのロイスをあとがきに公開しますが、本作はあくまでもISを主軸にした話ですし、ロイスの人数制限はキャラクターデータ管理上の問題という部分があると思うのでDX本来のルールである、ロイスの取得制限、取得上限は無視しています
タイタス化についても、主要メンバー以外のロイスのみ、と考えています
ご了承ください


クラス代表、決定

代表決定戦の翌日。一夏は凍り付いていた。

その理由は。

 

「というわけで、一組のクラス代表は織斑くんに決定です!あ、一続きで縁起がいいですね」

 

という、真耶からの爆弾発言だった。

クラス代表決定戦の成績は、自分が全負けの最下位であったはず。

それなのになぜ自分が代表なのか。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

 

悲鳴に近い一夏の声が教室に響いた。

自分は代表戦で黒星二つ、つまりは全敗だったのだ。それなのになぜ、自分がクラス代表になっているのか。

わけがわからず、困惑しているようだ。

 

「わたくしは辞退しましたので」

「同じく」

「はぁっ??!!」

 

当初の話では、この試合に勝利したものがクラス代表になることで話が通っていたはずなのだが、いきなりそれが反故にされてしまったことに、一夏は目を丸くした。

 

「ちょ、ど、どういうことだよ?!」

「生徒会からスカウトされた。忙しくなるから辞退した。以上」

「今回の件で、わたくし、自分がまだまだ未熟であることを悟りました。このような体たらくでは、クラス代表になったとしても皆さんの足を引っ張るだけ。そう思い、一夏さん(・・・・)のサポートに回ることにしましたの」

 

いつの間にか、呼び方が「貴方」から「一夏さん」になっていることを気にすることなく、一夏は反論しようとした。

が、それを許すほど、甘くない人間がこの場に一人。

 

「あきらめろ、織斑。それとも、せっかく寄せられている期待を裏切るのか?」

「そ、それは……け、けど、だったら勇人が生徒会を辞退すれば」

「生徒会の人材は万年不足気味でな、こちらとしてもなんとかしてやりたいものがあったから、こればかりはゆずれんぞ」

「……ぐっ……あぁ、もうわかったよ!」

 

千冬に諭される形で、一夏はクラス代表になることを了承した。

不承不承、というわけではないらしいことは、誰の目で見てもわかる。

結局、満場一致で一夏が一組のクラス代表になることが決定し、その場は幕となった。

 

------------

 

放課後になると、勇人を除く一組の全員が食堂に集まっていた。

曰く、一夏のクラス代表就任のお祝いパーティーらしい。

もっとも、勇人はそんなものに興味はないし、人が多く集まるところが好きではないため、いつものように簪が詰めている整備室にいた。

 

「行かなくて、よかったの?」

「パーティーなんぞよか、こっちのほうがずっと大事だ」

 

やや不機嫌になりながら、勇人は簪の質問に答えた。

何事にも優先順位があるように、勇人には優先すべき人物というものがあった。

その筆頭が更識姉妹と布仏姉妹だ。

正直に言って、この四人さえ無事であれば、たとえクラスメイト全員が生死の境をさまよおうと何も思わない。

それだけ、勇人にとって彼女たち以外の存在はどうでもいい存在ということだ。

 

「そ、そっか……こっちのほうが大事、なんだ」

「嫌だったら、出ていくが?」

「そ、そそそそんなことないよ!!むしろいてくれた方がいいよ!」

 

顔を若干赤くしながら、慌てた様子で勇人を引き留めた。

簪にとっても、勇人との時間は大事なものだった。

そして、それはおそらく勇人も同じこと。

 

「なら、ここにいてもいいよな?」

「うん!」

 

勇人のその問いかけに、満面の笑みで頷いた簪だったが、そぐにその表情は引き締まり、視線はディスプレイのほうへと向いた。

それを横目に見ていた勇人も、ディスプレイへ視線と意識を戻した。

しばらくは、カタカタとキーボードをたたく音が響いていたが、しばらくするとその音も徐々に小さくなっていった。

 

「……やっぱりちょっと難しい……」

「防犯カメラの顔認証システムを応用してもダメ、か……」

「そもそも、複数人の顔から個人を特定するためのものでしょ?なんでそれにしたの??」

「なんとなく」

「……なんとなく、で選んで成功してたらわたしだって苦労しないよ……」

 

それこそ、なんとなく、で選んだプログラムを応用してまったく別のものを完成させることができるのは、天才と呼ばれるものたちだけだろう。

それこそ、更識の現当主や"天才な天災(ジーニアス・ディザスター)"くらいなものだろう。

 

「……なぁ、やっぱりRFに頼んでプログラムのサンプルだけでも借りてくるか?」

「……けど……」

「……俺に迷惑かける、とか考えてるなら、それは違うぞ。俺が勝手にやってることだからな」

 

頭の後ろで手を組み、背もたれに寄りかかりながら、勇人は反論しようとする簪に返した。

簪は姉である刀奈が自身の専用機《霧纏の淑女(ミステリアス・レディ)》を、ロシアの第三世代ISのデータをもとにして自身の手でフルスクラッチしたことにコンプレックスを抱いていることは知っている。

そもそも、簪が刀奈にコンプレックスを抱くようになった要因の一つがそれである。

そのため、自分もやればできることを、姉の付属品や劣化版ではないことを証明するための第一歩として、自分も同じことをしたい、しなければならない、という執着から、できる限り一人で仕上げたいという想いが強いのだ。

 

勇人もそれはわかっているので、あえて安易に誰かを頼れ、とは言わないし、言うつもりもない。

だが、さすがに行き詰まればそうも言っていられない。

自分たちが思いつく限りの手はすべて試した。

だが、自分たちは稀代の大天才である篠ノ之束ではない。

経験豊富なプログラマーでも、発明家でもない。

いきなり、ポン、とアイデアが出てくることはない。

だからこそ、借りることが出来るのならば、企業から知恵を借りることも厭う必要はない。他人の力を借りることを「恥」と思う必要もない。

それが勇人の考えだった。

 

そして、これが自分の力だけでできる限界ということも、簪は察していたらしい。

以前は、まだまだ頑張る、と意気込んでいたが、クラス対抗戦に間に合わなくなることを考慮したのか、今回は素直に勇人を頼ってきた。

 

「……わかった。お願い」

「オーケー、頼まれた」

 

簪の言葉に、勇人ははっきりと返し、携帯電話を取り出した。

 

------------

 

そのころ、IS学園の校門に、一人の小柄な少女が仁王立ちしていた。

 

「ここがIS学園ね……」

 

校舎を見上げながら少女はそう呟き、口角を吊り上げ、にやりと笑みを浮かべた。

そして、この校舎の中のどこかにいるはずの幼馴染(・・・)の名をつぶやいた。

 

「待ってなさいよ、一夏!」




月影勇人のロイス(本章終了時点)
(P/N、○は表側)

・ミカズチ(Eロイス)
・更識簪:○好意/恐怖
・更識刀奈:○恩義/恐怖
・布仏本音:○友情/無関心
・布仏虚:○恩義/無関心
・篠ノ之束:○興味/憤慨
・織斑一夏:庇護/○無関心
・織斑千冬:○尊敬/食傷
・篠ノ之箒:興味/○無関心
・セシリア・オルコット:○感心/憐憫

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。