IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
オリジナルと若干の相違があるとは思いますが、そこはご容赦ください
初めての実技授業
クラス代表が決定した翌日。
一組の面々はISスーツを着用してアリーナに集合していた。
「よし、今日からISの実技授業を行うことになるが、まずは実際にISの動きを見てもらう。月影、織斑、オルコット。前に出ろ」
千冬にそう命じられ、専用機持ちである三人が前に出た。
どうやら、最初の授業であるため、訓練機を使う前に実際どこまで動けるのか、実演させるつもりのようだ。
「ではまず、ISを展開してみろ。文句は受け付けん、さっさとやれ」
横暴、ともとれる命令ではあるが、授業時間という時間制限がある以上、一分一秒も無駄にはできない。
なにより、ここでごたごた言っても出席簿が脳天に降ってくるだけだ。
そんなことはごめんこうむりたい三人は、指示通り、自分のISを展開した。
なお、展開時間は早い順番にセシリア、勇人、一夏であり、弟には特に厳しい千冬は、その遅さを指摘し精進するよう 責してきた。
ISに関しては全くと言っていいほど触れたことがなく、搭乗時間が一時間にも満たない一夏に対してあまりといえばあまりなのだが、そこは触れないでおくのが無難である。
その後、千冬の合図で三人は一斉に上空へと飛んだ。
操縦時間が最も長いセシリアを先頭に、勇人、一夏の順で飛んでいると、地上にいる千冬から一夏に対して、通信機越しに再び叱責が飛んできた。
『何をしている、織斑!スペック上、白式は月影の蒼穹と大して差はないぞ!』
「す、すみません!!」
いきなり叱られて慌てて返した一夏だったが、そんなこと言ってもなぁ、と文句をつぶやいた。
生物の構造上、人間は空を飛ぶことはできない。
飛行機やヘリコプター、あるいはグライダーなどで飛ぶことはできるが、それらはすべて機械や風などの力を借りて初めて可能となるものだ。
人の姿のまま、何の補助もなく飛ぶことに対して、まったくイメージがわかないのだから、手こずるのも無理はない。
「えぇっと……前方に角錐をイメージするんだっけ?どうイメージすりゃいいんだよ……」
「イメージはしょせんイメージ。教科書通りにするより、自分が一番やりやすいイメージを模索することが建設的でしてよ?」
一夏に合わせてくれているのか、それとも一夏が追い付いたからなのか、隣を飛んでいるセシリアからそんなアドバイスが飛んできた。
そのアドバイスに、なるほど、とうなずきながら一夏は勇人に問いかけた。
「なぁ、勇人。参考までに聞きたいんだけど、お前はどんなイメージで飛んでるんだ?」
「ん?あ~……あれだ、モビルスーツとかアトムとかをイメージしながらかな」
「……思いっきりアニメじゃねぇか……てか意外だな、お前がアニメ見るなんて」
「作品ごとに好き嫌いはあるけどな」
なお、勇人が見ているアニメはだいたいがロボットものなどの熱血系だ。
そうなってしまったのは、簪に付き合わされて、ということは言うまでもない。
とはいえ、その中に勇人も好きな作品もあるため、簪とのアニメ鑑賞は嫌いではないことは確かだ。
「ですが、困りましたわね……どうしましょうか、勇人さん?」
「セシリィが教えるのがいいんじゃないか?操縦時間から言えば、俺とイチはどっこいだから」
「それなら……あ、あの勇人さんもぜひご一緒に……」
「すまん、こいつと一緒にってのはちとごめんだわ。個人的に思うところがあるから」
「お、おいおい……てか、俺、お前に何かしたか?いや、IS動かしちゃったこと以外で」
セシリアが顔を少し赤らめながらそう提案してきたが、勇人は即座にその提案を蹴った。
その返答に断られたセシリアは少しばかり残念そうに俯き、一夏は苦笑を浮かべ、自分が何をしたのか問いかけたことは言うまでもない。
むろん、勇人はその質問に返答することはなかったが。
たしかに、勇人は一夏を認めている。
第一例外や例外第一号からイチと呼び方を変えているのがその証拠だ。
が、認めることと許すことはまた別の話だ。
なにより、勇人の中ではまだ、一夏の専用機が倉持技研により製造されているということが許せずにいた。
むろん、一夏が悪いというわけではないが、それでも理解することと納得することは別物である。
『三人とも、聞こえるか?オルコット、月影、織斑の順に急降下と急停止の実演をしてもらう。目標停止地点は地上から十センチだ。ただし、月影と織斑は三十センチを目安にしろ』
不意に、三人のISに千冬からの指示が飛んできた。
一番手に指名されたセシリアは表情を引き締め、了解、と返答したのち、二人に微笑みかけた。
「それでは、お先に失礼いたしますわ」
そう告げた次の瞬間、セシリアは地面に向かって急降下し、言われた通り、地上十センチの地点で急停止した。
その様子をハイパーセンサーで確認した勇人は、降下姿勢に入り、地面に向かっていった。
センサーで指定された目標地点が近づいた瞬間、勇人は身をひるがえし、停止した。
が、ブレーキをかける地点を若干間違えてしまったようで、指示された地点よりも低い位置で止ってしまった。
「十五センチ……ブレーキが少し遅かったか?」
「わかっているならいい。慣れないうちはもう少し高く止まれるよう……」
目標地点に停止できなかった理由を自分なりに考察しつぶやくと、千冬が答え合わせをし、さらにアドバイスをくれようとした。
その瞬間、一夏が停止する予定の地点で、突如、轟音が響いた。
振り向いてみると、土煙を上げるクレーターと、その中に頭をグラウンドに突き刺した一夏の姿があった。
どうやら、急停止することができず、地面に激突。クレーターを作ってそのまま突き刺さってしまったらしい。
「……あの大馬鹿者が……」
「……これからあいつはイチじゃなしに猪と呼んだ方がいいのか?」
心配し、駆け寄っている箒とセシリアをよそに、千冬はあきれ顔で頭を抱え、勇人はジト目を向けながら、本気であだ名の改名を検討していた。
なお、その後、一夏は千冬の指示で一人、クレーターの処理に追われた。
ちなみに、勇人に助けを求めたが、にべもなく断られたことは言うまでもない。