IS×DX~二番目は「背教者」の業を背負う者~ 作:風森斗真
あくまで個人的に思うことなんですが、簪はもうちょっと一夏に対して怒ってもいいと思う
理不尽だろうけど、自分の専用機が凍結されたのは一夏が原因なわけだし
とうの一夏はあとからいろいろと知ることになるけど、自分がどれだけ世界に影響を与えてるのかまったくの無自覚状態なわけだし
終礼が終わり、勇人は予約時間になる前にアリーナへ向かおうとした。
「あら?勇人さん、どちらへ??」
「……セシリィか……アリーナにな」
「クラス対抗戦には出場しないのに、ですの?」
「ちょっと稼働テストの付き合いを頼まれててな……ってなんだよ、妖精でも見たようなその眼は」
「い、いえ……勇人さんはあまり人と関わるのがお好きではないと思っていましたので、その……稼働テストに付き合うなんて想像できなかったので」
セシリアの意見はもっともなものだ。
なにしろ、興味がない、行きたくない、意味が分からないの三言で一夏のクラス代表就任お祝いに出席しなかったほど、協調性がないのだ。
そんな勇人から、誰かの稼働テストに付き合うという姿が想像できるはずもない。
「まぁ、だろうな。人間が好きじゃないのは事実だし」
「……その割に、わたくしや本音さんとは普通に接してくれていますわね?」
「本音は世話になってる家の関係で昔から知ってるからな。お前と
実際、幼少期の経験から勇人はあまり人間が好きではない。そのため、一夏のように誰彼構わず接するようなことはしないし、馴れ馴れしくすることもない。
だが、気に入った人間であればそれなりに心を開くし、親身にもなる。
そうなる人間は幼いころから付き合いのある更識姉妹と布仏姉妹、そして彼女らの両親だけだったのだが、ここ最近では一夏とセシリアがそこに加わっていた。
「……まぁ、あ、あの、もしよろしければなのですが、その稼働テスト、わたくしもお付き合いしてもよろしいでしょうか?」
「俺は別に構わんが……あいつが許すかな」
「あいつ、とは?」
セシリアが首を傾げながら、稼働テストを行う生徒のことを聞いてきた。
隠すことでもないし、こじれさせるのも面倒なので、勇人はその問いかけに正直に答えることにした。
「四組の更識簪だ」
「ほ、他のクラスの方でしたの?!」
本音がよく話しかけてきていることは知っていたが、まさか他クラスに知り合いがいたとは思わなかったのだろう。
セシリアの驚愕の声に、勇人は若干、不機嫌そうに眉をひそめた。
「んだよ、その驚き方は」
「い、いえ……まさか他のクラスの方とは思わなかったので……」
「まぁ、普通に考えれば敵に塩を送るようなことはしないだろうが……今回に限ってイチは俺の敵だからな」
明らかな敵意と怒りを瞳に宿しながら、勇人はセシリアにそう返した。
その瞳に、勇人と一夏の間に、何か複雑な因縁があるような気がしたセシリアだったが、今この場でそれを問いただすことはやめることにした。
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アリーナに到着し、ISスーツを着用したセシリアはブルーティアーズを展開せずに勇人を待っていた。
ちなみにすぐ隣にはなぜかこの場にいた本音と、メガネをかけた水色の髪の女子がいた。
おそらく彼女が稼働テストを行う更識簪なのだろう。
そう予測したセシリアは、ひとまず、自己紹介と急に押し掛けたことを謝罪した。
「初めまして、ですわね?一組のセシリア・オルコットですわ。急に押し掛けてしまい、申し訳ございません」
「……いい。勇人から聞いてた……わたしは四組の更識簪。簪でいい」
「それなら、わたくしもセシリアで構いませんわ。よろしくね、簪」
「……うん」
少しばかり恥ずかしそうに、簪はセシリアにうなずいて返した。
そうしているうちに、ISスーツ姿の勇人がアリーナに入ってきた。
なぜか、その背後に一夏と箒を引き連れて。
「……本音とセシリアはともかく、その二人はどういうこと?」
「俺だって反対したんだが、こいつが半分強引に割り込んできやがった」
「うっ……いや、悪いとは思うけど、ちょっとくらい協力してくれても……」
一夏が若干うろたえながらも反論してきたが、背筋に何か感じたらしく、びくりと体を震わせた。
ギギギ、と壊れたブリキ人形のような音が聞こえるのではないかというほどゆっくりと、気配を感じた方へ視線を向けると、そこにはいかにも不機嫌そうな目をしている簪の姿があった。
彼女が一組の生徒ではないことはすぐにわかったが、なぜ自分がこんな殺気じみた視線を浴びせられなければならないのかわからない一夏は、困惑しながら簪に問いかけた。
「え、えぇと……俺、君に何かした?」
「した。あなたが直接というわけじゃないけど、した。おかげでものすごく迷惑している」
「そういうわけだ。イチ、アリーナを使う分には構わないが、俺とこいつの邪魔をするなよ?したら黒焦げにするぞ」
クラス代表戦の時に感じた、押しつぶされそうな殺気を覚えながら、一夏はうなずいて返した。
その瞬間、殺気は収まり、勇人と簪は一夏に背を向けた。
その背中を見送りながら一夏は、自分が覚えていないところで彼女に何かしてしまったのではないか、という疑問を抱いた。
だが、その疑問に答えを出すには、情報があまりにも少なすぎるため、一夏はこのことについて考えるのは一度やめることにして、トレーニングに集中することにした。